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2023-02-28

ロードアンドゴー Load and Go

  • JATECジェイエイテック(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)はPTD(preventable trauma death/防ぎ得る外傷死)を回避するためMISTなど初期診療手順を学ぶ(復習はコチラ

MIST:ER収容要請時に救急隊から確認する項目
  • Mechanism(受傷機転)
  • Injury(損傷部位)
  • Signs(バイタルサイン)
  • Treatment(行なった応急処置)

  • JPTECジェイピーテック(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)は救急救命士などが受講するプレホスピタルの外傷教育プログラムで,標準化されたLoad and Goなどを学ぶ

Load and go
  • 病院搬送を優先し生命維持に関係のない部位の観察や処置は極力省略
  • 到着5分以内に現場を出発し収容後に車内で追加の詳細な観察を行う
  • ロードアンドゴー(L&G)の頻度は広島圏域外傷14,148例中6.6%(

💁 外傷に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-02-27

スタチンは必要?

Q 60代前半の閉経後女性が健診で脂質異常を指摘
  •  LDLコレステロール 182 mg/dl
  •  HDLコレステロール 72 mg/dl
  • 生来健康で他の併存疾患はない
  • 喫煙歴なく心疾患の家族歴もなし


A 考え方(一例)

💁 脂質異常症に関する過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-02-26

ランブル疣贅 Lambl’s Excrescences

  • ボヘミア(現チェコ)の医師 ランブル が報告(Wien Med Wochenschr 1856;6:244-7)
  • 半月弁(特に大動脈弁閉鎖線上)に発生し,別名はストランド(strands,織り糸)他
  • 発生機序は弁の摩耗と裂傷によって引き起こされる些細な内皮損傷によると思われる
  • 多くの例は無症候性であるが大動脈弁尖病変は塞栓子(頻度は不明であるが稀と予想)
  • 無症候は慎重な経過観察,塞栓症例は抗凝固・血小板薬を考慮,2度目では切除を考慮
  • より大きい乳頭状線維弾性腫は弁閉鎖線〜弁上や心房・心室の心内膜表面にも生じ得る


脳梗塞を発症した生来健康な男性の経食道エコー図と摘出病変

(投稿者 川崎)

2023-02-25

ポイツ・ジェガース(or イェガース)症候群 Peutz-Jeghers syndrome

  • 概要 過誤腫性ポリポーシスと皮膚・粘膜の色素斑を特徴とした疾患
  • 命名 オランダ医師 Peutz(1921年)と米国医師 Jeghers(1949年)
  • 原因 LKB1/STK11遺伝子変異(常染色体顕性遺伝/約50%は孤発例)
  • 疫学 国内の推定患者数は約600~2400人(平均の診断年齢は23歳)
  • 所見 乳児期〜口唇・口腔・指尖に数mmの色素斑+消化管ポリープ
  • 症状 ポリープ増大で黒色便・血便・貧血,反復性腹痛,腸重積など
  • 病理 粘膜上皮の過誤腫的過形成と粘膜筋板〜線維束の樹枝状増生
  • 鑑別 家族性腺腫性または若年性ポリポーシス,カウデン症候群など
  • 合併 20歳までに1~2%が膵臓、乳房、精巣、卵巣・子宮の悪性腫瘍
  • 治療 根治法はない(予防的に内視鏡的ポリープ切除術などを行なう)


51歳女性:幼少時から口唇や手指に色素斑,20歳時に横行結腸腫瘍切除

(投稿者 川崎)

2023-02-24

閉塞性肥大型心筋症の身体所見:まとめ


😀 実際の所見

 😙 独り言
  • 頸静脈の増高a波や心尖のダブルインパルス力強い第4音の存在は(閉塞機転の有無に関わらず)肥大型心筋症の画像検査診断に間違いなく役立ちます.
  • 頸動脈のスパイク・ドーム波形は有名ですが僕は自信がありません.一方,偽駆出音は稀ですが独特のリズムなので,耳コピしておけば一発診断が可能です.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-02-23

今週の一枚 🎯 言うは易く行うは難し

労作時の息切れで来院した症例(端座位)

🐤 解説
  • 端座位の状態で頸部の下1/2に周期的は拍動(隆起)を認める
  • 陽性波 ➜ 頸動脈(コリガン脈)または頸静脈(ランチシ徴候
  • 頸部下端の用手的圧迫で同拍動は消失した ➜ 内頸静脈の拍動
  • 本例は最終的に慢性左心不全の増悪によるランチシ徴候と診断

