このブログを検索

ラベル 心臓血管外科 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 心臓血管外科 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025-09-08

Gerhardt sign ゲルハルト徴候

  • 大動脈弁逆流で出現する左上腹部の拍動(脾臓の収縮期拍動)
  • 命名はドイツの医師 Carl JAC Gerhardt(1833-1902)に由来
  • ただし脾臓の動脈性拍動の初報は Nicolaes Tulp (1594–1674)
  • ザイラー徴候とも呼ばれている(Am Heart J 1928;3:447-53

 

😐 コメント
  • 上記の動画はローゼンバッハ徴候(大動脈弁逆流による肝拍動)でリンクした動画と同じものです.脈圧の開大(大脈)に伴う肝拍動と脾臓拍動は基本的に同じ現象ですが,ネット上に動画としてはほとんど検索しません.綺麗な動画が記録できたらぜひアップをお願いします(投稿者も努力します) 

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-09-01

フィジカルクイズ(No. 19 & 20)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-08-28

今週の一枚 🎯 教育ビデオ

僧帽弁逆流症(Mitral regurgitation: MR)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音の音量は漸増や漸減に欠く箱型(長方形)
  • Ⅰ音とⅡ音は心雑音に埋没するため認識が困難
  • 僧帽弁逆流,三尖弁逆流,心室中隔欠損の3疾患

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠からのアドバイス(過去の投稿)を元に作成した,心音図をなぞりながら音を聴く教育ビデオです(版権放棄かつ利用時の引用記載も不要)
  • 最初は「実際の心音と心音図上の線の動きをあわせるのが大変だな~」と思いましたが,パワーポイントを用いてやってみると意外に簡単に作成できました.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-08-21

今週の一枚 🎯 教育ビデオ

大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音は漸増・漸減型(ダイアモンド型 or 菱形)
  • よってⅠ音とⅡ音を聴取できる(特にⅡ音!)
  • 例えば大動脈弁狭窄症やHCMの左室流出路狭窄

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠から以下のような内容のメールをいただきました.「講習会では心音図が心音と一緒に動画として提示される.でも聴衆はとてもそれを目で追えない.心音図をなぞりながら音を聴かせるという風にすればとても理解しやすい.」
  • 「心音図は必ずしも実物でなくて絵でもいいですよ」とも言われましたが,せっかくなので実物を使用してみました.本動画は教育用として作成したので,商業目的を除いてご自由にご活用ください(版権放棄かつ利用時の謝辞記載も不要です)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-08-05

👂 最近の耳学問

  • P2Y12受容体拮抗薬(阻害薬)➜ ADP(アデノシン二リン酸)の受容体であるP2Y12受容体を阻害することで抗血小板作用を示す薬剤(チエノピリジン系:第1世代,チクロピジン;第2世代,クロピドグレル;第3世代:プラスグレル/非チエノピリジン系,チカグレロル)
  • 対側性変化(reciprocal changes)➜ 急性心筋梗塞例の心電図でST上昇を示す誘導と鏡像関係にある誘導のST低下に対する用語として統一された(ミラーイメージは使用しない).同様に心臓周囲の用語も心膜に統一(心膜液貯留や心膜ドレナージなど/今後は心嚢は使用しない)
  • rVCSS ➜ Revised Venous Clinical Severity Scoreの略で,邦名は改訂静脈臨床重症度スコア.静脈不全を反映し,例えばrVCSS≧3点では日常生活が著しく妨げられると判断でき静脈ステントを考慮(適正使用指針).具体的な評価方法はココ
  • three noes IE ➜ 右心系単独の感染性心内膜炎(IE: infective endocarditis)のうち①静注薬物使用者,②心臓デバイス関連,③先天性心疾患(心室中隔欠損症,ファロー四徴症,僧帽弁弁膜症,大動脈弁弁膜症など)のいずれも認めない症例で,右心系IEの約16%を占めるという報告あり

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-07-23

ピストル射撃音

先日,初期研修医1年目の先生から大動脈弁逆流のピストル音について質問を受けました😮以前に心臓Physical Examination広場にアップしたのですが(ココ)松下ERランチ・カンファレンスには未投稿だったので同じ内容を掲載しておきます.

