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2021-12-31

安易な検査は慎むべし

🧖 循環器内科の外来診察室での一コマ
  • 担当医師 「では次は採血を予約しておきますね」
  • 患者さん 「分かりました.ついでに血で調べて欲しいことがあるんですけど…」
  • 担当医師 「どうぞ.どんなことですか?」
  • 患者さん 「実は父がハンチントン舞踏病で亡くなっているんです.」
  • 担当医師 「ハンチントン? 今,何か症状があるのですか?」
  • 患者さん 「症状はありませんが採血で遺伝検査ができるって書いてあったんで…」

💥 ハンチントン病(Huntington's disease)
  • 遺伝検査自体は容易に可能:例えばSRLの外注検査「HTT遺伝子CAG反復配列解析」で血液(EDTA-2Na加) 5.0mlで判定(100点)
  • ただし常染色体優性遺伝で治療法のない進行性疾患(罹病期間10~20年)であるため,無症候例に対する検査には注意が必要! 



💢 遺伝子検査を行う場合の注意難病センター ハンチントン病より)
  1.  発症者については、本人又は保護者の同意を必要とする。
  2.  未発症者の遺伝子診断に際しては、所属機関の倫理委員会の承認を得て行う。また、以下の条件を満たすことを必要とする。
    • 被検者の年齢が20歳以上である。
    • 確実にハンチントン病の家系の一員である。
    • 本人または保護者が、ハンチントン病の遺伝について正確で十分な知識を有する。
    • 本人の自発的な申出がある。
    • 結果の告知方法はあらかじめ取り決めておき、陽性であった場合のサポート体制の見通しを明らかにしておく。

(投稿者 川崎)

2024-08-21

HCMの遺伝子検査:保険収載

  • HCM患者の約60%が常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式に従う家族歴
  • そのうち40~60%でサルコメア構成蛋白をコードする遺伝子に変異あり
  • HCMに対する遺伝学的検査が2022年に保険収載(下記の実際を参照)
  • ただし同一変異を有す患者間でも臨床病型や経過は異なることが多い
  • 原因変異から臨床経過を正確に予測することは現時点では困難である

💰 保険収載されている肥大型心筋症の遺伝検査の実際詳細
  • 実施施設 国立循環器病研究センター
  • 保険点数 5,000点
  • 検体採取 血液 5 mL(EDTA採血管)

💁 遺伝子検査に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-12-27

Ehlers–Danlos syndrome エーラス・ダンロス症候群

エーラスダンロス症候群に関する論文が先日,出版されました(Med Genet 2024 Dec 3;36:225-234).図鑑のような体裁で臨床医にはとても分かりやすいと感じました.本ページでも取り上げておきます(全文がネットで読めます)

💚 抄録訳
  • 単一遺伝子性エーラスダンロス症候群(EDS)は、関節過可動性、皮膚過伸展性および/または脆弱性、および全身組織脆弱性を臨床的に特徴とする遺伝性結合組織疾患のグループです。現在、単一遺伝子性EDSタイプの診断を確定するためのゴールドスタンダードは、大規模並列シーケンシングによる遺伝子パネル検査です。遺伝子検査の可能性は大きく進歩しているものの、病歴、家族歴、身体検査を含む徹底した臨床評価が診断プロセスにおいて依然として重要であるため、私たちは、単一遺伝子性EDSタイプの臨床的特徴(の組み合わせ)をテキストと写真で報告し、臨床診断に役立てることを目指しています。さらに、分子診断が不可能な場合でも、臨床診断によって管理と監視を導くことができます。



- 骨格筋の特徴 -



- 皮膚の特徴 -



- その他の臨床的特徴 -

💙 命名までの遍歴
  • エーラス・ダンロス症候群という名称は,オランダの皮膚科医 Edvard Laurits Ehlers (1863-1937) とフランスの皮膚科医 Henri-Alexandre Danlos (1844-1912) に由来しています.しかしヒポクラテスは紀元前400年にこの疾患の特徴に言及し,van Meek'ren が1682年に医学的記述を残しています.1892年には Tschernogubow が発表していますが,ロシア語だったためか西ヨーロッパではほとんど見過ごされたようです.そして1901年と1908年にそれぞれ影響を受けた患者を記述した Ehlers と Danlos にちなんで,1936年に Weber がこの疾患を Ehlers–Danlos syndrome(EDS)と命名したようです.


