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2025-08-24

エルドハイム・チェスター病 Erdheim-Chester disease:ECD

  • 概要 異常に増殖した組織球系細胞が多臓器(特に骨)に浸潤する稀な疾患
  • 名称 米国の病理学者Chester Wとオーストリアの病理学者Erdheim J(
  • 症状 骨病変をほぼ必発し尿崩症や眼球突出,黄色板腫,中枢神経症状など
  • 疫学 世界で650〜1,000例程度の報告/40〜80代に多く男女比は3:1程度
  • 原因 未だに解明されていない(癌遺伝子のBRAFやNRASの変異と関連?)
  • 診断 組織(CD68陽性&CD1a陰性が必須)+CT,MRI,PETで臓器浸潤?
  • 治療 未確立(IFNが第1選択?ステロイドや分子標的薬BRAF酵素阻害剤?)
  • 予後 32ヵ月内に60%死亡~5年生存率は約68%(中枢神経系浸潤は不良)


エルドハイム・チェスター病の主な特徴
 
(投稿者 川崎)

2025-05-06

PSC vs PBC

  • PSC(Primary Sclerosing Cholangitis/原発性硬化性胆管炎,旧:原発性胆汁性肝硬変)とPBC(Primary Biliary Cholangitis/原発性胆汁性胆管炎)はともに自己免疫性肝疾患で胆管に炎症や損傷が生じますが,それぞれ異なる胆管が影響を受ける点に差異があります.先日のカンファレンスで少し混乱が見られたため,PSC Partners Seeking a Cureを参考にして日本語にしてみました.

PSC 原発性硬化性胆管炎 PBC 原発性胆汁性胆管炎
病変部位
  • 肝臓の内外の胆管
  • 肝臓内の小さな胆管のみ
診断方法
  • 通常は胆管MRI(まれに肝生検やERCPが必要)
  • 次のうち2つ: ALP値上昇,疾患特異抗体 (AMA) 陽性,肝生検
胆管がんと大腸がん
  • リスク上昇
  • リスク不変
ウルソデオキシコール酸
  • 肝臓の血液検査値が改善例あり(病気の進行を遅らせるかは未証明)
  • よく反応例では予後も改善
炎症性腸疾患(IBD)
  • 約80%は併存(主に大腸炎)
  • 非常に稀(約1%)
初期症状
  • かゆみ,疲労感,腹痛,胆管炎の悪化
  • かゆみ,疲労感,目や口の乾燥,腹痛
疫学
  • 主に40歳前後で男性60%,女性40%
  • 75%は45歳以上で男性10%,女性90%
過度のアルコール摂取
  • 関連なし
  • 関連なし
喫煙
  • ほとんどの場合,非喫煙者
  • 喫煙歴と関連



(投稿者 川崎)

2025-04-18

👂 最近の耳学問

  • ASの重症度評価でLVOTのVTI(velocity—time integral [時にVTI]; 左室流出路速度時間積分値)を大動脈弁のVTIで割った指標 VTI ratio が0.25以下であれば高度AS,0.25~0.50なら中等度ASと考える.
  • Lamble疣贅は大動脈弁の閉鎖ラインに発生するひも状構造物で,弁の摩耗と損傷から生じ,最終的に線維化する.
  • 心電図と心エコー図で左室肥大の有無に乖離があればκ/λ比を確認 → 正常ならATTR心アミロイドーシスを考えHMDPシンチグラフィなど,κ/λ比が異常ならALアミロイドーシスを疑い口唇唾液腺生検などを行う.
  • 免疫グロブリン分子はH鎖(heavy chain)とL鎖(light chain)から構成され,L鎖にはκとλの2つのタイプが存在する.κ/λ比の正常目安は0.25~1.70程度で,多発性骨髄腫や形質細胞腫ではκ/λ比が大きく変動(例:100以上
  • PA治療薬はPG製剤のセレキシパグ(ウプトラビ錠)を除いてNO製剤(ニトログリセリン,硝酸イソソルビド,ニコランジル)とは併用禁忌
  • sCG刺激薬の邦名は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬で,ベルイシグアト(ベリキューボ錠:効能は慢性心不全)とリオシグアト(アデムパス錠:効能は慢性血栓塞栓性肺高血圧症と肺動脈性肺高血圧症)
  • PA治療のsCG刺激薬(リオシグアト)は,PDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬(タダラフィルやシルデナフィル)と併用することはできない.
  • 抗アミロイド抗体レカネマブ(レケンビ点滴)の治療中に生じたアミロイド関連画像異常(ARIA: Amyloid-related imaging abnormalities,アリア)に対する静注血栓溶解(rt-PA)療法は適応外(禁忌)とはしないものの通常より慎重に適応を判断すべき.
  • 4D Flow MRIは3D cine phase contrast MRIで,撮像範囲内の血流ベクトルを時相分解して全て収集することで,任意の血管の血流を自由に解析することが可能な撮像法(非侵襲的に血行動態が視覚的に評価可能)

