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2023-01-31

CRAB symptoms クラブ症状

👀 多発性骨髄腫の典型的所見
  • HyperCalcemia(高カルシウム血症)
  • Renal insufficiency(腎障害)
  • Anemia(貧血)
  • Bone lesions(骨病変)

👂 CRAB症状の頻度・意義
  • 米国の癌研究所を受診した多発性骨髄腫170例の後ろ向き解析:74%がCRAB症状,20%が非CRAB症状,6%が混在(つまりCRAB症状+非CRAB症状)
  • CRAB以外の症状は頻度順に神経障害,髄外侵襲,過剰粘液症候群,アミロイドーシス,出血凝固障害,全身症状(例:発熱や体重減少)など
  • CRAB症状を呈する患者の生存率と非CRAB症状の患者の生存率との間に有意な差はなかった(両群のKaplan-Meier推定値に有意差は検出されず)


💁 多発性骨髄腫に関する過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-30

超正常のeGFR?

外来での会話 💨
  • 担当医師 「採血には特に問題はないですよ」
  • 中年患者 「先生,腎臓は大丈夫でしたか?」
  • 担当医師 「ええ,全く問題ないと思います」
  • 中年患者 「どの項目で分かるんですか?」
  • 担当医師 「このeGFRが100超ってすごいですよ」
  • 中年患者 「よかった 😊 糖尿かも言われたので...」

💣 eGFR(推算糸球体濾過量)
  • eGFR(ml/分/1.73 m2)が90以上なら正常〜高値,60〜89なら正常〜軽度低下
  • ただし血清Crを用いて算出するため筋肉量低下(長期臥床)で過大評価に注意
  • また糖尿病初期では高血糖で尿量が増加してeGFRが一時的に上昇(過剰ろ過
  • 血糖コントロール後が本来の値(放置で顕性アルブミン尿の出現やeGFR低下)


💁 腎機能の過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-29

心臓アカラシア Achalasia cardia

  • 食道アカラシア(または単にアカラシア)は英名で esophageal achalasia または achalasia と記載されます.しかし稀ならず achalasia cardiacardiac achalasia とも表記されます.「どうして心臓なんだろう?」と思って調べていると以下の歴史に辿り着きました.
  • Google Scholar では”心臓アカラシア”や”アカラシア”という用語は検出されません.おそらく英名が変更された後に日本に疾患観念が広まったためと(勝手に)推測します.実際に1950年までに限定した Google Scholar 検索では用語”アカラシア”の論文ヒットは極僅かです.

🐞 アカラシアの歴史Esophageal achalasia@Wiki より)
  • 1672年に英国人医師トーマス・ウィリス卿がアカラシアの病態を初めて記述
  • 1881年にポーランド系オーストリア人の医師ヨハン・フライヘア・フォン・ミクリッツ・ラデッキがこの病気を心臓痙攣と記載
  • 1929年に医師のハルトとレイクが、この病態は下部食道括約筋が弛緩しないことが原因であることを突き止め,弛緩不能を意味するアカラシアと命名
  • 1937年にレンドラムがハルトとレイクの結論を支持し,心臓痙攣よりアカラシアという言葉を広めた

💁 命名の過去投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-28

Emergency Heart Failure Mortality Risk Grade (EHMRG)

💘 急性心不全の重症度スコア
  • カナダでの12,591名の急性心不全のデータをもとに提唱された臨床スコア(Ann Intern Med 2012;156:767-75).年齢、収縮期血圧、心拍数、酸素飽和度、血清Cr値、K値、救急車搬送・トロポニン上昇・活動性悪性腫瘍・利尿薬内服の有無により算出され(MED+CALCで計算可能:ココ)、7日以内の死亡率の予測に有用    

7日後の予後を予測するオリジナルのEHMRG(EHMRG7)に心電図のST低下を加えた指標EHMRG30-STは30日後の予後を予測することも報告されているも提唱されている

🉐 心不全に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-01-27

APS vs APTT:不思議な関係

APS=anti-phospholipid antibody syndrome(抗リン脂質抗体症候群)
APTT=activated partial thromboplastin time(活性化部分トロンボプラスチン時間)
  • APS臨床は静脈系+動脈系の血栓症であるが,検査ではAPTTが延長する

実はループスアンチコアグラント(LA)は in vitro のリン脂質依存性凝固反応(APTTなど)を阻害する免疫グロブリンと定義されている(血栓止血誌 2019;30:23-7).
  • APTTが延長するにも関わらず血栓症を発症する機序として,①リン脂質依存性凝固反応を抑制的に制御,②β2‐GPIを阻害,③プロテインCの活性化を阻害,④血管内皮細胞上のトロンボモジュリンやヘパラン硫酸を阻害ないし障害,⑤凝固抑制に働く血管内皮細胞からのプロスタサイクリン産生を抑制,⑥血管内皮細胞からのフォンウィルブランド(von Willebrand)因子やプラスミノゲンアクティベータインヒビターの産生放出を増加,などが提唱されている(難病情報センター).

