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2025-06-18

歯科治療時のアモキシシリン 2g

感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)では,抜歯などの菌血症を誘発する歯科治療に対する感染性心内膜炎の予防にはアモキシシリン2gの術前1時間以内の経口単回投与が推奨されています.
  • 成人の高度リスク患者に対し,抜歯などの菌血症を誘発する歯科治療の術前には予防的抗菌薬投与を推奨する(推奨の強さ1:強く推奨する,エビデンス総体の強さB[中])
  • 成人の中等度リスク患者に対し,抜歯などの菌血症を誘発する歯科治療の術前には予防的抗菌薬投与を提案する(推奨の強さ2:弱く推奨する(提案する),エビデンス総体の強さ C[弱])

🐌 深堀
  • アモキシリンの量に関して添付文書には「ヘリコバクター・ピロリ感染を除く感染症ならば成人:アモキシシリン水和物として、通常1回250mg(力価)を1日3~4回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」と記載されています.2gは通常量の2倍なので必要時にはおおむね許容されると思われます.ただし1日量であり1回量ではありませんが...
  • アモキシリンの投与に関して添付文書には予防投与の記載がないため,本来は保険請求できません.ただし投与しないことは患者さんの多大な不利益になり,これは公的保険制度の理念・趣旨に反します.社会保険診療報酬支払基金の回答を見つけることはできませんでしたが,必要時には投与すべきと思われます.査定されても250㎎ 8錠(2g)で約80円ですし...

💁 予防投与に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-06-15

BARCバーク 出血基準

学界、専門学会、連邦政府機関の協力関係にある出血学術研究コンソーシアム(BARC: Bleeding Academic Research Consortium)が提唱する出血性合併症の基準 (Circulation 2011;123:2736-47


(投稿者 川崎)

2025-06-06

Suicide LV 左室自殺

  • 大動脈弁置換術は重症の症候性大動脈弁狭窄(AS)例に対するクラス I の推奨治療です。しかし、大動脈弁置換術は急性の左室流出路閉塞(LVOTO)などの合併症を引き起こすことがあります。
  • この稀ではあるものの重篤な合併症はいわゆる「Suicide LV/自殺左室」現象と呼ばれています。前もって閉塞性肥大型心筋症によるLVOTOが判明している場合、TAVI後の増悪も含まれます。

❶ 重度ASの88歳女性にTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)を実施

❷ 術直後に肺水腫と低血圧 → 僧帽弁の収縮期前方運動と重症逆流を確認

❸ 治療抵抗性 → 準緊急的に経皮的中隔心筋アブレーションを実施し改善

(投稿者 川崎)

2025-05-23

有害事象グレード

  • 2017年11月に米国のNational Cancer Institute(NCI)の Cancer Therapy Evaluation Program(CTEP)が公表した「Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v5.0」に準ずることが多い。
  • 本邦ではその日本語版である有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版(略称はCTCAE v5.0 - JCOG)を使用(JCOGとは日本臨床腫瘍研究グループ Japan Clinical Oncology Groupの略)(PDF版はコチラ

  • Grade 1 ➜ 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ、または治療を要さない
  • Grade 2 ➜ 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する、または年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限*
  • Grade 3 ➜ 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長 を要する; 身の回りの日常生活動作の制限**
  • Grade 4 ➜ 生命を脅かす; 緊急処置を要する
  • Grade 5 ➜ 有害事象による死亡

👾 注意点
  • Grade 説明文中のセミコロン(;)は「または」を意味する。
  • *身の回り以外の日常生活動作(instrumental ADL)とは、食事の準備、日用品や衣服の買い物、電話の使用、金銭の管理などをさす。
  • **身の回りの日常生活動作(self care ADL)とは、入浴、着衣・脱衣、食事の摂取、トイレの使用、薬の内服が可 能で、寝たきりではない状態をさす。