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-04-11

Rh式血液型不適合妊娠

  • Rhマイナスの母体がRhプラスの胎児を妊娠している状態
  • Rh式血液型のD因子を有すればRh+,欠けばRh-に分類
  • 日本人でRhマイナスは約200人に1人(欧米より少ない)
  • 胎児血液が母体に入ると胎児を攻撃する抗D抗体が生じる
  • 対処しないと第2子の妊娠時に胎児貧血や早期新生児黄疸
  • 妊娠中や出産後に母に抗D人免疫グロブリン製剤の推奨


Rh式血液型不適合時の抗体産生
看護roo!

👉 血液型に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-04-03

今週の一枚 🎯

数分間の意識消失を生じた超高齢者

😐 解説
  • 来院時の心電図は徐脈+心房細動+ST-T部分の変化
  • 意識清明で神経学的異常なく頭部CTも特記所見なし
  • 高Mg血症(16.3 mg/dl)が判明(基準値:1.8-2.4)
  • 他の電解質はPが軽度上昇(5.1 md/dl)以外は正常
  • 腎機能は軽度の低下(Cr 1.1 md/dl)で肝機能は正常
  • カルチコールの静脈内緩徐投与と緊急血液透析で対応
  • 最終的に高Mg血症+糞便イレウス+誤嚥性肺炎と診断
  • 意識障害の原因は過剰な緩下剤による高Mg血症の疑い

💁 高Mg血症と心電図
  • 軽度~中等度の高マグネシウム血症ではPR間隔やQT間隔の延長、QRS波の拡大
  • 高度では伝導障害から心停止(一部は顕著なST部分の上昇とT波の増加も観察)
  • その原因としてマグネシウムイオンによる Na+/K+-ATPase 活性の機能的阻害

💫 マグネシウムに関する過去の投稿 ➜ コチラ

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-03-23

クイズ:巨大脾腫

問題 巨大脾腫を生じることが稀な病態はどれか。

 
 
 
 

判定

📐 脾腫(Splenomegaly)
  • 原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis; PMF)は骨髄増殖性腫瘍に分類され,髄外造血のために脾腫が出現する.血算で血液疾患を疑えば,身体所見で脾腫の有無は確認しておきたい.その他の血液疾患では,非ホジキンリンパ腫や有毛細胞白血病なども巨大脾腫を呈してくる.
  • 特発性門脈圧亢進症も巨大脾腫を呈する.脾腫を生じる他の疾患には,肝硬変やゴーシェ病,うっ血,感染症(結核やマラリア,伝染性単核球症など),先天性溶血性貧血,先天性代謝異常症,アミロイドーシス,ヘモシデローシス,バンチ症候群,フェルティ症候群などがある.
💫 脾腫に関連する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-02-15

