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2025-01-31

感染対策チーム:ICTとAST

  • ICT(Infection Control Team/院内感染対策チーム)は医療現場での共通語です(過去の投稿).最近ではAST(Antimicrobial Stewardship Team/抗菌薬適正使用支援チーム)も必須になってきた感があります.
  • ざっくり言って、ICTは感染予防(拡大予防を含む)が主な役割で、ASTは感染治療が主になります.ICTを感染予防対策チーム(Infection Prevention Control Team: IPCT)とASTで構成する場合もあるようです.

AST(抗菌薬適正使用支援チーム)
  • 2018年(平成30年度)診療報酬改定で要件を満たす医療機関ではAST加算を算定可能
  • (これが新設された背景には2016年に策定されたAMR対策アクションプランの存在)
  • コアメンバーは感染症専門医+薬剤師(+医師や看護師,臨床検査技師はICTと同じ)
  • 介入すべき患者の抽出や感染症診療支援+患者と施設全体の抗微生物薬の適正使用
  • 血培陽性,培養結果,発熱,抗微生物薬長期投与,相談事例などに対しASTラウンド


- ICTとASTの違い -

(投稿者 川崎)

2025-01-30

今週の一枚 🎯

胸痛で来院した中年男性


(投稿者 川崎)

2025-01-29

Complex, Higher-Risk, and Indicated PCI (CHIPチップ)

  • 血行再建の対象となる冠動脈病変を有するが治療のリスクが高い患者
  • Complex and high-risk intervention in indicated patientsの略でもある
  • Indicated=計器他に表示された,指示された,治療などの適応のある
  • 例えば冠動脈自体が複雑病変であったり合併心疾患や併存症を有する
  • PCI時の合併症の発生率はCHIP>CHIPの疑い>非CHIPの順に⤴(下図)

- CHIPのサマリー図 -

💁 PCIに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-28

チェリーレッドスポット Cherry Red Spot

  • 概略 特定の病態で出現する網膜混濁に囲まれた黄斑の中心の赤みがかった領域
  • 原因 網膜中心動脈閉塞症 (CRAO) の網膜虚血/梗塞が多い(他に物質蓄積など)
  • 頻度 急性網膜中心動脈閉塞症(持続48時間未満)は年間10万人あたり約0.85人
  • 症状 CRAO(Central Retinal Artery Occlusion)は高齢者の突然の片側視力喪失
  • 治療 早期なら眼マッサージや前房穿刺,眼圧低下薬,高圧酸素,血栓溶解など
  • 予後 CRAOは視力予後が極めて悪い(血管新生緑内障により痛みを伴う失明など)


CRAOの64歳男性のチェリーレッドスポット
(突然の左眼の 羞明しゅうめい感を自覚した1時間後から視力低下)

(投稿者 川崎)

2025-01-27

仕事外で訪れた老人ホームで...

下腿浮腫があるとスタッフから聞きました(座位)

👵 解説
  • 両側の下腿浮腫(圧痕性)
  • 頚部に眼をやると拍動あり
  • 拍動は陥凹なので頚静脈!
  • 非代償性心不全と診断した

 👴 現場実況
  • 本例のバイタルサインは安定し,息切れなど心不全を示唆する症状は全くありませんでした.ほとんどの時間をベットに腰かけて過ごしているため,施設のスタッフは重力による水分貯留と判断していたようです.
  • 内頚静脈の判定方法(シンプル頚静脈©)を施設スタッフにお伝えました.幸い翌々日が施設担当医の診察日で,そこで利尿薬が処方され改善 😀 原因はお菓子の大量消費による塩分過多と思われました 😮

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-01-26

星状神経節ブロック (SGB) vs 冠攣縮 

⭐ Stellate Ganglion Block: SGB
  • 星状神経節は節後線維を心臓に投射し冠血流調節に大きく関与
  • SGBは交感神経の過緊張を抑制するため連日SGBが悪循環を断つ
  • SGBは血小板凝集抑制効果もあり冠攣縮の予防に有効な可能性
  • 冠攣縮性狭心症に対してSGBが有効であった報告はほぼ左側SGB
  • 完全内臓逆位を伴っていた症例では右側のSGBが有効の報告あり
  • エルゴメトリンによる冠攣縮の誘発前に左SGBで発作を抑制した
  • ただし冠攣縮誘発後にSGBを施行しても攣縮寛解作用はなかった


星状神経節ブロックが著効した難治性冠攣縮の41歳男性

📙 ガイドラインの記載(P50と図18)
  • 難治性・重症冠攣縮性狭心症に対して,星状神経節ブロック ・ 胸部交感神経節切除術を考慮してもよい(いずれもわが国では保険適用外).推奨クラス IIb,エビデンスレベル C


