心筋イメージング：輝きを放つ一枚

逆再分布
肥大型心筋症、完全左脚ブロック、急性心筋梗塞（下壁）の各症例におけるtetrofosmin1回投与2回撮像の初期像（30分後）および後期像（3時間後）（肥大型心筋症のみ運動負荷後）のBull's eye表示

Sugihara H , et al : Ann Nucl Med 12 : 281-286 ; 1998
Sugihara H , et al : Ann Nucl Med 12 : 287-292 ; 1998
Sugihara H , et al : Ann Nucl Med 13: 43-47 ; 1999

💚 解説

• MIBI/tetrofosminの心筋像は、静注後の撮像時期に影響されないのが特徴として利用されている。
• 図のごとく、tetrofosminの1回注射２回撮像では、肥大型心筋症では中隔前壁接合部、中隔後壁接合部および心尖部が、左脚ブロックでは中隔が、急性心筋梗塞では梗塞部位（下壁）がそれぞれ後期像でより集積低下（逆再分布）していることがわかる。
• Tetrofosminの心筋細胞摂取には血流以外に心筋細胞膜およびミトコンドリア膜の機能が関与するとの実験報告がある。
• 逆再分布を示した領域ではtetrofosminを心筋内に保持する能力が低下しており、その低下は心筋細胞膜あるいはミトコンドリア膜機能が障害されていることを示すと考えられる。
• 急性心筋梗塞例は早期再灌流に成功した例であり、初期像はTl、後期像はBMIPPに近似し、逆再分布はviableな心筋を反映していると推定される。
• 肥大型心筋症では心筋構築異常の見られやすい領域で逆再分布が生じており、同部位では心筋細胞膜/ミトコンドリア膜の機能異常が存在することが予想される。
• 完全左脚ブロックの中隔では壁運動低下、血流低下、エネルギー代謝低下が存在すると考えられるが、心筋細胞膜/ミトコンドリア膜の機能異常も存在することを推定させる現象である。

👤 うら話

• 再灌流に成功した急性心筋梗塞症において、MIBIで梗塞部に逆再分布が生じることに早くから気がつき、発表したが、論文作成で遅れをとった。
• tetrofosminで同様の現象が生じることを見出し、tetrofosminの2回撮像をルーチンとして長年検討した。
• たこつぼ心筋障害とまれに冠攣縮性狭心症においても同現象は認められる。

※「輝きを放つ一枚」の過去の投稿は コチラ（PC版なら画面右の分類からも選択可）

（投稿者　杉原）