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2025-09-06

頸静脈孔 Jugular foramen

  • 頚静脈所見は心不全診療の肝です(関連投稿).よってjugularというキーワードを登録し,関連論文が出版されたらすべてお知らせが入るようPubMedに登録しています.先日,jugular foramenという用語に眼が留まりました.何のことかすぐにイメージできなかったので調べてみました.

💀 頸静脈孔(Jugular foramen)
  • 頸静脈孔は,側頭骨と後頭骨で囲まれてできた孔 (foramen)で,頭蓋内から見るとダンベル型を呈する (図1A).
  • 前方部は神経部 (pars nervosa)と呼ばれ下位脳神経が走り,後方部は静脈部(pars venosa)と呼ばれ頸静脈球が存在
  • 頭蓋外から見ると,外側部は乳様突起,後方部は頸静脈突起 (jugular process),内側部は後頭顆(occipital condyle) で囲まれている(図1B).
🚑 頚静脈 vs 頸静脈コチラ

(投稿者 川崎)

2025-06-08

脳波 Electroencephalography: EEG

心電図は読めても脳波は全く分からないという人は少なくないと思います.少しだけですが脳波の基本をまとめてみました.

👶 ヒトの脳波
  • α(アルファ)波: 8~13Hz、β(ベータ)波: 14~30 Hz、θ(シータ)波: 4~7Hz、δ(デルタ)波: 0.5~3Hzに分類され、δ波とθ波は徐波、β波は速波とも呼ばれる。

💣 突発波 (paroxysmal waves) 
  • 背景活動から浮き立つ波で、棘波(spike)、鋭波(sharp wave)、棘徐波結合(spike and wave complexes)、徐波バースト(slow burst)などで、易興奮性の状態(≒てんかん原性)である可能性を示唆する。

👉 脳波に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-11

DOAC score

  • 心房細動(AF)患者の出血リスクを評価するための従来の臨床意思決定ツールは、ワルファリン治療を受けている患者向けに開発されたもの
  • DOACスコアは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を服用している心房細動患者の出血リスクを個別に推定するための開発された臨床リスクスコア
  • 年齢、CCr/eGFR、低体重、脳卒中/TIA/塞栓症の既往、糖尿病、高血圧、抗血小板薬やNSAIDsの使用、肝疾患、出血歴から判定(計算ページ
  • DOACスコアは、COMBINE-AF(25,586人)およびRAMQ(11,945人)を含む両検証コホートにおいて、HAS-BLEDスコアよりも高い予測性能を示した



💁 DOACに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-04-12

視束管骨折(視神経管骨折)

  • 眼球と脳を連絡している視神経を包み込む視神経管に骨折が生じた状態
  • 外傷性視神経症は頭部外傷の約0.5~5%,顔面中央部骨折の2.5%に合併
  • 視神経管骨折は外傷性視神経症の原因の一つでその約20%を占めている
  • さまざまな程度で視機能に障害を及ぼし,時に永久的な視力障害の原因
  • 治療は視神経管開放術(経鼻内視鏡下視)やステロイドパルス療法など
  • CTなどの画像検査で骨折部位が描出されないため診断が困難な症例あり
  • 手術適応や時期の明確な指針はないため個々の症例に応じた対応が必要


- 分かりやすい資料 -

💁 視力に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-03-24

クッシング現象 Cushing reflex

  • 概要 頭蓋内圧の急激な上昇に対する生理的な神経系の反応
  • 症状 収縮期血圧上昇,徐脈,不整呼吸の三徴を引き起こす
  • 由来 米国の脳外科医 Harvey Williams Cushing (1869–1939)

クッシング現象の機序

💣 頭蓋内圧上昇
  • 初期徴候は頭痛や吐気,嘔吐,意識レベルの変化などです.一方,クッシング現象は後期徴候で,脳幹ヘルニアが差し迫っていることを示します.クッシング反射を呈する多くの患者は不可逆的な状態で予後は不良です.
  • 初期治療は頭蓋内圧を下げることです.患者の頭部を30~45度挙上することや浸透圧利尿薬として作用するマンニトールやフロセミド,過換気の誘発,ステロイド,または脳脊髄液ドレナージなどが含まれるようです.


