1週間前より増悪する息切れで来院した壮年の大酒家
🎤 現場中継
- 胸部X線では両側に大量の胸水貯留を認めた.左心不全が疑われ循環器内科医がコンサルトされたが,身体所見に心不全を示唆する所見(座位での頸静脈拍動やギャロップ音,下腿浮腫など)はなく,ベットサイド心エコー図にも特記すべき異常所見はなかった.
- 採血ではP型アミラーゼが上昇していた.CTで膵臓に著明な腫大はなかったが,主膵管が不整に拡張していた.膵体部の不整形な嚢胞性病変が食道方向に進展しているように観察され、周囲の脂肪織濃度は上昇していた(下図).この時点で膵炎と仮性嚢胞が疑われた.
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穿刺では血清胸水でP型アミラーゼの高値が確認され,食道周囲の仮性嚢胞が破裂し胸腔に穿破した可能性が考えられた.ドレナージと膵炎治療で胸水は経時的に減少した.最終的にアルコール性慢性膵炎の急性増悪,膵仮性嚢胞の胸腔内穿破(膵性胸水)と診断した.
膵性胸水 💦
- 膵液が直接漏出することに起因する胸腔内の液体貯留(炎症による反応性を除く)
- 30~60代男性の左側に多く,82~95%はアルコ ール性の慢性膵炎に関連している
- 発生頻度は膵仮性囊胞の1%以下で,胸水中アミラーゼ・リパーゼの上昇が特徴的
- 膵管-胸腔瘻孔の診断はERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)により確診される
- 重症例では外科療法が推奨されてきたが,近年は経皮的ドレナージで保存的加療
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(投稿者 川崎)
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