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2018-01-31

死後ペースメーカの取り扱い

ペースメーカ装着症例の死亡時にペースメーカを取り出すか否かが問題になることがある
リチウム電池は180℃で破裂,心臓ペースメーカ本体は600~800℃で破裂爆発ではない

ペースメーカー
厚生労働科学研究費補助金の健康安全・危機管理対策総合研究事業
特定非営利活動法人 日本環境斎苑協会の2016年度報告書総括より

  • 厚生労働省や医学関連学会,機器メーカーからの公式コメントは確認できず
  • 以前は日本不整脈学会から注意書き有り(上記の火葬場での対応と概ね同じ)

臨床現場での具体的な対処方法
➜ 火葬前に(家族から)葬儀場に連絡火葬時の破裂音火葬後の金属遺物の残留を説明の上,同意を得ることができたら,遺体からペースメーカを取り出さないことが多い

(投稿者 川崎)

2018-01-30

溺死 Drowning


ポイント
  • 低体温,アシデミア,高CO2血症,低O2血症,代謝性アシドーシス,血液希釈(海水でも濃縮は目立たない?)
  • 水自体による気道閉塞あるいは喉頭攣縮による窒息のためか,肺水腫は稀であることにも注目しておきたい
溺水 水死
(投稿者 川崎)

複合性局所疼痛症候群

Complex regional pain syndrome (CRPS)
骨折などの外傷や神経損傷の後に疼痛など多彩な症状が遷延する病態


(投稿者 川崎)

2018-01-29

拡張期雑音

拡張期雑音は音量が小さいため意識しないと認識することは難しい
代表例 大動脈弁逆流(下記の 🎧 🎬 ),肺動脈弁逆流,僧帽弁狭窄


※口真似=ドッ・ド~~~  ドッ・ド~~~=灌水用雑音と表現される


※拡張期に大動脈から左室に逆流するモザイクシグナルに注目

ポイント
  • 聴診器の膜部(大きい方)を胸壁にしっかり押し当てる(聴診後に胸に跡が残る)
  • 拡張期の雑音は聴取すれば必ず異常である ➜ 心音の簡易辞書は コチラ

(投稿者 川崎)

2018-01-28

HD - HF - HDF - CHD - CHF - CHDF

透析室で行われる通常の血液浄化
  • HD=Hemodialysis=血液透析
  • HF=Hemofiltration=血液濾過
  • HDF=Hemodiafiltration=血液濾過透析

ICUなどで行われる臨時の血液浄化
  • CHD=Continuous Hemodialysis=持続的血液透析
  • CHF=Continuous Hemofiltration=持続的血液濾過
  • CHDF=Continuous Hemodiafiltration=持続的血液濾過透析

(透析療法 HDとHDF,CHD,CHDFなど.日内会誌 2010;99:1013-9

まとめ 🗿
  1. HD ➜ 半透膜を介する濃度勾配を利用した浄化法で尿素窒素などの小分子の除去に優れている
  2. HF ➜ 半透膜を介する濃度勾配に圧勾配を追加した浄化法でHDより中~大分子の除去に優れる
  3. HDF ➜ HDの小分子除去能にHFの中~大分子除去能を併せ持つため効率よく血液を浄化できる
  4. C~ ➜ 血液流量や透析液流量,除水量をHDやHFより低く設定できるため循環動態への影響が小

(投稿者 川崎)

2018-01-27

松下金曜会 「嚥下障害」

嚥下障害のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 体重減少,血便 ⇒ 悪性疾患
  2. 進行性の症状 ⇒ 悪性疾患,神経変性障害
  3. 嚥下障害を伴う耳痛 ⇒ 下咽頭病変(扁平上皮癌または甲状腺癌など)
  4. 発音および嚥下障害に伴った嗄声または疼痛 ⇒ 筋ジストロフィー
  5. 構語障害 ⇒ 脳卒中
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2018-01-26

日本のMRIとCTの台数

日本は極めて多くのMRIとCT機器を有する国家である
2011年で各々6,000台と13,000台程度 ➜ 共に世界一

Organisation for Economic Co-operation and Development 経済協力開発機構のOECDiLibrary より

(投稿者 川崎)

Brittle型糖尿病

  • 特に理由なく血糖値が極端に不安定なパターンを示す糖尿病
  • brittle (形)脆弱な,不安定な 【brítl/ブリトゥル】 実際の音声
  • 同病態ではケトアシドーシスや低血糖を生じるリスクが上昇する
  • 日本語では不安定型糖尿病あるいはブリットル型糖尿病と表記

