このブログを検索

ラベル 腎不全 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 腎不全 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025-07-22

Hemosorba® ヘモソーバCHS

  • 優れた石油ピッチ系ビーズ状活性炭を用い高い吸着性能を実現
  • 生体適合性を考慮して吸着剤を親水性ポリマーでコーティング
  • よって微粒子の発生、血液凝固、血球成分の付着や損傷が軽減
  • 製造販売は旭化成メディカル株式会社(血漿交換1日4,200点)
  • 除去可能内因性物質は肝障害によるアミノ酸やクレアチニン他
  • 外因性は催眠・抗てんかん・精神薬、解熱鎮痛薬、抗生剤など

- 標準的な血液流路図 -

(投稿者 川崎)

2025-07-18

日本内科学会 第248回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題64 Gitelman症候群と診断した反復性低K血症と低Mg血症の1例
  • 本症はNa-Cl共輸送体(SLC12A3遺伝子)の変異に起因し、遠位尿細管でのNaおよびCl再吸収障害をきたす疾患である。類似疾患のBartter症候群との鑑別が必要であるが、本症は低Mg血症や低Ca尿症を伴うことが特徴である。軽度の脱水や胃腸症状を契機に重篤な電解質異常を反復するため、KおよびMg補充に加え、適切な水分電解質摂取を含む生活指導が重要である。

演題69 Pantoeaによるカテーテル関連血流感染の1例
  • カテ先培養と血液培養の結果でPantoea sp.が検出された。薬剤感受性結果から抗生剤をCTRXに変更し、その後症状の再燃なく、抗生剤を2週間投与したため退院となった。グラム陰性桿菌であるパンテアはカテーテル関連血流感染の原因菌として非常に珍しい。

演題102 ピサ症候群を呈した抗凝固療法中尾状核出血の1例
  • 右へ傾くピサ症候と左への体幹のねじれを呈し、右上肢固縮と姿勢時振戦、軽度の右下肢単麻痺も認めた。ピサ症候は立位や座位時に増強、仰向けになると正中に戻り、腰曲がりはなかった。頭部CTで左尾状核に直径1.5cmの血腫、左側脳室へ穿破を認め責任病巣と判断した。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-07-06

レオカーナ Rheocarna

  • LDLおよびフィブリノーゲンの直接血液吸着療法(血漿分離が不要)
  • 2021年に保険収載されLDL-Cの値に関わらず吸着療法の実施が可能
  • カネカメディックスが販売(添付文書:ACE阻害薬を服用例は禁忌)
  • 対象は血行再建術不適応な潰瘍を有す閉塞性動脈硬化症例(CLTI
  • 従来のリポソーバーによる吸着療法はLDL-C高値と血漿分離が必要


💁 透析に関する過去の投稿 ➜ コチラ
 
(投稿者 川﨑)

2025-04-26

APSGNまたはPSAGN:溶連菌感染後急性糸球体腎炎

  • acute poststreptococcal (or poststreptococcal acute) glomerulonephritis
  • A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染を契機に発症する急性糸球体腎炎
  • 類似病態はIgA血管炎や紫斑病性腎炎(Henoch-Schönlein purpura nephritis)
  • 急激に発症する血尿や蛋白尿,高血圧,eGFRの低下,Na・水の貯留を示す
  • 典型例では先行感染から1~3週後に浮腫・血尿・高血圧の三徴が出現する
  • 機序は感染後に可溶性免疫複合体が生じ糸球体基底膜に捕らえられるため
  • 3~10歳の小児に多く(男性優位)先進国では抗生物質の使用で頻度は減少
  • 鑑別は急性発症型慢性GNや慢性GN急性増悪、急速進行性GN、良性反復性血尿
  • 安静臥床や保温などの対症療法で小児は約90%,成人は50~80%が治癒する
  • 薬剤は腎毒性の少ないペニシリンやCa拮抗薬など(原則,ステロイドなし)

(投稿者 川崎)

2025-04-04

サブラッド® SUBLOOD®

👥 CEさんとの会話で...
  • サブラッドという言葉が何度も出てきました。ろ過型人工腎臓用補液のだと教えてもらいましたが、あまりなじみのない言葉だったので調べてみました。