心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

👉 エーラス・ダンロス症候群に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2016-12-20

B型肝炎ウイルスの疑陽性ほか

「B型肝炎について(一般的なQ&A)」(厚生労働省) より一部抜粋

詳Q9:各種のB型肝炎ウイルス検査では偽陽性がありますか?
現在認可を受けて市販されている各種のHBV(B型肝炎ウイルス)検査の試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陽性反応」はほとんどないと言ってよいでしょう。

詳Q10:各種のB型肝炎ウイルス検査では偽陰性がありますか?
現在認可を受けて市販されている各種のHBV(B型肝炎ウイルス)検査の試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陰性反応」はほとんどないといってよいでしょう。

詳Q11:感染後どのくらいの期間が経てば、HBs抗原検査でウイルスに感染したことが分かりますか?
HBs抗原検査法の感度にもよりますが、ヒトでの解析結果をもとにした外国からの報告によれば、感染後約59日経てばHBs抗原検査でウイルスに感染したことが分かるとされています(Shreiber G B他、N. Engl. J. Med. 1996)。

詳Q12:感染後どのくらいの期間が経てば、B型肝炎ウイルス遺伝子(HBV DNA)検査でウイルスに感染していることが分かりますか?
ヒトでの解析結果をもとにした外国からの報告によれば、感染後、約34日経てばHBV DNA検査でウイルスに感染したことが分かるとされています(Shreiber G B他、N. Engl. J. Med. 1996)。

(投稿者 川崎)

2016-07-30

MODY

糖尿病は1型、2型、妊娠、その他に分類されますが、その他に分類される糖尿病のひとつにMODY(Maturity-onset Diabetes of the Young)があげられます。
若年発症で遺伝子異常(インスリン分泌や肝臓でのブドウ糖取り込みにかかわる遺伝子)を有しMODY1から5までの5つのタイプが報告されています。遺伝子異常の頻度や原因遺伝子は完全に同定されていませんが、遺伝子異常の種類によってインスリン分泌能の低下や抵抗性など重症度も様々です。
たとえばMODY2はグルコキナーゼの遺伝子異常であることがわかっています。
一部のMODYではSU剤が著効すると報告されており医療費の削減から米国などでは遺伝子検査の必要性を学会などで議論される事があります。
(投稿者 岡田)

2019-08-27

グラム染色

  • ケフラールを服用しているが咳嗽が続く子供の鼻汁のグラム染色(x1000倍)

  • 小さいグラム陰性桿菌(球桿菌)が散在 ➜ インフルエンザ菌または百日咳菌が疑われる
  • インフルエンザ菌なら培養翌日に大きなコロニー/耐性菌ならケフラールは効果が乏しい
  • 百日咳菌は培養困難(専用培地で1週間程度)➜ LAMP法の遺伝子検査なら数日で判明

本例は翌日に大きなコロニーが培地に形成され,インフルエンザ菌(BLNAR)であることが確認された.百日咳菌のLAMP法による遺伝子検査はコロニー陰性時に予定していたため実際にはオーダーはしなかった.