👉 冠攣縮に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-01-25

播種性非結核性抗酸菌症
Disseminated nontuberculous mycobacteria infection: DNTM

  • 非結核性抗酸菌が局所的に増殖し血液経路を介して他の臓器や組織に侵入した状態
  • 症状は非特異的で断続的 or 持続的な発熱,寝汗,体重減少,倦怠感,食欲不振など
  • 診断は血液培養で菌を検出(骨髄生検標本や体液または組織の培養および組織も可)
  • 長期の免疫抑制剤使用やHIV感染に関連して発症(特にCD4+Tリンパ球数<50/mm3
  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)を定義する日和見感染症で,同集団で高いは死亡率
  • 無治療で免疫抑制が進んだHIV感染例での播種性MAC(DNTM)の発生率は20~40%
  • 抗レトロウイルス治療(ART)時代では年間発生率の中央値は1.1/1,000 HIV人・年


- 特発性CD4リンパ球減少症の64歳男性 -
CTで右S6に腫瘤+右鎖骨・左肩甲骨の骨溶解/鼠径部の皮下腫瘤は肉芽腫
(投稿者 川崎)

2025-01-24

Contained rupture 制止破裂

  • 先日、腹部CTのレポートにcontained ruptureと記載されていました.そしてその後,準緊急的にステントグラフト挿入(他院)
  • あまり聞きなれない言葉だったので調べてみました.ちなみに担当した心臓血管外科のベテラン医師も知らないと言っていました 😑

腹部大動脈瘤破裂の分類
  • 開放性破裂(open rupture)➜ 腹腔内や前壁への出血
  • 閉鎖性破裂(closed rupture)➜ 後腹膜への出血(一両日まで)
  • 制止破裂(sealed/contained rupture)➜ 後腹膜への出血(それ以降)


Chronic contained rupture
  1. 腹部大動脈瘤が存在
  2. 以前あるいは現在疼痛が認められる
  3. 全身状態が安定しヘマトクリット値が正常
  4. CT検査で後腹膜血腫の所見
  5. 病理学的に器質化血腫


Chronic Contained Rupture(慢性制止破裂)の一例

(投稿者 川崎)

2025-01-23

今週の一枚 🎯

息切れが再発した拡張型心筋症例(座位)

😐 解説
  • 安静座位で頚部に拍動は視認しない
  • 深吸気(保持)でも拍動は出現せず
  • BNP値は157 → 1,400 pg/mLに著増
  • 最終的に心不全増悪と診断して入院
💁 追加コメント
  • 内頚静脈は深部静脈であるため胸鎖乳突筋を介する皮膚面の拍動として認識されます.よって本例のように評価が難しい場合があります.一方,外頚静脈は表在静脈であるため視認は容易ですが,中心静脈圧の推定には不向きです(その理由).
  • 高度の肥満では内頚静脈の観察は困難になります(本例のBMIは約35 kg/m2).BMIがあまり大きくなくても首が太くて短い場合(いわゆる猪首)では同様に観察が困難です.一つの目安は顎下や顎のラインが不明瞭なことでしょうか(下図)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-01-22

心筋クリプト Myocardial crypts 

  • 左室壁内の狭い血液充満陥入部(AI訳は心筋陰窩)のことで,当初は肥大型心筋症(HCM)で注目された.HCM連続292名と心血管疾患のない対照98名の検討では,心筋cryptsの頻度は遺伝子型陽性/表現型陰性で61%,表現型陽性で4%,対照群ではゼロであった.

  • その後の研究で,健康なボランティアを含むさまざまな症例で存在することが分かってきた.長崎大学でCT血管造影を受けた300名の検討では,心筋クリプトの頻度は9.7%で,虚血性心疾患38.3%,大動脈疾患15%,大動脈弁狭窄症9%,HCM 2.7%であった. 

  • 心筋陰窩を心筋壁の50%を超える陥入部と定義すると,コペンハーゲンの一般人口10,097名を対象とした心臓CTでの検討では,その頻度は9.1%であった.中央値4.0年の追跡期間中,心筋クリプトは主要な心血管イベントと関係しなかった(ハザード比1.00 [95% 信頼区間:0.72~1.40,P = 0.98]) .また心筋クリプトの位置や形状,透度もイベントとは関連せず.
- 肥大型心筋症で認めるさまざまな心筋クリプト -

👉 肥大型心筋症 (HCM)に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)