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2025-09-03

トリプタン感覚

  • トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)に出現する特有の副作用で、頚部や胸部,咽頭,肩の絞扼感~圧迫感,痛み,息苦しさなどがある。通常は服用後20~30分で出現し、10分から数時間で自然に消失することが多い。 食道平滑筋の運動亢進や肺動脈に対する影響、骨格筋のエ ネルギー代謝の異常、痛感受性の増加などが原因と考えられている。


👺 トリプタンの問題点
  1. ノンレスポンダー ➜ 頻度は約10–30%でブランド変更やNSAIDsを併用
  2. トリプタン感覚 ➜  心電図変化なく心臓や脳の有害事象にも関連せず
  3. 血管収縮作用 ➜ 心疾患や脳血管障害、未コントロール高血圧で禁忌


🚑 片頭痛 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

 
(投稿者 川崎)

2025-09-02

Burch-Wartofsky ポイントスケール(BWPS)

  • 甲状腺クリーゼの可能性および重症度を評価するための簡便な臨床の診断ツール
  • 米医師BurchとWartofskyが提唱(Endocrinol Metab Clin North Am 1993;22:263-77
  • 項目:体温調節障害,心血管系,消化器系,中枢神経系,増悪因子(計算ページ
  • 判定:45点以上=確定,25~44点=切迫甲状腺クリーゼ,25点未満=可能性は低い

 本甲状腺学会の甲状腺クリーゼ診断基準(第2版)-

🚑 クリーゼに関する過去の投稿 ➜ コチラ

 
(投稿者 川崎)

2025-09-01

フィジカルクイズ(No. 19 & 20)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-08-31

Martorell's ulcer マルトレル潰瘍

  • 概要 高血圧(拡張期?)に関連した下肢の痛みを伴う難治性潰瘍
  • 原因 高血圧性下肢潰瘍、高血圧性潰瘍、壊死性血管性皮膚炎など
  • 由来 スペインの血管外科医 Martorell(Angiology 1950;1:133-140
  • 症状 疼痛の強い単一または複数の病変(主に下腿前外側部に出現)
  • 疫学 高血圧のコントロール不良な中年(50~70歳)の女性に多い
  • 原因 内側動脈の小細動脈の閉塞により引き起こされる虚血性病変
  • 鑑別 カルシフィラキシス壊疽性膿皮症塞栓症、末梢動脈疾患
  • 治療 Ca遮断薬やACE阻害剤、プロスタグランジンE(PGE1)など
  • 予後 他の病因による潰瘍より強い痛みを伴い治療への反応は不良


- マルトレル潰瘍の1例 -

(投稿者 川崎)

2025-08-30

論文 🏆

  • 近隣クリニックから当院へ紹介例が論文になりました
  • 労作時の動悸がありマスター負荷で2:1伝導ブロック
  • 心エコー図や運動負荷タリウム、ホルターに問題なし
  • その後に目薬(β遮断薬含む)の使用(片眼)が判明
  • 目薬の中止後は安定するも1年後に完全房室ブロック
  • なんと今度は両眼に点眼 → 中止後にブロックは消失
  • その後に眼科で閉塞 隅角ぐうかく緑内障に対して手術を実施

- 3度房室ブロックが出現時の心電図 -

😀 知識の整理
  • ベータ遮断薬を含む点眼薬の全身的な影響は,正常な心血管機能を有する個人では極めて軽微で無視できる.
  • しかし房室ブロックを呈した243症例の検討では,その内12症例でβ遮断薬を含む点眼薬を処方されていた.
  • 点眼薬の中止後この12例中7例では洞調律が回復したが,5例では最終的にペースメーカ植込み術を要した.
💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-29

🏆 論文

  • 当院循環器内科の症例報告が出版されました🎉
  • 動悸で来院されて最終的に肥大型心筋症と診断
  • 通常の心エコー図で心尖のポーチは検出されず
  • ハンドグリップ負荷も特に異常所見は出現せず
  • ただし運動負荷後では奇異性ジェットフロー
  • 心臓MRで明らかな心尖部ポーチは描出できず