(投稿者 川崎)

2025-02-09

「私の血液型はオモテO型,ウラB型」

💫 ABO血液型の亜型
  • オモテ検査(赤血球と抗A,抗Bとの凝集反応)とウラ検査(血清中の抗A,抗Bの有無)が一致せず
  • 抗体試薬やレクチンへの凝集反応,不規則抗体,糖転移酵素活性,分泌型唾液中の型物質などで分類
  • 本邦で多い亜型はBm型(オモテ検査O型でウラ検査B型)とABm型(オモテ検査A型,ウラ検査AB型)
  • 遺伝子解析で多くの亜型はエキソン6/7変異(ただBm型やABm型はエンハンサー領域を含む欠失他)


<質問19>
  • B型の亜型、Bm型についてABO式血液型の1つに「Bm」という血液型がありますが、この血液型の人が輸血を必要とする場合、苦もなく手配できるものなのでしょうか?たとえば、Bmの血液型を持つ人にRh+Bの血液を輸血した場合はどうなりますか?また、この血液型の人は日本人中に何%程度存在するんでしょうか?データがあれば是非教えてください。

<回答> 
  • ABO式血液型で、赤血球表面のA抗原やB抗原の、主として量的な差と各種抗体やレクチンに対する反応性の違いにより、亜型(subgroup)として分類されるタイプが存在することが知られております。
  • 手元にある文献を調べてみましたが、日本人での頻度に関しては、A2の頻度はA型中の0.16%(A型)、AB型中の1.07%(A2B型)となっております。A2を除くAの亜型の頻度は0.021%で、Bの亜型はこの約10倍ということですので、0.2%ぐらいということになるでしょうか。日本人の亜型の中で一番多いのは、Bm型とのことですので、頻度はA2よりやや多いことを前提にして、0.16~0.2%の間と推測されます。
  • 輸血を受ける場合は、B型の血液を輸血して問題はありません。Bm型血球は抗Aや抗Bの試薬で凝集しないのに、Bm型の人の血清はA型血球を凝集し、いわゆる「血液型検査のおもて・うら試験不一致」をきたすので、血液型判定上は問題となります。しかし、輸血をする上では、Bm型だからといってBm型を入れる必要はなく、交差試験を行って問題のない血液、つまり、B型の血液を輸血して何の問題も生じません。日本人ではB型の頻度は約20%ですので、B型の供血者をさがすのに苦労することはまずあり得ません。


💁 血液型に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-01-05

遺伝性乳がん卵巣がん症候群
HBOC: Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome

  • 概要 BRCA1/2病的バリアントによる常染色体顕性遺伝性腫瘍症候群
  • 癌種 乳癌,卵巣癌が多いが,前立腺癌や膵臓癌,メラノーマも関連
  • 検査 2020年にHBOCの診断を目的としたBRCA1/2の検査が保険収載
  • 方法 血液や腫瘍からDNA解析を行う(4週間ほどかかり約20,200点)
  • 結果 Negative,Positive,VUS(variants of uncertain significance)
  • 方針 HBOCと診断された時は遺伝学的診断に基づいた医療介入が可
  • 活用 リスク低減卵管卵巣摘出術や薬物療法・手術方法の選択(下図)
  • 重要 検査の限界(陰性でも他疾患の可能性)や遺伝カウンセリング


乳癌診療における BRCA1/2 遺伝子検査(2023年2月現在)

(投稿者 川崎)

2017-06-14

Hypermucoviscosity Klebsiella pneumonia(hvKP)による肝膿瘍

過粘稠性K. pneumonia(string test:陽性)
通常のK. pneumoniae(string test:陰性)

通常のK.pneumoniaeによる感染症とは異なり、過粘稠性を示す株であるK. pneumoniae(rmpAやmagAなどの遺伝子を保有した株)による感染症は、肝膿瘍前立腺膿瘍を主な原発巣とし、厚い莢膜多糖体の産生によって好中球の貪食から逃れ、さらに抗菌薬も菌体へ到達しにくい特徴がある。そのため、敗血症へと進展し様々な臓器に播種され重篤な経過をたどることから危険視されおり多数報告例がある。特に、本菌による感染症は敗血症からの血行性に脳膿瘍眼内炎を合併することが非常に多いため、画像検査によって検索する体制が必要となる。治療の第1選択は膿瘍のドレナージであるが、抗菌薬の選択は合併症として髄膜炎も報告数が多いことから、髄液移行性の良い抗菌薬の選択が推奨されている。過粘稠性株か否かの判断は、遺伝子検査の他に、string testという方法がある。菌の集落を釣菌し、5mm以上糸を引けば陽性と言う簡便な方法で確認することができる。検査室からのstring test陽性の報告があれば、DICへの進展を危惧し、早期の抗菌薬投与とその他の膿瘍などの検索が必ず必要である。

