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2025-01-18

アルファガル症候群 α-Gal syndrome

  • 概略 galactose-α-1,3-galactose(α-Gal)に対する特異的IgE抗体による反応
  • 感作 マダニ咬傷を介して糖鎖α-Galに経皮的な感作(α-Gal特異的IgEの産生)
  • 発症 α-Galを含む獣肉(哺乳類)で遅発性アレルギー(別名は肉アレルギー)
  • 追加 カレイの魚卵や抗がん剤のセツキシマブでも発症(鶏肉は問題ない)
  • 対策 マダニ回避(ペットや家畜を避ける)で経時的に改善することが多い


α-Gal症候群のイメージ

🍖 おまけ
  • α-Gal症候群は血液型がB型やAB型の人では少ないようです.同血液型ではガラクトース抗原が存在するため,α-Galに対するアレルギー反応が起きにくいようです.
  • 同様の理由で,表面にα-Galを持つマラリアや結核の発生率は流行地のB型頻度と正の相関関係があり,α-Galを持たない病原体のデング熱では無関係だそうです.


💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-17

薬剤性好中球減少症 Drug-induced neutropenia

  • 末梢血の好中球数が500/μl以下と定義することが多く,無顆粒球症や顆粒球減少症,agranulocytosisなども概ね類似した意味で用いられる.
  • 発生頻度に関して1.1~5.0例/100万人/年という報告がある.早期に認められる症状として発熱は必発で,その他に悪寒や咽頭痛などが挙げられる. 
  • 機序には免疫学的(アレルギー性:抗甲状腺薬のプロピルチオウラシル他)と骨髄造血細胞に対する毒性(中毒性:クロルプロマジン塩酸塩やβラクタム系抗菌薬など)がある.
  • アレルギー性なら過去にその医薬品に感作されていれば1時間~1日以内に発現し,感作されていなければ抗体が産生されるまでに1週間~10日を要する.中毒性なら発症までに数週間を要する.
  • 患者側のリスク因子:高齢,女性,腎機能低下,自己免疫疾患の合併などの場合に発症頻度が高い.明確ではないが遺伝的素因(HLA型、薬物代謝酵素の遺伝子多型)なども考えられている.
  • 発現投与量は医薬品により異なる.例えば抗甲状腺薬では用量非依存性で,サルファ剤(サラゾスルファピリジン)では用量依存性との報告がある.一方,同じ医薬品でも報告により用量依存性、非依存性の相反する報告もみられる.
  • 添付文書で血液検査が求められている薬剤には,チクロピジン塩酸塩やチアマゾール(開始2月は2週に1回),サラゾスルファピリジン(開始3月は2週間に1回,次の3月は4週間に1回,その後は3月ごと),クロザピン(投与初期に発現する例が多いので投与開始後18週間は入院管理下)がある.
  • 無顆粒球症の原因となり得る医薬品は多数にのぼるが,抗甲状腺薬,チクロピジン塩酸塩,サラゾスルファピリジン,クロザピン(治療抵抗性統合失調症治療薬)など頻度が高い医薬品以外にも,H2ブロッカー,NSAIDs,抗不整脈薬,ACE阻害薬などが重要である.


💣 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-01-16

今週の一枚 🎯

発熱が続く症例の眼瞼結膜

👀 点状出血(Petechiae)
  • 右の眼瞼結膜に複数の点状出血を認める
  • 収縮期雑音はあるが大動脈弁位は人工弁
  • 他の末梢サイン(オスラー結節など)無
  • 経胸壁心エコーで大動脈弁周囲は不鮮明
  • 経食道心エコーで大動脈弁の疣腫を確認
  • 血液培養4ボトルから全てE. faecalis検出
  • 最終診断はもちろん感染性心内膜炎(IE)

😐 IEあれこれ
  • 感染性心内膜炎で血管塞栓に関連した無痛性の点状出血が生じることは,カナダ生まれの内科医であるSir William Osler(1849–1919)が19世紀に既に記載している(Br Med J 1885;1:522-26).
  • その出現頻度は罹患部位や病期によって異なると思われるが,0.6~30%と報告されている(月間心エコー 2025年1月号).体のあらゆる部分に出現するが,眼瞼結膜や口腔粘膜が検出しやすい.
  • 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に改定された(Clin Infect Dis 2023;77:518-26).このDuke-ISCVIDクライテリアでも末梢サインは臨床診断の小基準として明記されている.
  • ちなみに欧州で行われた感染性心内膜炎3011例の前向きコホート研究(Eur Heart J 2019;40:3222-32)では,22.3%に発熱がなく,34.9%では心雑音を欠いていたことにも注目しておきたい.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-01-15

オプソニン効果 Opsonin effect

看護師国家試験 第98回(2009年) 午前17問

Q:オプソニン効果を生じるのはどれか
  1. 好中球
  2. 好塩基球
  3. Tリンパ球
  4. Bリンパ球

🍴 オプソニン効果
  • 免疫細胞の食作用促進効果のこと.例えば,体内に侵入した細菌に抗体や補体が付着すると白血球による食作用が促進される.よって上記の答えは「1. 好中球」となる.オプソニン(opsonin)の語源はギリシャ語のopsonで,「調理する」という意味.
  • CRP(C反応性蛋白)はオプソニン効果を有しているため,生体防御機構では免疫の重要な担い手になる.逆にIL-6は肝細胞でのCRP等の急性期蛋白合成に必須の作用をもつため,IL-6阻害剤の投与中はCRPが正常化し,そのオプソニン効果も発現しない.