💁 有害事象に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-25

播種性非結核性抗酸菌症
Disseminated nontuberculous mycobacteria infection: DNTM

  • 非結核性抗酸菌が局所的に増殖し血液経路を介して他の臓器や組織に侵入した状態
  • 症状は非特異的で断続的 or 持続的な発熱,寝汗,体重減少,倦怠感,食欲不振など
  • 診断は血液培養で菌を検出(骨髄生検標本や体液または組織の培養および組織も可)
  • 長期の免疫抑制剤使用やHIV感染に関連して発症(特にCD4+Tリンパ球数<50/mm3
  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)を定義する日和見感染症で,同集団で高いは死亡率
  • 無治療で免疫抑制が進んだHIV感染例での播種性MAC(DNTM)の発生率は20~40%
  • 抗レトロウイルス治療(ART)時代では年間発生率の中央値は1.1/1,000 HIV人・年


- 特発性CD4リンパ球減少症の64歳男性 -
CTで右S6に腫瘤+右鎖骨・左肩甲骨の骨溶解/鼠径部の皮下腫瘤は肉芽腫
(投稿者 川崎)

2024-12-12

今週の一枚 🎯

心不全でフォロー中の男性(他科でホルモン治療中)


(投稿者 川崎)

2024-03-13

グレープフルーツ

🏨 外来での一コマ
  • 患者さん 「血圧の薬はグレープフルーツダメなんですか?」
  • 担当医師 「そうですよ.だから薬は水で飲んでください」
  • 患者さん 「ええ.もし一緒にとったらどうなるんですか?」
  • 担当医師 「え〜っと...確か...血圧が下がりすぎる...ような」
  • 患者さん 「効きすぎるんですね.でもどうしてですか?」
  • 担当医師 「...どうしてなんでしょう...😓」

🍊 グレープフルーツによる薬物相互作用
  • DHP系Ca拮抗薬,ミダゾラム,トリアゾラム,シクロスポリンと同時服用で血中濃度が上昇
  • 降圧薬は水の服用時に比較して最高血中濃度は3.3倍,血中濃度時間曲線下面積は2.2倍↑
  • ただし同じ柑橘類でもオレンジやミカン,レモン,ザボン,ボンタン,夏ミカンでは生じない
  • 機序は小腸のCYP3A4活性を選択的に阻害し薬剤の生体内利用率を高めるためと思われる


(投稿者 川崎)

2023-08-31

今週の一枚 🎯

ペースメーカ外来を定期受診した症例



(投稿者 川崎)

2023-07-26

メンデルソン症候群:再登場

💣 メンデルソン症候群(Mendelson syndrome)
  • 初報は米国 産婦人科医 Mendelson の無痛分娩後の肺炎(Am J Obstet Gynecol 1946;52:191-205
  • 原因は酸度の高い胃液の誤嚥による化学性の肺障害で広義では産婦人科領域に限らず使用される
  • 誤嚥性肺炎(広義)の一亜型で ARDS に進展することあり(古い報告での死亡率は41-100%:
  • 誤嚥直後から肺胞虚脱,肺実質の炎症,浮腫を生じて4-6時間後には好中球による二次的傷害(#) 

🌟 肺癌術後気管支鏡でメンデルソン症候群を発症した症例
  • 誤嚥直後より10L酸素マスクでSpO2 90%
  • 2時間後に右肺野透過性低下を認め(図3A)ソルメドロール1gを投与
  • 誤嚥4時間後に呼吸停止し人工呼吸管理を開始(図3B)

🍚 誤嚥性肺炎(広義)
  1. Aspiration pneumonia(通常の誤嚥性肺炎)➜ 細菌を含む口腔・咽頭分泌物の誤嚥に起因する細菌性肺炎(不顕性の誤嚥を含む)
  2. Aspiration pneumonitis(誤嚥性肺障害:メンデルソン症候群を含む)➜ 意識障害時の嘔吐物(胃液を含む食物)の顕性誤嚥に起因

💁 誤嚥に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-08

低体温と不整脈

🐶 動物実験
  • 血液希釈されていない犬を20°Cまで急冷すると50%が心停止に至った
  • 26°Cに冷却した犬の心室筋ではVFやVTは冷却よりも再加温中に頻繁
  • 21°C猫で通常量強心剤(アドレナリン他)が心室性不整脈を全例誘発