CRP陰性の発熱

CRP(C-reactive protein,C反応性蛋白)
  • IL-6,IL-1β,TNF-α,IFN-γなどのサイトカインにより肝細胞で作られる主要な急性相の反応物質
  • 抗炎症作用と炎症促進作用を有し感染・外傷・梗塞・自己免疫・炎症性疾患・悪性新生物で上昇
  • CRPが陰性で高体温を呈する病態として薬剤熱や妊娠,習慣性高体温症などがよく知られている
  • 他にSLE(全身性エリテマトーデス)やCRPが産生できない肝硬変頭蓋内に限局した炎症(下図)


- 無菌性髄膜炎の37歳女性の臨床経過 -

👽 おまけ<
  • 頭蓋内に限局した炎症でCRPが生成されない理由は,各種サイトカインが血液脳関門(Blood-Brain Barrier; BBB)を通過できないためと考えられています.一方,アルコールやカフェイン,ニコチン,GABA,麻薬の一部などは通過できます.
  • CRPの発見は米国の医師 Tillett らである(J Exp Med 1930;52:561-71).はじめは肺炎球菌の細胞壁多糖類(C多糖類/C-polysaccharide)と反応する物質として同定されたため,C-reactive protein(C反応性蛋白)と命名されたようです.

(投稿者 川崎)

2025-02-09

「私の血液型はオモテO型,ウラB型」

💫 ABO血液型の亜型
  • オモテ検査(赤血球と抗A,抗Bとの凝集反応)とウラ検査(血清中の抗A,抗Bの有無)が一致せず
  • 抗体試薬やレクチンへの凝集反応,不規則抗体,糖転移酵素活性,分泌型唾液中の型物質などで分類
  • 本邦で多い亜型はBm型(オモテ検査O型でウラ検査B型)とABm型(オモテ検査A型,ウラ検査AB型)
  • 遺伝子解析で多くの亜型はエキソン6/7変異(ただBm型やABm型はエンハンサー領域を含む欠失他)


<質問19>
  • B型の亜型、Bm型についてABO式血液型の1つに「Bm」という血液型がありますが、この血液型の人が輸血を必要とする場合、苦もなく手配できるものなのでしょうか?たとえば、Bmの血液型を持つ人にRh+Bの血液を輸血した場合はどうなりますか?また、この血液型の人は日本人中に何%程度存在するんでしょうか?データがあれば是非教えてください。

<回答> 
  • ABO式血液型で、赤血球表面のA抗原やB抗原の、主として量的な差と各種抗体やレクチンに対する反応性の違いにより、亜型(subgroup)として分類されるタイプが存在することが知られております。
  • 手元にある文献を調べてみましたが、日本人での頻度に関しては、A2の頻度はA型中の0.16%(A型)、AB型中の1.07%(A2B型)となっております。A2を除くAの亜型の頻度は0.021%で、Bの亜型はこの約10倍ということですので、0.2%ぐらいということになるでしょうか。日本人の亜型の中で一番多いのは、Bm型とのことですので、頻度はA2よりやや多いことを前提にして、0.16~0.2%の間と推測されます。
  • 輸血を受ける場合は、B型の血液を輸血して問題はありません。Bm型血球は抗Aや抗Bの試薬で凝集しないのに、Bm型の人の血清はA型血球を凝集し、いわゆる「血液型検査のおもて・うら試験不一致」をきたすので、血液型判定上は問題となります。しかし、輸血をする上では、Bm型だからといってBm型を入れる必要はなく、交差試験を行って問題のない血液、つまり、B型の血液を輸血して何の問題も生じません。日本人ではB型の頻度は約20%ですので、B型の供血者をさがすのに苦労することはまずあり得ません。


