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2025-10-20

Ⅳ音とエコーA波:深堀

  • 数年前ですが講演後に「肥大型心筋症で明瞭なⅣ音を認めるのに心エコー図のA波が低いのはどうしてですか?」と質問を受けました.残念ながらその場ではうまく答えることができませんでした.そのやり取りをWEBでご覧になっていた身体所見の巨匠から解説メールをいただきました.
  • 先日,Ⅳ音とその機序に関してX(旧Twitter)に投稿を行いました(ココ).しかし私の理解および文章が不正確であったため,翌日に同じ巨匠から再度,解説メールをいただきました(とても反省).同じ過ちを繰り返さないためにも,忘備録として下記にまとめをアップしておきます.

💫 巨匠の指導内容の要約
  • 左室拡張末期圧(EDP)上昇例の左室流入A波はすべて増高するわけではない。EDPが中等度以上に上昇すると心房機能は亢進しているにも拘わらずA波は減高する(いわゆる偽正常化)。この場合でも立派なⅣ音を聴取(HCMの大半はこのパターン)
  • その原因は左室が硬すぎるあるいはEDPが高すぎるため心房機能は亢進しているのに左室側には少ししか流入できないためで、大半は肺静脈側に逆流している。実際このような例の肺静脈血流波形を記録するとA波が著明に増高している。
  • 以上のことから、Ⅳ音が出現する病態は、左室流入A波増高・肺静脈血流A波正常左室流入A波減高・肺静脈血流A波増高の2つがあり、後者の方がより進行した状態で予後不良と言える。 
  • 左室流入A波は小さくても、心房機能は亢進しているため左室圧A波は増大している(これが心尖拍動のA kickとして触れる)。すなわち、左室流入A波は小さくても左室を振動させるパワーとしては十分に働いている。
 
🔗 帽弁口血流速波形と違って心尖拍動のA波は偽正常化しにくい
  • LVEDPが約20mmHgを超えると僧帽弁口血流速波形(MVF)は偽正常化し始めるが(下図左)、心尖拍動のA波率(A/H)は偽正常化せずLVEDPが30~35mmHgくらいまで増大し続ける(下図右)。
  • A/Hは、それ以上の著明な上昇(LV-preA圧の中等度上昇も同時に伴う状態)になって初めて減高に向かう。この時点にまで至ればMVF-A波・PVF-A波ともに減高し、Ⅳ音も当然弱くなる。
  • 肥大心や拡大心においてMVFが一見正常パターンで正常か偽正常かの判断に迷った時にACG-A波を触れるかあるいは記録したACGのA波増高を確認できたならばMVFが偽正常であると判断できる。

Jpn J Med Ultrasonics 1986;13:315-323に関連する原画)

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(投稿者 川崎)

2025-10-19

クループ(症候群) Croup (syndrome)

  • 急性の臨床経過で上気道の閉塞または狭窄を生じる疾患の総称
  • 古スコットランド語の擬音語 kropan(騒々しく泣く)に由来
  • 予防接種の普及で細菌の感染から発症する症例は減少している
  • 現在では主にウイルス感染に伴う急性喉頭気管気管支炎が多い
  • 典型例は夜間に吸気性喘鳴や犬吠様咳嗽、吸気性呼吸困難など
  • 3~4日程度で回復(抗菌薬不要/重症例は酸素やステロイド)
  • 鑑別は喉頭蓋炎,痙性,ジフテリア,膿瘍,異物,アレルギー


- 吸気性喘鳴と発熱を主訴に受診したクループの2歳男児と3歳女児 -

(投稿者 川崎)

2025-10-18

siエスアイRNA 低分子干渉RNA

  • siRNAとはsmall interfering RNA(ribonucleic acid)の略
  • 21-23塩基対から構成される低分子二本鎖RNA(リボ核酸)
  • 遺伝子の発現を配列特異的に抑制(=RNA干渉)に関与
  • ただしその効果は一過性(発現ベクターの導入で持続可)
  • RNAサイレンシング医薬として臨床応用(siRNA薬:
  • RNAサイレンシング=特定の遺伝子の産物の発現を抑制


- ヒトにおけるRNAi経路およびmiRNA経路 -

(投稿者 川崎)

2025-10-17

超音波検査用ゼリー

エコージェル あれこれ
  • 構成 ➜ 水,グリセリン,カーボンポール樹脂(粘度調整用),pH調節剤,中和剤など(防腐剤としてパラベンを含むこと有)
  • 注意 ➜ 感染対策を怠ればアウトブレイクの可能性あり(下表:継ぎ足しはせずに使い切ってボトルを水洗・乾燥後に再利用)
  • 種類 ➜ 心エコー図では腹部・表在エコーよりも硬めに調整されていることが多い(例:各々アクアソニックとソノゼリー)


👀 おまけ
  • 先日,生理検査室のソノグラファーさんとのちょっとした会話から「腹部と心臓でエコーゼリーの粘度が違う」を知りました😯
  • 実際に触ってみると明らかに異なりました.不肖30年以上エコー検査に携わってきましたが,まだまだ知らないことが山盛り😂