サブラッド® SUBLOOD® (添付文書PDF
  • 効能または効果 ➜ 透析型人工腎臓では治療の持続又は管理の困難な慢性腎不全例に対するろ過型又はろ過透析型人工腎臓使用時ならびに治療時間の短縮を目的とするろ過透析型人工腎臓使用時の補充液として用いる。
  • 種類 ➜ 1,010mL(737円)と2,020mL(942円)があり使用前に混合する(下図)。【B液(大室)】塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム水和物(CaCl2・2H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)、無水酢酸ナトリウム(CH3COONa)、ブドウ糖(C6H12O6) 【A液(小室)】塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
  • 用法及び用量 ➜ 通常、使用時A液及びB液を混和し、ろ過型又はろ過透析型人工腎臓使用時の体液量を保持する目的で点滴注入する。投与はろ過液量と体液量とのバランスを保つように十分注意して行う。 通常成人1分間当たり30〜80mLの投与速度で症状、血液生化学異常、電解質・酸塩基平衡異常、体液バランス異常等が是正されるまで行う。通常1回のろ過型人工腎臓治療では15〜20Lを4〜7時間で投与する。また、透析型人工腎臓と併用する場合には、5〜10Lを3〜5時間で投与する。なお、投与量は症状、血液生化学値、体液異常、年齢、体重などにより適宜増減する。

- 実際の使用方法 -

(投稿者 川崎)

2025-04-03

今週の一枚 🎯

数分間の意識消失を生じた超高齢者

😐 解説
  • 来院時の心電図は徐脈+心房細動+ST-T部分の変化
  • 意識清明で神経学的異常なく頭部CTも特記所見なし
  • 高Mg血症(16.3 mg/dl)が判明(基準値:1.8-2.4)
  • 他の電解質はPが軽度上昇(5.1 md/dl)以外は正常
  • 腎機能は軽度の低下(Cr 1.1 md/dl)で肝機能は正常
  • カルチコールの静脈内緩徐投与と緊急血液透析で対応
  • 最終的に高Mg血症+糞便イレウス+誤嚥性肺炎と診断
  • 意識障害の原因は過剰な緩下剤による高Mg血症の疑い

💁 高Mg血症と心電図
  • 軽度~中等度の高マグネシウム血症ではPR間隔やQT間隔の延長、QRS波の拡大
  • 高度では伝導障害から心停止(一部は顕著なST部分の上昇とT波の増加も観察)
  • その原因としてマグネシウムイオンによる Na+/K+-ATPase 活性の機能的阻害

💫 マグネシウムに関する過去の投稿 ➜ コチラ

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-03-21

医科診療報酬点数

👥 夜8時半にようやくシャントPTAが終わって...
  • 専門医A 「エコーでVAIVTができると楽だね」
  • 専門医B 「そうです.それで12万ですからね」
  • 専門医A 「高っ! ペースメーカって数万だよ」
  • 専門医C 「でも3ヵ月で2回までですけどね…」

📪 医科診療報酬点数(令和6年)
  • 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 ➜ 12000点
  • ペースメーカ ➜ 経静脈電極移植術9520点,リードレス移植術9520点,交換術4000点
  • 経皮的冠動脈ステント留置術 ➜ 急性心筋梗塞34380点,不安定狭心症24380点,その他21680点
  • 心臓カテーテル法による諸検査 ➜ 左心4000点,右心3600点
  • 冠動脈、大動脈バイパス移植術 ➜ 吻合80160点,吻合以上89250点
  • 経カテーテル弁置換術 ➜ 経皮的39060点,経心尖61530点
  • 弁輪拡大術を伴う大動脈弁置換術 ➜ 157840点
  • 経皮的カテーテル心筋焼灼術 ➜ 心房中隔・心外膜アプローチ40760点,その他34370点
  • 下大静脈フィルター ➜ 留置10160点,除去6490点
  • オープン型ステントグラフト内挿術 ➜ 弓部大動脈114510点,下行大動脈89250点


    😑 独り言
    • 手技料に関しては皆,いろいろな想いがあると思います.循環器内科医なら,「なんでペースメーカ植込みよりシャントPTA(VAIVT)の方が高いの?」って思うかもしれません.逆に心臓外科医は,「循内の経皮的な手技料,高すぎだろう!」って怒っているかも…
    • 手技の難しさ(学ぶのに要する時間)やリスク(術者のストレスを含む),効果(予後改善など)が,手技料に総合的に反映されていることが大切です.例えば下大静脈フィルター植込みの手技料は10160点と高めですが,比較的簡単かつ安全で臨床効果は微妙

    👉 診療報酬に関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)

    2025-03-15

    APD 自動腹膜透析

    PD: Peritoneal Dialysis(腹膜透析)
    • 腹腔内に透析液を一定時間入れ、老廃物や水分などの移動後に取り出す方法

    CAPD: Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis(持続携行式腹膜透)
    • 1日に3~5回透析液を交換するPD(1回の交換に要する時間はおよそ30分)

