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2023-11-30

今週の一枚 🎯

右下腹部痛例ブルンベルグ徴候 陽性)



(投稿者 積木/川崎)

2023-11-29

シアトル心不全モデル Seattle Heart Failure Model: SHFM

  • ワシントン大学(シアトル)Levyらの心不全予後予測モデル(Circulation 2006;113:1424-33
  • 容易に入手できるデータを用い1年後,2年後,5年後の生存率などを予想できる(下図参照)
  • 慶應大学のShiraishiらが日本人補正版のSHFMが報告している(J Card Fail 2019;25:561-567
  • 背景,NYHA,虚血性,EF,sBP,血液データ,投薬,デバイス有無から算出(計算ページ

- シアトル心不全モデルの計算例 -

👺 他の心不全の予後予測
(投稿者 川崎)

2023-11-28

心電図マイスターへの道 ③

上室期外収縮 PAC の起源
  • P波:V1陰性=右房起源:下壁誘導が上方なら上大静脈,下方なら冠静脈洞
  • P波:V1陽性=左房起源:I&L誘導が陽性なら右肺静脈(下壁誘導が上方なら上肺静脈,下方なら下肺静脈),I&L誘導が陰性なら左肺静脈(下壁誘導が上方なら上肺静脈,下方なら下肺静脈)

心室期外収縮 PVC の起源
  • 右脚ブロック(左室起源):I・L・5・6陽性+下壁陽性なら左室弁輪前壁・流出路,I・L・5・6陽性+下壁陰性なら左室弁輪後壁・下壁,I・L・5・6陰性+下壁陽性なら左室前壁心尖近傍,I・L・5・6陰性+下壁陰性なら左室心尖部
  • 左脚ブロック(右室起源):I・L・5・6陽性+下壁陽性なら右室弁輪前壁・流出路,I・L・5・6陽性+下壁陰性なら右室弁輪後壁・下壁,I・L・5・6陰性+下壁陽性なら右室前壁心尖近傍,I・L・5・6陰性+下壁陰性なら右室心尖部
  • 右室起源の大まかなルール:下壁誘導ですべて陽性=流出路,すべて陰性=心尖部,ばらばら=中隔

ペーシングの位置
  • V1でQSなら右室ペーシング,V1でRsなら両室ペーシング
  • 右室心尖部なら胸部誘導は基本,negative concordance (例えば全てQS)で上方軸
  • 下壁誘導で全て陽性なら右室上部ペーシング,すべて陰性なら右室下壁あるいは心尖部ペーシング,一定しなければ中隔ペーシング
  • 左室心尖部のペーシングなら,V1が陽性で,V2-6はすべて陰性(例:QS).ただし両心室の心尖部は近いため,心拡大や回転によって,右室心尖部ペーシングでも同様の所見になり得る.

2枝ブロック
  • 右脚ブロック+左軸偏位:右脚と左脚前枝のブロック
  • 右脚ブロック+右軸偏位:右脚と左脚後枝のブロック
  • (広義には左脚ブロック:左脚前枝と左脚後枝のブロック)

3枝ブロック
  • 右脚ブロック+左軸偏位+1度房室ブロック
  • 右脚ブロック+右軸偏位+1度房室ブロック
  • 左脚ブロック+1度房室ブロック

Lown分類
  • Grade 0=心室性期外収縮なし,Grade 1=散発性(<30個/時間),Grade 2=散発性(>30個/時間),Grade 3=多形性(多源性),Grade 4a=2連発,Grade 4b=3連発,Grade 5=RonT
  • 急性心筋梗塞症例で心室細動への移行率から作成された分類であることに注意が必要

