- 病態 脳梁の対称性脱髄を主病変とする変性疾患(病理学的には脱髄壊死)
- 疫学 アルコール多飲の中年以降に発症(2008年時点で世界でおよそ300例)
- 機序 栄養障害+ビタミンB1や微量元素不足+ピルビン酸による血管壁障害
- 症状 急性期は意識障害や痙攣など/慢性期は失行や失書,構音障害など
- 診断 臨床症候とMRIによる障害部位の同定(特にDWIでの異常信号が有用)
- 鑑別 ウェルニッケ脳症や橋中心脱髄症候群,浸透圧性脱髄症候群など
- 治療 ビタミンB1の補充+対症療法(副腎皮質ステロイドの効果は不明)
🍷 おまけ
- 初報はイタリアの病理学者・内科医・泌尿器科医のMarchiafavaと同じくイタリアの内科医・病理学者・栄養学者のBignamiです(Rivista di patologia nervosa e mentale. 1903;8:544–9).当初はイタリアの風土病と思われていたようですが,その後に世界中で見つかるようになりました.左右の脳が分離するため,右手には問題はありませんが,左手の失行(左手でその動作ができない)や左手の失書,左視野の呼称障害,失読など脳梁離断症候群が生じる点が興味深いと思います.当院で経験した症例はアルコール飲酒歴がほとんどなかったようです.
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(投稿者 川崎)
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