【参考図書】
笠原敬,忽那賢志,佐田竜一(著).感染症みるトレ.医学書院出版

【参考論文】
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27852233
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23435082
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16704562

(投稿者 前田)

2024-09-29

チクングニアウイルス Chikungunya virus

  • 病原 トガウイルス科チクングニアウイルス(Chikungunya virus)
  • 経路 ネッタイシマカやヒトスジシマカなどが媒介する感染症
  • 地域 東南〜南アジア,アフリカ,中南米など熱帯・亜熱帯地域
  • 本邦 日本国内では年間10-20例の輸入例が報告されているのみ
  • 発症 平均2-4日間(1-12日間)の潜伏期間の後に高熱と倦怠感
  • 症状 関節痛・筋肉痛,頭痛,皮疹,リンパ節腫脹,結膜炎など
  • 経過 通常は1-2週間以内に改善するが関節痛は数ヵ月~持続あり
  • 予後 通常良好/稀に合併症:心筋炎,肝炎,腎不全,脳炎など
  • 対策 流行地域への渡航時には蚊の刺咬を防ぐための忌避剤など
  • 制度 4類感染症であるため医師は直ちに最寄りの保健所に届出
  • 診断 抗体検査,ウイルス培養,遺伝子検査(いずれも行政検査)
  • 治療 対症療法が中心(解熱剤としてはアセトアミノフェンなど)


- チクングニア熱の典型的な臨床経過 -

(投稿者 川崎)

2022-12-09

メラス(MELAS)の診断

医局での会話 💨
  • 他科の専攻医 「先生,心臓の質問いいですか?」
  • 循環器専門医 「おぅ,なんでも聞いてくれ」
  • 他科の専攻医 「メラスってどうやって診断するんですか?」
  • 循環器専門医 「乳酸が高くて,あとは遺伝子だけど…汗」

  • Mitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic Acidosis and Stroke-like episodes
  • 邦名はミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群
  • 多彩なミトコンドリア病の一つでMELASは最多(日本の741例中31.4%)
  • 診断の流れ:疑う ➜ 障害臓器を同定 ➜ ミトコンドリア機能異常の証明
  • 血液の乳酸やピルビン酸は常に高値とは限らず(髄液のみが高値例あり)

- ミトコンドリア病診断のためのフローチャート -

診断特異度が高いミトコンドリア機能異常の証明
病理検査
  • 骨格筋病理における酵素活性低下又は赤色ぼろ線維(ゴモリ・トリクローム変法染色におけるragged-red fiber:RRF)、高SDH活性血管(コハク酸脱水素酵素におけるstrongly SDH-reactive blood vessel:SSV)、シトクロームc酸化酵素欠損線維、電子顕微鏡によるミトコンドリア病理学的異常 
  • 骨格筋以外でも症状のある臓器野細胞・組織のミトコンドリア病理異常
  • 核の遺伝子変異の場合は、培養細胞などでミトファジーの変化や融合・分裂の異常を確認

酵素活性・生化学検査
  • 罹患組織や培養細胞を用いた酵素活性測定で、電子伝達系、ピルビン酸代謝関連 及びTCAサイクル関連酵素、脂質代謝系関連酵素などの活性低下(組織:正常の20%以下、培養細胞:正常の30%以下)
  • ミトコンドリアDNAの転写、翻訳の低下