👴 ヒトデータ
  • 深部体温が16.9°C~29°Cの偶発的低体温19例では7人がVF, 2人は心静止
  • 日本の60人の検討では深部体温>26°CでVF を発症した患者はいなかった
  • 低体温療法中に低カリウム血症+QTc間隔延長なら平均34.7°CでVTが発症


低体温時の一般的な電気生理学的所見
洞調律 房室伝導 心室脱分極 心室再分極 不整脈
軽度〜中等度
(>30度)
不変〜低下 不変〜低下 短縮〜不変〜延長 延長 心房細動,心室期外収縮,心室頻拍
高度
(<30度)
停止まで延長 延長〜停止 遅延〜不変 延長,消失 心房細動,心室細動心静止

🍧 低体温に伴う様々な変化
  • 電解質 ➜ 寒冷利尿による喪失と細胞内移動により低下するため,低Ca血症,低K血症,低Mg血症,低P血症を認める.逆に復温期では高カリウム血症に注意
  • 凝固系 ➜ 35°C以下では血小板機能低下や血小板数の減少が認められる.33°C以下では凝固に関わる酵素活性の低下から出血傾向となる. 
  • 免疫系 ➜ 白血球の遊走能・貪食能および炎症性サイトカイン産生・反応の低下が生じる.また感染時に白血球数やCRPが必ずしも上昇しない
  • 耐糖能 ➜ 低体温ではインスリンの感受性が低下し,膵細胞からのインスリン分泌ならびに糖代謝も低下するため高血糖が助長される.

💁 低体温に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-03-10

論文 🏆 黄視症 Xanthopsia

  • 当院の初期研修医である春名先生が循環器内科で経験した症例が出版(少し前😅)
  • 心不全で入院 ➜ ジギタリス中毒(7.3 ng/mL)が判明 ➜ 追加問診で黄視症を確認
  • ポイントは視力や視野の異常はなく網膜電図( electroretinography: ERG)で異常

上段は入院時(ERGの反応低下)・下段は回復1月後(すべて正常化)

😀 おまけ
  • 本例は下腿浮腫に対して他院でジギタリスが0.25 mg/日が処方されていました.腎機能障害はなかったようですが,当院搬入時のeGFRは33.5 mL/min/1.73 m2でした(その後に53.6まで回復).
  • 問診で入院直前にバイクによる数回の自損事故を起こしていたことが判明しました.当初はジギタリス中毒による不整脈(特に徐脈:入院時40 bpm)を考えましたが,入院後に不整脈は検出せず.
  • よくよく聞いていくと,道路横の歩道ブロックが見えにくくなりバイクでぶつかっていたことが分かりました.これは夕方に顕著で信号色も不明瞭だったようです.そこから黄視症に辿り着きました.
  • ジゴキシン関連黄視症はジギタリス効果を発見したWitheringが200年以上前に報告しています().強烈な黄色で知られる画家ゴッホなど多くの人に影響を与えたと考えられているようです().

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-06-16

🎯 今週の一枚(じゃなくて音)

急性前壁心筋梗塞に対してPCIを施行した数日後

💣 心室中隔穿孔(VSP: ventricular septal perforation) 
  • 3LSBに明瞭な汎収縮期雑音(全収縮期雑音,収縮期逆流性雑音)
  • 通常は雑音に隠れるⅡ音がちゃんと聞こえる(肺動脈成分の亢進)
  • 雑音は心尖部の方が大きい(病変は心基部より心尖部よりを示唆)
  • 心尖部ではこの雑音直後に小さな音(膜では聞こえないためⅢ音)
  • 心エコー図では,心尖部よりの心室中隔にL➜Rシャントを認めた
  • 心室中隔穿孔を伴う非代償性心不全と診断して,準緊急外科手術

