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2024-03-31

循環器関連学会:略語集

  • ESC (European Society of Cardiology) ➜ 欧州心臓病学会
  • AHA (American Heart Association) ➜ アメリカ心臓協会
  • ACC (American College of Cardiology) ➜ 米国心臓病学会
  • WHF (World Heart Federation) ➜ 世界心臓連盟
  • APSC (Asian Pacific Society of Cardiology) ➜ アジア太平洋心臓病学会
  • JCC (Japanese College of Cardiology) ➜ 日本心臓病学会
  • JCS (Japanese Circulation Society) ➜ 日本循環器学会
  • OCC (Oriental Congress of Cardiology) ➜ 东方心脏病学会议
  • KSC (Korean Society of Cardiology) ➜ 대한심장학회(大韓民国循環器学会)
  • TSOC (Taiwan Society of Cardiology) ➜ 中華民國心臓學會
  • CSC (Chinese Society of Cardiology) ➜ 中华医学会心血管病学分会
  • GW-ICC (Great Wall International Congress of Cardiology) ➜ 长城心脏病学大会

🉐 略語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-30

先日の学会スライドで見かけました 👀 ”s/p Dor手術”

  • s/pStatus Postの略で「〜の後/既往あり」の意味(つまりDor手術の後)
  • Dor(ドール)は左心室形成術の一つ(他にSAVEやELITEなどの形成法あり)
  • もちろんs/oSuspect Ofの略で「~の疑い」(例:s/o DM=糖尿病の疑い)

💁 略語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-29

ベルンハイム症候群 Bernheim's syndrome

  • 右室内腔の狭小化のため右心不全を呈する左心系の疾患.Bernheim が100年以上前に報告(De l'asystolie veineuse dans l'hypertrophie du coeur gauche par stenose concomitante du ventricule droit. [仏語:右室狭窄を伴う左心肥大の静脈性不全収縮] Rev de WV 1910;30:785-801).
  • ただしベルンハイム症候群に懐疑的な報告も少なくないようで,最近では目にすることはほとんどないと思われる.2000年以降でGoogle scholarの検索ではわずかに33件がヒット(実際の検索).日本語では全期間を通してもわずか数編程度でしょうか?

ベルンハイムのオリジナル論文からの図の転載

👿 深掘り

仁村泰治先生が「肥大型心筋症に伴う右室流出路狭窄と"Bernheim症候群"」という題でeditorial commentを発表されています(心臓 1992;24:1309-12).ベルンハイムの提案した項目をわかりやすくまとめられています(下記).このベルンハイム症候群に対しては少し懐疑的な見方を示しつつ,ベルンハイム効果とういう観念で考えるならば意味はあると述べられておられるところはさすがです.同効果はこの心臓フィジカル広場でも頻出です(ココ).

  1. 左心系の疾患であって,左室肥大ないし拡張が著しい
  2. 肺うっ血はなく,臨床的にも起坐呼吸,咳など,それに相当する症状はない
  3. 直接に右心不全を来たすような右心,肺循環系の疾患はない
  4. 左室の肥大,拡張ないし心室中隔の肥大のため,中隔は右室腔内に凸に膨隆し,そのため,右室,特にその下半は狭小化している.ロート部はかえって代償的と見られる肥大,拡張を示していることが多い
  5. 頸静脈怒張,肝腫大,下肢浮腫など右心不全症状が見られる
  6. 以上の事柄からこの右心不全は,通常考えられるような左心不全→肺循環負荷→右心不全と言う経過を辿ったものでなく,上述のような右室内腔の狭小化のため,静脈還流が制限され,左心不全,肺循環負荷とは関係なしに,右心不全の状況を来たしたと考えられる

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(投稿者 川崎)

2024-03-28

今週の一枚 🎯 傍胸骨拍動の吸気負荷

CTEPHで外来通院中の症例(仰臥位で左が頭側)

🐳 解説
  • 傍胸骨に置いた聴診器に明らかな拍動なし
  • 吸気に伴い聴診器に上下運動が出現(矢印)
  • 拍動は数拍持続しその後に不明瞭になった
  • 本例は状態は安定し日常生活で息切れなし
  • ただし心エコー図で軽度の肺高血圧は残存

🐟 復習
  • 抬起性の傍胸骨拍動は肺高血圧に伴う右室圧負荷を示唆します.稀に左房負荷(自験例)や肺動脈拍動(自験例)もあります.本例で認めた吸気負荷に伴う傍胸骨拍動の出現は潜在的な肺高血圧を示唆していると思っています.
  • 吸気中は中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇するため(過去の投稿),理論的には吸気負荷で傍胸骨拍動は増強されるはず.しかし同時に胸腔容積も増大して右室と胸骨の密着度の低下から相殺される可能性もあり?