    APD: Automated Peritoneal Dialysis(自動腹膜透析)
    • 就寝中の時間を利用して透析液の交換を自動的に行うPD(PD患者の約40%)

    CCPD: Continuous Cyclic Peritoneal Dialysis(持続周期的腹膜透析)
    • 十分な透析を確保するためにAPDに加え昼間にも腹腔内に透析液を入れる方法 


    APD(自動腹膜透析)機器の一例

    👽 おまけ
    •  当院では急性期病院であるためAPDは行っていませんが、外勤する施設ではAPDが盛んです。特に「かぐや」という製品を使用することが多いようです。 おそらく竹取物語からの命名と思われます。
    • 日本の月周回衛星もかぐやと呼ばれていますが(公募)、正式名称はSELENE(Selenological and Engineering Explorer)で、これはギリシア神話の月の女神セレーネと掛けているそうです。 

    (投稿者 川崎)

    2025-03-01

    腎臓リハビリテーション

    透析時運動指導等加算の算定要件の概要令和4年度
    • 人工腎臓を実施している患者に対して、当該指導を開始した日から起算して90日を限度として、75点を加算する。
    • 研修を受講した医師、理学療法士、作業療法士、看護師が血液透析中に連続20分以上実施した場合に算定できる。
    • 医師が診療録が必要で、1人当たりの患者数は1回15人程度(看護師は1回5人程度)を上限(入院患者は20人、8人)
    • 指導等に当たっては、日本腎臓リハビリテーション学会「腎臓リハビリテーションガイドライン」等を参照すること
    • 室内に心電図モニター、経皮的動脈血酸素飽和度、血圧計を有し,救命に必要な器具及びエルゴメータも望まれる
    • 当該加算を算定した日は、疾患別リハビリテーション料は別に算定できない(例:介護保険のリハビリテーション)


    😐 追加コメント
    • 当院でも2025年1月から(遅ればせながら)算定を開始しました.しかし腎リハはあくまでも加算であり,従来のリハビリテーション料とは概念が全く異なるようです.よって心臓リハビリテーションなど既に疾患別リハビリテーションが算定可能な場合は,そちらを優先したほうがいいそうです.あくまでも疾患別リハビリテーションを算定できない施設や症例を対象に算定する事を想定しているようです.

    (投稿者 川崎)

    2025-02-02

    シャント血管マッサージ

    • 透析をはじめようとした際,シャント音が弱い,聞こえないなど,シャントの流れが悪くなっていた場合には,即座にシャント部をマッサージすることで回復することがある.穿刺予定部を手でしっかり揉む,さするなどしてあげる.
    • シャント作製後 3ヵ月以上たっていれば吻合部を揉んでも差し支えないので,穿刺部とともに吻合部もマッサージする.局部静脈に細い針でヘパリン化生食やウロキナーゼを注入してから揉むのが効果的であるが,難しい場合でも,揉むだけで血流が回復することも多い.



    シャント血管マッサージを禁忌とする患者
    • シャント作成後2週間未満
    • 新シャント穿刺3回目以内
    • 狭窄部位に痛みや腫脹がある
    • シャントに瘤がある
    • 人工血管を用いたシャント
    • シャントステントのエッジ部分に狭窄がある
    • ステロイド長期投与
    • 80歳以上
    • 皮膚が薄く,内出血や表皮剝離のリスクがある
    • 心房中隔欠損,心室中隔欠損がある

    引用)透析会誌 2018;51:305-11(元:腎と透析 2013;74:84‒6)

    (投稿者 川崎)

    2025-01-14

    医療用炭酸ガス Medical carbon dioxide

    🙈 効能または効果添付文章
    • 酸素吸入時の呼吸中枢の刺激。 
    • 高山病における呼吸困難,麻酔時における覚せいと手術後の肺拡張不全の予防。
    • 一酸化炭素,モルヒネ,シアン化合物などの中毒時における呼吸中枢の興奮性低下。
    • 炭酸水の水浴による脈拍及び拡張期血圧の減少,静脈血の心臓還流の改善と拍出量の増加,皮膚の充血,呼吸量の増加。
    • ドライアイスでの狼瘡,色素斑などの皮膚疾患の腐食剤としての使用。
    • 腹腔鏡下外科手術に必要な視野及び術野の確保。
    • X線コンピュータ断層撮影に必要な腸管の拡張。

