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ラベル 甲状腺 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2026-08-15

倦怠感と寒冷不耐性を訴える38歳女性

  • バイタルは正常(血圧130/70 mmHg、脈拍64回/分、体温36℃)。診察では両側の眼窩周囲および四肢の浮腫、乾燥・粗造な皮膚、頭髪の菲薄化を認めた。そして両側眉毛外側1/3の著明な脱落(下図)はクイーン・アン徴候(別名,Hertoghe徴候)に合致した。
  • 検査所見では、甲状腺刺激ホルモン100.4 mIU/mL(基準値0.6–4.2)、遊離サイロキシン0.58 ng/dL(0.8–1.8)、総トリヨードサイロニン64 ng/dL(80–220)であった。重度の原発性甲状腺機能低下症と診断し、レボチロキシンを1.6 μg/kg/日の補充量を開始した。

😐 その機序
  • 頭髪・眉毛の菲薄化は、毛周期の遅延(甲状腺ホルモン不足による毛包の成長期短縮・休止期延長)および皮膚のムチン(グリコサミノグリカン)沈着による粘液水腫性変化で生じてくるそうです.
  • 眉毛外側1/3のみが選択的に脱落する正確な機序は不明ですが、皮膚乾燥(xerosis)に伴う機械的摩擦(かゆみでこする等による二次的な脱毛は外側で生じやすい?)などが影響しているようです.

参考)QJM. 2026 Apr 1:hcag100、他
アン女王 ヘルトーゲ
(投稿者 川崎)

2026-06-23

カラヴァッジョの「聖アンデレの磔刑」

  • 先日、インディアナ大学医学部循環器内科のダニエル・M・ ゲルフマン先生のよる面白いエッセイ(?)を眼にしました(Am J Med. 2026 Jul;139(7):838-839)。タイトルは"When looking for treatable diseases, don't forget the jugular veins”です(邦訳:治療可能な疾患を探す際には、頸静脈を忘れないでください)。内頚静脈と外頚静脈が明確に区別されていない点は気になりますが、頚静脈ネタが一流誌に掲載されていることをとても嬉しく思います。

先日、クリーブランド美術館で、著名な美術史家によるプレゼンテーションの一環として、カラヴァッジョの「聖アンデレの磔刑」(1606-7年)を鑑賞しました。この絵画について議論された際、聖アンデレの右側に立っている女性には大きな甲状腺腫があると説明されました。首の下部に大きな腫れがあるため、これは私にとって驚きではありませんでした。しかし、心臓専門医である私は、甲状腺腫と思われるものを見る前に、鎖骨よりかなり高い位置まで異常に拡張した右外頸静脈に衝撃を受けました(図1)。(鎖骨は右心房から約10cm上にあるため、これは直立した状態では正常ではありませんが、病的なものではない可能性があります。)その後、医学文献を調べていたところ…以下省略(僅か428 words)

(投稿者 川崎)

2026-04-15

第123回日本内科学会講演会 医学生・研修医・選考委の内科学 ことはじめ2026より

😀 個人的に気になった演題

演題 19 機械学習モデルを用いたガットフレイル関連因子の解析
  • ガットフレイル(Gut Frailty)とは、胃腸(Gut)の機能が長期にわたって低下し、弱った(Frailty)状態を示す新たな概念です。便秘や下痢、胃もたれといった不調が慢性的に続くことで、将来的な老化の進行や、がん、糖尿病、認知症(アルツハイマー病)などの全身疾患のリスクを高める要因として注意が喚起されています。

演題 74 飛行機移動を契機に出現した左側大量難治性肝性胸水に対し、腹腔内色素注入による横隔膜交通症を証明し外科的閉鎖を行った一例
  • 横隔膜交通症とは腹腔と胸腔の間の横隔膜に小さな穴(瘻孔)ができ、腹腔内の液体(主に腹膜透析液)が胸腔へ漏れ出る病態。飛行機の離着陸時や急激な天候変化(低気圧)などによる急激な気圧変動を受けた際に、顕性化することがある。

演題 317 MAGIC症候群が疑われる気道病変に対する気道ステント留置症例
  • 再発性多発軟骨炎は、全身の軟骨組織に炎症が生じる疾患です。耳や鼻、目、関節など、軟骨やコラーゲンを豊富に含む組織に多彩な症状を引き起こします。本疾患がベーチェット病を合併した場合は、MAGIC症候群(Mouth And Genital ulcers with Inflamed Cartilage syndrome:炎症性軟骨を伴う口腔および陰部潰瘍)と呼ばれます。