💁 血液型に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-17

薬剤性好中球減少症 Drug-induced neutropenia

  • 末梢血の好中球数が500/μl以下と定義することが多く,無顆粒球症や顆粒球減少症,agranulocytosisなども概ね類似した意味で用いられる.
  • 発生頻度に関して1.1~5.0例/100万人/年という報告がある.早期に認められる症状として発熱は必発で,その他に悪寒や咽頭痛などが挙げられる. 
  • 機序には免疫学的(アレルギー性:抗甲状腺薬のプロピルチオウラシル他)と骨髄造血細胞に対する毒性(中毒性:クロルプロマジン塩酸塩やβラクタム系抗菌薬など)がある.
  • アレルギー性なら過去にその医薬品に感作されていれば1時間~1日以内に発現し,感作されていなければ抗体が産生されるまでに1週間~10日を要する.中毒性なら発症までに数週間を要する.
  • 患者側のリスク因子:高齢,女性,腎機能低下,自己免疫疾患の合併などの場合に発症頻度が高い.明確ではないが遺伝的素因(HLA型、薬物代謝酵素の遺伝子多型)なども考えられている.
  • 発現投与量は医薬品により異なる.例えば抗甲状腺薬では用量非依存性で,サルファ剤(サラゾスルファピリジン)では用量依存性との報告がある.一方,同じ医薬品でも報告により用量依存性、非依存性の相反する報告もみられる.
  • 添付文書で血液検査が求められている薬剤には,チクロピジン塩酸塩やチアマゾール(開始2月は2週に1回),サラゾスルファピリジン(開始3月は2週間に1回,次の3月は4週間に1回,その後は3月ごと),クロザピン(投与初期に発現する例が多いので投与開始後18週間は入院管理下)がある.
  • 無顆粒球症の原因となり得る医薬品は多数にのぼるが,抗甲状腺薬,チクロピジン塩酸塩,サラゾスルファピリジン,クロザピン(治療抵抗性統合失調症治療薬)など頻度が高い医薬品以外にも,H2ブロッカー,NSAIDs,抗不整脈薬,ACE阻害薬などが重要である.


💣 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-01-12

プロテインC・S欠損症のタイプ

🐤 呟き
  • 血栓症が疑われたら血液素因の有無を判断するため,治療開始前にプロテインCやSの活性や抗原量を調べる採血を行います(結果が治療期間に影響).
  • 個人的にはその血栓症の有無のみを診断していました.しかし先日,プロテインC欠乏症例で,そのタイプ分類まで言及している発表を目にしました. 

🐣 復習
  • プロテインS (PS),プロテインC(PC),アンチトロンビン(AT)欠損症は日本人の3大先天性血栓性素因
  • いずれも常染色体優性遺伝病で日本人のヘテロ変異保有者はPS 1.8%,PC 0.16%,AT 0.18%と推定されている
  • ヘテロ変異保有者は深部静脈血栓症を,ホモおよび複合へテロ接合の重症型は新生児に電撃性紫斑病を発症
  • ただしPCは肝疾患や重症感染症,DICなどの疾患やワルファリンをはじめとした薬剤等の影響で後天的に低下
  • 先天性PC欠損症の血栓症リスクは健常人の7.3倍で約30%に妊娠・出産,経口避妊薬,外傷,手術等の誘因


- プロテインC欠損症とS欠損症の各タイプ -

(投稿者 川崎)

2024-12-10

有毛細胞白血病 Hairy cell leukemia

  • 概略 毛髪状の細胞が特徴的な低悪性度の成熟B細胞性リンパ増殖性疾患
  • 疫学 3.5人/100万人・年(米国)で中年期以降に多く男女比は4~5:1
  • 地域 日本などアジアやアフリカでは極稀だが米国では全白血病の2~3%
  • 症状 脾腫(80~90%)と血球減少(70~80%)で易感染性を伴うことあり
  • 骨髄 高率に骨髄の線維化を認め穿刺ではdry tapなので生検が診断に有用
  • 治療 インターフェロンやプリンアナログ,抗体薬(リツキシマブ)など
  • 予後 緩徐な進行で10年生存率は90%以上(ただし二次発癌に注意が必要)


- 有毛細胞白血病の80代女性 -

(投稿者 川崎)