🙈 本例の抄録です
  • An early diastolic flow from the apex toward the base of the left ventricle-known as diastolic paradoxical jet flow-is associated with adverse cardiovascular events in patients with hypertrophic cardiomyopathy. This subtle flow, indicative of a concealed apical pouch, can be unmasked by exercise stress echocardiography even when no pouch is visualized on cardiac magnetic resonance imaging.
  • 左室心尖部から心室基部に向かう拡張期早期血流(拡張期奇異性ジェットフロー)は、肥大型心筋症患者における心血管イベントの有害事象と関連している。この微細な血流は、心尖部ポーチの存在を示唆しており、心臓磁気共鳴画像検査でポーチが描出されない場合でも、運動負荷心エコー検査で検出できる可能性がある。(AIの自動翻訳)

💫「Paradoxic Jet Flow: PJF(奇異性血流)」の過去の投稿は コチラ

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-08-28

今週の一枚 🎯 教育ビデオ

僧帽弁逆流症(Mitral regurgitation: MR)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音の音量は漸増や漸減に欠く箱型(長方形)
  • Ⅰ音とⅡ音は心雑音に埋没するため認識が困難
  • 僧帽弁逆流,三尖弁逆流,心室中隔欠損の3疾患

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠からのアドバイス(過去の投稿)を元に作成した,心音図をなぞりながら音を聴く教育ビデオです(版権放棄かつ利用時の引用記載も不要)
  • 最初は「実際の心音と心音図上の線の動きをあわせるのが大変だな~」と思いましたが,パワーポイントを用いてやってみると意外に簡単に作成できました.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-08-27

ツッカーカンドル器官 Organ of Zuckerkandl

👽 Zuckerkandl器官
  • ヒトの胎児や新生児で認めるクロム親和細胞の集団
  • 大動脈の分岐部または下腸間膜動脈の起始部に存在
  • 由来はハンガリーの病理医 Zuckerkandl E (1849–1910)
  • 胎児循環系にカテコールアミンを分泌(血圧の調節)
  • 副腎髄質の発達に伴い1歳半~退化(春期以後なし)
  • パラガングリオーマまたは褐色細胞腫の発生源となる

参考)内科 2015;116:500,他

- パラガングリオーマ(傍神経節腫/髄外褐色細胞腫)を発症した39歳男性 -

(投稿者 川崎)

2025-08-26

脳疾患 vs ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体薬

  • 先日のカンファでアテローム性脳梗塞の再発かつスタチン不耐の症例を議論しました.LDL-C管理にはPCSK9阻害薬が考えられますが,適応に関する知識に曖昧な部分があったのでまとめました. 
  •  本邦ではレパーサ®(一般名:エボロクマブ)と レクビオ®(一般名:インクリシラン)が使用可能です.各々の「効能又は効果」および「それに関する注意点」は以下のように共通していました.

📍 効能又は効果
  • 家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症
  • ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。
    • 心血管イベントの発現リスクが高い
    • HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又は HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない
📌 効能又は効果に関連する注意
  • 〈HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない場合〉本剤は以下に示す患者に使用すること
    • 副作用の既往等によりHMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が 困難な患者
    • HMG-CoA還元酵素阻害剤の使用が禁忌とされる患者

😑 独り言
  • 効能又は効果の「以下のいずれも満たす場合に限る」という点からは,今回の症例にはPCSK9阻害薬の保険適応はなさそうです.ただしシステマティック・レビュー(Cochrane Database Syst Rev 2020;10:CD011748)ではPCSK9阻害薬の有意な脳卒中予防効果が示され,脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕でもその使用は(ある程度)推奨されているようです(8ページ参照:推奨度A~B,エビデンスレベル高~中).

💉 PCSK9阻害薬に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-08-25

Rosenbach sign ローゼンバッハ徴候

  • 大動脈弁逆流症で出現する右上腹部の拍動(肝臓の収縮期拍動)
  • 由来はドイツの医師Ottomar Ernst Felix Rosenbach(1851–1907)
  • 報告はÜber arterielle Leberpulsation. 1878:4:498-500(コレ?
  • 甲状腺機能亢進で出現する閉眼時の眼瞼の微細な震えも同名徴候

 

😁 おまけ
  • 個人的には甲状腺クリーゼの若者で肝拍動を視診できたことがあります.もちろんこれもローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼んでいい? 

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)