DNA検査
  • 病因的と報告されている、又は証明されたミトコンドリアDNAの質的異常である欠失・重複、点変異(MITOMAP:http://www.mitomap.org/ などを参照)や量的異常である欠乏状態(正常の20%以下)
  • 又は、ミトコンドリア関連分子をコードする核遺伝子の病的変異

参考)難病情報センター ミトコンドリア病(指定難病21)

💁 ミトコンドリアの過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2022-06-22

クルーゾン症候群 Crouzon syndrome

  • 症候性頭蓋縫合早期癒合症で,頭蓋や顔面,頸部,気管,四肢に異常を生じる
  • 主として fibroblast growth factor receptor2(FGFR2)の遺伝子異常に起因する
  • 由来はフランスの医師 Louis Édouard Octave Crouzon (1874–1938) の初報(
  • 出生児の身体所見から同病態が疑われ,各種画像検査や遺伝子検査で確定診断
  • 治療は対症療法である外科的治療が主体(乳幼児期から成人期まで複数回必要)
  • 予後は水頭症や小脳扁桃下垂,上気道閉塞、,喉頭気管奇形などで規定される
  • 類似はアペール症候群,ファイファー症候群,アントレー・ビクスラー症候群
  • 頻度は10万出生あたり約1.6人で,本邦では900人程度の症例が確認されている

参考)難病情報センター クルーゾン症候群(指定難病181)ほか


(投稿者 川崎)

2020-11-10

甲状腺不応症 Syndrome of Resistance to Thyroid Hormone(RTH)

  • 病態 甲状腺ホルモンに対する標的臓器の作用が減弱している病態
  • 別名 Refetoff(レフェトフ)症候群やTSH不適切分泌症候群(SITSH)
  • 初報 米国の医師Refetoffら(J Clin Endocrinol Metab 1967;27:279-94
  • 原因 常染色体優性の遺伝子疾患/約85%にTRβ変異(TRα変異もあり)
  • 頻度 発症頻度は約40,000人に1人と推定(計算上は日本に3,000人?)
  • 検査 FT4およびFT3の上昇にもかかわらずTSHが上昇または正常範囲
  • 鑑別 Basedow病の初期や破壊性甲状腺炎,薬剤性,下垂体腫瘍など
  • 診断 最終確定には遺伝子検査によるTRβ変異などの同定が必要となる
  • 治療 多くは代償されるため治療不要/頻脈や動悸などにはβ遮断薬


💁「甲状腺」の過去の投稿は コチラ
(投稿者 川崎)

2018-09-26

Lynch Syndrome リンチ症候群

常染色体優性遺伝の非ポリポーシス大腸癌で別名はHNPCC (Hereditary nonpolyposis colorectal cancer)
初報は米国の予防医学の医師Henry T. Lynch (1928〜) (Arch Intern Med 1966;117:206-12)

リンチ症候群
  • 大腸癌のうち遺伝性で最多(3%),子宮内膜癌などを合併することがある
  • 特徴は右半結腸のムチン産生の低分化型,印鑑細胞様あるいは髄様癌様
  • DNAミスマッチ修復遺伝子検査で診断(EpCAMなど/健康保険適応)
  • 欧米ガイドラインでは新規に大腸癌と診断された全症例の遺伝検査が推奨
  • 治療は腫瘍の外科切除(大腸亜全摘),転移では免疫チェックポイント阻害薬

参考文献:Lynch Syndrome-Associated Colorectal Cancer. (N Engl J Med 2018;379:764-73)

(投稿者 川崎)