ケント束の追記
  • デルタ波が下壁誘導で陰性+II誘導でQSなら心外膜(冠静脈洞 CSや中心静脈 MCV)のケント束
  • C型WPWなら前中隔,中中隔,後中隔に分類できる.Δ波から1mmの極性で判断:目安は下壁誘導ですべて陽性なら前中隔,すべて陰性なら後中隔,不定なら中中隔
  • Ⅲ誘導でR波高さは前中隔>中中隔>後中隔の順に大きい
  • Jemes線維は心房から房室結節下部を連結,Mahaim線維はatrio-fascicular/ventricular pathway,nodo-fascicular/ventricular pathway,fasciculo-ventricular pathwayの総称
  • デルタ波が目立たないなら左室側壁(伝わるまでに時間を要しその間に通常伝導が生じる)のケント束,マハイム線維,Fasciculoventricular pathway(purkinje組織から隣接する心筋に接続している副伝導路)
  • 束枝—心室副伝導路(Fasciculo-ventricular pathway)ではWPW patternを呈するが基本的に頻拍は来さないため治療対象ではない

心室頻拍 VT
  • 4特徴:①房室解離,②すべての胸部誘導で陰性波(negative concordant:自験例),③胸部誘導でRS(またはrS)波形がありR開始~S谷≧100ms,④特徴的な波形(RBBBならV1で前半のRが大きい(taller left rabit ear)+V6でR<S,LBBBならRS波の下行(前半)部分にノッチ
  • 左軸偏位やQRS幅>160ms,左脚ブロック+右軸偏位,RBBBでV1で単相性,aVRでQ波なし,なども心室頻拍を示唆
  • wide QRS tachycardiaの鑑別はVT,SVT,偽性心室調律


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-11-27

胸鎖乳突筋 Sternocleidomastoid muscle

軽労作での息切れで来院した症例(体位は座位)

🐤 解説
  • 座位で内頸静脈の明瞭な拍動を視認可 ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
  • 拍動は隆起ではなくて陥凹で不規則と思われる ➜ 心房細動の疑い
  • 吸気負荷の追加 ➜ 胸鎖乳突筋が明瞭化し頸静脈反応は評価できず
  • 患者さんの右側から再度負荷 ➜ 拍動上縁は上昇するが陽性波なし
  • 本例の最終診断は心房細動を合併した非代償性の左心不全(PEF)

🐥 独り言
  • 座位で内頸静脈の陥凹を認めた場合,吸気負荷で陽性波(CV merger)になれば心不全はより重篤と考えられます.本例は負荷後も陰性波のままだったため,そこまで重症ではないと考えられました.ちなみに吸気負荷で拍動が消失する症例を経験することは(ほぼ)ありません(直近の座位陽性12例では吸気で拍動消失例なし).
  • 安静座位で内頸静脈の拍動を認めない症例で,吸気後に拍動が出現すれば中心静脈は中等度上昇していると(個人的には)判断しています.胸鎖乳突筋が安静時から目立っている場合(自験例)や本例のように吸気で目立つ場合(偽クスマウル徴候)があります.しかし筋肉は拍動しないので頸静脈と見間違うことはないと思います.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-26

ラミナリア かん Laminaria tent

  • 昆布の一種である乾燥したラミナリアの茎で作られた細い棒
  • 子宮頸管の拡張目的に用いられる医療機器(子宮頸管拡張器)
  • 12〜24時間で凡そ2~3倍に膨張(挿入後24時間以内に抜去)
  • 外科的中絶前,初産婦の頸管未熟例,婦人科疾患処置前など
  • 長さ60~80mm、直径3~5mmの円筒形で通常,複数本挿入
  • 日本ラミナリア桿(医療機器届出番号:21B3X00009000001


(投稿者 川崎)

2023-11-25

黄色肉芽腫性腎盂腎炎 Xanthogranulomatous pyelonephritis

  • 概要 慢性腎盂腎炎の亜型で尿路閉塞や慢性感染に関連することが多い病態
  • 命名 脂質を多く含んだマクロファージ浸潤が病理切片で黄色に見えるため
  • 感染 起因菌は尿路感染と同じ(大腸菌,ミラビリス,シュードモナス他)
  • 疫学 全ての腎感染症の0.6%~1%で男性よりも女性に多い(50〜60歳代)
  • 鑑別 腎がん,腎実質奇形,腎結核,腎膿瘍,間質性腎炎,血管筋脂肪腫
  • 治療 抗生物質と経皮ドレナージ,難治症例では腎部分切除術や腎全摘術