(投稿者 川崎)

2023-01-26

🎯 今週の一枚

肺炎のため総合診療科に入院中の症例:心不全の合併が疑われたため朝に訪床した

🌅 現場実況
  • 患者さんがベットに腰掛けている状態でお話を伺い始めた.対側(患者さんの左側)にある大きな窓から入ってくる朝日がとても眩しかった.
  • ほどなくして,頸部の影が上下に拍動していることに気がついた(動画前半の矢印).もちろん内頸静脈の拍動で中心静脈圧は相当に上昇
  • 今度は逆向きに座り直してもらった(動画後半).眩しさはなくなったが,頸静脈の拍動が不明瞭になってしまった(よくみるとあるのだが...)
  • ちなみに右耳朶皺(フランク徴候/Frank's sign)を認める.冠動脈造影は未施行であったが安静心筋シンチグラフィからは虚血が疑われた.

🌇 独り言
  • ペンライトを用いると頸静脈拍動の評価が容易になることは以前から知られています(自験例).部屋の灯を消さなくてもペンライト点灯のみで十分なコントラストが得られることは覚えておいて損はないとおもいます.
  • 個人的にはペンライトを携行していないため,頸静脈拍動の評価目的に用いることほとんどありません.しかし本例のように,太陽光や部屋のライトでできる自然の影をうまく使えないかと常に意識はしています.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-01-25

🏆 論文

  • 当院の初期研修医であった梶先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 転落後の胸痛で当院のERに搬入 ➜ 右側気胸+前壁心筋梗塞と診断して順に治療
  • 本例のポイントは気胸は外傷性ですが心筋梗塞は外傷によるストレス誘発の疑い


😀 おまけ
  • 本例の主訴は胸痛と呼吸困難感でした.もちろんともに外傷性気胸で説明は可能です.ER搬入時に心電図も記録していますが,大きな問題はないと判断しています(ただし後から見返すと僅かにST上昇?)
  • 胸痛が持続するため心電図を再検(受傷後120分後/来院40分後)➜ 全胸部誘導で明瞭なST上昇が判明しました.胸腔トロッカーを挿入後に緊急カテーテル治療(ヘパリンや抗血小板薬は通常通り投与)
  • 精神的ストレスが心筋梗塞を誘発するの機序として,血行動態の過負荷・自律神経機能障害・神経内分泌活性化・炎症反応・血小板活性化などによる冠動脈プラークの破壊と血栓形成が提唱されています(

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2023-01-24

筋腎代謝症候群 MNMS: Myonephropathic metabolic syndrome

  • 急性動脈閉塞(特に下肢全体)に関連して発症する重篤な病態
  • 病態は横紋筋融解壊死に起因する腎障害や全身の代謝障害など
  • アメリカの外科医 Haimovici が提唱(Surgery 1960;47:739-47
  • 虚血再灌流症候群(ischemia-reperfusion syndrome)とも言う
  • 阻血をきたした患肢は著明に腫脹して患者は強い疼痛を訴える
  • 高ミオグロビン血症・尿症,高K血症,代謝性アシドーシス他
  • 閉塞動脈の血流を再開した直後に発症する例が多いことが特徴


(投稿者 川崎)

2023-01-23

Anthem sign(国歌斉唱サイン)

  • 末梢静脈虚脱法を用いて中心静脈圧の上昇の有無を判定する簡便な方法
  • 開発者であるカナダの循環器医 Rizkallah が自らRizkallah signと命名()
  • 診断特異度は医学生 88%,レジデント 85%,循環器フェロー 85%と安定

🐤 実際の方法
  1. 被験者はベッドの頭を30度上げた仰臥位(オリジナル)
  2. 手背の表在静脈を確認(静脈が見えない時は適用なし) 
  3. 腕を(国歌斉唱時の様に)受動的に胸骨上に置く(下図)
  4. 静脈が拡張している場合は陽性(中心静脈圧が上昇)

🐦 独り言
  • オリジナル報告の体位は30度臥床ですが,座位でも仰臥位でもいいような気がします.末梢静脈は逆流防止弁や筋肉の影響など不確定要素が少なくありませんが,本所見の様に臨床経験に影響を受けにくい特異度の高い(=ルールインできる/確定できる)身体所見は臨床に役立ちそうです.イケた命名も素敵です.

💁 末梢静脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ
アンサム
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(投稿者 川崎)

2023-01-22

ベルトロッティ症候群 Bertolotti Syndrome

  • 最尾側腰椎の肥大した横突起と仙骨間の関節を形成した病態
  • 初報はイタリアのMario Bertolotti(Radiol Med 1917;4:113-44)
  • 頻度は腰痛769症例のMRI検討で4.6%(30歳以下では11.4%)
  • 治療は内服薬や理学療法,局所注入,ラジオ波焼灼,外科手術

腰痛を訴える28歳女性(上図)にL5左横突起切除術を施行(下図)

💁 腰痛に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)