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2024-08-31

2ヒット仮説 Two-hit hypothesis

  • ほとんどの腫瘍抑制遺伝子は表現型の変化を引き起こすため,がん発生には突然変異などで両方の対立遺伝子が不活性化される必要があるという仮説.
  • 米国のがん専門医 Alfred George Knudson, Jr.(1922–2016)が1971年に提唱()したため,Knudson hypothesis(クヌードソン仮説)とも呼ばれる.
  • 最近ではがん以外にも多くの疾患で2ヒット仮説の関与が疑われています(例えば拡張型心筋症や周産期心筋症など:Circulation 2021;143:1852-62


(投稿者 川崎)

2024-08-30

野兎やと病 Tularemia

  • 概略 野兎病菌(Francisella tularensis)による急性熱性疾患(動物由来)
  • 循環 マダニ類などの吸血性節足動物を介して主にノウサギや齧歯類など
  • 人間 保菌動物の剥皮作業や肉の調理の際に菌を含む血液や臓器に接触
  • 分布 北米,北アジア,ヨーロッパなど北緯30度以北の北半球に広く発生
  • 日本 1994年までの間に合計1,372例の報告(2000年以降の報告はなし)
  • 潜伏 感染後3日目がピークで1週間以内(稀に2週間~1カ月のこともあり)
  • 症状 突然の発熱(38~40℃),悪寒戦慄,頭痛,筋肉関節痛など感冒症状
  • 局所 侵入部位に関連した所属リンパ節の腫脹,膿瘍化,潰瘍,疼痛など
  • 診断 病原体の分離・同定,DNAや菌体抗原の検出,血清中の特異抗体検出
  • 治療 硫酸SM 1g/日(or GM)筋注+TC 1g/日・分4(or MINO )経口2週間
  • 届出 全数報告対象(4類感染症)で診断した医師は直ちに最寄りの保健所



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(投稿者 川崎)

2024-08-29

今週の一枚 🎯

利尿薬抵抗性の下腿浮腫を訴える症例

✋ 末梢表在静脈の怒張
  • 机上で手背静脈が怒張 ➜ 中心静脈圧上昇?
  • ただし第二関節(PIP関節)に皺 ➜ 脱水?
  • 挙上(心臓より上)で手背静脈の怒張消失
  • いわゆる座位アンサム徴候は陰性と判断
  • 本例の最終的な診断は肺高血圧(CTEPH
😀 コメント
  • 末梢表在静脈は静脈弁や筋肉の影響などで,頚静脈ほど中心静脈圧を正確に反映しないと思われています(多分).
  • しかし末梢静脈圧と中心静脈圧を侵襲的に同時測定した研究では両者の差はわずか<1 mmHgでした(過去の投稿
  • 本例では利尿薬である程度コントロールされた肺高血圧の病態を,末梢静脈が比較的忠実に反映していたと思われます.

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(投稿者 川崎)

2024-08-28

患者さん「数えで卒寿になりました」

  • 数え年 ➜ 生まれた時点で1歳で正月が来る毎に年が増加
  • 満年齢 ➜ 生まれた時点は0歳で誕生日が来るたびに増加

  • かっては東アジア諸国では数え年が用いられていたが,現在は国際的な満年齢が多い.日本でも1950年に法律によって満年齢を用いることが決められた.よって長寿の祝いは現在では満年齢を用いる.韓国は数え年を採用する数少ない地域であったが,2022年12月ついに満年齢で統一する法案が可決された.
Mshron: CC BY-SA 4.0)

👚 祝い年とちゃんちゃんこの色
  • 還暦(60歳)➜ 赤色
  • 古希(70歳)➜ 紫色
  • 喜寿(77歳)➜ 紫色
  • 傘寿(80歳)➜ 黄色
  • 米寿(88歳)➜ 黄色
  • 卒寿(90歳)➜ 紫色
  • 白寿(99歳)➜ 白色
  • 百寿(100歳)➜ 桃色

(投稿者 川崎)