(投稿者 川崎)

2025-02-19

スタージ・ウェーバー症候群 Sturge–Weber syndrome

  • 概要 頭蓋内の軟膜血管腫と顔面の毛細血管奇形,緑内障を特徴とする神経皮膚症候群の一つ
  • 命名 英国の医師 Sturge WA (1850–1919)と英国の皮膚科医 Weber FP (1863–1962)の報告(
  • 症状 顔面ポートワイン斑,難治性てんかん、精神運動発達遅滞,運動麻痺,視力障害など
  • 原因 9番染色体長腕上に存在するGNAQ遺伝子の単一ヌクレオチド、モザイク変異(非遺伝性)
  • 疫学 年間50,000~100,000出生に1人の発症率と推定(本邦では年間10~20人の発生となる)
  • 治療 対症療法(てんかんに対し薬や外科治療,顔面毛細血管奇形に対しレーザー治療など)
  • 予後 成人期まで観察した多数例の長期予後の報告はない(緑内障は緩序進行性で失明あり)


Sturge–Weber syndrome(SWS)の21歳女性

(投稿者 川崎)

2024-07-21

Early CT sign 早期虚血サイン

👿 中大脳動脈(MCA)領域の塞栓性脳梗塞で発症3時間以内の単純CT
  1. レンズ核の不鮮明化 ➜ MCAから起始する穿通枝の支配領域の虚血に関連
  2. 島皮質の不鮮明化 ➜ シルビウス裂内を走行するMCA島部の閉塞による虚血
  3. 皮髄境界の不鮮明化(+吸収値の僅かな低下)➜ 側副血行路が不十分な場合
  4. 脳溝の狭小化 ➜ 梗塞巣の腫脹を反映し低吸収域の出現と並行~やや遅れる
  5. dense MCA sign ➜ 赤色栓子により閉塞した中大脳動脈それ自体を反映


MCA領域の急性期塞栓性脳梗塞のEarly CT sign -

👾 脳の解剖 ➜ コチラ へ

(投稿者 川崎)

2024-07-09

主訴:行動変容?

前日から急に... 
  • 料理ができなくなった(お肉を粉々になるまで切り続ける) 
  • 自転車のカギが開けられない(30分以上同じ動作を繰返す) 
  • 温度管理に無頓着(夏で室内は暑いがフリースを着ている)

バイタルサイン:181/108mmHg,68bpm,酸素98%,36.8度,RR 22
頭痛や嘔気なし,後部硬直なし,言語・空間認知は正常,麻痺なし

考えられる診断は?


(投稿者 川崎)

2024-07-07

円蓋部くも膜下出血 cSAH: convexity subarachnoid hemorrhage

  • 円蓋部脳表の血管破綻によるくも膜下出血で(全SAHの6%),動脈瘤破綻による通常のくも膜下出血とは異なる病態
  • 出血は皮質表面に限局しシルビウス裂や脳実質,脳室には進展しない(動脈瘤性はウィリス動脈輪周囲+脳内出血)
  • 原因は可逆性脳血管攣縮症候群(RVCS),脳洞静脈血栓症,後可逆性脳症症候群(PRES),高齢なら脳アミロイドなど
  • 治療・管理には合併症の治療,在的誘因の除去,血の拡大や再発のリスクの最小化,本的原因への対処などが含まれる
  • 予後:原因がRCVSなら一般に良好(頭痛と血管攣縮は数週間以内に消失し障害が残ることはほぼなく死亡率1%未満)


- 排便時の雷鳴頭痛で発症したRVCSの42歳女性 -

💁 クモ膜下出血(SAH)に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-06-30

最近の耳学問 👂

  • 心不全症例のBNP変動は±30%ならOKで,>50%なら原因を考える
  • 則末先生らの著書「終末期ディスカッション」は一読の価値あり
  • 大動脈弁逆流の手術はDd, Ds, EFが70, 50, 30mmまでに(いわゆる七五三)
  • 糖尿病の昔の名前は蜜尿病,近い将来にダイアベティス(Diabetes)?
  • 神経生検は通常,踝の腓腹神経(純粋な感覚神経で運動麻痺の後遺症なし)
  • BRCA1とBRCA2は遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)に多い変異で性別を問わず50%の確率で遺伝
  • ラエンネックは第2音を発見したが心房収縮に関連と考えた(弟子のBertinが訂正)
  • Stereotactic Radiosurgeryとは大線量を1回で照射する定位手術的照射で外科手術とは無関係(複数回に分割する方法はstereotactic radiotherapy)
  • 眼振は緩徐相と急速相が明瞭な衝動性眼振と不明瞭な振子様眼振に分類
  • 生活習慣病は医学用語ではない(日本医学会 医学用語辞典に掲載されていない)