    🙉 血管内投与
    • 歴史 放射線科の領域では古くは1920年代から陰性造影剤として使用
    • 対象 腎不全患者や造影剤へのアレルギー様反応のリスクが高い症例
    • 病変 腹部動脈,シャントや末梢動脈,腹部大動脈(ステント挿入)
    • 注意 ボンベとつなげたまま炭酸ガスのカテーテル内への注入は禁止
    • 商品 海外は血管撮影用の送気装置が発売されている(日本は未採用)
    • 指針 腎透析用のシャントPTAのガイドラインに記載されているのみ


    🙊 呟き
    • 炭酸ガス造影の安全性はかなり高いことが知られています.例えば末梢動脈疾患に対する血管内治療では,連続36例計51病変では成功率100%で合併症はありません(Circ J 2011;75:179-84).平均クレアチニン濃度も,治療前2.1±1.4,治療後2.0±1.4,3ヵ月後2.1±1.6 mg/dlで変化はありませんでした.ただし医療用炭酸ガスが血管内投与の適応を取得するか,学会ガイドラインに明記されるまでは,各施設毎に倫理委員会の承認を受ける必要があると思われます.

    (投稿者 川崎)

    2025-01-09

    今週の一枚 🎯

    腎機能が悪化した症例(Cr 1.4 → 4.5 mg/dl)


    (投稿者 川崎)

    2024-10-05

    アフェレシス:リクセル®

    • 先日,整形外科の先生とアミロイドーシスの治療薬の話をしているときに,透析症例ではリクセル®でアフェレシスを行うことがあることを教えていただきました.ちなみにその適応に骨嚢胞像というものがあります(下記の赤文字).関節症などで損傷した軟骨部から関節液などが侵入し骨溶解が生じるようです.手根骨や大腿骨に多く,周囲にアミロイドの沈着を認めるそうです.

    💧 アフェレシス(aphaeresis)
    • 定義 体外循環を用い血中から特定の液性因子や細胞を除去して病態の改善を図る治療法
    • 物質 液性因子は有害代謝物質,中毒物質など,細胞はリンパ球,顆粒球,ウイルスなど
    • 歴史 1914年に初めて plasmaphaeresis という用語が登場(日本の歴史は1977年~下図)
    • 類似 血液浄化療法とほぼ同義←厳密には遠心分離装置やCARTは含まずに腹膜透析は含む



    💦 リクセル®(Lixelle®)
    • 概略 透析アミロイドーシスの原因であるβ2ミクログロブリンを除去能する吸着カラム
    • 適応 病理でアミロイド沈着 & 透析歴≧10年+手根管開放術 & 画像診断で骨嚢胞像
    • 頻度 血液透析と併用し初回使用日を起算として1年間を上限(病態に応じて延長可能)
    • 実際 通常はダイアライザ上流に直列にリクセルを設置し吸着・除去する(下図参照)


    アフェレーシス

    (投稿者 川崎)

    2024-09-20

    FSGS 巣状分節性糸球体硬化症

    • FSGSはfocal segmental glomerulosclerosisの略で病理組織学的特徴を表す用語
    • 腎の臨床上の独立した疾患概念で本邦の成人原発性ネフローゼ症候群の11.1 %
    • 急性に発症してネフローゼ症候群を呈し臨床症状だけでは微小変化型と鑑別難
    • 半年の治療で完全または不完全寛解に至らない難治性ネフローゼ症候群に多い
    • FSGSに共通の特徴には糸球体足細胞傷害があるpodocyte disease(足細胞病)
    • 二次性にはウイルスや薬剤,悪性腫瘍,構造的・機能的適応反応など(下表)



    (投稿者 川崎)

    2024-05-20

    バーター症候群 Bartter syndrome

    • 概略 低K血症,代謝性アルカローシスなどを呈す先天性尿細管機能障害を伴う症候群
    • 名前 米国の内分泌医 Frederic Crosby Bartter らの初報(Am J Med 1962;33:811-28
    • 機序 ヘンレ上行脚のNaCl輸送に携わる遺伝子の異常など(常染色体潜性[劣性]遺伝)
    • 鑑別 ギテルマン症候群(低マグネシウム血症と低カルシウム尿症を伴う:下表参照)
    • 頻度 Bartter症候群はおよそ1/100万(一方,Gitelman症候群の有病率は1/4万人程度)
    • 発症 新生児期に発症する重症型(新生児型)と乳幼児期に発見される軽症型(古典型)
    • 症状 電解質異常(脱力感や筋症状),多飲・多尿,末期腎不全,成長障害,難聴など
    • 治療 カリウム補正が大切(K補給 80~300mEq/日やスピロノラクトン 50~500mg/日)


    Bartter 症候群(BS)/ Gitelman 症候群(GS)の分類と特徴

    (投稿者 川崎)