2024-11-06

MTX-LPD:メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患

  • MTX-LPD=Methotrexate-associated lymphoproliferative disorder
  • メソトレキセート内服中に認められリンパ増殖疾患の総称である
  • methotrexateは葉酸代謝拮抗剤の一つで免疫抑制作用を有する
  • 発生頻度は0.1%未満と予想され通常はMTX中止により自然退縮
  • 特徴は節外病変が多く多彩で複雑な病理像,高EBウイルス陽性率


MTX関連リンパ増殖性疾患の患者背景

(投稿者 川崎)

2024-11-04

唾液腺型高アミラーゼ血症 Salivary hyperamylasemia

  • 血液検査で予想外に血清アミラーゼが高値であったが,P型(膵臓型)ではなくてS型(唾液型)で一安心した経験は誰もがあると思います.
  • P型アイソザイムの上昇は膵疾患と考えられますが,S型アイソザイムの上昇には様々な原因があるようです(ガム噛みや強いストレスなど).
  • 下表以外にも摂食障害(特に神経性過食症)などが知られています.中には酸味嗜好(ココ)や特発性(ココ)という報告も見つけました. 

 高アミラーゼ血症診断のフローチャート

👉 アミラーゼに関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2024-07-03

ICANSアイキャンス 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群

  • ICANSはImmune effector Cell-Associated Neurotoxicity Syndromeの省略形
  • キメラ抗原受容体発現T細胞(chimeric antigen receptor-T,CAR-T)に関連
  • 機序はCRSの過剰サイトカインによる刺激 and/or CAR-T細胞による直接作用
  • CAR-T細胞輸注の1週間以内(3~6日目)に生じて,2〜3週間までには改善
  • 症状は振戦,傾眠,せん妄,認知機能障害,痙攣,失神,失語, 運動失調
  • 治療は副腎皮質ステロイドや抗痙攣薬など(通常は後遺症を残さずに改善)


(投稿者 川崎)

2024-06-09

セザリー症候群 Sézary disease

  • 概要 皮膚T細胞性リンパ腫による慢性的皮膚疾患(菌状息肉症と類似)
  • 三徴 紅皮症,リンパ節の腫大,末梢血異型リンパ球(セザリー細胞)
  • 皮膚 通常の皮膚治療薬には反応せず強い掻痒感や手掌角化などを伴う
  • 命名 フランスの皮膚科医 アルベール・セザリー (1880-1956) が報告
  • 疫学 100万人あたり約10人,男女比は2~5と男性に多く平均53~63歳
  • 診断 フローサイトメトリーと遺伝子解析で末血・皮膚の同一性を証明
  • 治療 ステロイド外用,紫外線療法,インターフェロン,化学療法など
  • 予後 早期は良好であるが皮膚外臓器浸潤の5年生存率は40%以下と不良


セザリー症候群の67歳男性(皮疹発症後約5ヵ月で死亡)

(投稿者 川崎)

2024-05-16

今週の一枚 🎯

3週前より下腿浮腫と体重増加(直近10日で10㎏)を訴える高齢男性
2週前のかかりつけ医で施行した採血や胸部X線に特記すべき異常なし

👽 解説
  • 頚部や鼠径部のリンパ節が腫脹していた
  • CTでは大腿静脈をリンパ節が圧迫(*)
  • LDHは513 U/Lと増加,CRPは0.42 mg/dL
  • 頚部LNの生検でリンパ腫(DLBCL)診断
  • 本例にB症状(発熱・盗汗・体重↓)なし

💀 独り言
  • 下腿浮腫の鑑別診断は日常臨床で頻出です.両側なら心不全・腎不全・肝硬変・ネフローゼ・低栄養状態など,片側なら深部静脈血栓症・蜂窩織炎・骨盤内腫瘍などでしょうか.本例は意外なところに答えがありました.今後は両側鼠径にリンパ節の累々とした腫脹がないかも見るようにします.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-05-11

分化症候群 Differentiation syndrome (DS)

