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2024-02-25

ツェツェバエ Tsetse fly

  • 概略 アフリカ睡眠病の原因を媒介する蝿でツワナ語(ボツワナの多数派民族)でハエを意味
  • 発音 英語ではˈtet.si flaɪ(ツェッティ・フライ/実際の音声)でツエツエ(Tsuetsue)でなはい
  • 媒介 吸血で病原性トリパノソーマのガンビアトリパノソーマやローデシアトリパノソーマなど
  • 分布 サハラ砂漠以南のアフリカ風土病(西~中央アフリカ諸国と東アフリカ諸国で異なる種)
  • 潜伏 急性期症状出現までの期間は1~3週間(ガンビア型は数ヶ月~数年間の無症候例あり)
  • 症状 急性期は間欠熱や悪寒,頭痛,筋肉痛/慢性期は中枢神経症状(傾眠や過食,頭痛,昏睡)
  • 診断 血液やリンパ節,髄液などから原虫の検出または血清学的検査(T. b. gambienseにのみ可)
  • 治療 ペンタミジンやスラミン,エフロルニチンなど (ワクチンがないため予防が最重要である)
  • 予後 無治療の場合なら1~3ヵ月で全例死亡(ガンビア型も無治療の場合は数年後には死亡)

参考)厚生労働省検疫所,他

ツェツェバエに刺された時の皮膚所見

💁 風土病に関する投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2020-06-17

マルキアファーヴァ・ビニャミ病 Marchiafava-Bignami disease: MBD

  • 病態 脳梁の対称性脱髄を主病変とする変性疾患(病理学的には脱髄壊死)
  • 疫学 アルコール多飲の中年以降に発症(2008年時点で世界でおよそ300例)
  • 機序 栄養障害+ビタミンB1や微量元素不足+ピルビン酸による血管壁障害
  • 症状 急性期は意識障害や痙攣など/慢性期は失行や失書,構音障害など
  • 診断 臨床症候とMRIによる障害部位の同定(特にDWIでの異常信号が有用)
  • 鑑別 ウェルニッケ脳症橋中心脱髄症候群浸透圧性脱髄症候群など
  • 治療 ビタミンB1の補充+対症療法(副腎皮質ステロイドの効果は不明)



🍷 おまけ
  • 初報はイタリアの病理学者・内科医・泌尿器科医のMarchiafavaと同じくイタリアの内科医・病理学者・栄養学者のBignamiです(Rivista di patologia nervosa e mentale. 1903;8:544–9).当初はイタリアの風土病と思われていたようですが,その後に世界中で見つかるようになりました.左右の脳が分離するため,右手には問題はありませんが,左手の失行(左手でその動作ができない)や左手の失書,左視野の呼称障害,失読など脳梁離断症候群が生じる点が興味深いと思います.当院で経験した症例はアルコール飲酒歴がほとんどなかったようです.

🉐 関連投稿(脳関連)

(投稿者 川崎)

2019-10-22

克山病(ケシャン病) Keshan disease

  • 心筋障害を主徴とする中国黒竜江省克山県で発見された風土病の一つ
  • 初報は(おそらく)本邦の原 亨先生(日本循環雑誌 1937;3:98-108)
  • 男性より若女性や男児に多く頻度は経年的減少(1995年頃は10/10万)
  • 当初はCO中毒やウイルス感染が疑われたが現在ではセレン欠乏の疑い
  • 病態は拡張型心筋症に類似して心拡張と壁運動低下からうっ血を発症

関連投稿 🉐

(投稿者 川崎)

2022-07-30

用語の再確認

😎 ザックリまとめると
  • Pandemic(パンデミック)➜ 流行病(複数の国や大陸:COVID-19,スペイン風邪など)
  • Epidemic(エピデミック)➜ 流行病(範囲が狭く国内:ジカ熱,デング熱など)
  • Endemic(エンデミック)➜ 風土病・地方病(特定の地域で持続:マラリアなど)
  • Outbreak(アウトブレイク)➜ 集団発生・感染爆発(狭い範囲で急激に増加:エボラ出血熱など)

💁 感染に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-03-04

クレチン症 Cretinism

  • 先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism: CH)のこと
  • 発生頻度は3000-8000人にひとり程度で,性別は1:2で女児が多い
  • 症状は出生後に元気がない・哺乳不良・体重増加不良・便秘など
  • 長期的に身体成長不良や知的障害(特に出生後数ヵ月以内が重要)
  • 原因は甲状腺の無・低形成,異所性,ホルモン合成障害,中枢性
  • 症状の程度は軽症〜重症と個人差が大きく期間も永続性〜一過性
  • 生後5〜7日目にTSHの測定による新生児マススクリーニング検査
  • 母親の甲状腺疾患や抗甲状腺剤,過剰な海藻やイソジン摂取など
  • 治療は1日1回甲状腺ホルモン薬レボチロキシンナトリウムの内服
  • 3才以降の適切な時期に原因に対する検査(病型診断)を実施する


🔎 病名の由来
  • ヨーロッパの山岳地域などではヨード欠乏による風土病性クレチン症が少なくなく,当時これらの人々をフランス語で「crétin」と呼んでいました.これはchrétien(キリスト教徒)に由来し,「神の前では同じ人間である」という人道的な意味だったそうです.
  • その後cretinismという名称が医学用語として広まりましたが,cretinという言葉が英語圏では侮辱的な意味で使用されるようになりました.よって現代医学では先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism: CH)という名称で呼ばれるのが一般的です.

(投稿者 川崎)