💫 国家試験に関連した過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-14

医療用炭酸ガス Medical carbon dioxide

🙈 効能または効果添付文章
  • 酸素吸入時の呼吸中枢の刺激。 
  • 高山病における呼吸困難,麻酔時における覚せいと手術後の肺拡張不全の予防。
  • 一酸化炭素,モルヒネ,シアン化合物などの中毒時における呼吸中枢の興奮性低下。
  • 炭酸水の水浴による脈拍及び拡張期血圧の減少,静脈血の心臓還流の改善と拍出量の増加,皮膚の充血,呼吸量の増加。
  • ドライアイスでの狼瘡,色素斑などの皮膚疾患の腐食剤としての使用。
  • 腹腔鏡下外科手術に必要な視野及び術野の確保。
  • X線コンピュータ断層撮影に必要な腸管の拡張。

🙉 血管内投与
  • 歴史 放射線科の領域では古くは1920年代から陰性造影剤として使用
  • 対象 腎不全患者や造影剤へのアレルギー様反応のリスクが高い症例
  • 病変 腹部動脈,シャントや末梢動脈,腹部大動脈(ステント挿入)
  • 注意 ボンベとつなげたまま炭酸ガスのカテーテル内への注入は禁止
  • 商品 海外は血管撮影用の送気装置が発売されている(日本は未採用)
  • 指針 腎透析用のシャントPTAのガイドラインに記載されているのみ


🙊 呟き
  • 炭酸ガス造影の安全性はかなり高いことが知られています.例えば末梢動脈疾患に対する血管内治療では,連続36例計51病変では成功率100%で合併症はありません(Circ J 2011;75:179-84).平均クレアチニン濃度も,治療前2.1±1.4,治療後2.0±1.4,3ヵ月後2.1±1.6 mg/dlで変化はありませんでした.ただし医療用炭酸ガスが血管内投与の適応を取得するか,学会ガイドラインに明記されるまでは,各施設毎に倫理委員会の承認を受ける必要があると思われます.

(投稿者 川崎)

2025-01-13

😊 素敵な紹介状

息切れが増悪した慢性心不全例(座位)

💗 慢性心不全の増悪
  • 座位で通常呼吸時には頚部に拍動なし
  • よく見ると吸気時に鎖骨上窩に拍動?
  • 深吸気で拍動が安定して出現(矢印)
  • 拍動は陥凹 → 静脈性 → CVPは上昇 

 💓 臨床現場
  • 本例はかかりつけ医からの紹介状がとても素敵であった.「頚静脈の拍動が見えるのでSGLT2阻害薬を追加しました」と記載してあった.
  • 当院受診は薬剤追加の1週間後で,その間に患者さんも自覚症状がずいぶん楽になった様子.当時は通常呼吸時に拍動が明瞭だったと予想.
  • もっとも吸気負荷後にまだ拍動が観察できるので追加加療は必要.自験データでは安静時陽性と吸気後陽性の1年後事故率は同程度(論文

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-01-12

プロテインC・S欠損症のタイプ

🐤 呟き
  • 血栓症が疑われたら血液素因の有無を判断するため,治療開始前にプロテインCやSの活性や抗原量を調べる採血を行います(結果が治療期間に影響).
  • 個人的にはその血栓症の有無のみを診断していました.しかし先日,プロテインC欠乏症例で,そのタイプ分類まで言及している発表を目にしました. 

🐣 復習
  • プロテインS (PS),プロテインC(PC),アンチトロンビン(AT)欠損症は日本人の3大先天性血栓性素因
  • いずれも常染色体優性遺伝病で日本人のヘテロ変異保有者はPS 1.8%,PC 0.16%,AT 0.18%と推定されている
  • ヘテロ変異保有者は深部静脈血栓症を,ホモおよび複合へテロ接合の重症型は新生児に電撃性紫斑病を発症
  • ただしPCは肝疾患や重症感染症,DICなどの疾患やワルファリンをはじめとした薬剤等の影響で後天的に低下
  • 先天性PC欠損症の血栓症リスクは健常人の7.3倍で約30%に妊娠・出産,経口避妊薬,外傷,手術等の誘因


- プロテインC欠損症とS欠損症の各タイプ -

(投稿者 川崎)

2025-01-11

EBNAイービーエヌエー

  • EBV特異抗体のひとつで核内抗原に対する抗体(EBV nuclear antigenの略)
  • 他は外殻抗原VCA(virus capsid antigen )抗体とEA(early antigen)抗体
  • EBNA抗体は初感染の回復期から陽性(VCA-IgG抗体とEBNA抗体は生涯持続)
  • 初感染ではVCAに対するIgM抗体がまず増加する(EA抗体の変動もほぼ同じ)
  • VCA-IgA抗体は上咽頭癌に特徴的な抗体で早期発見・治療効果・再発の指標

参考)BML、他

- EBウイルス関連疾患と抗体検査との関連 -

💁 EBウイルスに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-10

頸部ジストニア Cervical dystonia

  • ジストニアとは中枢性の持続的な筋緊張を特徴とする運動異常症のひとつ
  • 頸部ジストニアは首の筋肉に生じた局所性ジストニアで,別名は痙性斜頸
  • 薬剤(特に向精神薬の開始や減量・中止),脳疾患,外傷,習慣他が影響
  • 前屈・後屈・側屈・回旋・前方偏倚・後方偏倚・側方偏倚・側弯・肩挙上
  • 原因治療+ボツリヌス治療(第一選択),内服,手術,鍼,理学療法など

薬剤性の頸部ジストニアを呈した1例

💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-09

今週の一枚 🎯

腎機能が悪化した症例(Cr 1.4 → 4.5 mg/dl)


(投稿者 川崎)