💀 心筋梗塞の機械的合併症
  • 心室中隔穿孔,乳頭筋断裂,左室自由壁破裂が3大機械的合併症です.発生頻度は心筋梗塞のおよそ1〜10%で,発症時期は24時間以内および3〜5日が多いと報告されています(過去のまとめ).
  • 本例に生じた心室中隔穿孔の発症リスクは,高齢・女性・前壁梗塞(前下行枝)・初回梗塞です.また穿孔部位は前下行枝病変なら心尖部寄り(本例),非前下行枝なら心基部寄りになります.
  • 機械的合併症では血行動態が急激に悪化します.心室中隔穿孔の自然予後は1月以上の生存率20%以下()で早期の外科的修復術が必要.一刻を争うならIABPやPCPS,Impellaなども考慮.
  • 心室中隔穿孔と乳頭筋断裂では,粗い汎収縮期雑音(と前胸部の振戦)が診断契機になります.冠インターベンション(PCI)が成功しCKが順調に下がってきても,油断せず毎日朝晩の聴診が必須です 👂

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-11-25

🎯 今週の一枚

右下腹部痛を訴える妊娠中期の女性の単純CT



(投稿者 川崎)

2021-07-18

頭の整理:HIT aHIT VITT

  1. HIT ➜ Heparin-Induced Thrombocytopenia(ヘパリン起因性血小板減少症
  2. aHIT ➜ autoimmune Heparin-Induced Thrombocytopenia(自己免疫性ヘパリン起因性血小板減少症)
  3. VITT ➜ vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia(ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症)

👅 追記
  • VITTはコロナワクチンに関連する合併症として注目されて,VIPIT(vaccine-induced prothrombotic immune thrombocytopenia)とも呼ばれています.ただし未だ不明な点も多いため,TTS(Thrombosis with Thrombocytopenia Syndrome,血小板減少症を伴う血栓症)と記載されることも少なくないようです().

(投稿者 川崎)

2021-07-14

🏆 論文

  • 当院の初期研修医である酒井健紀先生が書いた論文が出版されました
  • ペースメーカ植込み中にリードが何かに絡みついて難渋した症例です
  • どうしてもリードを抜去できず最終的に転院し開心術を施行しました
  • リードが絡んでいた何かはキアリ網であることが術中に判明しました
  • 本例では術前および術中の経胸壁心エコー図でキアリ網は全く見えず


😗 コメント
  •  キアリ網(キアリネット,Chiari's net anatomy)は心エコー図で稀に観察される胎児期の静脈洞弁遺残です.術前エコーで同構造物を認めれば,カテーテル操作を慎重にする必要があります.
  • 本例のポイントは,術前エコーでキアリ網を認めなくても油断できないということです.合併症例ですが,カテーテルを扱う医師に警笛を慣らす意味でも報告する意義があると考え論文化しました.

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-07-07

M&Mカンファレンス 

  • MMorbidity(合併症)とMortality(死亡)で英語でもMorbidity and mortality (M&M) conference
  • 日常臨床の死亡例や重症例,見逃し例などを検討して再発防止や環境改善を目指すカンファレンス
  • 米国のマサチューセッツ総合病院Codman先生(1869–1940)が1900年代初頭に開始した(引用

 🐨 おまけ
  • チョコレートブランドM&M's(エムアンドエムズ)の二つのMは共同経営者のフォレスト・マース(Forrest Mars)とブルース・ムリー(Bruce Murrie)の名前です.兵士が過酷な環境でも楽しめる「お口でとろけて手にとけないチョコレート」の開発からすべてが始まったようです().
(Public Domain)

(投稿者 川崎)

2021-03-06

ブラインドループ症候群 Blind loop syndrome

  • 腸吻合術後の合併症の一つで腸管の盲嚢や盲環を主原因とする病態の総称
  • 邦名は盲管係蹄症候群や盲端症候群,盲管症候群など未統一(のようです)
  • 症状は下痢や消化吸収不良,貧血に加え腹部膨満や腹痛のみの場合もある
  • 吻合型式から①短絡による悪性循環,②盲管,③盲嚢の3つに分類(下図)
  • 原因は盲嚢内のうっ滞・過伸展・重積・細菌異常増殖による粘膜障害など
  • 初報は米国の医師であるEstesとHolmの4例報告(Ann Surg 1932;96:924-9
  • 発現は術後1月~37年と個人差が大きく必要に応じ盲嚢切除術などを考慮


