このブログを検索

2017-10-31

グラム染色

発熱症例の膿尿をグラム染色したら,多数の好中球と長く連鎖してるグラム陽性球菌を認めた

尿路系感染の起因菌となるグラム陽性の連鎖球菌として腸球菌やB群連鎖球菌(Group B Streptococcus, GBS)がある
腸球菌が長く連鎖することは多くないが,本例は培養で腸球菌E. faecalis エンテロコッカス・フェカーリス)と同定された

再確認
グラム染色はあくまで目安で,最終確認は培養やPCR(ただし本例ではどちらであってもペニシリン系を選択だが・・・)

(投稿者 川崎)

好酸球増多する肺疾患

肺疾患が疑われ血液検査で好酸球が増加している時は・・・
  • 好酸球性肺炎 ➔ 気管支肺胞洗浄液で好酸球の著増
  • アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 ➔ 血清アスペルギルス沈降抗体の陽性
  • 気管支喘息 ➔ 呼気中NOが増加
  • 過敏性肺臓炎 ➔ CTスリガラス陰影,環境季節誘発(職場や夏など)
  • 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧名:チャーグ・ストラウス症候群) ➔ ANCA陽性,末梢神経炎
  • 薬剤性肺炎 ➔ 頻度順に抗悪性腫瘍薬,抗リウマチ薬,抗菌薬,漢方,インターフェロン,降圧薬など(参照

もちろんコモンな肺疾患+好酸球が増加する疾患が偶然合併しても生じる(ヒッカムの格言;特に高齢者)
 アレルギー疾患(鼻炎やアトピー他),寄生虫,(特発性)好酸球増多症,悪性疾患,炎症性腸疾患など

(投稿者 川崎)

2017-10-30

抗菌薬投与はいつまでC. difficile のリスク?

偽膜性腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)の発症時期の検討(J Antimicrob Chemother. 2012;67:742-8

対象
  • 下痢あり+CD毒素陽性(337人)
  • 下痢なし+CD毒素陽性(337人)
  • 下痢あり+CD毒素陰性(227人)

結果

少し難解な図ですが,つまり抗菌薬投与の1ヵ月以内が最もリスクが高くて(抗菌薬未投与例の6.7–10.4倍),抗菌薬中止3ヵ月後も依然リスクがある(抗菌薬未投与例の2.7倍)

(投稿者 川崎)

2017-10-29

フィジカルイグザミネーション忘備録

タッピング(tapping)=軽く叩いてくる感じ
持続性(sustained)=抬起性(たいきせい,heaved)=押し上げてくる感じ

心尖拍動
  • 正常➞触れない or 鎖骨中線でタッピング
  • 異常➞鎖骨中線で持続性なら左室求心性肥大,左下方で持続性なら左室遠心性肥大

傍胸骨拍動
  • 正常➞触れない
  • 異常➞タッピングなら右室容量負荷,持続性なら右室圧負荷

(投稿者 川崎)

ヒューリスティック

英: heuristic,発音:hjuərístik( ヒュゥアリィスティィク).分節:heu・ris・tic
【名】発見的問題解決,経験則 【形】発見的な、推測に基づいた,ヒューリスティックな
  • コンピュータ➼特定のアルゴリズムに頼らず蓄えた知識に基づいて,複数の選択肢の中から最適なものを選択する方法
  • 医学➼診断などの決定を各所見から一歩一歩最終診断に迫るのではなく,第六感的な直感で素早く診断に到達する方法

医師のゲシュタルト[直観による診断(ただし直感や勘ではないby Dr.岩田健太郎)]に近いかも...

