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2023-08-31

今週の一枚 🎯

ペースメーカ外来を定期受診した症例



(投稿者 川崎)

2023-08-30

化膿性汗腺炎 Hidradenitis suppurativa

  • 概要 毛包の慢性・炎症性・再発性・消耗性皮膚疾患で生活の質を著しく障害
  • 発症 思春期以降アポクリン腺の多い部位(腋窩や鼠径,肛門性器部,臀部)
  • 所見 結節や瘻孔,萎縮性・網状・肥厚性・ケロイド様瘢痕,分泌物,悪臭
  • 疫学 男女比1:3で,頻度は欧州で1~4%,米国で 0.1~0.2%,韓国で0.06%
  • 原因 汗腺の感染症ではなくて,自然免疫の活性化を背景にした病態の疑い
  • 遺伝 30~40%は家族性の常染色体優性(顕性)遺伝(家族性化膿性汗腺炎)
  • 併存 脊椎関節症,SAPHO,壊疽性膿皮症,毛包閉塞性疾患,Crohn病など
  • 鑑別 Crohn病による皮膚症状,悪性腫瘍,毛包炎やせつなどの細菌感染症
  • 病期 Hurley分類:病期 I(単発),病期II(瘻孔や瘢痕),病期III(広範囲)
  • 治療 外用薬,抗菌薬,モノクローナル抗体製剤,外科的切除,レーザーなど


化膿性汗腺炎:ハーレーステージ I ( A )、ハーレーステージ II ( B )、ハーレーステージ III ( C )

(投稿者 川崎)

2023-08-29

ブルガダ症候群:Naチャネル遮断薬負荷試験

💁 確認事項
  • ブルガダ症候群の診断は12誘導心電図所見からのみなされ、症状の有無を問わない
  • 2 mm以上のST上昇とそれに続く陰性T波を示せばタイプ1心電図(コブド型ST上昇)
  • 陰性T波を欠けばサドルバック型でSTトラフが≧1 mmならタイプ2、未満はタイプ3
  • 高位肋間を含む自然発生・発熱・負荷後タイプ1心電図ならブルガダ症候群と診断
  • ブルガダ症候群は有症候性ブルガダ症候群と無症候性ブルガダ症候群に分類できる
  • 非タイプ1(タイプ2およびタイプ3)心電図の場合はブルガダ症候群と診断されない

ブルガダ心電図を認めた場合の検査フローチャート

💊 薬物負荷の実際
  • Vaughan-Williams(ヴォーン・ウィリアムズ)分類のIa群チャネル遮断薬(一般名プロカインアミド、商品名アミサリンム®)またはIc群のNaチャネル遮断薬(例:一般名ピルジカイニド、商品名サンリズム®、1 mg/kgを10分で静注/一般名フレカイニド、商品名タンボコール®、2 mg/kgを10分で静注)などが用いられる.


(投稿者 川崎)

2023-08-28

瓜三つ:ハイムリック・ハイムリッヒ・ハインリッヒ

👥 ハイムリック
  • 異物で窒息した患者を救命する応急処置.患者の後ろから手を腹部に当て突き上げるようにし横隔膜を圧迫(下図はオリジナル論文より).由来は米国の胸部外科医 Henry Judah Heimlich(1920-2016)の報告(Emergency Medicine 1974;154-5).
  • 論文タイトルの "Pop Goes the Cafe" ってなかなか素敵(超意訳:このテクニックを使えばカフェでも喉に詰まっていた物がポンって飛び出てくるから助けられるって感じ?)

👥 ハイムリッヒ
  • ハイムリックの別名.ドイツ語風の読み方と思われる.父方の祖父はハンガリー系ユダヤ人移民,母方の祖父はロシア出身のユダヤ人である(引用).本人は米国生まれの米国育ちであるため,英語風のハイムリックが正しいと思われる.

👤 ハインリッヒ
  • 重大事故1つの背後に29の軽微な事故,300のヒヤリ・ハットが存在するという理論(過去の投稿).米国の保険会社社員である Herbert William Heinrich(1886-1962)が1931年に提唱した.