  • 急性前骨髄球性白血病(APML)へのオールトランスレチノイン酸 (ATRA) 療法の合併症
  • レチノイン酸症候群(Retinoic acid syndrome: RAS)とも呼ばれる(近年はDSが優勢)
  • 頻度はATRAやヒ素で治療されている患者の2~27%(治療開始から数週間以内に発生)
  • 発熱や5 kg以上の体重増加,末梢浮腫,低血圧,急性腎不全,間質性肺浸潤などで発現
  • 原因不明(APML細胞におけるサイトカイン分泌の変化とATRAによる接着分子の分化?)
  • 治療は(早期に認識し)ATRAまたはヒ素の中止+コルチコステロイド投与の組み合わせ

2024-05-04

氷水保存してないですが…

📞 電話中継
  • 医師 「ID **の方の残血で追加をお願いします」
  • 技師 「わかりました.項目は何ですか?」
  • 医師 「BNPです」
  • 技師 「検体を冷蔵保存していませんが...」
  • 医師 「別に構いませんよ」
  • 技師 「NT-proBNPではダメですか?」
  • 医師 「腎機能が悪いので無理です」
  • 技師 「でも,値が...」
  • 医師 「コメントに常温保存2時間後測定とでも加えておいてください」
  • 技師 「・・・」

💀 BNPは基本冷蔵保存
  • BNPは血中プロテアーゼによる分解を受け易いため,EDTAなどで処理された検体を採血後速やかに冷蔵保存(当院では氷水保存)する必要があります.
  • プロテアーゼ(protease)とは,蛋白質をポリペプチドやアミノ酸へ分解するときの触媒酵素の総称で,ペプチド配列を認識(ただし一部は非選択性)
  • EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediaminetetraacetic acid)はCaイオンとキレート結合し除去(凝固抑制)+プロテアーゼ活性抑制効果あり
  • しかし下図のように減弱することを理解すれば凡その目安にはなると思います.採血をやり直す患者さん負担と天秤にかけて判断すればいいと思います.



BNP値の変化(● 室温保存,○ 4℃保存)
🉐 BNPに関連する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2024-04-27

特発性血栓症 Idiopathic thrombosis

  • 概略 遺伝性血栓性素因により重篤な血栓症を発症する病態
  • 原因 プロテインC・S,アンチトロンビンなどの先天的欠乏
  • 形式 常染色体顕性遺伝(ヘテロよりホモ接合体は通常重篤)
  • 疫学 本邦で約2,000人(年間に乳児<100人,成人約500人)
  • 早期 新生児〜乳児期には脳出血や梗塞,電撃性紫斑病など
  • 後期 小児期から成人では時に致死性となる静脈血栓塞栓症
  • 治療 FFPやAT製剤,活性化PC製剤などの長期投与,肝移植
  • 予防 慢性期は長期の抗凝固薬(妊娠中はヘパリン自己注射)
  • 予後 脳卒中後遺症,電撃性紫斑病で四肢切断,失明で不良


💁 血栓症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-04-07

貧血にはレバーとほうれん草と?

🍁 食品鉄の影響
  • 背景:貧血の改善に鉄が必要だが食品中の鉄含量と生体利用率とは必ずしも並行しない
  • 対象:鉄欠乏飼料を与えて作成した貧血ラット(4週齢のWistar系雄ラット)および対照
  • 介入:回復飼料に硫酸第一鉄,レバー,きな粉,ほうれんそう(鉄含量2mg/100g飼料)
  • 結果:増加は硫酸第一鉄が最多で,次いでレバー,きな粉(ほうれんそう群は著しく少)

🍦 おまけ
  • きな粉(きなこ,黄粉,黄な粉,kinako,roasted soy flour)は,大豆を炒って皮をむき挽いた粉です.日本料理でしばしば使用され,室町時代後期(1336~1573)の料理本にすでに登場しているそうです().
  • ガン予防や生活習慣病改善,免疫力強化などにを謳われることもありますが,医学的なエビデンスに欠けます.不溶性食物繊維が多いため通便コントロールには有用ですが,過剰摂取では便秘が増悪するようです.

💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)