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2025-12-14

NEAE: Non-episodic angioedema with eosinophilia

  • 好酸球性血管浮腫(EAE)で再発せず自然寛解する一群
  • 邦名はEAE(反復性)に対し非反復性好酸球性血管浮腫
  • 東北大学の皮膚科医 Chikama らが1998年に提唱(
  • 本邦からの報告が多い(他は韓国や中国など東アジア)
  • ほとんどが女性で20-40代に多く夏季から秋季が90%
  • 症状は四肢浮腫や蕁麻疹(EAEに比して軽く顔面は稀)
  • 末梢血好酸球の著明上昇(血清IgMは正常~軽度上昇)
  • 病理は皮膚組織に好酸球の浸潤(皮膚以外の浸潤なし)
  • 原因は不明で予後は良好(ステロイド全身投与が奏功)
  • 約4~8週程度で自然軽快するため無治療で観察も可能


- NEAEの臨床像と病理組織像 -

(投稿者 川崎)

2025-12-13

海綿静脈洞血栓症 Cavernous Sinus Thrombosis (CST)

  • 概略 海綿静脈洞内血栓で神経症候を呈した病態
  • 機序 静脈洞の炎症波及による血栓形成でうっ滞
  • 原因 感染性と非感染性があり感染の波及が多い
  • 症状 患側の眼窩周囲浮腫,眼球突出,結膜浮腫
  • 神経 眼筋麻痺,顔面感覚障害(Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ)
  • 合併 髄膜炎,下垂体機能不全,内頸動脈血栓他
  • 治療 早期の抗菌薬と抗凝固療法+原疾患の治療
  • 予後 致死率は約30%で50%以上が後遺症を残す


齲歯で海綿静脈洞血栓症とLemierre症候群を合併した54歳女性

(投稿者 川崎)

2025-12-12

綿花様白斑 Cotton wool spots (CWS)

  • 糖尿病網膜症ステージのDavis分類は単純網膜症,増殖前網膜症,増殖網膜症
  • 増殖前網膜症の特徴的な眼底所見は軟性白斑(網膜神経節細胞の虚血性浮腫)
  • 軟性白斑は刷毛で掃いたような白斑(下図)であり綿花様白斑とも呼ばれる
  • 糖尿病以外でも高血圧や網膜静脈閉塞症,白血病,うっ血乳頭,SLEで出現
  • 境界が明瞭な白斑は硬性白斑と呼ばれ,網膜への蛋白質や脂質の沈着が原因
  • 硬性白斑は単純網膜症の所見であり軟性白斑綿花様白斑)よりも初期病変


- 両側の綿花様白斑を呈した巨細胞性動脈炎の81歳女性 -

(投稿者 川崎)

2025-12-11

今週の一枚 🎯

前日から嘔吐を繰り返す高齢者の腹部CT(単純)

😐 解説
  • 大動脈前後で十二指腸の径が大きく変化
  • 口側は拡張し水平脚以遠は虚脱している
  • 咽頭喉頭~食道~胃に占拠性病変はなし
  • 血管に挟まれた十二指腸水平脚(下図左)
  • 上腸管膜動脈(SMA)症候群と診断した
  • メトクロプラミドと補液などで症状改善
  • 通過性の良い食事を指導(半固形物など)
  • 本日は帰宅して後日,消化器内科を受診


👀 コメント
  • 本例は両肺上葉主体の気腫性変化と肺底部の蜂窩肺様変化(上図右)があり,気腫合併肺線維症(Combined pulmonary fibrosis and emphysema : CPFE)と考えられました.
  • SAM症候群は若年者(特に痩せた女性)に多いことが知られています.しかし本例の様にCOPDを伴う高齢者にも稀ではないことを,救急科の部長から教えてもらいました.
  • SMA症候群とCOPDの関連を詳細に検討した臨床研究は見つけられませんでしたが,COPDのるい痩(理由)を考慮すると不思議ではありません.本例でもBMIは16台でした.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-12-10

胃底腺ポリープ Fundic gland polyp (FGP)

  • 組織学的に胃底腺の過形成囊胞状拡張を特徴とする隆起性病変
  • H. pylori(ピロリ)感染がなくて萎縮のない胃底腺領域に発生
  • 中年女性に好発して癌の合併は極めて稀(ゼロではない:下図)
  • PPIの長期投与やピロリ除菌で新規発生や病変増大の報告が散見
  • 以前の考えでは家族性腺腫性ポリポーシスに合併(26~43%)
  • 近年では散在例も少なからずあり頻度は一般人口の1.8~5.9%


- ピロリ除菌後に増大した胃底腺ポリープに腺癌が発生した69歳女性 -

(投稿者 川崎)

2025-12-09

手術室:空気清浄度100?

  • 空気清浄度の基準として日常的にはNASAクラス基準が使用されてきた(例:手術室はクラス100)。これは米国連邦規格で、1立方フィートあたりの最大許容粒子数を示す(細菌の短径と同じ0.5μmが基準)。
  • この規格は工業領域での規格であり、人が出入りする手術室の清浄度を表現するには好ましいとはいえない。日本ではJIS B9920(クリーンルームの空気清浄度の評価方法)が1975年に制定され以後数度改訂。
  • 日本や米国ではいまだNASAクラス基準の呼称が一般的であるが、早急にISO表現に慣れていかなければならない。最近では空気清浄度はフィ ルタ濾過効率と換気条件により表現されることが一般的である(下表)



(投稿者 川崎)

2025-12-08

フィジカルクイズ(No. 33 & 34)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-12-07

ヒスタミン食中毒 Histamine poisoning

  • 概略 高濃度のヒスタミンを含む食品を摂取することによって発症
  • 形態 アレルギー反応と異なり免疫グロブリンのIgE抗体を介さない
  • 症状 摂食30分程度で顔面~口~耳の紅潮,頭痛,じんま疹,発熱
  • 経過 6~10時間で回復(重症は稀で抗ヒスタミン剤で速やかに全治)
  • 産生 アミノ酸の一種ヒスチジンからヒスタミン産生菌により生成
  • 原因 赤身魚などを常温に放置するとヒスチジンが食品に蓄積される
  • 注意 ヒスタミンは一度生成されると加熱では壊れない(冷蔵保存)


- 魚種別ヒスチジン含有量 -

(投稿者 川崎)

2025-12-06

カプリーニスコア Caprini Score

  • 周術期に静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクを予想するスコア
  • 米の外科医 Caprini らが1991年に開発()➜ その後複数回改訂
  • 静脈鬱滞、内皮損傷、過凝固状態に関連する因子を定量化(下表)
  • 高リスク患者を早期に特定し抗凝固療法および機械的予防を考慮
  • 低リスク 0~1点:早期の歩行開始、薬物療法や機械的予防は不要
  • 中程度リスク 2 点:必要に応じて機械的予防または薬理学的予防
  • 高リスク 3〜4 点:入院中は薬物予防が推奨、必要なら機械的予防
  • 超高いリスク 5点以上:薬物と機械的予防の併用かつ退院後も延長
  • (ただし項目が多く本邦では広く使用されず検証も十分ではない)

参考)StatPearls [Internet],他


(投稿者 川崎)

2025-12-05

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


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(投稿者 川崎)