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2022-06-30

🎯 今週の一枚

定期薬を服用後に胸痛を自覚した症例



(投稿者 杉原/川崎)

2022-06-29

ポパイ徴候 Popeye's sign

  • 上腕二頭筋の腱断裂(biceps tendon rupture)後に腕を屈曲すると出現する所見
  • ほうれん草を食べると超人的なパワーを出すポパイ(Popeye)の力こぶから命名
  • 保存療法も可能であるが筋力が30〜50%低下するために通常は外科的修復が推奨
  • 最近ではアミロイドーシス(ATTR)でも注目Eur Heart J 2022 Jun 25;ehac330


💪 余談
  • かの有名なポパイは,およそ100年前にニューヨークの新聞で掲載が始まった漫画『シンブル・シアター(Thimble Theatre)』に登場するキャラクターです.このギャグマンガの連載開始10年目に一度きりの端役として登場した不死身の小男ポパイですが,一躍人気者となり主役の座を奪い去ったようです(出典

(投稿者 川崎)

2022-06-28

Trichobezoar 毛髪胃石

  • 胃内の毛髪に胃液や粘液が作用して固形物(胃石)となり残存した病態(毛髪胃石).長期にわたる食髪症(異食症,Pica)があり,抜毛癖を伴うことが少なくない.
  • 自己の毛髪以外にペットなどの毛髪やカーペット,衣料品の毛が原因になることがある.毛髪胃石以外の胃石には,植物胃石や混合胃石,薬物胃石,ミルク胃石などがある.
  • 別名はラプンツェル症候群(Rapunzel syndrome).由来はグリム童話に登場する少女ラプンツェル.彼女の長い金髪は王子との密会に役立つが,魔法使いに切られてしまう.

🚫 毛髪胃石58例の検討日消外会誌 2001;34:254-8
  1. ほとんど女性(57例)で10代にピークがある(0~9歳33%,10~19歳53%)
  2. 初発症状は腹部腫瘤触知69%,腹痛64%,悪心・嘔吐38%,便秘・下痢8.6%
  3. 治療は内視鏡的摘出2例と自然排泄1例以外のほとんどで外科的摘出を要した

毛髪胃石が小腸内に落下し腸閉塞を呈した一例

💁 異物に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-06-27

傍胸骨拍動の呼吸負荷

息切れで紹介受診した症例の傍胸骨拍動

🐦 解説
  • 第3肋間胸骨左縁に置いた聴診器の周期的な上下運動を確認
  • 隆起は待機時間の長い抬起性(容量負荷より圧負荷を示唆)
  • 深吸気保持を追加しているが傍胸骨拍動の所見に著変はない
  • 心エコー図で推定された肺動脈の収縮期圧は60mmHg程度

🐤 つぶやき
  • 頸静脈評価では吸気負荷(クスマウル徴候の有無の判定)が汎用されています(多分😅).しかし傍胸骨拍動の評価では,呼吸負荷の追加は一般的ではないと思います.個人的には時々行っていますが,あまり有用性を実感することはありません(本例でもそうでした).
  • 吸気負荷では中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇することが知られています(下図).よって理論上は吸気負荷で傍胸骨拍動も増強されるはずです.問題は吸気時に胸腔容積が増大して右室と胸骨の密着度が低下することです.きっと相殺されるのでしょうね.


心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-06-26

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

左室容量曲線 収縮・拡張機能解析
運動負荷/安静時tetrofosmin心筋SPECTのQGS解析を応用した左室容量曲線より算出した収縮/拡張機能(上)とコントロールと狭心症/陳旧性心筋梗塞症の安静時と負荷後の差の比較(下)
Sakamoto K : J Nucl Cardiol ;11:152-8;2004



(投稿者 杉原)

2022-06-25

保健機能食品

  • 健康増進に繋がると考えられているいわゆる「健康食品」には法律上の定義は存在しない
  • 一方,保健機能食品とは安全性や有効性が一定の基準を満たした食品で以下の3つに分類

  1. 栄養機能食品 特定のミネラル5種類とビタミン12種類を含む食品で衛生法に基づき表示
  2. 特定保健用食品 科学的根拠が認められ消費者庁から表示が許可された食品で通称トクホ
  3. 機能性表示食品 企業の届け出による表記でその効果の有無について国は責任を負わない


💁 食品に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-06-24

「備えあれば憂いなし」ではありませんが...

🏥 日々の臨床現場
  • 薬剤などに対するアナフィラキシーは一定の頻度で経験されます(特に造影剤).またβ遮断薬を服用している症例ではアナフィラキシーが重篤化しやすく,第一選択薬のアドレナリン効果が減弱することも知られています.
  • 心疾患ではベータ遮断薬の内服例が少なくなく,冠動脈CTに至っては撮影直前にβ遮断薬を静注していることがあります.そんな時はグルカゴンが推奨されていることは知っていても,実際に投与経験がある医師は少数派?