2024-08-27

アレキシサイミア Alexithymia

  • 失感情症:自分の情動の状態を知ること (気づき) の障害
  • ハーバード大学医学部教授である Sifneos PE らが提唱 ()
  • ギリシャ語の a (非),lexis (言葉),thymos (感情)の組合せ
  • 感情に言葉がない (no words for feeling) という意味の造語
  • 自分の気持ちや思いに注意を向けたり,話そうとはしない
  • 自分の生活状況や仕事環境は客観的に回りくどく説明口調
  • 「その時どんな気持ちでしたか?」の質問で会話が途絶える
  • 情動的な刺激で活動する“扁桃体”の反応低下が知られている
  • 類似語にアレキソミア (失体感症:内受容感覚の障害) あり
  • アレキソミアはアレキシサイミアにも繋がり心身症の一因


- 感情の構成論的な理解とアレキシサイミア・アレキソミア -

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(投稿者 川崎)

2024-08-26

ついにデータが...

  • 心臓アミロイドーシスでは左室肥大を呈するにも関わらずⅣ音(S4)があまり認められません.おそらく心房筋にもアミロイドが沈着して心房の機能が低下しているためと考えられます.ただしいずれもエキスパートオピニオン 😐
  • 今回,高知大学の山崎先生らのグループがこの問題に対する自験例での解析結果を報告されました(ESC Heart Fail 2024 Aug 1. Online ahead of print).とても素晴らしい臨床研究なので本コンテンツにもアップしておきます😁

  • 対象 心音図を施行したATTRwt-CM患者76名(平均80歳)を後向きに評価
  • 方法 S4あり洞調律(SR),S4なしのSR,非SRの3群の臨床背景と予後を検討
  • 結果 SR患者でS4あり例はS4なし例よりBNPが低値で左房の収縮機能が保持
  • 予後 S4なしSR例は他2群と比較し短期予後不良(一般化ウィルコクソン検定)
  • 結論 S4の欠如(SR患者の53%)はATTRwt-CM患者の短期予後不良の前兆



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(投稿者 川崎)

2024-08-25

結節性紅斑(Erythema nodosum: EN)

結節性紅斑は皮下の脂肪織炎で脛部に圧痛性の結節を生じることが多い.その原因は多岐にわたり様々な覚え方が提唱されている(どこで見たかは忘れたので引用できず 😓 スイマセン)

Erythema nodosum(病名そのまま)
  1. NO cause found in 60% of cases
  2. Drugs (antibiotics e.g., sulfonamides, amoxicillin)
  3. Oral contraceptives(避妊薬)
  4. Sarcoidosis or Löfgren's syndrome
  5. Ulcerative Colitis, Crohns, Bechet's
  6. Mycobacterium(結核) or Maternity(妊娠〜出産)

Bedrest (床上安静は治療のひとつ)
  1. Behçet
  2. Estrogen(妊娠)
  3. Drug
  4. Recent infection
  5. Enteropathies(炎症性腸疾患)
  6. Sarcoidosis
  7. Tuberculosis/tumor

Sore shins causes(スネが痛い原因)
  1. Streptococcal infections
  2. OCP(瘢痕性類天疱瘡)
  3. Rickettsia
  4. Eponymous (Behçet)
  5. Sulfonamides
  6. Hansen's disease (Leprosy)
  7. IBD, idiopathic
  8. NHL
  9. Sarcoidosis 
  10. Cutaneous Tuberculosis

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(投稿者 川崎)

2024-08-24

AIDPエーアイディーピーとアマン

👥 先日のカンファレンスから
  • 指導医A 「AIDPとアマンがあり,フィッシャーを入れることもある」
  • 指導医B 「AIDP? アマン?」(研修医が理解していたか否かは不明)

📪 概略
  • ギラン・バレー症候群(GBS)の二大病型で電気生理所見から分類可能(GBSの診断自体には不必要).もっともAIDPとAMANの臨床的な差は僅かであるため臨床像からの鑑別は難しい.両者の治療法も区別されていないため,その病型分類に臨床上の大きな意義はないと考えられている.