(投稿者 川崎)

2017-10-28

ベンズ The bends

減圧症(decompression sickness)のうち,筋肉痛や関節痛など筋肉関節型減圧症の俗称
  • 減圧(例:高気圧環境⇒常圧環境,潜函作業・潜水作業・ダイビングなど)を伴う行為後に発生
  • 血液中に溶解していた窒素の気泡化に加えて,活性化された凝固系・補体・液性因子なども関与
  • 減圧症の他の症状は痒みや皮疹,頭痛,息ぎれ,意識障害などで,高圧酸素療法が唯一の治療法

19世紀に潜函工が浮上してすぐに体を折り曲げて(=bend)倒れたことに由来(Answers.com

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「振戦」

振戦のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 精神状態の変化や発作,心臓障害を伴う振戦 ⇒ 中毒,薬物暴露,医原性(リチウム,ステロイド),代謝障害(低血糖,低Na血症,甲状腺機能亢進症,低Ca血症)
  2. 新規発症の片側不全麻痺,感覚喪失,複視または構語障害を伴う振戦 ⇒ 脳卒中,脳腫瘍,脳膿瘍
  3. 不安,情緒不安定,疼痛を伴う動作時振戦・姿勢振戦 ⇒ アルコールまたは薬物離脱症状
  4. 何らかの随伴症状を伴う振戦 ⇒ 心因性
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-10-27

痙攣 vs 電解質異常

痙攣を生じる電解質異常と言えば・・・(毎週木曜日モーニングレクチャーより)




(投稿者 川崎)

ドッペルゲンガー

ドイツ語 Doppelgänger ➜ 重なって歩く者(Doppel=double,gänger=predecessor)
自己像幻視(幻覚の一種で自身の姿を自分で見る状態)=英語 autoscopy
  • ある日,自分とは異なる自分自身(ドッペルゲンガー)が日常生活に出現する
  • 自分のドッペルゲンガーを目撃した者は死や災難が降り注ぐともいわれている
  • 原因は不明:精神疾患説,心霊現象・超常現象説,パラレルワールド説など

ドッペルゲンガーを経験した有名人
   リンカーン米大統領,芥川龍之介,ゲーテ,エリザベス一世,モーパッサンなど

興味がある方 ⇒ ドッペルゲンガーの正体と実例!突然現れるもう1人の自分
 

(投稿者 川崎)

2017-10-26

心不全 : 収縮不全 vs 拡張不全

収縮機能不全の目安
  • 指標はEF (ejection fraction,左室駆出率:正常値60%以上)
  • EFのカットオフは確立されていないが目安は40~50%未満
  • heart failure with reduced ejection fraction(HFrEF:ヘフレフ
  • 男性に多い(例:心筋梗塞後,拡張型心筋症)

拡張機能不全の目安
  • 指標はE/e' (イー・オーバー・イープライム:正常値8.0未満,単位なし)
  • E/e' のカットオフは15より大きい場合に拡張障害とすることが多い
  • heart failure with preserved ejection fraction(HFpEF:ヘフペフ
  • 高齢女性に多い(例:高血圧性心疾患)

ポイント
  • 心不全を生じた症例の約半数は収縮機能(EF)が保たれている
  • 収縮機能不全では基本的に拡張機能不全も伴う(逆は真ならず)
  • 収縮機能不全と拡張機能不全の心不全例で予後に明らかな差なし

(投稿者 川崎)

帯状疱疹ワクチン

乳幼児では水痘予防のため2014年10月から水痘ワクチンの定期接種が開始された

同ワクチンに2016年3月,50歳以上の大人に対して帯状疱疹の予防効果が追加
(帯状疱疹は50歳から急増し80歳までに30%が経験,そのうち帯状疱疹後神経痛は19.7%)
接種後4~7年で帯状疱疹発症が39.6%減,帯状疱疹後神経痛発症が60.1%減

乾燥弱毒生ワクチンで,全額自費で目安は1万円前後,その効果は10年程度
大規模研究でワクチン接種群はプラセボ群と接種後の有害事象に有意差なし

詳細 ➔ 帯状疱疹ワクチン ファクトシート 国立感染症研究所

(投稿者 川崎)

2017-10-25

尿路結石の画像診断

尿路結石の種類
カルシウム結石(シュウ酸カルシウム結石あるいは蓚酸カルシウムリン酸カルシウム結石)が最多で,感染結石(リン酸アンモニウム・マグネシウム結石),尿酸結石,シスチン結石が続く.稀なもののとしてストラバイト結石やキサンチン結石,インジナビル結石などがある