🏢 重篤副作用疾患別対応マニュアル一覧より(厚生労働省)
  • 薬剤投与に関連してアナフィラキシーを疑う症状を認めた場合,0.1%アドレナリンの筋肉内注射(通常 0.3~0.5 mL,小児:0.01 mL/kg,最大 0.3 mL)を行う.注射の部位は大腿部中央の前外側である.筋肉注射後15分たっても改善しない場合,また途中で悪化する場合などは追加投与を考慮(令和元年9月改定
  • β遮断薬内服時,アドレナリンの代わりにグルカゴン1~5 mg(20~30μg/kg 5分以上静注.以後,5~15 μg/分で持続点滴(平成22年6月一部改訂

😊 頭の整理
  • アドレナリン注 0.1%=1シリンジ1 mL(アドレナリン1 mg含)➜ 初期投与は0.3~0.5シリンジを筋注
  • グルカゴン(グルカゴンGノボ注射用1mg®)=1バイアル1 mg(粉末で冷所保存,1 mLの添付液で溶解)➜ 初期投与は1バイアル〜を緩徐静注

(投稿者 川崎)

2022-06-23

🎯 今週の一枚

検診で心雑音を指摘された症例

😄 解説
  • テーブル上に置いた右示指に特記すべき異常なし(傷は小石を扱う職業)
  • 指先を下方に押し付けると爪床に周期的な色調変化が出現(クインケ脈
  • よく見ると爪床だけでなくて指先端にも色調変化あり(動画中の矢印)
  • 指先圧迫を解除すると爪床〜指先全体に認めた色調変化も消失している
  • 拡張期雑音があり(ランブルなし),エコーでは中等度は大動脈弁逆流

😎 つぶやき
  • 大動脈弁逆流症によるクインケ脈(Quincke pulse)は本ページに何度も登場しています.大動脈弁逆流では肘の水槌脈と同じくらいよく認める身体所見と思います.
  • クインケ脈はそのまま認めることもありますが(自験例),通常は他動的な爪の圧迫(自験例)や自動的な指先の圧迫(本例)を加えると検出感度が上昇します.
  • 誘発方法(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と出現部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,大動脈弁逆流の重症度判定がある程度可能と思っています.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-06-22

クルーゾン症候群 Crouzon syndrome

  • 症候性頭蓋縫合早期癒合症で,頭蓋や顔面,頸部,気管,四肢に異常を生じる
  • 主として fibroblast growth factor receptor2(FGFR2)の遺伝子異常に起因する
  • 由来はフランスの医師 Louis Édouard Octave Crouzon (1874–1938) の初報(
  • 出生児の身体所見から同病態が疑われ,各種画像検査や遺伝子検査で確定診断
  • 治療は対症療法である外科的治療が主体(乳幼児期から成人期まで複数回必要)
  • 予後は水頭症や小脳扁桃下垂,上気道閉塞、,喉頭気管奇形などで規定される
  • 類似はアペール症候群,ファイファー症候群,アントレー・ビクスラー症候群
  • 頻度は10万出生あたり約1.6人で,本邦では900人程度の症例が確認されている

参考)難病情報センター クルーゾン症候群(指定難病181)ほか


(投稿者 川崎)

2022-06-21

第133回日本循環器学会近畿地方会より

😃 個人的に気になった報告
 
T3-26 心房細動に対するカテーテルアブレーション後,難治性下痢をきたした一例
  • カテーテルアブレーションによる難治性下痢の発症頻度は0.025-0.04%と非常に少ない.原因としてカテーテルアブレーションによる食道迷走神経障害が示唆された.

T4-10 周産期心筋症による心不全加療に対しカベルゴリンが著効した一例
  • カベルゴリンの効能・効果はパーキンソン病,乳汁漏出症,高プロラクチン血性排卵障害,高プロラクチン血性下垂体腺腫(外科的処置を必要としない場合に限る),産褥性乳汁分泌抑制.

T5-10 Raphel cord の剥落により急性大動脈弁閉鎖不全症を来した大動脈二尖弁の1例
  • Valsalva 洞に付着していたと思われる Raphel cord(索状構造物)が内膜ごと剥がれ,左室内に脱落した状態となったことが原因と考えられた.


👻 当院からの発表
  • T3-3 外傷性気胸を契機に急性心筋梗塞を発症した1例(循環器内科 梶健太郎ほか)
  • T4-4 SARS-CoV-2 ワクチン接種後に収縮性心膜炎を生じた1例(循環器内科  中西雄紀ほか)
  • T4-31 簡易定性法を用いた内頸静脈評価による肥大型心筋症の予後予測(循環器内科 川﨑達也ほか)

中西先生は優秀賞をゲット 🎉 症例報告の2演題は英語論文を作成済み

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)