(投稿者 川崎)

2025-10-16

今週の一枚 🎯 診療室内で運動負荷

無理すると息切れがあるという男性(座位)


👀 解説
  • 安静座位で内頚静脈の拍動なし
  • 吸気負荷で一瞬,僅かに拍動?
  • 診察室内を2周歩いてもらった
  • すると座位で明瞭な拍動(➢)
  • 最終診断は非代償性の心不全

👶 コメント
  • 頚静脈の座位定性法の可能性は無限です.様々な負荷が追加できるからです.吸気負荷が最も簡便ですが,前屈負荷蹲踞負荷左上肢挙上負荷立位負荷なども可能です.そしてそれらを組み合わせることも有用です.
  • 当院で最初に行った負荷頚静脈法は6分間歩行でした(論文).しかし診察室やベットサイドでは実施が困難で活用範囲が限定されます.今回行った診察室内を少し歩きまわってもらう負荷はベットサイドでも可能です.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-10-15

SARS-CoV-2感染症治療薬

商品名 ベクルリー点滴静注用100mg ラゲブリオカプセル200mg パキロビッドパック300/600 ゾコーバ錠125mg
一般名 レムデシビル モルヌピラビル ニルマトレルビル/リトナビル エンシトレルビル
剤形 注射 カプセル 錠剤 錠剤
用法用量 初日200mg、2日目以降100mg
軽症:3日間
中等症:5日間
(総投与期間は10日まで)
1回800mg
1日2回・5日間
300パック
※30≦eGFR<60
600パック 初日375mg
2~5日目125mg
ニルマトレルビル150mg
リトナビル100mg
1日2回・5日間
ニルマトレルビル300mg
リトナビル100mg
1日2回・5日間
薬価 46,498.0円/瓶 2,164.9円/カプセル 12,538.6円/シート 19,805.5円/シート 7,090.0円/錠
自己負担額の目安*
(成人1治療あたり)
1割負担 18,599円 8,660円 6,269円 9,903円 4,963円
2割負担 37,198円 17,319円 12,539円 19,806円 9,926円
3割負担 55,798円 25,979円 18,808円 29,708円 14,889円
*ベクルリーは3日間として算出

(投稿者 小森)

2025-10-14

術前絶飲食「2-4-6ルール」

  • 清澄水の摂取は年齢を問わず麻酔導入2時間前まで安全(推奨度 A)
  • 母乳の摂取は麻酔導入4時間前まで安全(推奨度 C)
  • 人工乳・牛乳の摂取は麻酔導入6時間前まで安全(推奨度 C)

💧 清澄水セイチョウスイ(クリアリキッド)
  • ここで言う清澄水とは,果汁を含まないジュースやコーヒー飲料など自由度が高く,各施設に適したものを選択できる.また,量については特に制限しておらず,こちらも自由度が高い.このように,このガイドラインは導入施設により,適した運用を選択することが可能であり,汎用性が高いといえる.


(投稿者 川崎)

2025-10-13

フィジカルクイズ(No. 25 & 26)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-10-12

PIMSRA:ピー・アイ・エム・エス・アール・エー

  • 閉塞性肥大型心筋症 (HOCM) に対する侵襲度の小さい新たな治療
  • Percutaneous Intramyocardial Septal Radiofrequency Ablationの略
  • 邦名は心エコーガイド下経皮的心筋内中隔高周波アブレーション
  • 中国のLiwen Liuらが開発(J Am Coll Cardiol 2018;72:1898-1909
  • 15例6ヵ月間で患者の最大圧較差が88 mmHgから11 mmHgへ減少
  • 心室中隔壁は25 mmから14 mm、BNPは924 pg/mlから137 pg/ml
  • 手術に関連した脚ブロックや完全房室ブロックは発生しなかった

- PIMSRAのイメージ -


(投稿者 川崎)

2025-10-11

パラシュート反射

  • 体平衡が乱れたときに速やかに調整しようとする姿勢反射の一つ
  • 具体的には水平の状態で急に頭を下げると手を広げる反応のこと
  • 大脳皮質や中脳が発達する生後6カ月~1歳に出現(特に8~9ヵ月)
  • ハイハイする頃(8ヵ月)からパラシュート反射で転倒に備える?
  • 姿勢反射は一生消えることがないためパラシュート反射も一生有
  • 他の姿勢反射にはホッピング反射(足踏出)やランドウ反応など

参考)ベビーカレンダー、他

😃 おまけ
  • 姿勢反射とよく似たものに原始反射があります。こちらは脳幹や脊髄による無意識の反射で、出生時に存在して中脳や大脳の発達に伴い消失します(概ね半年~1年以内)。つまり原始反射のあとに続いて出てくるのが姿勢反射のようです。
  • 主な原始反射には、把握反射(手掌など刺激すると指を屈曲)、吸啜反射(口に入ってきたものを強く吸う)、モロー反射(振動や音などの刺激時に何かに抱きつこうとする)、歩行反射(前かがみになった時に足を出す)などがあります。

参考)ベビーカレンダー、他

(投稿者 川崎)