参考)StatPearls

腎周囲組織や副腎に破壊が及んだ黄色肉芽腫性腎盂腎炎の1例

(投稿者 川崎)

2023-11-24

右心カテーテル

  • 最近では右心カテーテルを行う機会はめっきり減少しました.しかし頸静脈所見を解釈するためには,右心カテーテルで得られる圧波形を知っておくことが重要です.少し前にSNSで目にした論文)が気になったため,右心カテーテルの歴史と代表的な波形を復習してみました.

♻ 歴史
  1. 西ドイツの泌尿器科医フォルスマンWerner Forssmann、1904-1979)が自らの腕を切開して尿道カテーテルを右心房まで到達させレントゲンを撮影した(Klinische Wochenschrift 1929;8:2085). その一件で病院を解雇されたが,これは世界初の心臓カテーテルで1956年にノーベル生理・医学賞を受賞.同じ様な行動をとった医師が他にもいたがフォルスマンのみ写真が残っていたらしい(
  2. フランスの医師・生理学者であるクールナンAndré Frédéric Cournand, 1895-1988)が,右心カテーテルによる圧測定および心拍出量の測定法を確立した(J Clin Investig 1945;24:106).フォルスマンと同時にノーベル生理・医学賞を受賞した.同年は3人の同時受賞でもう1人はリチャーズDickinson Woodruff Richards Jr.,1895-1973)
  3. アイルランドの心臓専門医スワンHarold James Charles “Jeremy” Swan,1922–2005)とスロバキア生まれのアメリカの心臓専門医ガンツWilliam Ganz,1919-2009)が先端にバルーンが付いた肺動脈カテーテル(別名:スワン・ガンツカテーテル/Swan-Ganz catheter)を開発(N Engl J Med 1970;283:447-51

- 圧力波形のピットフォールと異常 -

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-11-23

周期性嘔吐症 Cyclic vomiting syndrome: CVS

  • 概要 数日の嘔吐発作を周期的にくり返す小児に多くみられる病態
  • 疫学 発症年齢の中央値は4.8歳で,僅かに男性に多く白人では2%
  • 別名 アセトン血性嘔吐症やケトン血性嘔吐症など(昔は自家中毒
  • 誘因 心理的・身体的なストレス,感染症,疲労,食事,月経など
  • 機序 体脂肪の分解時に血中アセトン(ケトン体)が異常増加する
  • 原因 ミトコンドリア異常や内分泌異常,自立神経障害など多因子?
  • 診断 臨床経過と嘔吐発作の特徴,器質的な疾患の否定などによる
  • 治療 予防には誘引の回避+発症時には輸液や制吐剤など対症療法
  • 予後 発症後2~5年程度で自然軽快が多い(28%は片頭痛に移行)


(投稿者 川崎)

2023-11-22

今週の一枚 🎯

消化管の進行癌症例




(投稿者 川崎)

2023-11-21

頭部脳回転状皮膚 Cutis Verticis Gyrata: CVG

  • 頭皮軟組織の過剰肥厚で脳のような外観を呈する病態
  • 初報は1837年にフランスの皮膚科医であるJLM Alibert
  • 隆起部は硬く圧を加えても平らにすることはできない
  • 頭皮の中央〜後部に多いが頭皮全体に及ぶこともある
  • 頻度は1/10万人以下で男女比6:1,好発は思春期〜30歳
  • 脳性麻痺やてんかん,精神神経疾患と関連する可能性
  • 二次性CVGは先端巨大症,母斑,炎症過程などと関連
  • 通常は良性疾患で治療不要(二次性では原疾患の治療)
  • 美容的に外科切除,皮膚充填剤,ヒアルロニダーゼ注射


- 頭部脳回転状皮膚を呈した先端巨大症の60歳男性 -

(投稿者 川崎)