(投稿者 川崎)








👾 解説
  • 収縮期の極めて鋭い音=ピストル射撃音(Pistol-Shot sound)を認める
  • 大脈による末梢動脈圧の急激な上昇に関連した音と考えられる(下図)
  • 本例は高度の大動脈弁逆流による心不全と診断され弁置換術を受けた
  • 術後にピストル射撃音やコリガン脈,オースチン・フリント雑音は消失

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2025-07-17

今週の一枚 🎯

健診で心雑音を指摘された症例

😎 解説
  • 心尖部で収縮期雑音を聴取する
  • Ⅱ音(S2)不明瞭で逆流性雑音
  • 右鎖骨(上)では雑音は不明瞭
  • 心エコーで僧帽弁逆流を認めた
😛 追加コメント
  • 大動脈弁狭窄の収縮期駆出性雑音と異なり(自験例)、僧帽弁逆流の雑音は鎖骨にあまり放散しない。息止めをしない聴診では、呼吸音に埋もれて雑音を認識することが難しい。是非ASとの鑑別に利用したい。
  • MRでは逆流性雑音がⅡ音を超えるため、Ⅱ音の認識が困難になる。ただしこの原則は心尖部では当てはまるが、肺動脈弁領域ではあてにならない。その理由はⅡ音の肺動脈成分(2P)を聴取するためである。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-07-11

AS=鎖骨放散・大

健診で心雑音を指摘された症例

😎 解説
  • 心尖部で収縮期の雑音を聴取
  • Ⅱ音(S2)明瞭で駆出性雑音
  • 右鎖骨(上)でも雑音は明瞭
  • 心エコーで大動脈弁狭窄あり
😛 追加コメント
  • 大動脈弁狭窄の収縮期駆出性雑音は鎖骨や頚部に放散する(ことが多い)。頚部は呼吸止めをしないと聴診が難しいが、鎖骨では息止めは不要。呼吸音にかき消されない大きな雑音があればASが多い。
  • やり方は聴診器の膜部を鎖骨上にのせるだけ(左右どちらでもOK)。MR雑音では鎖骨への放散が小さいため(雑音が呼吸音に埋もれる)、両者の鑑別に役立つ。ちなみに本例では大きなⅣ音あり。

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-06-06

Suicide LV 左室自殺

  • 大動脈弁置換術は重症の症候性大動脈弁狭窄(AS)例に対するクラス I の推奨治療です。しかし、大動脈弁置換術は急性の左室流出路閉塞(LVOTO)などの合併症を引き起こすことがあります。
  • この稀ではあるものの重篤な合併症はいわゆる「Suicide LV/自殺左室」現象と呼ばれています。前もって閉塞性肥大型心筋症によるLVOTOが判明している場合、TAVI後の増悪も含まれます。

❶ 重度ASの88歳女性にTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)を実施

❷ 術直後に肺水腫と低血圧 → 僧帽弁の収縮期前方運動と重症逆流を確認

❸ 治療抵抗性 → 準緊急的に経皮的中隔心筋アブレーションを実施し改善

(投稿者 川崎)

2025-06-01

👂 最近の耳学問

  • ジルベール症候群は肝臓がビリルビンを処理する能力が部分的に欠如している軽度の遺伝性疾患である.特別な治療は通常不要であるが,絶食やその他のストレスでビリルビン値が上昇しやすい.
  • NHKやNTTなど,主にアルファベット3文字からなる頭字語略語は三文字頭字語(さんもじとうじご)または三文字略語(さんもじりゃくご)と呼ばれている.英語ではthree-letter acronymまたはthree-letter abbreviationと呼ばれているが,それらにもTLAという三文字頭字語がある(😄自己整合語).
  • 閉塞性肥大型心筋症の心室中隔心筋切除術を考案したのは米国の心臓外科医 Andrew Glenn Morrow (1922–1982) である.その後,彼自身も閉塞性肥大型心筋症を発症したが,心室中隔心筋切除術を拒否し60歳という若さで自宅で突然死した(J Am Coll Cardiol 2016;67:2900-3).
  • ヘモリンド舌下錠といういぼ痔用の市販薬小林製薬のHP)がある.(※消化器の外科部長と内科部長に確認したら,病院では痔核で急性期以外に内服薬を出したことはないと言われました...😐)
  • 大動脈弁狭窄と閉塞性肥大型心筋症を合併した症例では,TAVIによる大動脈弁狭窄の解除を先行させると流出路圧較差が激増して血行動態が破綻することがある.このような病態をsuicide LV(左室の自殺)と呼ぶ.(*左室流出路狭窄が明らかでない症例がAS解除後に致命的な圧較差を生じた場合 [TAVIやSAVRで術後合併症の一つ] も含むようです)
  • 心電図でP波が著増した状態(目安は>5 ㎜)をHimalayan P waves(ヒマラヤP波)と呼ぶ.(拘束性心筋症でP波が著増した症例:Turk Kardiyol Dern Ars 2025;53:217-8

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-31

SAMの機序:ベンチュリ効果とドラッグ力

  • 閉塞性肥大型心筋症では僧帽弁の収縮期前方運動(systolic anterior motion, SAM)のため流出路狭窄が生じます.その原因として,かってはベンチュリ効果(venturi effect:流体が狭い箇所を通過する際に流速が増加し,その結果圧力が低下する現象)が提唱されていました.
  • しかし詳細な時相解析では,SAMは左室流出路の速度が正常なタイミングで始まります(上図).つまりベンチュリ効果でSAMを説明することは少し困難です.近年では流れが押し出す力(drag forces:日本語では抗力?)がSAMの主要な流体力であることが示唆されます(下図).
ベンチュリ―