診断能の比較報告
対象は疝痛発作を生じた97例で,その内64例が尿路結石による疼痛
結石の描出能をspiral CT(単純), US,IVU(静脈性尿路造影)で比較
Renal colic: comparison of spiral CT, US and IVU in the detection of ureteral calculi. Eur Radiol. 1998;8:212-7.
CTが最も高い診断能を有した ➜ 感度94%,特異度97%,正診度95%


おまけ
単純CTは尿酸結石,シスチン結石,キサンチン結石などレントゲン陰性結石も同定可能(尿路結石症診療ガイドライン 2013年版

※以前の投稿 ⇒ 胆石と尿管結石のCT所見

(投稿者 川崎)

Log-roll test ログロールテス

股関節の疾患の有無を判定する簡便な方法

方法
  • 仰臥位で患者の健側大腿を他動的に外旋して可動範囲を確認
  • 同様に患側大腿を他動的に外旋して可動範囲を健側と比較
  • 可動範囲が患側で大きければLog-roll test陽性と判断
  • (痛みで可動域が低下してる場合も陽性と判断する?)



(投稿者 川崎)

2017-10-24

心電図 右脚ブロック vs 左脚ブロック

基本パターン(理屈ではなくて覚えるのみ)
  • 右脚ブロック ➜ 幅広QRS+V1誘導のrSR' ➜ フォロー
  • 左脚ブロック ➜ 幅広QRS+V1誘導のrSあるいはQS  ➜ 精査
※V1誘導でQRSが上向きなら右脚(エ向きのキャクと暗記)

右脚ブロック 松下心電塾 症例(初級5)より

左脚ブロック 松下心電塾 症例(初級6)より

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

肺炎が疑われた症例の喀痰のグラム染色


  • 一見,グラム陽性の双球菌が多数存在しているため肺炎球菌性肺炎と即断するかもしれない
  • でも上皮細胞に付着する多数の双球菌からは口腔内常在菌の誤嚥の可能性も否定できない
  • 好中球の貪食像も認められるが,肺炎球菌は莢膜があり貪食されにくいことが知られている

最終的には培養から肺炎球菌緑色連鎖球菌(S. viridansが検出され,市中肺炎+誤嚥と考えられた

(投稿者 川崎)

2017-10-23

NSAIDs座薬と膵炎

NSAIDs座薬はERCP後の急性膵炎の発症予防に有用である

ただし通常の急性膵炎におけるNSAIDs座薬の除痛以外の有用性は確立されていない
総論 Acute Pancreatitis. N Engl J Med 2016;375;1972-1981
  • 一文のみ"The symptoms can be reduced with rectal NSAIDS (diclofenac or indomethacin)."

ガイドライン 急性膵炎診療ガイドライン2015(第4版)
  • 疼痛コントロールは重要で鎮痛薬は疼痛軽減に効果的かつ診療や治療の妨げにならない
  • どの鎮痛薬が除痛に有用かは不明で,予後改善効果に関する言及は(確認範囲では)なし

(投稿者 川崎)

胸部X線の異常影の表現方法

肺炎が疑われる症例の胸部X線では「~に浸潤影が認められます」と表現しがち

基本ルール
血管陰影が不明瞭で真っ白ならコンソリデーション(≒浸潤影)と表現してもよい
 ➔ consolidation 【kənsɑ̀lidéiʃən】 統合,合同,強固

胸部X線で浸潤影と断定することが難しい時は透過性の低下(opacity)と表現
 ➔ opacity 【oupǽsəti】 不透明度,非透過性,曖昧,愚鈍

ただしN Engl J Medで浸潤影(≒コンソリデーション)の表現はあまり見かけない
手元にあったCase Records 5編で胸部X線の表記を確認してみると・・・
  1. new bilateral hazy opacities (N Engl J Med 2014;370:2524)
  2. patchy opacities in the middle and lower lung zones (N Engl J Med 2014;373:263)
  3. severe consolidation in the left upper lobe (N Engl J Med 2015;373:1558)
  4. indistinct pulmonary vessels, perihilar and bibasilar opacities (N Engl J Med 2016;374:265)
  5. multifocal pathy air-space opacities, as well as indistinct pulmonary vasculature (N Engl J Med 2017;377:1278)
最近の論文(上記4と5)では,indistinct pulmonary vessels(不明瞭な肺血管陰影)と表記しながらconsolidationの代わりにopacitiesと表現している点に注目