📫 AIDP
  • 脱髄型でacute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathyの略.運動神経神経軸索と先行感染因子(キャンピロバクター)に発現するガングリオシド GM1,GD1aとの分子相同性による発症.初期病変はランビエ絞輪部Naチャネルの分散と傍絞輪部ミエリンの離開による微細変化(nodopathyという呼称が提唱)で,神経伝導の安全因子が低下して非脱髄性伝導ブロックが生じる.

📬 AMAN
  • 軸索型でacute motor axonal neuropathyの略.多くは抗GM1抗体などの抗ガングリオシド抗体等の自己抗体が検出される.ランビエ絞輪部の軸索膜表面に補体沈着が起こることが知られ,軸索膜上のガングリオシドを標的とした免疫反応が一次病変であると考えられている.

📭 おまけ
  • Fisher症候群(外眼筋麻痺,運動失調,腱反射消失を三徴とする特異な症状)はヒト神経系におけるGQ1bの発現によって規定され,GBSの亜型とすることもある.現在ではビッカースタッフ脳幹脳炎は中枢病変を伴うフィッシャー症候群としてとらえられている.



(投稿者 川崎)

2024-08-23

酷暑もあと少し?

虚血性心疾患でフォロー中の症例(座位)

😊 解説
  • 外頚静脈を明瞭に視認(矢印) ➜ 静脈圧上昇?
  • ネックックーラーを外すと外頚静脈は視認不能
  • 深吸気負荷で内頚・外頚静脈ともに視認できず
  • フィジカル所見から心不全状態ではないと判定
  • 自覚症状はなく予定採血のBNP値も正常範囲内
  • 最終的に首掛けクーラーによる偽陽性と考えた
👔 ネッククーラー
  • このneck coolerがいつ頃から使われているのか知りませんが(首かけ扇風機よりは後発?),今年は特に見かけるようになりました.保冷剤による冷却効果だけではなくて,冷却プレートへの通電で直接冷やすタイプもあるようです.
  • 本症例には心不全の既往はなかったのですが,今までなかった外頚静脈が目立ち「あれっ?」と思いました.しかしネッククーラをしたままで吸気負荷を追加したら外頚静脈は見えなくなりました(上記動画には含まれていません).
  • 長い歴史をかけて磨き上げられた身体所見ですが,時代とともにアップデートしていく必要があります.コロナ禍以降は診察室でもマスク装着がスタンダードになったため,それを加味した判定などです(一例:マスクでマスク

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(投稿者 川崎)

2024-08-22

今週の一枚 🎯

嘔吐の翌日に酸素飽和度が低下した高齢者

🔍 解説
  • 右下肺野に透過性の低下あり(肺炎の疑い)
  • 心陰影と重なるガス像(内部に隔壁あり!
  • 数年前の所見では胃泡(食道裂孔ヘルニア)
  • 今回は大腸滑脱の疑い(後にCTで結腸確認)
  • 最終診断はイレウスに合併した誤嚥性肺炎
🐤 独り言
  • 本例に発熱(37.5度以上)はなかった.しかし誤嚥と酸素飽和度の低下,胸部X線で下肺野に浸潤影などから誤嚥性肺炎の診断は難しくない.
  • 本例の嘔吐の原因は糞便イレウスと考えられた.明らかな腹部症状はなかったが,胸部X線の注意深い読影からイレウスも予想可能と思われる.
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(投稿者 川崎)

2024-08-21

HCMの遺伝子検査:保険収載

  • HCM患者の約60%が常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式に従う家族歴
  • そのうち40~60%でサルコメア構成蛋白をコードする遺伝子に変異あり
  • HCMに対する遺伝学的検査が2022年に保険収載(下記の実際を参照)
  • ただし同一変異を有す患者間でも臨床病型や経過は異なることが多い
  • 原因変異から臨床経過を正確に予測することは現時点では困難である

💰 保険収載されている肥大型心筋症の遺伝検査の実際詳細
  • 実施施設 国立循環器病研究センター
  • 保険点数 5,000点
  • 検体採取 血液 5 mL(EDTA採血管)

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(投稿者 川崎)

2024-08-20

瞬電しゅんでん

☆ 先日の朝の会議で...
  • 昨日の雷雨による瞬電でCTに不具合が生じました.幸い再起動で問題はありませんでしたが,今後は各部署で瞬電に対する対策が必要です.瞬電が疑われた時の確認項目を各自検討してください.

