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2025-07-22

Hemosorba® ヘモソーバCHS

  • 優れた石油ピッチ系ビーズ状活性炭を用い高い吸着性能を実現
  • 生体適合性を考慮して吸着剤を親水性ポリマーでコーティング
  • よって微粒子の発生、血液凝固、血球成分の付着や損傷が軽減
  • 製造販売は旭化成メディカル株式会社(血漿交換1日4,200点)
  • 除去可能内因性物質は肝障害によるアミノ酸やクレアチニン他
  • 外因性は催眠・抗てんかん・精神薬、解熱鎮痛薬、抗生剤など

- 標準的な血液流路図 -

(投稿者 川崎)

2025-01-31

感染対策チーム:ICTとAST

  • ICT(Infection Control Team/院内感染対策チーム)は医療現場での共通語です(過去の投稿).最近ではAST(Antimicrobial Stewardship Team/抗菌薬適正使用支援チーム)も必須になってきた感があります.
  • ざっくり言って、ICTは感染予防(拡大予防を含む)が主な役割で、ASTは感染治療が主になります.ICTを感染予防対策チーム(Infection Prevention Control Team: IPCT)とASTで構成する場合もあるようです.

AST(抗菌薬適正使用支援チーム)
  • 2018年(平成30年度)診療報酬改定で要件を満たす医療機関ではAST加算を算定可能
  • (これが新設された背景には2016年に策定されたAMR対策アクションプランの存在)
  • コアメンバーは感染症専門医+薬剤師(+医師や看護師,臨床検査技師はICTと同じ)
  • 介入すべき患者の抽出や感染症診療支援+患者と施設全体の抗微生物薬の適正使用
  • 血培陽性,培養結果,発熱,抗微生物薬長期投与,相談事例などに対しASTラウンド


- ICTとASTの違い -

(投稿者 川崎)

2025-01-17

薬剤性好中球減少症 Drug-induced neutropenia

  • 末梢血の好中球数が500/μl以下と定義することが多く,無顆粒球症や顆粒球減少症,agranulocytosisなども概ね類似した意味で用いられる.
  • 発生頻度に関して1.1~5.0例/100万人/年という報告がある.早期に認められる症状として発熱は必発で,その他に悪寒や咽頭痛などが挙げられる. 
  • 機序には免疫学的(アレルギー性:抗甲状腺薬のプロピルチオウラシル他)と骨髄造血細胞に対する毒性(中毒性:クロルプロマジン塩酸塩やβラクタム系抗菌薬など)がある.
  • アレルギー性なら過去にその医薬品に感作されていれば1時間~1日以内に発現し,感作されていなければ抗体が産生されるまでに1週間~10日を要する.中毒性なら発症までに数週間を要する.
  • 患者側のリスク因子:高齢,女性,腎機能低下,自己免疫疾患の合併などの場合に発症頻度が高い.明確ではないが遺伝的素因(HLA型、薬物代謝酵素の遺伝子多型)なども考えられている.
  • 発現投与量は医薬品により異なる.例えば抗甲状腺薬では用量非依存性で,サルファ剤(サラゾスルファピリジン)では用量依存性との報告がある.一方,同じ医薬品でも報告により用量依存性、非依存性の相反する報告もみられる.
  • 添付文書で血液検査が求められている薬剤には,チクロピジン塩酸塩やチアマゾール(開始2月は2週に1回),サラゾスルファピリジン(開始3月は2週間に1回,次の3月は4週間に1回,その後は3月ごと),クロザピン(投与初期に発現する例が多いので投与開始後18週間は入院管理下)がある.
  • 無顆粒球症の原因となり得る医薬品は多数にのぼるが,抗甲状腺薬,チクロピジン塩酸塩,サラゾスルファピリジン,クロザピン(治療抵抗性統合失調症治療薬)など頻度が高い医薬品以外にも,H2ブロッカー,NSAIDs,抗不整脈薬,ACE阻害薬などが重要である.