おまけ
スリガラス陰影という表現は,胸部X線ではなくて胸部CTで使用したい用語
英語ではground-glass opacity,略してGGO(ジージーオー)と呼ばれている

(投稿者 川崎)

2017-10-22

大頭症(だいとうしょう)

定義=頭囲が年齢性別標準値(例:厚生労働省 乳幼児 男子女子)の97%より大
頭囲=眉間(前方最突出部)と後頭部の後方最突出部を含む短軸断面の周囲長

大頭症は巨頭症(Macrocephaly)ともいわれる

原因
病的意義に乏しい家族性に加えて,水頭症,脳浮腫,硬膜下液貯留,頭蓋骨肥厚,巨脳症,ソトス症候群Gorlin症候群PTEN遺伝子の変異(例:Cowden症候群,Lhermitte-Duclos病,Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群,Proteus症候群)など多岐にわたる

その他の頭蓋の異常
短頭,長頭,小頭症,後頭部扁平,後頭部突出,斜頭,クローバー様頭蓋,三角頭,塔状頭,前頭部禿頭,上向きの毛髪,旋毛の数の異常,旋毛の数の異常,毛髪線高位,低い前頭毛髪線,後頭部毛髪線低位,疎な頭髪,Widow's Peak(富士額)
※実際の定義や写真 ➔ 国際基準に基づく小奇形アトラス(頭蓋) へどうぞ

(投稿者 川崎)

ロブシング徴候 Rovsing's sign

仰臥位で左下腹部を圧迫して右下腹部の痛みが増強したら陽性
虫垂炎を示唆する所見で,回盲部の充満による反応と考えられる

デンマーク人の外科医ロブシングが報告 (Br Med J. 1927;1:265)


Rovsing's Sign by Fast Physical より)

(投稿者 川崎)

2017-10-21

術後癒着性イレウスの発症時期

報告① 術後癒着性イレウス120例-10年の経験(日本臨床外科医学会雑誌 1979;40:131-138

報告② 良性疾患開腹術後癒着障害で再入院した213例-21年の経験(日消外会誌 1978;11:748-756


※いずれも古い検討ですが,癒着性イレウスは退院後早期(1ヵ月以内)から生じてくるようです

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「医師中心の面接」

全身の観察 (Review of systems, ROS:システムレビュー)
  1. ROSは頭からつま先まで観察して,面接で出てこなかった症状を発見するためものである.
  2. 必ずしも現在の病気の鍵となる特徴を明らかにするために行うものではなく,むしろ現病歴とは直接関係のない追加的な症状を探すために使われる.(例えば肺炎が疑われる患者の異常性器出血など)
  3. 最終的に考えられるすべての症状を広範囲にさがすのではなく,患者にとって重大な問題の原因になりえるものだけを確認するようにする.

参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-10-20

デーデルライン桿菌

主としてラクトバシラス属から構成されるさまざまな菌の俗称(特定の菌を意味しない)
健康女性の膣内に常住するグラム陽性桿菌で,腟内を酸に保ち有害細菌の発育を抑制する
ドイツの産婦人科医 A.デーデルライン(Döderlein)が1892年に発見(A Study of Döderlein's Vaginal Bacillus

細菌名は発見者名に由来していることが少なくない
  • 大腸菌(E. coli: Escherichia coli)は1890年に発見したエシェリヒ博士(T. Escherich
  • 赤痢菌(Shigella)は1898年に発見した志賀 潔(Escherichと同様,Shigaをラテン語変換)

(投稿者 川崎)

肝疾患の降圧薬

肝疾患に対する降圧薬のエビデンスは,心疾患や腎疾患と比較して少ないと思われる
高血圧治療ガイドライン2014(日本高血圧学会発行)における肝疾患の記載より抜粋

(↑ クリックで拡大 ↑)

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

性行為感染症STDが疑われる若い女性の陰部分泌液のグラム染色

健常者例ではグラム陰性桿菌を多数認め,白血球はほぼなし(擦過採取であるため上皮混入)
本例では好中球が多く,常在菌であるグラム陰性桿菌(ラクトバチルス)がほとんど認められない