📗 瞬電ウィキペディア
  • 瞬断とは、電源や、通信などの信号が、一瞬途切れる現象。瞬電、瞬停とも呼ばれる。通信業界で通信回線の接続が短い時間切れてしまう現象を指すほか、動画・音声についても、一瞬途切れることを瞬断と指すことがある。 

 📘 瞬低電学誌 2008;128:598-601) 
  • 日本工業規格 JIS C 61000-4-11では,瞬時電圧低下(瞬低)の概念を「電圧ディップ」という用語で定義しており,電力系統のある地点における半周期から数秒の期間,継続する突然の電圧低下としている。
  • また同規格ではこの直後に,「短時間停電」についても定義しており,概して1分を超えない供給電圧の消失としている。 後者の短時間停電は,瞬時停電,略して「瞬停」と呼ばれる場合があり,瞬低と誤解されやすい。
  • 短時間停電は負荷側の電圧がゼロになる現象(図1)であり,瞬低とは発生のメカニズムが異なり,対応策も変わってくる。瞬低問題の多くは,① 雷の発生 → ② 送電線へ落雷 → ③ 送電線に地絡等の異常発生 → 瞬低が発生 → 需要家機器へ の影響発生という順に起こる。

😑 独り言
  • 瞬電は耳あたりがいい言葉かもしれませんが,よく考えると変な日本語です.瞬間的に電気が流れる意味になりそうです(認知症と同じ=認知しまくる病気).
  • 正確な用語が大切なビジネス(特に医学)では瞬低がいいようにも思いますが,耳で聞いても何のことかイメージできないかも...瞬停と耳で区別できないし 😓

(投稿者 川崎)

2024-08-19

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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(投稿者 川崎)

2024-08-18

乾癬 かんせん vs 湿疹  psoriasis vs eczema

  • 非専門家にとって乾癬と湿疹の鑑別は容易ではありませんが,ざっくりとした違いを下の表まとめてみました.
  • もっともAI 研究(Sensors (Basel) 2023;23:7295)では,皮膚画像から96%の精度で鑑別できるようですが...😯


Psoriasis 乾癬 Eczema 湿疹
疫学 大人>子供 子供
部位 肘や膝,臀部〜腰,頭皮 膝や肘の内側など皮膚の折り目
掻痒 軽い 激しい
外観 赤いうろこ状の隆起 乾燥,発赤,ひび割れ
境界 明瞭 不明瞭
代表 尋常性乾癬 アトピー性皮膚炎
参考)American Academy of Dermatology Association,他




(投稿者 川崎)

2024-08-17

Rose gardener's disease バラ園芸家病

  • 真菌の一つであるスポロトリックス菌(Sprothrix schenckii)による皮膚感染症
  • 同菌は土壌や植物に生息するためバラのトゲによる刺し傷から感染すること有
  • その他として感染した猫による引っかき傷によって感染する(人畜共通感染症
  • 通常は皮膚や皮下組織に潰瘍性の病変を生じる(稀に骨や関節,肺,脳の病変)
  • 治療は抗真菌薬(経口,必要に応じ静脈内投与)の長期投与(数ヵ月〜1年間〜)


(投稿者 川崎)