💣 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-01-01

ライム病のブルズアイ(牛の眼)

  • ライム病(Lyme Disease)の初期症状として皮膚に出現する古典的な遊走性紅斑の一形態
  • Ring-within-a-ring patternやtarget patternとも呼ばれる(頻度は低い,35例中2例=6%)
  • ライム病の起因菌はスピロヘータの一種 Borrelia でマダニ類が媒介する人獣共通感染症
  • 臨床症状と血清学的診断基準から総合的に診断(培養は困難で患者からの2次感染はない)
  • 遊走性紅斑例にはドキシサイクリン,神経症状例にはセフトリアキソンが第一選択である
  • 名前の由来は米国コネチカット州ライム地方で初めて確認(Arthritis Rheum 1977;20:7-17

古典的なbull's eye所見(下図のCとD)

(投稿者 川崎)

2024-12-15

日本内科学会 第246回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題101 肝硬変に生じたパスツレラ症の1例
  • パスツレラ症は代表的な人獣共通感染症であり,Pasteurella multocidaはヒトを除く哺乳類の口腔内常在菌で,イヌでは75%,ネコではほぼ100%に常在するとされる.免疫能の低下した症例で重症化しやすい.

演題179 Burkholderia属菌によるCepacia症候群の1例
  • Burkholderia属菌は特に嚢胞線維症に致死的な呼吸器感染症を起こす菌として報告され,Cepacia症候群と呼ばれる急性に進行する菌血症を伴う壊死性肺炎は致死率が非常に高く臨床的に問題となる.

演題218 溺水により運動後急性腎不全(ALPE)を発症した 1 例
  • 溺水後の急性腎障害は溺水患者の43%に発生した報告もあり,原因は低酸素による尿細管障害,横紋筋融解症,多臓器不全による全身性炎症反応等が考えられる.

演題234 COVID-19肺炎の経過中にセフトリアキソン脳症が疑われた腹膜透析患者の1例
  • 抗菌薬投与中に意識障害,不随意運動を認めた際には,抗菌薬関連脳症を疑い抗菌薬の中止または変更が必要である.原因薬剤の診断のためには,血中濃度を測定しておくことが望ましい.


👻 当院からの発表
  • 演題35 左鎖骨下静脈経由の二腔ペースメーカ植込み後に両側気胸を生じた1例(総合診療科 國延拓也先生 🎉 すでに論文化してPubMedに収載
  • 演題210 腰椎神経根症による脱神経性筋障害を高CPK血症とともに呈し,炎症性筋疾患との鑑別を要した1例(膠原病・リウマチ内科 正木 暁先生)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-11-15

SIBO シーボ

  • SIBO=Small Intestinal Bacterial Overgrowth=小腸内細菌増殖症
  • 小腸内である種の常在細菌が過剰に増殖した結果生じる一連の病態
  • 症状は腹部膨満,ガス,膨満,下痢,脂肪便など(有病率は不明)
  • 素因はPPIやオピオイドの投与,胃バイパス術後,結腸切除術後など
  • 診断は小腸吸引物の培養(呼気検査も可能だが標準化と検証が必要)
  • 治療は食事療法(低FODMAP食)や抗生物質(リファキシミン他)


変化した腸内微生物叢と人体のさまざまな領域との間の双方向の関係

(投稿者 川崎)

2023-03-19

虚血性腸炎アラカルト

😐 先日のカンファレンス
  • 腹痛が全くない虚血性腸炎の症例を提示しました.鮮血便で来院されたのですが,腹部の圧痛や反跳痛もありませんでした.本症例でディスカッションになった項目を調査しました.

虚血性腸炎の臨床症状(対象は401例)
  1. 腹痛:87%
  2. 鮮血便:84%
  3. 下痢:56%
  4. 嘔吐:30%
  5. めまい:10%
  6. 失神:6%


虚血性腸炎と抗菌薬(対象は186例)
  • 後ろ向き解析では抗生物質を投与群と非投与群で、30日以内の死亡、手術、および再入院の発生率に統計的有意差なし


😀 まとめ
  • 調査で本例の様に腹部症状を欠く虚血性腸炎の症例が少なからずあることが分かりました.また予想通り抗菌薬の投与は必須でないことも確認できました.