グラム染色で淋菌は見えるがクラミジアは見えない ⇒ グラム染色で見えない細菌は コチラ
※ただし本症例ではPCRでクラミジアは陰性で,性器ヘルペスウイルス感染症と考えられた

(投稿者 川崎)

2017-10-19

寒気 ➔ 悪寒 ➔ 悪寒戦慄

英語 状態 血液培養
寒気 chilly sensation
(mild chill)
セーターを羽織りたい不要
悪寒 chill
(moderate chill)
毛布を何枚かかぶりたい望まれる
悪寒戦慄 shaking chill or rigor
(severe chill)
毛布を何枚かけても体が震える
歯がガチガチ
必須

※rigor 【名】厳密さ,苦しさ、悪寒戦慄 【発音】rígər/リィガァ(ル) ⇒ 実際の音声

岡田優基先生(著)「Dr.宮城の白熱カンファレンス」より

(投稿者 川崎)

カルタゲナー症候群 Kartagener syndrome

慢性副鼻腔炎,気管支拡張症,内臓逆転症の三徴を特徴とする先天性疾患
スイス~オーストリアの内科医Kartagener Mが初報(Schweiz Med Wocshenschr. 1935;65:782–4)
原発性線毛機能不全症候群のうち内臓逆位を伴った病態のこと(基本病態は同じ)

原発性線毛機能不全症候群 (Primary ciliary dyskinesia or immotile ciliary syndrome)
  • 頻度 おおよそ出生1万人~4万人に1人(常染色体劣性遺伝)
  • 症状 幼小児期から気道感染症,中耳炎,視覚・嗅覚障害,不妊症(男女とも),水頭症など
  • 原因 遺伝子異常(DNAH5,DNAI1など)による線毛の機能不全(ダイニン腕の異常など)
  • 診断 鼻粘膜や気管支の線毛上皮細胞の線毛運動異常,極めて低い呼気中NO,遺伝子診断
  • 治療 胸部理学療法,薬物療法(去痰薬,気管支拡張薬,少量マクロライド/鎮咳薬はダメ)
  • 逆位 約50%に内臓逆位を伴う(カルタゲナー症候群)が病態の重症度は関係ない
  • 予後 151人を7年フォローして7人が死亡(平均65歳)(Eur Respir J. 2016;48:441-50

もっと詳しく知りたい方 ⇒ 小児慢性特定疾病情報センター - 線毛機能不全症候群(カルタゲナー症候群を含む)

(投稿者 川崎)

2017-10-18

ホモシスチン:尿症 vs 血症

【ホモシスチン尿症】
  • 先天性アミノ酸代謝異常症の一つでメチオニン代謝産物であるホモシステインが蓄積する病態
  • 狭義のホモシスチン尿症はシスタチオニンβ合成酵素欠損症を指す(本邦の頻度は約1/80万)
  • 血中ホモシステイン濃度>60μmol/L(基準値:15以下)はホモシスチン尿症の診断根拠の一つ

【ホモシステイン血症】

(投稿者 川崎)

2017-10-17

血便 vs 下血 パート2

  • 血便=hematochezia=血液が混じった便
  • 下血=melena=黒い便(melは黒を意味

血便 vs 下血 パート1は コチラ からどうぞ(過去の投稿)

下血は吐血に対する用語で,肛門から血液成分を排泄する病態とも定義できる点がややこしい
下血の代わりに,タール便や黒色便,鮮血便などと具体的に表現することがいいかもしれない

※他院で開催された講義の聴講メモより

(投稿者 川崎)

CNS

CNS=coagulase-negative staphylococci=コアグラーゼ陰性ブドウ球菌
コアグラーゼ=体外酵素の1つで血漿凝固作用を有す(フィブリノーゲン→フィブリン)
  • ヒトから分離されるブドウ球菌は15種ありコアグラーゼを有するのは黄色ブドウ球菌のみ
  • つまりヒトでは黄色ブドウ球菌以外の14種すべてのブドウ球菌がCNSに分類される
  • 代表は表皮ブドウ球菌で皮膚などにいる常在菌であるが日和見感染症の原因になる

(投稿者 川崎)