2024-08-16

NDLVC

  • non–dilated left ventricular cardiomyopathyの略(邦名は非拡張型左室心筋症?)
  • 左室の収縮不全や心筋の線維化・脂肪変性を認めるが左室拡大を伴わない病態
  • 2023年のESC心筋症ガイドラインで提唱された(Eur Heart J 2023;44:3503-626
  • 従来の拡張型心筋症DCM,不整脈原性右室心筋症ARVC,拘束型心筋症RCMの一部
  • その診断には心臓MRI検査の活用および遺伝学的検査の臨床応用が重要(下図)


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(投稿者 川崎)

2024-08-15

今週の一枚 🎯

労作時の息切れを訴える女性(座位)

😐 解説
  • 頸部の左側が周期的に拍動している(矢印)
  • 触診で静脈性の拍動を確認(心不全と診断)
  • 深吸気で右側にも明瞭な拍動が出現(矢頭)
  • 本例は最終的に心不全(PEF)と診断された

💙 なぜ左?
  • 左側優位の内頚静脈拍動は稀です.今までに内臓逆位(ココ)やペースメーカ(ココ)に関連した症例を経験したことがあります.
  • 本例には乳がんの手術歴がありました(ただし術式は未確認).また胸部CTでは右腋窩〜頚部のリンパ節郭清が示唆されました.
  • 本例ではこれらの影響で安静時に左側の内頚静脈の拍動が目立ったのかもしれません(もっとも吸気後は右側が目立ちましたが...😯)

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(投稿者 川崎)

2024-08-14

アミエルの幸福論

😐 病院の接遇向上プロジェクトで講師の先生が頻回に言及していました

  • スイスの哲学者 Henri Frédéric Amiel(1821-1881)が提唱
  • 彼の死後に発見された日記(約17,000ページ)に基づいている
  • 名言の一つが「他人を幸福にすることが一番確かな幸福である


(投稿者 川崎)

2024-08-13

Sexual and gender minority (SGM) 性的マイノリティ

最近,SGM という表現をよく目にするようになりました.先日の NEJM の巻頭 Perspective も使用(N Engl J Med 2024;391:385-91).混同されがちな sex と gender はご存じのように明確な違いがあります.日本語では包括して性的と訳されていることが多いような気もしますが...

  • セックス:生まれついての生物学的性別
  • ジェンダー:社会的・文化的に形成された性別


🔎 WHO(世界保健機関)の Gender and health (一部を DeepL 翻訳)

  • ジェンダーとは、社会的に構築された女性、男性、少女、少年の特徴を指す。これには、女性であること、男性であること、女の子であること、男の子であることに関連する規範、行動、役割、そして互いの関係が含まれる。社会的構築物として、ジェンダーは社会によって異なり、時とともに変化しうる。
  • ジェンダーは、染色体、ホルモン、生殖器官など、女性、男性、インターセックス者の異なる生物学的・生理学的特徴を指すセックスと相互作用するが、それとは異なる。ジェンダーとセックスは、ジェンダー・アイデンティティとは関係するが異なる。ジェンダー・アイデンティティとは、その人が深く感じている、内面的で個人的なジェンダーの経験のことであり、その人の生理的特徴や出生時に指定された性別と一致する場合もあれば、一致しない場合もある。

(投稿者 川崎)

2024-08-12

👴 歴史クイズ

(Public Domain)



(投稿者 川崎)

2024-08-11

低ホスファターゼ症 Hypophosphatasia (HPP)

  • 概要 血清アルカリホスファターゼ(ALP)値の低下を特徴とする骨系統疾患
  • 原因 組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)の欠損または活性低下
  • 症状 くる病様変化,骨変形,四肢短縮,高Ca血症、乳歯の早期喪失(下図)他
  • 診断 主症状1つ以上と血清ALP値低値があれば遺伝子検査で病原性変異を確認
  • 疫学 本邦では100人未満?(ただし成人型など軽症型での未診断例が多い?)
  • 治療 重症例に対してアルカリホスファターゼ酵素補充薬やビタミンB6の投与
  • 予後 成人型などの軽症型は良好,酵素補充療法なければ重症型は不良(下表)