💁 忘備録に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-06-23

テレストローク Telestroke

定義
  • ICT(Information and Communication Technology;情報通信技術)を使用して遠隔地にいる専門医が,現地で急性期脳卒中患者(疑い例も含む)の対面診療を行う医師を支援する遠隔医療

対象範囲
  • 脳卒中,一過性脳虚血発作,およびこれらが疑われる患者の,急性期における診断・治療,管理を主な対象とする.急性期リハビリテーション,合併症管理を含む急性期管理の遠隔コンサルテーション,回復期以降の治療や管理については本ガイドラインの対象としない.また,救急隊と脳卒中受け入れ施設との病院前連携における遠隔医療については本ガイドラインの対象としない.

導入が推奨される施設
  • 急性期脳卒中患者を受け入れる施設で,脳卒中診療に精通する医師が常に対応することが困難なすべての施設


  • Hub施設 ➜ テレストロークにおける支援を行う保険医療機関で日本脳卒中学会が認定するPSC(primary stroke center;一次脳卒中センター)もしくはPSCコア施設
  • Spoke施設 ➜ テレストロークを受ける保険医療機関で頭部CTまたはMRI検査,一般血液検査と凝固学的検査,心電図検査が施行可能であることなどが条件


(投稿者 川崎)

2024-06-22

市民啓発活動: ACT-FASTアクト ファスト

脳卒中を疑う下記の症状(FAS)が一つでもあればすぐ(T)行動(ACT),つまり救急車(119番)を呼ぶということ(なおTは発症時刻の確認も含んでいる).米国脳卒中協会が推奨する市民教育で15年以上前から提唱されている(Prev Chronic Dis 2008;5:A49).一般市民への周知がかなり広がっている循環器領域のBLS(一次救命処置:Basic Life Support)の脳卒中版と考えられる.

  • Face ➜ 突然の顔の歪み
  • Arm ➜ 手の力が入らない
  • Speech ➜ 呂律が回らない・言葉がでない・他人の言うことが理解できない
  • Time ➜ 症状が出た時刻を確認


(投稿者 川崎)

2024-02-28

VPシャントの流量調整

  • VPシャントはventriculo-peritoneal shunt(脳室-腹腔短絡路)で水頭症の治療法
  • 他は脳室-心房短絡路(VAシャント)や腰部くも膜下腔-腹腔短絡路(LPシャント)
  • 現在のバルブはほぼ圧可変式で体外よりプログラマーで無侵襲的に流量を調整可
  • 例:バルブ内部モーターをマグネティックパルス信号で回転(CODMAN HAKIM®
  • 3テスラまでのMRIではバルブ損傷なし(設定圧の変更が生じ得るためX線で確認)

   Codman Hakimプログラマブル バルブのX線写真 (90 mmH2Oに設定)

(投稿者 川崎)

2024-02-25

ツェツェバエ Tsetse fly

  • 概略 アフリカ睡眠病の原因を媒介する蝿でツワナ語(ボツワナの多数派民族)でハエを意味
  • 発音 英語ではˈtet.si flaɪ(ツェッティ・フライ/実際の音声)でツエツエ(Tsuetsue)でなはい
  • 媒介 吸血で病原性トリパノソーマのガンビアトリパノソーマやローデシアトリパノソーマなど
  • 分布 サハラ砂漠以南のアフリカ風土病(西~中央アフリカ諸国と東アフリカ諸国で異なる種)
  • 潜伏 急性期症状出現までの期間は1~3週間(ガンビア型は数ヶ月~数年間の無症候例あり)
  • 症状 急性期は間欠熱や悪寒,頭痛,筋肉痛/慢性期は中枢神経症状(傾眠や過食,頭痛,昏睡)
  • 診断 血液やリンパ節,髄液などから原虫の検出または血清学的検査(T. b. gambienseにのみ可)
  • 治療 ペンタミジンやスラミン,エフロルニチンなど (ワクチンがないため予防が最重要である)
  • 予後 無治療の場合なら1~3ヵ月で全例死亡(ガンビア型も無治療の場合は数年後には死亡)