    2024-02-14

    Adrogué-Madias Formula アドローグ・メディアスの式

    • 輸液補正によって低ナトリウム血症の改善度を予測する式
    • ΔNa =〔輸液(Na+K)-血清 Na〕÷(現在の体重×0.6+1)
    • 名称は米国の2人の内科医(N Engl J Med 2000;342:1581-9
    • ただし輸液以外は水分の出入りなしなどの仮定の上に成立

    📏 具体例
    1. 体重60 kg(total body water:TBW 36 L)の症候性低ナトリウム血症(血清Na濃度110 mEq/L)
    2. 1Lの3%生理食塩水(Na 513 mEq/L)でNa濃度変化={(513+0)-120}÷(36+1)=10.9 mEq/L
    3. よってNa濃度が2 mEq/L/hr で上がるようにしたい場合2÷10.9=0.18 L/hr=180 mL/hr で投与


    (投稿者 川崎)

    2024-02-04

    被嚢性腹膜硬化症 EPS: encapsulating peritoneal sclerosis

    • 概略 び漫性に肥厚した腹膜の広範囲な癒着で反復性にイレウス症状を呈する状態
    • 特徴 腹膜劣化(限外濾過不全と腹膜透過性の亢進)+形態的変化を包括している
    • 肉眼 腹膜の褐色調(tanned)変化と表面湿潤性の喪失(leather like appearance)
    • 腹膜 壁側腹膜(parietal peritoneum)と臓側腹膜(visceral peritoneum)に二分
    • 初報 アメリカの医師であるVasant C. Gandhiら(Arch Intern Med 1980;140:1201-3
    • 診断 臨床診断(症状+CT+排液中の中皮細胞診+腹腔鏡や開腹による肉眼所見など)
    • 原因 糖尿病などの基礎疾患,加齢,尿毒素,薬剤,腹膜炎,透析液の生体非適合性
    • 疫学 維持腹膜透析患者の 1.4~7.3%(中性透析液が標準使用となってからは1.0%)
    • 分類 前EPS期 ➜ 炎症期 ➜ 被囊/進行期 ➜ イレウス/完成(慢性)期と経時的に進行
    • 予後 25.8〜56.5%が死亡(ただし現在ではやや改善:例えば14名中2名がEPS関連死)
    • 治療 腹膜休息,腹腔洗浄,副腎皮質ステロイド投与,TPN,外科的治療(被膜剥離術)


    5年間継続的に外来で腹膜透析(PD)を受けていた26歳男性(繭化に注目)

    💁 腹膜透析に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2023-12-27

    腎アミロイドーシス

    • 頻度 腎生検レジストリーでアミロイド腎症は1.4%程度
    • 概略 約半数がネフローゼ症候群を呈しその多くはAL型
    • 分布 2臓器以上に及ぶ全身性が多い(1臓器なら限局性)
    • 分類 基底膜型,メサンギウム型,血管型,尿細管間質型 
    • 治療 デキサメタゾン(+メルファラン),自家移植療法
    • 予後 アミロイド腎症のおおむね75%が末期腎不全に至る


    アミロイド腎症の病理傷害パターン

    💁 アミロイドーシスに関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2023-12-19

    カクート CAKUT: congenital anomalies of the kidney and urinary tract

    • 概略 腎尿路の形態異常を先天的に有する症例群を包括(先天性腎尿路異常)
    • 形態 腎形成異常,尿路通過障害,膀胱尿管逆流,重複尿管など(下表参照)
    • 原因 遺伝子異常(染色体異常を含),エピジェネティクス異常,環境要因
    • 疫学 約500出生に1例(小児末期腎不全患者の原因疾患のうち39.8%で最多)
    • 合併 尿路感染症や遺尿・夜尿,進行時に高血圧,電解質異常,成長障害他
    • 治療 泌尿器科的外科介入,ACE阻害薬やARB投与,末期腎不全で透析・移植



    (投稿者 川崎)

    2023-12-16

    ボタンホール穿刺 Buttonhole Cannulation

    • 概略 皮膚表面〜シャント血管壁間に作成された固定穿刺ルート(=ボタンホールトンネル)
    • 手法 同一箇所を複数回通常穿刺して作成(下図)し,以後は先端とエッジが鈍な針を利用
    • 利点 疼痛緩和,穿刺ミス回避,シャントの寿命延長,ストレスと時間の軽減,綺麗な外観
    • 欠点 通常穿刺に比べシャント関連感染症が多い(ただし痂皮除去や消毒徹底で予防は可能)


    簡易ボタンホールの作成方法

    健全なボタンホールと感染を生じたボタンホール

    💁 透析に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)