このブログを検索

2024-05-12

冠動脈:生理の整理

冠微小循環障害CMD: coronary microvascular dysfunction)
  • 心外膜血管より多くの血流を担う微小循環の障害で様々な病態に関与(下図)

冠血流予備能CFR: coronary flow reserve)
  • 最大冠血流量(薬剤投与時など)を安静時冠血流量で除した値で2.0以上が正常

冠微小血管抵抗指標IMR: index of microvascular resistance)
  • 最大充血時(薬剤投与時など)の冠内圧を冠血流量で除した値で25以下が正常

- さまざまな心血管疾患における CMD の役割 -

(投稿者 川崎)

2024-05-11

分化症候群 Differentiation syndrome (DS)

  • 急性前骨髄球性白血病(APML)へのオールトランスレチノイン酸 (ATRA) 療法の合併症
  • レチノイン酸症候群(Retinoic acid syndrome: RAS)とも呼ばれる(近年はDSが優勢)
  • 頻度はATRAやヒ素で治療されている患者の2~27%(治療開始から数週間以内に発生)
  • 発熱や5 kg以上の体重増加,末梢浮腫,低血圧,急性腎不全,間質性肺浸潤などで発現
  • 原因不明(APML細胞におけるサイトカイン分泌の変化とATRAによる接着分子の分化?)
  • 治療は(早期に認識し)ATRAまたはヒ素の中止+コルチコステロイド投与の組み合わせ

2024-05-10

💊 スタチンの選択

Drぷー(@Dr_ppooohh)先生のコメント(2024年3月26日午後8:02
  • 下がるからロスバスタチン一択で開始
  • 副作用で継続できなかったらアトルバスタチンへ変更
  • それも副作用で継続できなかったら泣きながらピタバスタチンにしてます()


💁 スタチンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-09

今週の一枚 🎯 有名も役立たず?

息切れ症例の心尖拍動

😐 偽ブロードベント徴候(Pseudo Broadbent's sign)
  • 臥床(20度ヘッドアップ)で心尖部拍動を視認(矢印)
  • 拍動は陥凹で時相は収縮期(背後のモニター音に注目)
  • 最終的に本例は心房中隔欠損による心不全と診断した

😕 独り言
  • 心尖拍動の収縮期陥凹は,収縮性心膜炎で出現する所見(ブロードベント徴候/Broadbent sign)として有名です.しかし本例ではクスマウル徴候や心膜ノック音はありませんでした(フリードライヒ徴候は微妙に陽性?)
  • ベットサイド心エコー図では右心系の拡大が少し目立ちましたが,明らかなシャント疾患を検出できませんでした.その後にハイエンド機で再検して,心房間のシャントを認めたため心房中隔欠損による心不全と診断しました.
  • この収縮期陥凹(systolic retraction)は,様々な病態で認めます(自験例1自験例2).収縮性心膜炎で欠くことも多く,個人的には臨床現場であまり役立たない所見(感度も特異度もともに低い)と思っています.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-05-08

ENT,ESS

  • 先日のERでのタイムトライアル(申し送り)で「ENT, ESS」って記載がありました.略語は便利ですが,ERではあまり通じない略語でした.TPOを考えて使いたい 😁 TPOって死語?(Time・Place・Occasion)

  • ENTはEar+Nose+Throatで耳鼻科医はENT doctor(耳鼻咽喉科医師,otorhinolaryngologist)
  • ESSはEndoscopic Sinus Surgery(内視鏡下鼻副鼻腔手術)で,副鼻腔炎(蓄膿)などで行う
  • 概略は外鼻孔経由に篩骨洞および副鼻腔の自然口を開大して,洞の通気と排泄の改善を図る
  • ESSが慢性副鼻腔炎に導入されてから約30年以上で,現在は世界的なゴールドスタンダード
  • 経鼻経由で下垂体腫瘍,眼窩疾患や頭蓋底疾患などbeyond the sinusに適応が広がっている
  • ただしENT科の医療事故は鼻領域が2割程度でESS関連がその半数以上(複視や視力障害など)


👃 鼻に関連する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2024-05-07

若葉マーク(初心者)や紅葉マーク(高齢者)だけではありません

身体障がい者マーク
  • 肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている運転手が車に表示するマーク(努力義務:所轄は警察庁交通局交通企画課)

聴覚障がい者マーク
  • 聴覚障がいであることを理由に免許に条件を付されている運転手が車に表示するマーク(義務:所轄は警察庁交通局交通企画課)


(投稿者 川崎)