(投稿者 川崎)

2023-08-27

Twiddle muff 認知症マフ 

  • twiddle【動】もてあそぶ 【名】ひねり/muff【名】マフ(女性用の円筒状の手袋)
  • 内外のリボンやボタンなど触わることで(認知症の患者さんが)安心感を得られる

💎 独り言
  • 先日,看護師さんに教えてもらいました.シンプルですが臨床現場では役立ちそうな気がします.ミトンを含めた身体拘束の代わりとして大いに期待できそうです.
  • 2023年8月19日時点では PubMed で ”Twiddle muff” は一件も検出できません.Google scholar でもヒット数は一桁.今後の有用性の報告を楽しみにしています 😄

💁 認知症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-26

ヒストプラスマ症 Histoplasmosis

  • 概略 世界中(特に熱帯,亜熱帯,温帯地域)で認める真菌症の一つ(本邦では稀)
  • 原因 ヒトは主にカプスラーツム型とズボアジ型(土壌真菌でコウモリ等の糞で発育)
  • 経路 菌糸状発育で形成された分生子を吸入して肺へ感染(感染組織内で酵母状発育)
  • 病型 急性・慢性肺ヒストプラスマ症,全身性ヒストプラスマ症,眼ヒストプラスマ症
  • 症状 急性ならインフルエンザ様症状を呈し自然治癒/慢性では結核に似た臨床経過
  • 診断 喀痰,膿,生検材料よりH. capsulatumの分離あるいは免疫学的診断,PCR法など
  • 治療 イミダゾール系の抗真菌剤あるいはアムフォテリシンB(患者の隔離は要さない)


AIDSに合併した播種性ヒストプラスマ症の48歳タイ人男性

(投稿者 川崎)

2023-08-25

人工呼吸器からの離脱:SAT&SBT

自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial: SAT)
  • 鎮静薬を中止または減量し、自発的に覚醒が得られるか評価する試験。観察時間は30分から4時間程度を目安とする。

➜ 開始基準 (以下の状態でないこと)
  1. 興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している
  2. 筋弛緩薬を使用している
  3. 24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
  4. 痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続投与中
  5. 頭蓋内圧の上昇
  6. 医師の判断

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 鎮静スケール(RASS):-1~0で口頭指示で開眼や動作が容易に可能である。
  2. 鎮静薬を中止して30分以上過ぎても、以下が生じない:興奮状態・持続的な不安状態・鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない・頻呼吸(呼吸数≧35 回/分 5 分間以上)・SpO2<90%が持続し対応が必要・新たな不整脈

自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial :SBT)
  • 人工呼吸による補助がない状態に患者が耐えられるかどうか確認するための試験。人工呼吸器設定をCPAPまたは、Tピースに変更し、30 分から2時間観察する。

➜ 開始基準(原疾患の改善を認め、以下をすべてクリアした場合)
  1. FIO2≦0.5 かつ PEEP≦8cmH2O のもとで SpO2>90%
  2. 急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない・心拍数≦140 bpm・昇圧薬の使用について少量は容認(DOA ≦ 5μg/kg/min、DOB ≦ 5μg/kg/min、NAD ≦ 0.05μg/kg/min)
  3. 1回換気量>5ml/kg・分時換気量<15L/分・Rapid shallow breathing index(1分間の呼吸回数/1回換気量[L])<105回/min/L・呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
  4. 呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
  5. 発熱がない・重篤な電解質異常を認めない・重篤な貧血を認めない・重篤な体液過剰を認めない

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 呼吸数<30 回/分
  2. 開始前と比べて明らかな低下がない(たとえば SpO2≧94%、PaO2≧70mmHg)
  3. 心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
  4. 過度の血圧上昇を認めない
  5. 以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する):呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)・冷汗・重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態


- 全体の流れ -

💁 人工呼吸に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-24

今週の一枚 🎯

転倒症例の頭部CT




(投稿者 川崎)

2023-08-23

脳出血のCT変化

  1. 発症直後-亜急性期(〜1週間)➜ 発症直後から高吸収(24〜48時間で最大)+発症数時間から周囲に浮腫が生じ低吸収(数日で最大)
  2. 吸収期(1週間〜2,3ヵ月)➜ 血腫の辺縁から高吸収領域の低吸収化+血腫吸収によるmass effect(脳組織の圧迫・変位)の消失
  3. 瘢痕期 ➜ 壊死組織が貪食排除され液化空洞を形成(空洞内部は脳脊髄液と同等の低吸収値で血腫の最大サイズより空洞は縮小する)


ー 左基底核出血の47歳男性の経時的CT変化(赤色は血腫周囲の浮腫)ー

💁 脳出血に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-22

ワーラー変性 Wallerian degeneration

  • ワーラー変性とは神経損傷後に二次性に生じる軸索変性と脱髄現象
  • イギリスの神経生理学者 Augustus Volney Waller (1816-1870) に由来
  • 通常,中枢神経系では末梢神経に比してワーラー変性は緩徐に進行
  • 例:脳血管障害の発症1ヵ月以降にDWIやFLAIRで高信号出現(下図)
  • 推定機序は軸索細胞内の電解質濃度変化が変性の促進をきたすため


左大脳に多形膠芽腫を有する61歳女性のMRI T2-WI経過
A〜Dは術後0, 8, 16, 34ヵ月で同側間脳でワーラー変性が進行(矢印)

(投稿者 川崎)