💁 閉塞性肥大型心筋症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-29

今週の一枚 🎯

- 開心術後例の定期エコー -

😊 解説
  • 僧帽弁レベルの短軸層が描出されている
  • 拡張期に僧帽弁の中央が解放していない
  • 中央が離れず(矢印)∞ の形をしている
  • 本症例は僧帽弁へのアルフィエリ縫合

💁 追加コメント
  • Alfieri Stitch(アルフィエリ縫合)は僧帽弁逆流の前尖と後尖の中央付近を縫合する手術です.イタリアの心臓外科医 Alfieri が開発し,経皮的僧帽弁クリップ術 MitraClip® の元祖になります.
  • MitraClip®後の心エコー図に比べて,僧帽弁中央の異物が小さいことや,その背部に出現するアコースティックシャドウ(音響陰影)が少ないことで鑑別することが可能ではないかと思われます.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-05-25

オリゴジェニック遺伝 Oligogenic inheritance

📗 単一遺伝子遺伝
  • 一つの遺伝子の変異によって病気が発症する遺伝形式のこと
  • 例:嚢胞性線維症(CFTR変異)やハンチントン病(HTT変異)

📘 二遺伝子遺伝
  • 二つの異なる遺伝子が協力し一つの表現型を決定する遺伝形式
  • 単一の遺伝子変異では発症しない病気が二つの変異で発症する
  • 例:遺伝性難聴(GJB2とGJB6という二つの異なる遺伝子が関与)

📙 三遺伝子遺伝
  • 三つの異なる遺伝子が協力して一つの表現型を決定する遺伝形式
  • それぞれの遺伝子が独自の役割を持ち補完し合い最終的な表現型
  • 例:バルデ-ビードル症候群(BBS1、BBS2、BBS6が関与して発症)


📚 オリゴジェニック遺伝
  • 少数の遺伝子のレアバリアントの組み合わせによって発症する病態
  • 例:先天性心疾患(MYH7、MKL2、NKX2-5などの遺伝子が相互作用)

参考)ミネルバクリニック、ほか

💁 遺伝に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下らんから選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-05-21

当院採用の肺高血圧症治療薬

分類

商品名

一般名

効能効果

薬価

PAH

CTEPH

PGI2系薬

静注用フローラン0.5mg

エポプロステノール

11,865.0円/瓶

ベラプロストNa錠20μg

ベラプロスト

13.5円/錠

ケアロードLA錠60μg

ベラプロスト

109.3円/錠

ウプトラビ錠0.4mg

セレキシパグ

2,902.8円/錠

ET受容体拮抗薬

トラクリア錠62.5mg

ボセンタン

 

3,327.0円/錠

ヴォリブリス錠2.5mg

アンブリセンタン

 

3,401.8円/錠

オプスミット錠10mg

マシテンタン

 

13,334.9円/錠

PDE-5阻害薬

レバチオ錠20mg

シルデナフィル

 

742.2円/錠

アドシルカ錠20mg

タダラフィル

 

980.5円/錠

sGC刺激薬

アデムパス錠1.0mg

リオシグアト

1,371.7円/錠


(投稿者 小森)

2025-05-19

腹部大動脈瘤による重複脈(Dicrotic Pulse)

  • 定義 大動脈瘤に関連し,1心周期中に2つの異なる脈波が発生した状態(収縮期上昇+低い重複切痕+顕著な拡張期上昇)
  • 機序 正常大動脈と大動脈瘤のインピーダンスの急激な変化により、瘤の近位端と遠位端の両方で脈波の反射が発生する
  • 成分 心収縮によって生成される前方脈波および大動脈瘤から反射された後方脈波との相互作用による異常な動脈圧波形
  • 病態 重複脈(または重拍脈)を示す他の病態には重症の心不全や心タンポナーデ、循環血液量減少、敗血症などがある

- 腹部大動脈瘤の66歳男性の術前(左)と術後(右)-


心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-05-07

DORV: Double Outlet Right Ventricle(両大血管右室起始症)

  • 先日,知人から「DORVの症例で…」と相談を受けました.DORVと聞いてすぐに病態が思い浮かばなかったので調べてみました.ちなみにDOLV(両大血管左室起始症)もありますが,さらに稀なようです