5歳4か月保隙装置および口腔内写真

(投稿者 川崎)

2024-08-10

結核検査の進歩

Xpert MTB/RIF(検体は喀痰)
  • 本邦では2016年11月に販売開始された(カートリッジ型)
  • 核酸抽出からリアルタイムPCR反応,検出まで全自動で完結
  • 約120分で結果判明(2~16検体を個別測定可能な機器あり)
  • 感度86.8%,特異度96.8%で培養法との比較して有意差なし
  • 最近では80分以下に短縮したXpert MTB/RIF ultra が実用化

LAM検出(検体は尿)
  • 結核菌の細胞壁のリポアラビノマンナンを検出するキット
  • 感度が不十分であったが近年富士フイルムが改善版を開発
  • このSILVAMP TB LAM(FujiFilm)は感度53.2%,特異度98.2%
  • 検査にインフラは不要で測定に要する時間は50–60分程度
  • LAMは世界保健機関(WHO)では承認されているが日本は?

2024-08-09

Alfieri Stitch アルフィエリ縫合

  • 僧帽弁逆流 MR に対して行われる手術で前尖と後尖の中央付近を縫合
  • イタリアの心臓外科医 Ottavio Alfieri が90年代に開発した方法(初報
  • シンプルな手法であり僧帽弁口が2つになり僧帽弁逆流は確実に軽減
  • しかし僧帽弁狭窄発生や治療成績不良などからあまり普及しなかった
  • 最近は経皮的僧帽弁クリップ術 MitraClip® の元祖として最注目??

大動脈弁置換術後の僧帽弁収縮期前方運動にAlfieri Stitchを施行した1例

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(投稿者 川崎)

2024-08-08

今週の一枚 🎯

咳嗽後の胸痛と呼吸困難

👀 解説
  • 頚部〜前側胸部に気腫の疑い
  • 身体所見でも握雪感捻髪音
  • CTでは縦隔気腫も生じていた
  • 胸痛はあったがST-T変化なし
  • ただし胸部誘導の波高は減弱
🔍 縦隔気腫
  • 縦隔に遊離ガスが存在する病態で,胸部エックス線撮影やCT検査で診断できる.特に大動脈弓の外縁で明瞭なことがある(spinnaker sail sign, angel wings sign).
  • 原因は激しい咳嗽による肺胞の破裂や自然気胸,胸部外傷,ガス産生菌感染症,医原性(内視鏡や気管支鏡による損傷あるいは人工呼吸管理)などが考えられる.
  • 本例は間質性肺炎とステロイド投与による組織脆弱性に関連すると思われた.なおハンマン徴候(Hamman's sign:心収縮期に同期した捻髪音)は聴診できず.

参考)日本救急医学会,他
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(投稿者 川崎)

2024-08-07

非定型大腿骨骨折 Atypical femoral fracture: AFF

  • 骨代謝抑制を誘因として大腿骨骨幹部に発症する非外傷性骨折
  • 通常の大腿骨折とは異なる特徴を有している(診断基準は下記)
  • 骨粗鬆へのビスホスホネート(BP)やデノスマブ長期投与と関連
  • 治療は手術+BP製剤を中止+PTH製剤の開始が早期癒合に繋がる

大特徴(5項目中4項目を満たす)
  1. 外力なしあるいは軽微な外力(立位以下からの転倒) 
  2. 小転子遠位部から顆上部までの横骨折あるいは単斜骨折
  3. 完全骨折は内外側の皮質骨を貫通し内側にスパイクを伴っていることがある(不完全骨折は外側皮質骨のみに骨折線がみられる)
  4. 非粉砕骨折もしくはわずかな粉砕骨折
  5. 骨折部の外側骨皮質の骨膜反応もしくは骨膜下の肥厚

小特徴(診断に必須ではない)
  1. 骨幹部皮質骨の全体的な肥厚
  2. 片側もしくは両側性の前駆症状(鼠径部あるいは大腿部の鈍痛,うずく痛みなど)
  3. 両側性の不完全もしくは完全骨折
  4. 骨折治癒の遷延