💁 虚血性腸炎とスタチンに関する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 五十川/川崎)

2023-01-14

ミノサイクリンによる色素沈着

👤 Minocycline-induced hyperpigmentation
  • 頻度:有病率は2.4〜41%で,治療期間や累積投与量と相関(顔面を除く)
  • 病理:基底ケラチノサイトでのメラニンの増加および真皮メラノファージ
  • 鑑別:アジソン病,甲状腺機能亢進,ヘモクロマトーシス,悪性腫瘍など
  • 治療:ミノサイクリン中止,日光への露出回避,色素特異的レーザーなど


繰り返す創部感染症でミノサイクリン200 mg/日を6年服用していた症例

👹 追加情報
  •  薬剤性色素沈着にはミノサイクリン以外にも,アミオダロンやブレオマイシン,プロスタグランジン,経口避妊薬,フェノチアジン,抗マラリア薬などが知られています.
  • 特にアミオダロンによる色素沈着は”Blue man”として知られています(下図).ちなみに”Red man”といえばバンコマイシンによる過敏反応のレッドマン症候群です.

(投稿者 川崎)

2022-11-22

AMR:非医療従事者にも浸透してきた?

大阪の地下鉄Osaka Metroでも掲示されているポスター
(2022年11月はAMR対策推進月間です)

  • AMR (Antimicrobial resistance)=薬剤耐性
  • 抗菌薬の不適切使用を背景とした薬剤耐性菌が世界的に増加
  • 2015年の世界保健総会ではAMRに関する国家行動計画を要求

💁 耐性菌に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-03-12

リファンピシンとオレンジ

抗結核薬リファンピシン添付文章の副作用欄より
  • 注4)尿、便、唾液、痰、汗、涙液がリファンピシン及びその代謝物により橙赤色等に着色する。なお、血清も同様の着色を示す。また、ソフトコンタクトレンズが変色することもある。

機序として薬剤の色が代謝されることなく排泄されているためと考えられる
(リファンピシンの粉末:Wiki

🉐 オレンジ関連の投稿
(投稿者 川崎)

2021-06-06

抗微生物薬など

抗微生物薬 (antimicrobial agents, antimicrobials)
  • 微生物(一般に細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に大別される)に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。ヒトで用いられる抗微生物薬は抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬を含む

抗菌薬 (antibacterial agents) 
  • 抗微生物薬の中で細菌に対して作用する薬剤の総称として用いられる。

抗生物質 (antibiotics)
  • 微生物、その他の生活細胞の機能阻止又は抑制する作用(抗菌作用と言われる)を持つ物質であり、厳密には微生物が産出する化学物質を指す。

抗生剤
  • 抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤を指す通称。


(投稿者 川崎)

2020-12-09

Clostridium difficile感染症の覚書

  • Clostridium difficile(CD)保菌症例では必ずしも接触予防策を要さない
  • CD陰性化を確認するためトキシンを再検査することは不要と考えられる
  • CDトキシンの陰性化 ≠ 治療終了(症状軽快後もトキシン持続陽性例あり)
  • 治療効果は臨床症状(下痢や発熱,腹痛など)と血液データなどから判断
  • 当院はトキシンB重視(グルタミン酸脱水素酵素は未導入/PCR導入予定)


🉐 関連投稿(CD編)

(投稿者 川崎)

2020-11-06

グラム染色クイズ

胆管炎が疑われる症例の血培のグラム染色(強拡大=1000倍)


(投稿者 川崎)

2019-12-10

細菌性髄膜炎の empiric therapy

ERでは細菌性髄膜炎の起因菌が未確定のことが多い。
年齢層によって起因菌が異なり、同じ菌であって年齢層によって薬剤感受性が異なる。

また、すべての場合においてデキサメタゾンの投与が推奨されている。(抗菌薬投与の10分前を目安に)
DXS 0.15㎎/kg/日 q6h
→サイトカインの産生を抑えて、その後の炎症の伸展を阻止する。実際に、ステロイドの併用で発熱期間、難聴の発生が有意に減少したとの報告がある。