2024-04-13

ウォルマン病 Wolman Disease

  • 概略 常染色体潜性(劣性)遺伝ライソゾーム病
  • 病因 ライソゾーム酸性リパーゼ(LAL)の欠損
  • 別名 酸性リパーゼ欠損(Acid lipase deficiency)
  • 命名 イスラエルのWolmanらが1956年報告(
  • 症状 生後〜腹部膨満,嘔吐,発育不全,肝脾腫
  • 疫学 約50万人に1人(本邦の報告は10数人ほど)
  • 画像 単純X線や超音波検査,CT他で副腎石灰化
  • 診断 LAL 酵素活性測定および遺伝子検査など
  • 治療 酵素の補充療法(セベリパーゼ アルファ
  • 予後 治療しなければ生後半年以内に死亡する


- 日齢47のWolman病の男児 -

(投稿者 川崎)

2025-04-01

双生児:一卵性 vs 二卵性

🍊 先日の診察室で...
  • 事務員P「私、双子で一卵性なんです」
  • 某医師T「一卵性? 遺伝子調べたの?」
  • 事務員P「そんな検査はしていません」
  • 某医師T「じゃ、実は二卵性かもよ」
  • 事務員P「でも妹とソックリなんです」

🍋 おさらい
  • 一卵性(identical twins)は1つの卵子と1つの精子が受精後2つに分かれて生まれるため(ほぼ)100%同じ遺伝子情報を有する(もちろん性別や血液型は同じ)。一方、二卵性(non-identical twins)は2つの卵子がそれぞれ別の精子と受精して生まれるため、遺伝的には平均50%が同じ(性別や血液型は同じことも異なることもある)。
  • 一卵性と二卵性の鑑別には生後にDNA検査を行う必要がある(一卵性だと思っていたが二卵性だったということが少なくない)。胎盤が1つなら一卵性(一絨毛膜二羊膜または一絨毛膜一羊膜)で2つなら二卵性(二絨毛膜二羊膜)が多いが、一卵性でも2胎盤(二絨毛膜二羊膜)や二卵性でも2つの胎盤がくっついて1つに見えることがある。 
  •  双胎の頻度は全妊娠の1-2%を占め、3分の1は一卵性で3分の2は二卵性である。一卵性双胎の頻度は全人種でおおむね同様で、母体年齢によって変動しないが体外受精(IVF妊娠)では2-3倍高いと考えられる。二卵性双胎の頻度は白人女性より黒人女性で高く、さらに母体年齢や妊娠方法によって増加する(排卵誘発により約20%増加)。

🍍 おまけ
  • 同一DNAを有する一卵性双生児でも、指紋や虹彩、掌紋(手のひらにある紋様)、顔、耳の形などで鑑別できるようです()。人間は両者の差をなんとなく分かるようですが、近年ではAIを使った鑑別がとても進んでいるそうです(

指紋による分類例(aとbが一卵性でcは他人/d~fは細部抽出)
(投稿者 川崎)

2018-10-30

BNPとNT-proBNPの乖離

第22回日本心不全学会学術集会(演題022-2)より
題名 Divergent N-terminal pro-B-type natriuretic peptide and B-type natriuretic peptide levels in a patient with heart failure
演者 Junichi SUGIURA (Department of Cardiovascular Medicine, Nara City Hospital, Nara, Japan)

    【要約】
    • 63歳男性が息切れで入院し,高度の大動脈弁逆流による左心不全と診断
    • 入院時BNPは2,940pg/mlと高値だが,NT-proBNPは感度以下(<5pg/ml)
    • 心不全治療でBNPは経時的に低下したが,NT-proBNPは一貫して陰性
    • 一塩基多型(SNPs)によるNT-proBNP陰性の心不全が現在まで14例報告
    • 本症例は死亡したため遺伝子検査は未施行であり同SNPsの関与は不明

    🉐関連投稿

    (投稿者 川崎)

    2023-07-16

    第135回日本循環器学会近畿地方会より

    😃 個人的に気になった報告
     
    3-5 心房細動アブレーション時に喉頭痙攣と思われる換気障害を経験した2例
    • i-gel™を使用した際に,喉頭痙攣と考えられる換気障害を2例経験した.鎮静剤をさらに投与し,深鎮静にすることで換気することができた.