2024-05-06

最近の耳学問 👂

  • 「太った?」の簡単な確認はベルトサイン(穴が一つずれた)や指輪サイン(抜けにくくなった)
  • ミルリノン(医薬品添付文書)は左心不全の治療薬であるが右心機能もサポート
  • 血清hCG(Human chorionic gonadotropin/ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が2000以上(+超音波検査で胎嚢なし)なら異所性妊娠を考慮
  • 閉塞性肥大型心筋症の頸動脈所見 spike and dome pattern は dart and dome pattern とも称される(ダーツ矢のdart)
  • 心尖部の血栓が疑われるときはコンパウンドをオフにする(空間コンパウンドは多方向の超音波を合成する画像処理で,デフォルトはオンが多い)
  • Eclipsed MRとは,(左室駆出率が保たれた患者で明らかな誘因なく)一過性にごく短時間生じる急性の機能性僧帽弁逆流(eclipseは日蝕や月蝕の蝕)
  • 感染性心内膜炎の7-8割に貧血を認める(ただしエビデンスとして確認できず...😂)
  • サッケード(saccade)とは高速な眼球運動のことで,物体を網膜中心窩で捉えることに寄与(適切なフィードバックがあるため視界はブレない)
  • 近代哲学の祖であるドイツのカント(1724-1804)は夏も冬も朝4時55分に起きていた(どうでもいいことですが投稿者も全く同じだったので...😅)

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-05

冠状静脈洞口部閉鎖 CSOA

  • 冠状静脈洞口部閉鎖(coronary sinus orifice atresia: CSOA)は,冠静脈洞(coronary sinus: CS)が右房に開口しない状態である.冠静脈血流のうっ滞を回避する必要があるためCSOAが単独で存在することは稀
  • 通常はunroofed coronary sinus(URCS)や左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava: PLSVC),心房中隔欠損症(atrial septal defect: ASD),冠動静脈瘻など代替となる静脈還流路を合併する.
  • 冠動脈の血流量は心拍出量の約5%であり,PLSVC非合併例ではCSのシャント血流は臨床的にあまり問題にならない.またPLSVC,ASD,卵円孔開存など他の合併奇形がなければシャント修復も必要ではない.


💁 冠静脈洞に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-05-04

氷水保存してないですが…

📞 電話中継
  • 医師 「ID **の方の残血で追加をお願いします」
  • 技師 「わかりました.項目は何ですか?」
  • 医師 「BNPです」
  • 技師 「検体を冷蔵保存していませんが...」
  • 医師 「別に構いませんよ」
  • 技師 「NT-proBNPではダメですか?」
  • 医師 「腎機能が悪いので無理です」
  • 技師 「でも,値が...」
  • 医師 「コメントに常温保存2時間後測定とでも加えておいてください」
  • 技師 「・・・」

💀 BNPは基本冷蔵保存
  • BNPは血中プロテアーゼによる分解を受け易いため,EDTAなどで処理された検体を採血後速やかに冷蔵保存(当院では氷水保存)する必要があります.
  • プロテアーゼ(protease)とは,蛋白質をポリペプチドやアミノ酸へ分解するときの触媒酵素の総称で,ペプチド配列を認識(ただし一部は非選択性)
  • EDTA(エチレンジアミン四酢酸:ethylenediaminetetraacetic acid)はCaイオンとキレート結合し除去(凝固抑制)+プロテアーゼ活性抑制効果あり
  • しかし下図のように減弱することを理解すれば凡その目安にはなると思います.採血をやり直す患者さん負担と天秤にかけて判断すればいいと思います.



BNP値の変化(● 室温保存,○ 4℃保存)
🉐 BNPに関連する過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2024-05-03

サイトカイン放出症候群 Cytokine release syndrome (CRS)

  • 概略 抗体医薬品に関連して生じた大量のサイトカインによる生体への過剰な反応
  • 機序 炎症性サイトカインの増加,Tリンパ球・マクロファージ・内皮細胞の活性化
  • 時期 投与翌日~14日(~数週間)に発生(ただし残存腫瘍や投与医薬品で異なる)
  • 重症 サイトカインストームあるいはサイトカインストーム症候群と呼ばれている
  • 症状 発熱・悪心・悪寒・筋肉痛から,呼吸困難・ショック・多臓器不全・DICほか
  • 治療 アセトアミノフェン,トシリズマブ(IL-6抑制),副腎皮質ステロイドなど


- Day 45にサイトカイン放出症候群を生じた肺腺癌の72歳男性 -

💁 サイトカインに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)