原因
インスリン抗体,受容体障害,肝腎不全,Somogyi効果,Dawn現象,吸収不良症候群,内分泌疾患,慢性感染など
詐病や不適切あるいは偽装的インスリン注射、摂食障害,うつ病などが背景にあるケースもあるため注意を要する
  • Somogyi効果(ソモギー=人名) ➜ 相対的な低血糖でグルカゴンやノルエピネフリンなどが分泌され一時的な高血糖が生じる
  • Dawn現象(ドーン=暁,夜明け) ➜ 早朝(午前3時~8時頃)に血糖値が上昇する現象で睡眠中に分泌される成長ホルモンが関連

治療
食事,運動,再教育および原因検査,速効型または超速効型インスリンの頻回注射療あるいは持続皮下注入療法(CSII: Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)

典型的な症例報告 💁 糖尿病 2002;45:495-9

(投稿者 川崎)

2018-01-25

身体所見 収縮性心内膜炎 vs 心タンポナーデ

収縮性心膜炎
  • 心音心膜ノック音=拡張早期の過剰心音(高調音を広範囲に聴取)
  • 頸静脈 ➜ W型あるいはM型=深いy谷(心内圧dip and plateauのdipに相当)
  • 呼吸変化 ➜ Kussmaul徴候=吸気時に頸動脈の怒張(通常は吸気時に減弱する)

心タンポナーデ
  • 心音 ➜ 特記所見なし(減弱あるいは心膜炎初期なら心膜摩擦音はありえるが・・・)
  • 頸静脈 ➜ y谷の消失(心周期を通じて持続的な圧迫を受けるため)=V sign
  • 呼吸変化 ➜ 奇脈=吸気時の収縮期血圧が10mmHg以上低下(通常は3-9mmHgの低下)

Kussmaul徴候は心不全や肺塞栓でも出現することあり
※奇脈は肺塞栓,出血性ショック,COPD,緊張性気胸でも出現する
※心膜液かつ>12mmHg以上の奇脈なら心タンポナーデの陽性尤度比5.9
収縮性心膜炎で奇脈は稀,同様に心タンポナーデKussmaul徴候は稀

🔮 収縮性心膜炎は心エコー図でも気づきにくいから身体所見で疑うことが重要 🔮

参考:白石裕一先生の心タンポナーデ.心エコー 2018;19:70-76

(投稿者 川崎)

2018-01-24

微小変化型ネフローゼ症候群について

微小変化型ネフロ―ゼ症候群(MCNS:Minimal Change Nephrotic Syndrome)


1次性糸球体疾患によるネフロ―ゼ症候群の一種。

【疫学】 小児(3-6才)と若年者に好発する。小児の1次性ネフロ―ゼ症候群の80%以上を占め、成人の1次性ネフロ―ゼ症候群でも主要な原因である。
【症状】 全身性浮腫、タンパク尿、低Alb血症、高LDL血症、腎機能低下、末梢循環不全、免疫異常
【原因】 糸球体のたんぱく質透過性が変化することによって起こると考えられる。他の糸球体疾患のような膜構造の破壊ではなく、活性型T細胞の産生するサイトカインによって膜電荷の消失が起こり、分子量の比較的小さなたんぱく質のみが漏出するため、たんぱく質の選択性を生じると考えられている。(分子量の大きなたんぱく質は糸球体の膜構造によって糸球体を通過できず、分子量の小さなたんぱく質は膜電位による反発で通過できない)
【臨床像】 発症は急激で、全身性浮腫や高LDL血症を伴いやすい。尿蛋白の選択性が高く、ステロイド反応性も高い血尿は伴いにくい。
【検査】 光顕上はほぼ正常の糸球体構造であるが、電顕上にて糸球体係蹄壁の上皮細胞に足突起の消失を認める。
【治療】 副腎皮質ステロイドが著効する。60mg/dayより開始、効果あれば適宜漸減。(効果判定は一日尿蛋白<1.0gを目安に) 抵抗性の場合は免疫抑制剤の併用も有効。
【予後】 基本的にステロイドが著効するため良好だが、再発を繰り返す症例も多い。

【診断基準(ネフローゼ症候群全体)】
①一日の尿中蛋白量3.5g↑が持続する
②低Alb血症(血清Alb<3.0g/dLor血清総蛋白量<6.0g/dL)
③浮腫
④高LDL血症

※①②が必須、③④は必須ではない

(投稿者 室谷)