演題 519 HBOC患者の多重癌にみられるBRCA2の2nd hitの多様性
  • HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群:Hereditary Breast and Ovarian Cancer syndrome)は、主にBRCA1またはBRCA2遺伝子に生まれつき存在する変異(病的バリアント)によって、乳がんや卵巣がん、前立腺がん、膵がんなどを発症しやすくなる体質を指します。遺伝性腫瘍の代表的な例であり、親から子へは約2分の1の確率で受け継がれる可能性があります。

😎 当院からの発表演題
  • 演題 157 感染を契機に重症の甲状腺機能低下症に至った一例(糖尿病・内分泌内科 太田羽奏先生)
  • 演題 388 Guillain-Barre症候群様の急激な末梢神経障害を呈しベンラリズマブが奏功した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の1例(総合診療科 松村実穂先生)

😃 二人ともとてもいい発表でした(松村先生は優秀演題賞ゲット!)

💁 “学会”に関連する過去の投稿 ➜ コチラ(ウェブ版なら右欄からも選択可能)
(投稿者 川崎)

2026-03-04

クレチン症 Cretinism

  • 先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism: CH)のこと
  • 発生頻度は3000-8000人にひとり程度で,性別は1:2で女児が多い
  • 症状は出生後に元気がない・哺乳不良・体重増加不良・便秘など
  • 長期的に身体成長不良や知的障害(特に出生後数ヵ月以内が重要)
  • 原因は甲状腺の無・低形成,異所性,ホルモン合成障害,中枢性
  • 症状の程度は軽症〜重症と個人差が大きく期間も永続性〜一過性
  • 生後5〜7日目にTSHの測定による新生児マススクリーニング検査
  • 母親の甲状腺疾患や抗甲状腺剤,過剰な海藻やイソジン摂取など
  • 治療は1日1回甲状腺ホルモン薬レボチロキシンナトリウムの内服
  • 3才以降の適切な時期に原因に対する検査(病型診断)を実施する


🔎 病名の由来
  • ヨーロッパの山岳地域などではヨード欠乏による風土病性クレチン症が少なくなく,当時これらの人々をフランス語で「crétin」と呼んでいました.これはchrétien(キリスト教徒)に由来し,「神の前では同じ人間である」という人道的な意味だったそうです.
  • その後cretinismという名称が医学用語として広まりましたが,cretinという言葉が英語圏では侮辱的な意味で使用されるようになりました.よって現代医学では先天性甲状腺機能低下症(congenital hypothyroidism: CH)という名称で呼ばれるのが一般的です.

(投稿者 川崎)

2026-02-15

とても大切な質問をいただきました

  • 先日,頚動脈拍動(コリガン脈)や甲状腺雑音,左季肋部の拍動(ゲルハルト様徴候/Gerhardt-like sign)など身体所見が特徴的であった甲状腺クリーゼの症例を発表しました.本例の主訴は意識障害でした.
  • 発表後に複数の質問があったのですが,一つが特に秀逸でした.「そもそも甲状腺クリーゼでは,どうして意識障害が生じるのですか?」という問いです.その場でうまく答えられなかったので調べてみました.

  • 甲状腺クリーゼで意識障害(意識混濁、せん妄、昏睡など)をきたす主な理由は、過剰な甲状腺ホルモンが中枢神経系(脳)に直接・間接的に甚大な負荷を与えることによる代謝・機能の破綻です。

(AI作成の病態モデル図と説明文)←PMIDは微妙?

👉 甲状腺に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-12-04

今週の一枚 🎯

意識障害で搬入された症例


👺 解説
  • 少し荒めの呼吸が目立つ(腹式)
  • 呼気時に左季肋部に拍動(矢印)
  • 本例は甲状腺の腫大と雑音あり
  • 最終的な診断は甲状腺クリーゼ

👽 コメント
  • 大動脈弁逆流症では左上腹部に拍動を認めることがあります(ゲルハルト徴候/Gerhardt sign).その機序は大脈に伴う脾臓の収縮期拍動です.同様に肝臓の拍動はローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼ばれています.
  • 本症例で認めた左季肋部の拍動は,甲状腺機能亢進症による大脈で生じたゲルハルト(様?)徴候でしょうか? 右季肋部の拍動は不明瞭ですが,触診では肝臓の拍動(ローゼンバッハ[様?]徴候)もあるような気がしました😉 

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)