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2026-01-03

心拍出量のFick法

心拍出量を測定する際,熱希釈法よりFick法が望ましい病態はどれか. 2つ選べ







判定


😐 解説:正解 d, e
  • 心拍出量の測定に関する問題である.心拍出量は酸素消費量を動脈血と混合静脈血の酸素含量差で除して求めるFick法と指示薬希釈法があり,後者ではSwan-Ganzカテーテルが開発されてからは冷水を指示薬とする熱希釈法が一般的に用いられている.
  • Fick法の原理は,肺での血液の酸素摂取速度と肺静脈と肺動脈の酸素含量差から肺血流量は決定され,定常状態では血液の酸素摂取速度と肺による室内空気からの酸素取り込み速度は等しくなることから,肺血流量=酸素消費量÷肺静脈と肺動脈の酸素含量差で求められる.心臓内短絡(シャント)がなければ肺血流量は体血流量に等しくなることから心拍出量も測定することになる.通常は混合静脈血として肺動脈血を用いるが,肺静脈血のサンプリングは困難なため左室あるいは動脈血で代用している.心臓内シャントがあった場合には混合静脈血として肺動脈血の代わりにシャント直前の心腔内でサンプリング行う必 要がある.
  • 熱希釈法は肺動脈内に先端を留置したカテーテル近位部(右房)のポートから冷たい生理食塩水を注入し,血液の温度変化をカテーテル先端のサーミスターで測定し,経時的な温度変化から肺血流量が計算される.Fick法と同様に心臓内シャントがなければ心拍出量を表すが,Fick法と比べて動脈穿刺を行っての血液サンプル採取が不要なことや速やかに結果がわかる利点がある.しかしながら,三尖弁逆流が存在すると注入した冷水がカテーテル先端のサーミスターに到達しにくくなるため温度が低下せずに心拍出量を過大評価することや,心臓内シャントが存在すると肺血流量と心拍出量が一致しなくなる.
  • よって,熱希釈法よりFick法での心拍出量測定が望ましいのは d.心房中隔欠損症と e.重症三尖弁閉鎖不全症の患者である.
  • a, c.心房細動や僧帽弁狭窄症があっても熱希釈法で心拍出量は測定可能である.
  • b. 肺動静脈瘻は心臓外短絡であり,奇異性塞栓症や脳膿瘍の原因にはなるが,熱希釈法による心拍出量の測定に支障はない.


(投稿者 川崎)

2026-01-02

Vogt-Koyanagi-Harada (VKH) disease フォークト・小柳・原田病(or 原田病)

  • 概略 メラノサイトに対する自己免疫性(疑い)
  • 命名 スイスのA. Vogt小柳美三原田永之助
  • 症状 両眼性ぶどう膜炎による視力低下や羞明
  • 眼外 髄膜炎、耳鳴、難聴、皮膚白斑、白髪など
  • 鑑別 サルコイドーシスおよびベーチェット病
  • 疫学 20~50歳のアジア女性に多い(特に日本)
  • 治療 大量ステロイドの点滴療法 → 内服の漸減
  • 予後 多くは治療によく反応し視力が改善する


- 初期段階の漿液性網膜剥離(上図)と末期段階の夕焼け眼底(下図) -

(投稿者 川崎)

2026-01-01

今週の一枚 🎯 元旦 🎍

労作時の息切れで来院例(座位)

😐 解説
  • 頚部の上1/3(顎下)に陥凹(右向き矢印)
  • 吸気負荷で別の部位に隆起(左向き矢印)
  • 拍動はいずれも不規則 ➜ 心房細動の疑い
  • 外頚静脈の怒張 ➜ クスマウル徴候(矢頭)
  • 内頚静脈の陥凹+外頚静脈怒張 ➜ 心不全
  • 頚動脈隆起(コリガン脈)➜ 大動脈弁逆流
  • 心エコー図では中等度の大動脈弁逆流あり
  • 最終的にARとAFを伴った心不全と診断した

💟 現場実況
  • 本例で初診時に身体所見を確認したときには,安静時の内頚静脈の陥凹が吸気後には隆起(ランチシ徴候)へ変化しました.もちろんこれで,中心静脈圧が高度に上昇した非代償性心不全と診断できました.
  • その後,看護師さんと車いすで検査に回ってもらいました(心電図や胸部X線,採血).その後の結果説明時(←この時に上記動画を記録)には,ランチシ徴候はなく代わりにクスマウル徴候を認めました.
  • 本例は吸気後に頚動脈拍動(コリガン脈)を認めます.よく見ると安静時にもすでにありそうです.通常,吸気で頚動脈所見は変化しません.本例は筋緊張などが加わり拍動が顕性化したと考えられました.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-31

🕗 毎朝のERラウンドの一コマ

  • 看護師長 「昨日のIOLの件ですが…最終的には大丈夫でした」
  • 内科部長 (小声で隣にいる外科部長に)「ねぇ,IOLって何?」
  • 外科部長 (聞いてきた内科部長に小声で)IOL...俺も知らん」

IOL (intraocular lens) 
  • 水晶体の代わりになる人工の眼内レンズのこと
  • 眼屈折力のおよそ3分の1は水晶体が担っている
  • 厚さ約4mm,直径約9mm,無色透明の凸形状
  • 毛様体と呼ばれる筋肉が繋がりZinn小帯が支持
  • 毛様筋が収縮・弛緩して遠方~近方まで明視可
  • 透明度や調節力が低下すると視機能に影響する
  • 白内障手術では水晶体を吸引しIOLを挿入する


- 眼内レンズ IOL の実例 -

(投稿者 川崎)