😕 関連病態(胃切除後症候群)
  • 輸入脚症候群(afferent loop syndrome)➜ BillrothⅡ法再建後では輸入脚に胆汁や膵液が充満 ➜ 食後の内圧上昇時に残胃内に急激流入 ➜ 胆汁性の大量嘔吐
  • ダンピング症候群(dumping syndrome)➜ 胃全摘後などは残胃容積低下と幽門輪喪失 ➜ 食物が十二指腸~空腸に高張のまま急速流入 ➜ 発汗や動悸,顔面紅潮,腹痛,嘔吐,高血糖,めまいなど


(投稿者 堀内/川崎)

2021-02-17

新技術:IVL(アイブイエル)

  • IVL=Intravascular Lithotripsy(血管内衝撃破砕石術)
  • Shockwave Medical社が開発した冠動脈インターベンションのデバイス
  • 冠動脈内の内膜や中膜に存在しているカルシウムを選択的に粉砕できる
  • 尿路結石に対して実績ある技術の応用で超音波エネルギーを用いている
  • 手技がシンプルで合併症も少ない(J Am Coll Cardiol 2020;76:2635-46


😅 独り言
  • 初めてIVLと聞いたときには血管内リンパ腫(Intravascular lymphoma)をイメージしました.この新たなIVLは欧州で既にCE markを取得しています.本邦でも治験が進行中のようで,早期の承認が望まれます.

(投稿者 川崎)

2021-02-04

ATRA アトラ 症候群(All-trans retinoic acid syndrome)

  • 定義 急性前骨髄球性白血病(APML)の分化誘導療法の治療後に見られる合併症
  • 症状 発熱や呼吸困難,胸水・心嚢液貯留,低酸素血症.腎不全,多臓器不全など
  • 頻度 ATRA投与2日〜3週目に生じ成人では12/196人(6%),小児は1/17人(6%)
  • 予後 死亡率は30~50%(デキサメタゾン投与で5%まで減少:重症例はATRA延期)


ATRA症候群を合併した急性前骨髄球性白血病の1例

👻 おまけ
  • レチノイン酸症候群(Retinoic acid syndrome、RAS)とも呼ばれますが,必ずしもATRA(トレチノイン)誘発性でなく,悪性前骨髄球自体に依存して発現するようです.よって分化症候群(Differentiation Syndrome)という名称への変更が検討されているようです,
  • ATRA分化誘導療法は中国のWangらが報告(完全寛解96%という驚くべき効果:Blood 1988;72:567-72).実は先立って中国の専門誌に同じ内容の論文を報告したのですがほとんど注目されなかったようです().一流誌Bloodでの報告後に世界各国で追試が行われ,自血病の治療手段の一つとして確立されました.

(投稿者 川崎)

2021-01-26

心筋梗塞の機械的合併症:おさらい

🙈 左室自由壁破裂LVFWR: left ventricular free wall rupture)
  • Blow out型は心筋梗塞発症24時間以内,oozing型は発症3~5日後に多い
  • 発症リスクは高齢・女性・高血圧・初回梗塞・1枝病変・再灌流の遅れ
  • 身体所見 ➜ 心タンポナーデによる頸静脈怒張や奇脈,ショック,冷感

🙉 心室中隔穿孔VSP: ventricular septal perforation)
  • 発症リスクは高齢・女性・前壁梗塞(前下行枝)・初回梗塞
  • 穿孔は前下行枝なら心尖部寄り,非前下行枝なら心基部寄り
  • 身体所見 ➜ 心尖部近くの粗い汎収縮期雑音と前胸部の振戦

🙊 乳頭筋断裂PMR: papillary muscle rupture)
  • 前乳頭筋は前下行枝と左回旋枝の二重支配,後乳頭筋は右冠動脈単独     
  • よって乳頭筋断裂は,右冠動脈を責任病変にする後乳頭筋断裂が多い
  • 身体所見 ➜ 心尖部中心の汎収縮期雑音,湿性ラ音,頻脈,末梢冷感

参考)Heart View 2021;25:192-197

🉐 関連投稿(心筋梗塞の合併症編)

(投稿者 川崎)