    3-24 頸静脈波形が診断に有用であった心タンポナーデの一例
    • Beckの3徴は頸静脈怒張のみであったが,頸静脈波形でy谷の消失を認め心タンポナーデと診断.(投稿者追記:y谷は健常者でも浅いことがあるので要注意)

    5-39 線維化した深部中隔起源の心室頻拍に対してケミカルアブレーションを施行した1例
    • 左室,右室,大動脈から焼灼するも消失しない深部起源のPVC/VTに対して中隔枝を選択しエタノール注入が有効であった症例.

    7-22 急性前壁心筋梗塞治療後に,造影剤脳症を合併した1例
    • PCI施行2時間後に右半身麻痺,半側空間無視,失語を認めた.頭部CTにて左半球優位に脳溝の広範な高吸収像を認め,頭部MRIでは有意所見を認めず.第3病日より麻痺,失語は徐々に改善し,翌日には 神経学的異常所見は消失した.経過順調で第14病日に独歩退院した.造影剤使用後に神経症状を呈する合併症として造影剤脳症があり,脳血管造影後の報告が多い.

    7-24 難治性下肢皮膚潰瘍の治療経過中に診断に至ったウェルナー症候群の一例
    • 患者は糖尿病の罹病期間に見合わない動脈硬化を呈し,難治性下肢皮膚潰瘍,早老性毛髪変化,鳥様顔貌などウェルナー症候群の主要徴候に合致する身体所見を有していた.遺伝子検査でウェルナー症候群と確定.

    7-34 下大静脈フィルター関連静脈血栓症に対して血栓吸引療法とSling techniqueを用いて抜去に 成功した一例
    • 充満する下大静脈フィルターに対して血栓吸引療法を行いその後Sling techniqueにて下大静脈フィルターを無事抜去.(投稿者追記:Radifocus guidewireなどをフィルター間に通し先端をスネア―で確保して回収するテクニック)

    👻 当院からの発表
    • 2-2 急性冠症候群誘発のたこつぼ心筋症と考えられた1例(循環器内科 西川 晶ほか)
    • 3-21 S. lugdunensisによる大動脈弁輪部膿瘍を伴った感染性心内膜炎の1例(循環器内科 野口理希ほか)
    • 4-22 負荷を併用した簡易定性法による内頸静脈評価と肥大型心筋症の予後(循環器内科 川﨑達也ほか)
    • 5-11 薬剤性の体液貯留で左室流出路狭窄を生じたと考えられた1例(循環器内科 間瀬泰我ほか)

    症例報告はすべて英語論文化(1つは出版済,1つは採択済,もう1つは投稿中)

    💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

    (投稿者 川崎)

    2018-03-24

    症例クイズ

    • 健康診断で血液データの異常を指摘された若い男性
    • 毎年異常を指摘されていたが症状なく放置していた
    • 既往歴に特記すべき事項なく内服している薬剤もない



    (投稿者 川崎)

    2022-12-30

    アルカプトン尿症 Alkaptonuria

    • 原因:ホモゲンチジン酸-1,2-ジオキシゲナーゼの酵素欠損による常染色体潜性[劣性]遺伝疾患
    • 診断:尿中ホモゲンチジン酸の増加(24時間尿で通常20~30mgが1〜8gへ増加)➜ 遺伝子検査
    • 頻度:米国の発症率は約25万人に1人,スロヴァキア北西で頻度が高い(およそ19,000人中1人)
    • 三徴:暗褐色尿または放置後に暗褐色尿,色素沈着(30歳〜),脊椎・大関節の関節炎(20歳〜) 
    • 合併:大動脈弁や僧帽弁の石灰化・逆流,大動脈拡張,腎結石,前立腺結石,甲状腺機能低下など
    • 治療:対症療法/欧州では進行を遅らせるニチシノン(高チロシン血症治療薬)(日本は未承認)



    (投稿者 川崎)