2025-12-30

コッホ現象 Koch’s phenomenon

  • 概略 結核菌に既感染の宿主に対してBCGを接種した場合,未感染例に接種した場合に比べ,接種局所に速やかに強い局所反応が出現すること
  • 背景 日本は2005年以降,BCG直接接種(ツベルクリン反応による結核感染の有無を判定せずに接種する様式)が導入されているため生じる
  • 定義 BCGワクチンを接種1~2日後(遅くても7日以内)に接種部に強い反応(正常では10日後頃から針痕が発赤 → 1~2ヵ月後に強い反応)
  • 対応 コッホ現象が陽性(Grade3以上)なら直ちにツベルクリン反応検査(ツ反)→ 2週間内のツ反発赤径≧10mmなら結核感染と判断
  • 追加 全例に胸部X線と胸部造影CT,クォンティフェロンあるいはTスポットの抗原特異的インターフェロンγ遊離検査(IGRA)を施行する


- Mycobacterium aviumによるコッホ現象を呈した7ヵ月男児 -

(投稿者 川崎)

2025-12-29

ペプロウの看護理論

  • 看護を看護師と患者の人間関係プロセスとして捉えた問題解決志向の理論
  • アメリカの看護師かつ看護学者 Hildegard E. Peplau(1909-1999)が提唱
  • 精神力学的看護(相互に影響し合いながら共に学び成長)という側面も有
  • この理論には方向づけ同一化開拓利用問題解決の4つの段階がある

    1. 方向づけ ➜ 見知らぬ者同士として出会い健康問題の解決に歩みだす
    2. 同一化 ➜ 患者は要求を満たしてくれそうな看護師を選択し反応する
    3. 開拓利用 ➜ 患者はサービスを最大限に利用しながら問題に対処する
    4. 問題解決 ➜ 患者問題が解決すると患者は看護師から独立し関係解除

参考)看護roo!,他

-うつ病の再発例:ペプロウ看護理論を用いた振り返り-

(投稿者 川崎)

2025-12-28

破格(はかく)

  • 先日「~の血管破格」という発表に出会いました.日常では「破格の待遇」や「破格の値段」などが思いつきますが医学では…
  • 破格」の意味(精選版 日本国語大辞典):きまりや先例を破ること,標準を破ること,通常の程度を甚だしく超えること,他
  • 解剖学で「破格」とは通常の人体構造から逸脱した形態を意味.必ずしも異常とは限らず,多様性の一つとして捉えられています.
  • Google Scholar で「血管破格」を調べると71件がヒットします(ココ).ただし「破格」は循環器用語集(第4版)には未収載

- Adachi V型血管破格を伴う胃癌の1例 -

(投稿者 川崎)

2025-12-27

有機リン中毒 💪 DUMBBELLS

  • 主病態はコリンエステラーゼ阻害による副交感神経の嵐で,農薬の服毒による自殺が多く致死率は15%以上(過去の投稿
  • 語呂合わせは便利だけど,問題は日本語話者としてダンベルを思い出せるかどうか…miosisやlacrimationも難しい単語 

👺 有機リン中毒の症状:ダンベル(DUMBBELLS )
  • D = Diarrhea (下痢) / Diaphoresis (発汗)
  • U = Urination (排尿)
  • M = Miosis (縮瞳) / Muscle weakness (筋力低下)
  • B = Bradycardia (徐脈)
  • B = Bronchorrhea (気管支分泌過多) / Bronchospasm (気管支痙攣) 
  • E = Emesis (嘔吐)
  • L = Lacrimation (流涙)
  • L = lethargy (無気力)
  • S = Salivation (流涎) / Sweating (発汗)

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-12-26

チアノーゼ Cyanosis

  • 皮膚や粘膜の青紫色変化で毛細血管内血液の還元Hb濃度≧5 g/dlで出現
  • 低酸素血症に特異的ではない(例:CO中毒の低酸素血症では出現せず)
  • 口唇や口腔粘膜,鼻尖,耳朶,指先ほかに出現(毛細血管血液色を反映)
  • 総Hb濃度の影響が強い(貧血で出現しにくく赤血球増多で出現しやすい)
  • 中枢性と末梢性(下表),ヘモグロビンの異常による血液性に大別できる
  • 血液性チアノーゼはメトヘモグロビン血症や乳児メトヘモグロビン血症他


中枢性チアノーゼ 末梢性チアノーゼ
酸素飽和度 動脈血
  • 低下(基準値 100%)
  • 正常(基準値 100%)
毛細血管内血液
  • 低下(基準値 85%)
  • 低下(基準値 85%)
静脈血
  • 低下(基準値 70%)
  • 低下(基準値 70%)
分類
  • 呼吸機能障害(泣き入りひきつけやARDSなど)
  • 右左シャント(Fallot四徴アイゼンメンゲル症候群など)
  • 肺胞内酸素分圧低下(高地環境)
  • 末梢循環不全(低心拍出症候群や寒冷曝露,レイノー現象など)
  • 動脈閉塞性疾患(動脈性塞栓症など)
  • 静脈閉塞性疾患(静脈瘤や血栓性静脈炎)
出現部位
  • 全身に出現
  • 指尖や鼻尖などの末端に限局(粘膜には認めないことが多い)



😐 おまけ
  • 上半身と下半身でチアノーゼの程度が異なると解離性チアノーゼDifferential cyanosis
  • 上半身優位のチアノーゼ ➜ 完全大血管転位(肺循環血液が動脈管を介して下行大動脈
  • 下半身優位のチアノーゼ ➜ アイゼンメンジャー化 or 大動脈縮窄症を伴う動脈管開存症

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-12-25

今週の一枚 🎯

呼吸困難感を訴える高齢者(数年前にペースメーカ植込み後)
血圧84/40mmHg,心拍数60bpm,酸素飽和度93%(酸素3L)


(投稿者 川崎)