ビスホスホネート製剤を8年間内服していた62歳の女性
(振り返り時の右大腿部激痛で非定型大腿骨骨折を発症)

(投稿者 川崎)

2024-08-06

ポンセ病 Poncet's Disease

  • 結核による非化膿性反応性関節炎(感作されたCD4+ 細胞が関節に移動し関節炎?)
  • フランスの外科医 Poncet A に由来 (Congres francaise de chirurgie 1887;1:732-9
  • 関節症状の持続期間は3日〜6年と様々ですべて非びらん性および非変形性の関節炎
  • 多発性関節炎で(結核性関節炎は単関節炎),中手指節関節や膝,手足首の小関節
  • 患者の48%に全身症状はなくほとんどの症例で結核は肺外性(リンパ節結核が最多)
  • 通常はすべての患者は抗結核治療により関節破壊なく完全に解消(NSAIDsの併用有)


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(投稿者 川崎)

2024-08-05

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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(投稿者 川崎)

2024-08-04

骨レントゲンのABCD

  • Alignment(配列:例えば椎体後面ライン)
  • Bone(
  • Cartilage(軟骨
  • Distribution(分布)or Distance of Soft tissue(軟部組織の距離

💁 他のABCDコチラ

(投稿者 川崎)

2024-08-03

肥厚性幽門狭窄症 Hypertrophic pyloric stenosis

  • 概要:胃幽門筋が肥厚するため胃内容の通過困難を生じた状態
  • 疫学:出生1000人に対し約1~2人で男女比は4~5:1(特に第1子)
  • 症状:出生後2週目頃から2か月ぐらいで無胆汁性の噴水状嘔吐
  • 診断:エコーで幽門筋肥厚(>4mm)と幽門管延長(>14mm)
  • 治療:硫酸アトロピン,外科的粘膜外幽門筋切開術(Ramstedt法)


肥厚性幽門狭窄が疑われた4週齢男児の腹部超音波検査
a カーソル間の幽門の縦断図 (GB,胆嚢;D1,十二指腸の最初の部分;S,胃),b 幽門の横断図 (矢印;L,内腔)

(投稿者 川崎)

2024-08-02

PAPAパパ症候群

  • Pyogenic Arthritis, Pyoderma gangrenosum and Acneの略語
  • 邦名では化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群
  • PSTPIP1の機能獲得型変異による常染色体優性(顕性)遺伝
  • PSTPIP1関連炎症性疾患とも言われる自己炎症性疾患の一つ
  • 3歳以下で化膿性無菌性関節炎として発症し他は思春期以降
  • 治療はNSAIDsやステロイド,免疫抑制剤や生物学的製剤など
  • 頻度は現在日本に100名ほどで生命予後は比較的良好である


自己炎症疾患(autoinflammatory diseases)の特徴

(投稿者 川崎)

2024-08-01

今週の一枚 🎯

息切れと動悸を自覚する症例

😋 反跳脈(Bounding pulse)+心室三段脈(Ventricular trigeminy)
  1. 上腕にS字状の周期的な隆起(矢印)
  2. 触診で動脈性拍動であることを確認
  3. 3回拍動+期外収縮+代償性休止期
  4. 心電図では予想通りPVC(三段脈)
  5. エコーでは重症の大動脈弁逆流 AR

💁 本例の経過
  • 本例は数年前に検診で心雑音を指摘され医療機関を初めて受診されました.この時は往復雑音で息切れなどの自覚症状は全くなかったようです.
  • 心エコー図で重症の大動脈弁逆流(おそらく右冠尖の屈曲 bending)を指摘されました.上記の反跳脈はその数年前から自覚されていたようです.
  • 初診から5年ほどして息切れと動悸感が出現し,心電図でPVC頻発+BNP値上昇(それまでは正常範囲内).ご本人も弁置換術に同意されました.

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(投稿者 川崎)