【新生児】
GBS(B群連鎖球菌)、大腸菌が多い。リステリアも一部あり。
ABPC 150~200㎎/kg/日 q8h + CTX 100~200㎎/kg/日 q8h
*セフトリアキソンは高ビリルビン血症の新生児に対しての死亡例がある。

【生後1ヶ月~15歳】
肺炎球菌、インフルエンザ桿菌の割合が増加。以前はGBS、大腸菌も多かった。(リステリアも)
→よってこの五種類のカバーが必要。
MEPM 120mg/kg/日 q8h(or PAPM/BP 100~160㎎/kg/日 q8h)
+ CTX 200~300㎎/kg/日 q8h(or CTRX 80~120㎎/kg/日 q24h)

【16歳~49歳】
肺炎球菌が70%、インフルエンザ桿菌が10%(この年代の場合ペニシリンが効きにくい)
MEPM 6g/日 q8h(or PAPM/BP 4g/日 q8h)
*ただし、この量のMEPMはレセプトで切られるため2g/日 q8hとする。

【≧50歳】
肺炎球菌が最多であるが、MRSA含むブドウ球菌が目立ってくる。
起因菌も多彩なことが多く、広域+VCMが基本。
①MEPM 2g/日 q8h + VCM 30~60㎎/kg/日 q8h
②CTRX 4g/日 q24h(or q12h) + ABPC 12.0~18.0g/日 q8h + VCM 30~60㎎/kg/日 q8h

(投稿者 宮本)

2019-06-28

GAS咽頭炎と抗菌薬

GAS=Group A Streptococcus=A群(β溶血性)連鎖球菌(溶連菌といえばGASを意味することが多い)

国立感染症研究所感染症情報センター (原文そのまま/2019.6閲覧)
  • 治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬であるが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使用可能である。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要である。除菌が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤も使用される。

亀田感染症ガイドラン 咽頭炎version 2 (原文そのまま/2019.6閲覧)
  • 治療の目的は、症状の緩和(1-2日間罹病期が短縮)、扁桃周囲膿瘍のような扁桃周囲膿瘍のような化膿性合併症の予防(NNT 27)、周囲への飛沫感染予防(投与後24時間で感染性が減少)、リウマチ熱の予防(NNT 3000~4000)である1)
参考文献 1) Ann Intern Med 2001;134(6):509-17

※NNT=number needed to treat ➜ あるエンドポイントに到達する症例を1人減らすために必要な治療患者数

🉐 関連投稿

(投稿者 川崎)

2019-03-06

グラム染色クイズ

  • 突然の腹痛+腹水で来院した症例の腹水と血培のグラム染色(強拡大 X1000倍)




(投稿者 川崎)

2019-02-02

グラム染色クイズ

  • 尿管カテーテルを留置している症例に生じた膿尿のグラム染色(強拡大,1000倍)




(投稿者 川崎)

2018-12-01

DU薬

ココでは十二指腸潰瘍(duodenal ulcer)の薬(PPIやP-CABなど)ではありません

  • 😙 例文「経口第三セフェムなんてDUだよ!」

DU=DAITAI UNKO=だいたいウンコ=bioavailabilityが悪い(ほとんど吸収されない)

(投稿者 川崎)

2018-11-25

症例クイズ

  • 退院後に肺炎の再発を繰り返す症例 👴 疑われる病態と必要な検査は?




(投稿者 川崎)

2018-11-24

プラスミド Plasmid

  • 細胞内で複製されて娘細胞に分配されるDNAのうち染色体を除く総称
  • 環状の2本鎖構造として核外に存在し染色体とは独立して複製される
  • 米国の遺伝学者レーダーバーグが提唱(Physiol Rev 1952;32:403-30


プラスミドは根本的な種の保存(染色体DNA)には関連しないが,環境に適応するため独自に働き種の多様性に貢献している.プラスミドは薬剤耐性や酵素などの様々な遺伝子も含むため通常の日常臨床と無縁ではない.

😈 もっと詳しく知りたい方 ➜ 遺伝子工学の技術 核酸の化学

(投稿者 川崎)