参考)厚生労働省検疫所,他

ツェツェバエに刺された時の皮膚所見

💁 風土病に関する投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-02-03

Roving eye movement 眼球 彷徨ほうこう

  • 両眼の数秒周期の規則的な左右への共同運動で,ping-pong gazeとほぼ同義
  • 米の脳神経医Fisherが報告(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1967;30:383-92
  • 大脳皮質全体の障害かつ脳幹機能(眼球運動支配)が維持されていると出現
  • 両側大脳皮質卒中,代謝性障害,中毒などで出現(障害部位の特異性なし)

アルコール性肝障害から肝性脳症を生じた男性

💁 眼振に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-01-20

皮質盲 Cortical Blindness

概要
  • 眼科的原因によらない後頭葉の線条皮質の両側性病変による正常な瞳孔対光反射を伴う視力喪失.診断は下記の表で,例えば卒中患者での発生率は20~57%.治療は原疾患に対する治療を行い,その予後も原疾患より異なる.
原因
  • 小児では外傷性脳損傷・後頭葉の先天異常・周産期虚血,成人では脳卒中・塞栓症・外傷・後頭葉てんかん・低ナトリウム血症・低血糖・クロイツフェルト・ヤコブ病・感染症(HIV他)・子癇・MELAS・高血圧性脳症・PRES


💁 皮質に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-01-09

A10エーテン神経系

  • 中脳腹側被蓋野から大脳皮質に投射するドーパミン神経系
  • 腹側被蓋野(VTA)は中脳の一部でドパミン神経系の起始核
  • 他に側坐核や扁桃体,海馬へもドパミンを投射する(下図)
  • 一般に A10神経は報酬系に属し気持ちを良くし快感に誘う
  • 一方,側坐核より放出されるGABAはVTAの働きを抑制する


VTA (ventral tegmental area)=腹側被蓋野,prefrontal cortex=前頭前皮質,nucleus accumbens =側座核,hippocampus=海馬,substantia nigra=黒質,striatum=線条体 

💁 幸福に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-12-11

内頸静脈の水源

  • 頸静脈(jugular veins)〜心臓の解剖(概略詳細)はよく知られています.しかし内頸静脈に至る経路(つまり上流)はあまり知られていないでしょうか?
  • X(旧ツイッター)に分かりやすい図が投稿されていたので転載(cortical veins=皮質静脈,superior sagittal sinus=上矢状静脈洞,vein of Galen=ガレン大静脈,straight sinus=直(静脈)洞,transverse sinuses=横静脈洞)
  • 脳静脈に関してもっと知りたい方は脳静脈の機能解剖(Jpn J Neurosurg 2009;18:821-29)がオススメです.脳外科医でなければ難解かもしれませんが超絶詳細です.

(by @sargsyanz

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-21

頭部脳回転状皮膚 Cutis Verticis Gyrata: CVG

  • 頭皮軟組織の過剰肥厚で脳のような外観を呈する病態
  • 初報は1837年にフランスの皮膚科医であるJLM Alibert
  • 隆起部は硬く圧を加えても平らにすることはできない
  • 頭皮の中央〜後部に多いが頭皮全体に及ぶこともある
  • 頻度は1/10万人以下で男女比6:1,好発は思春期〜30歳
  • 脳性麻痺やてんかん,精神神経疾患と関連する可能性
  • 二次性CVGは先端巨大症,母斑,炎症過程などと関連
  • 通常は良性疾患で治療不要(二次性では原疾患の治療)
  • 美容的に外科切除,皮膚充填剤,ヒアルロニダーゼ注射


- 頭部脳回転状皮膚を呈した先端巨大症の60歳男性 -

(投稿者 川崎)

2023-10-31

インボス INVOS

  • Medtronicが開発したINVOS™:IN Vivo Optical Spectroscopyのこと
  • 脳や骨格筋など組織酸素飽和度を連続測定(別名は脳オキシメータ)
  • NIRS:near infrared spectroscopy(近赤外線分光法)を用いて測定
  • rSO2は患者やセンサー貼付位置などで変化するが成人目安は70±10%
  • 心臓大血管手術で脳障害・脳機能障害を防ぐなどに有用(最下図)
  • (インボイス制度とは違います 😅 先日講演時に提出を求められました)

例:脳オキシメータ:INVOS 5100 システム

NVOSを用いた臨床研究によって示唆された有用性

(投稿者 川崎)