 🐦 つぶやき
  • 頸部で陽性波を見た時,静脈性か動脈性かの鑑別が必要です.そのポイントとして,①触診による拍動の強さ,②呼吸性変動の有無,③脈触知を併用した時相判定,④圧迫による消失の有無,などが知られています.
  • しかしこの鑑別は"Easier said than done"(言うは易く行うは難し)と思っています.陽性波を示すほど高度に上昇した中心静脈圧の拍動はまるで動脈です(自験例).もちろん呼吸変動なんてありません.
  • 本ビデオでは圧迫で消失していますが,強く抑え込まないと消えてくれませんでした(3度撮り直し😅).時相の違いも僅かだし...動脈性なら収縮期 vs 静脈性(巨大v波/cv merger)ならⅡ音ピーク(収縮後期〜拡張早期)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-02-22

ディープサルカスサイン(深溝徴候)Deep sulcus sign

  • sulcus【名】溝,深いしわ,脳溝 (発音:sʌ́lkəs/サルカス)
  • 仰臥位の胸部X線写真で,肋骨横隔膜角が深く明瞭であること
  • この肺底部の透過性亢進(basilar hyperlucency)は気胸を示唆

外傷性の気胸(白矢頭)とディープサルカスサイン(黒矢頭

(投稿者 川崎)

2023-02-21

CVポートの形状

👽 CVポートの原則
  • カテーテルの閉塞の有無を確認するときは陽圧フラッシュが基本.逆流防止機能を有する場合があるため(下図の一方弁型),陰圧による逆血の確認はカテーテルの破損につながることがある.

🐤 オープンエンド型
  • 先端が開放されているため逆血確認が容易であるが,血液のカテーテル内逆流で血栓形成・閉塞を生じることがある.ロックはヘパリンを使用(ただし内腔コーティング時は生食でOK)
🐥 一方弁型
  • 逆流防止(一方弁)がついているため,陰圧をかけてると弁破損を起こすリスクがある.カテーテル開通の確認は生理食塩水のフラッシュのみで行う.採血に使用できない欠点もある.
🐣 グローション型Groshong® Catheter
  • カテーテル側面にスリットがあるが,通常は閉鎖しているため血液は逆流せず血栓が形成されにくい.輸液注入時あるいは血液吸引時のみスリットが開く(下図).ロックは生食で可

グローション型とオープンエンド型のシェーマ

(投稿者 川崎)

2023-02-20

復習

  • Twitterで特徴的な画像を見たのですが(下図),病名を思い出せませんでした.調べてみると前回眼にしたのは2020年秋の循環器内科地方会でした(ココ).ちょっと反省を込めてまとめておきます.

- 息切れで来院した91歳男性 -

⚔ シミター症候群(Scimitar syndrome)
  • 右肺静脈が下大静脈に流出する部分肺静脈還流異常(PAPVR)
  • 初報は1836年のCooperとChassinatであるが命名は1960年(
  • シミターとは,かつてトルコ軍が使用した剣でサーベルの原型
  • 命名は胸部X線で異常肺静脈が刀身と柄のように見えるため
  • 頻度は10万出生あたり1-3人で男女比は2対1,全PAPVRの3〜6%
  • 心房中隔欠損(80%),動脈管開存症,心室中隔欠損症など合併
  • 症状は無症状〜右心系の負荷(心不全),再発性肺感染症など


- 解剖学的シェーマ -

(投稿者 川崎)

2023-02-19

マン・イン・ア・バレル症候群 Man in a Barrel Syndrome: MIBS

  • 顔面・首・両下肢の強度が保たれている状態で,両側の上腕両麻痺を特徴とする病態
  • 命名はまるで樽(barrel)の中に閉じ込められたように見えるため(aがtheでもOK)
  • 脳卒中,腫瘍,外傷,自己免疫,炎症による脳幹,頸髄,腕神経叢,末梢神経の損傷
  • 予後は虚血性損傷の程度によって異なる(例:脳卒中後のMIBS例は生存率が10%未満)

筋萎縮性側索硬化症によるMIBSと頭垂れ症を生じた56歳男性

(投稿者 川崎)