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-03-27

WIfIワイファイ分類

  • 包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia: CLTI)で使う重症度分類
  • 創(wound),虚血(ischemia),感染(foot infection)の3項目から判定する(下表)
  • Vascular Surgery Lower Extremity学会が提唱した分類法(J Vasc Surg 2014;59:220-34
  • SPP値との関連:0は≧50 mmHg/1は40~49 mmHg/2は30~39 mmHg/3は<30 mmHg
  • 1年後までの大切断率はWIfI ステージが上がるにつれ上昇して特にStage 4では38%と高率



💫 おまけ
  • 無線LANのWi-Fiはブランド コンサルティング会社 Interbrand による造語で,業界団体 Wi-Fi Alliance の商標登録.Wireless Fidelity(忠実度)の短縮形ではなく,WiFiやWifi,wifiとも記載されますがWi-Fi Allianceの承認はないそうです().
  • 1997年当時のWi-Fi(当時は別名)から無線周波数は2.4 GHzですが,その速度はたったの1-2 Mbit/秒でした.2024年時点(名称はWi-Fi7)では周波数2.4 GHz,5 GHz,6 GHzが利用可能で,速度は1,376–46,120 Mbit/秒にまでアップしています.

(投稿者 川崎)

2024-03-26

脾摘&ニューモバックス®NPシリンジ

  • 脾摘後重症感染症(overwhelming postsplenectomy infection, OPSI)予防が重要
  • OPSIではS. pneumoniaeなどの感染症罹患で数時間〜数日で50~75%が死亡しうる
  • 本邦で脾摘後の保険適用はPPSV23(ニューモバックス)のみ(プレベナー13なし)
  • 予定脾摘なら摘出2週前,緊急脾摘なら摘出2週以降にPPSV23(以後は共に5年毎)

💉 ニューモバックス®の効能又は効果添付文書

2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い次のような個人及び患者

  • 脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防
  • 肺炎球菌による感染症の予防
    1. 鎌状赤血球疾患、あるいはその他の原因で脾機能不全である患者
    2. 心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏等の基礎疾患のある患者
    3. 高齢者
    4. 免疫抑制作用を有する治療が予定されている者で治療開始まで少なくとも14日以上の余裕のある患者

💁 脾摘に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-25

指先拍動徴候 Throbbing fingertip sign

息切れと心雑音で受診した症例

😀 解説
  • 無負荷の状態では爪床の色調変化(クインケ徴候)は陰性
  • 爪床圧迫で僅かにQuincke's pulseを認める?(動画中の*)
  • そこでスマホ光源法を追加したがクインケ脈はやはり陰性
  • しかし指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)あり(→)
  • 最終診断は中等症MR+軽症〜中等症ARによる慢性心不全

    😄 追加コメント
  • 指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)は指先の容積変化で,大脈を反映していると考えられます.非常にわずかな変化なので通常の肉眼で視認することは難しいと思われますが,ライトアップすれば本例のようにわかりやすくなります.
  • 本例の指先拍動徴候は非圧迫で観察できている点がポイントかもしれません(圧迫法で出現したthrobbing fingertip sign).つまりクインケ徴候よりも感度が高い可能性があります.経験された方はコメント欄に記載してもらえると嬉しいです😊

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(投稿者 川崎)

2024-03-24

封入体筋炎 Sporadic Inclusion Body Myositis(sIBM)

  • 概略 緩徐進行性の筋疾患で特徴的な縁取り空胞(下図)
  • 疫学 50歳以上の男性に多く現在日本には1,000~1,500人
  • 症状 初発は74%が大腿四頭筋の脱力による階段昇降困難
  • 採血 血清CK値は正常から正常上限の10倍程度まで上昇
  • 抗体 診断に対する抗cN1A抗体の感度は70%,特異度92%
  • 治療 確立されておらずほとんどの例でステロ イド無効
  • 予後 筋力低下で寝たきりから誤嚥性肺炎で死亡が多い


封入体筋炎の71歳男性で右胸外側筋の筋生検(図3Cに封入体)

💁 筋炎に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-23

後頭神経痛 Occipital neuralgia

  • 症状 発作性で数秒から数分持続する刺すような後頭部痛
  • 分布 大後頭神経,小後頭神経,第3後頭神経に関連する
  • 誘因 長時間の同一姿勢や頚椎の異常,精神的ストレス他
  • 疫学 10万人あたり約3.2人で初診時の平均年齢は54.1歳
  • 診断 病歴と身体検査,診断用神経ブロックに対する反応
  • 鑑別 片頭痛,群発頭痛,緊張性頭痛,頸椎筋靭帯性など
  • 治療 NSAIDs,抗うつ薬,ブロック注射,ボツリヌスなど
  • 予後 通常は1週間ほどで軽減(稀に数ヵ月続くことあり)


大後頭神経と小後頭神経の走行概略図

💁 頭痛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-03-22

カメラベースの頸静脈評価:レビュー論文

  • Arrow C, et al. Capturing the pulse: a state-of-the-art review on camera-based jugular vein assessment. Biomed Opt Express 2023 Nov 28;14:6470-92
  • ざっくりまとめると「方法論に改善の余地はあるがカメラベースの頸静脈評価は定量的あるいは定性的な特徴付けが可能」だそうです(下表)

😐 独り言
  • Artificial intelligence(AI)のアルゴリズムにかかれば,顔写真から虚血性心疾患の有無や胸部X線から糖尿病の有無が推測できる時代です(過去の投稿).ただ頸静脈評価に関しては,AIを用いたシステムはまだ開発されていないようです(上記論文の著者が本文で言及).
  • 将来的にはスマホで撮影すればAIがすぐに判定してくれるかもしれません(手ブレは気になりますが背景から完璧に補正と予想).ただし頸静脈の座位定性法は簡便なので,わざわざスマホを使わなくても...とも思います(患者さんもカメラを向けられると構えますし)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)