両大血管右室起始症DORV
  • 定義:大動脈と肺動脈の一方が完全に右心室起始+他方が50%以上が右心室起始+後方大血管の半月弁と房室弁の間に筋性組織(心室漏斗部鄒壁)が存在
  • 分類:大血管の位置関係により正常大血管型(後方の大動脈が心室中隔に騎乗するタイプ)と大血管転位型(後方の肺動脈が心室中隔に騎乗するタイプ)
  • 細分:心室中隔欠損孔の位置で4分類(下図):大動脈弁下型心室中隔欠損,肺動脈弁下型心室中隔欠損,両大血管型心室中隔欠損, 遠隔型心室中隔欠損
  • 疫学:先天性心疾患の約1%(出生約10,000人に1人)で特定遺伝子異常との関連は報告されていないが18トリソミー症例では出現頻度が比較的頻度が高い
  • 症状:右室流出路に狭窄がない場合は高肺血流による心不全症状が主体,右室流出路~肺動脈に狭窄を伴う場合はファロー四徴症に類似し多彩なチアノーゼ
  • 治療:解剖に応じ乳児期に心内修復術(心内導管で心室内血流転換術)や新生児期~乳児期前半のBTシャント手術,1歳前後の右室流出路拡大形成術など


- DORVのVSD(下図のd)による4分類 -

👉 先天性心疾患に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-04-07

🏆 論文

  • 循環器内科の本田先生が執筆されたケースレポートが出版されました
  • 収縮期雑音を呈した動脈管開存(PDA)の一例です(連続雑音なし)
  • 軽度肺高血圧のみでEisenmenger(アイゼンメンジャー)症候群なし
  • 心エコー図では拡張期にも短絡シグナルが描出されますが雑音なし

🎉 PDA雑音
  • PDA患者の典型的な雑音といえばもちろん(第2音で途切れることなく持続する)連続性雑音です。本例のような大動脈-肺動脈シャントに加えて、動静脈シャント(冠動脈動静脈瘻、右心室へのバルサルバ洞動脈瘤破裂など)や動脈および静脈の流れの変化(静脈雑音乳腺雑音甲状腺雑音など)があります。
  • 肺高血圧を伴うと拡張期雑音が消失することは理にかなっています。ただし本例の肺高血圧は軽度でした(平均圧28 mmHg、1.4~2.1 WU)。本例では収縮期雑音のみを聴取かつ記録した正確な原因は不明ですが、貧血や肝硬変などの併存疾患が非典型的なPDA雑音に変化させたと考えるのが妥当でしょうか?
  • Eisenmenger患者にみられるように、大動脈圧と肺動脈圧の平衡例では、雑音が完全に消失し無音性PDAになります(一部の症例では拡張期雑音のみ)。PDA雑音の性状は、肺動脈内のジェットの方向によっても変化するようです。本論文の考察ではこの辺りを(少し)深堀したので興味がある方はご覧ください。

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-03-31

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-03-21

医科診療報酬点数

👥 夜8時半にようやくシャントPTAが終わって...
  • 専門医A 「エコーでVAIVTができると楽だね」
  • 専門医B 「そうです.それで12万ですからね」
  • 専門医A 「高っ! ペースメーカって数万だよ」
  • 専門医C 「でも3ヵ月で2回までですけどね…」

📪 医科診療報酬点数(令和6年)
  • 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 ➜ 12000点
  • ペースメーカ ➜ 経静脈電極移植術9520点,リードレス移植術9520点,交換術4000点
  • 経皮的冠動脈ステント留置術 ➜ 急性心筋梗塞34380点,不安定狭心症24380点,その他21680点
  • 心臓カテーテル法による諸検査 ➜ 左心4000点,右心3600点
  • 冠動脈、大動脈バイパス移植術 ➜ 吻合80160点,吻合以上89250点
  • 経カテーテル弁置換術 ➜ 経皮的39060点,経心尖61530点
  • 弁輪拡大術を伴う大動脈弁置換術 ➜ 157840点
  • 経皮的カテーテル心筋焼灼術 ➜ 心房中隔・心外膜アプローチ40760点,その他34370点
  • 下大静脈フィルター ➜ 留置10160点,除去6490点
  • オープン型ステントグラフト内挿術 ➜ 弓部大動脈114510点,下行大動脈89250点


    😑 独り言
    • 手技料に関しては皆,いろいろな想いがあると思います.循環器内科医なら,「なんでペースメーカ植込みよりシャントPTA(VAIVT)の方が高いの?」って思うかもしれません.逆に心臓外科医は,「循内の経皮的な手技料,高すぎだろう!」って怒っているかも…
    • 手技の難しさ(学ぶのに要する時間)やリスク(術者のストレスを含む),効果(予後改善など)が,手技料に総合的に反映されていることが大切です.例えば下大静脈フィルター植込みの手技料は10160点と高めですが,比較的簡単かつ安全で臨床効果は微妙

    👉 診療報酬に関するの過去の投稿は コチラ

    (投稿者 川崎)