2017-10-16

Blatchford スコア

上部消化管出血で介入治療の必要性を予測するリスク (Lancet. 2000;356:1318-21

(↑↑ クリックすれば拡大できます ↑↑)


解釈の目安 緊急内視鏡の必要度はBlatchford スコアが2点以下ならとても低く,6点以上ならとても高い

※Blatchfordの発音はブラッチフォードでよさそうです 実際の音声はコチラ

(投稿者 川崎)

内服カリウム製剤

無機カリウム
  • スローケー(塩化カリウム) 当院採用

有機酸カリウム
  • グルコンサンK(グルコン酸カリウム) 当院採用
  • アスパラカリウム(Lアスパラギン酸カリウム) 当院採用

原則は代謝性アルカローシスやCl減少なら無機カリウム,代謝性アシドーシスでは有機酸カリウムを使用
問題は低カリウム血症時はアルカレミアを伴うことが多い+当院はスローケー(塩化カリウム)が未採用
点滴KCLから内服へ変更時(グルコンサンKやアスパラカリウム)にはアルカレミアの改善を確認しておく

(投稿者 川崎)

クラミジア vs クラミドフィラ

いずれも元はクラミジア属であったが1999年にクラミドフィラ属が別分類された
細胞内でのみ増殖する偏性細胞内寄生微生物(真正細菌)でDNAとRNAを有す
  • クラミジア・トラコマチス Chlamydia trachomatis ⇒ 性器クラミジアや眼トラコーマ,新生児肺炎
  • クラミドフィラ・シッタシ Chlamydophila psittaci ⇒ オウム病(肺炎や気管支炎)
  • クラミドフィラ・ニューモニエ Chlamydophila pneumoniae ⇒ クラミジア肺炎(オウム病を除く)

クラミジアやクラミフィドはグラム染色では見えないから要注意(マイコプラズマやレジオネラも見えない) ⇒ 診断方法は コチラ

(投稿者 川崎)

2017-10-15

Rs Ra Rb

Rs:直腸S状部=岬角~第2仙椎下縁
Ra:上部直腸=第2仙椎下縁~腹膜反転部(Raのaはaboveのa)
Rb:下部直腸=腹膜反転部~恥骨直腸筋付着部上縁(Rbのbはbelowのb)
結腸および直腸 Colon and Rectum より一部改編)

直腸癌の場合,病変の場所で術式が変わる(概ねの目安は下記)
Rs=高位前方切除術,Ra=低位前方切除術,Rb=腹会陰式直腸切断術(Miles手術:人工肛門)

(投稿者 川崎)

2017-10-14

クイズ:腹部所見に乏しい腹痛

問題 腹痛が強いわりに,発症早期は腹部所見(筋性防御など),通常採血,単純CTに特記すべき異常が出にくい疾患は?

非閉塞性腸管虚血 NOMI 急性上腸間膜動脈閉塞症 SAMO

過去のクイズ 繰り返す腹痛で通常の検査ではなかなか診断がつかない三疾患は? ⇒ コチラ

(投稿者 川崎)

水晶体脱臼と言えば・・・(国試的)

水晶体は瞳孔の中心に位置するようにチン小帯と呼ばれる細い糸で支持されている
水晶体が本来の位置からずれた状態が水晶体脱臼(完全脱臼・亜脱臼・偏位に細分)
またずれた方向によって前方脱臼・後方脱臼・上方脱臼・下方脱臼・側方脱臼に分類

水晶体脱臼を生じる先天性疾患 ⇒ マルファン症候群ホモシスチン尿症エーラス・ダンロス症候群

共通点
  • 痩せ型,クモ状指,高身長,側湾などの体型
相違点
  • マルファン症候群 常染色体優性遺伝,水晶体の上方脱臼
  • ホモシスチン尿症 常染色体劣性遺伝,水晶体の下方脱臼

(投稿者 川崎)

2017-10-13

嫌気性菌に対する抗菌薬メモ

  • クリンダマイシン 特に横隔膜より上,腎機能による調節不要,毒素抑制にも期待
  • メトロニダゾール 特に横隔膜より下,腎機能による調節不要
  • ペニシリン 基本的にβラクタマーゼ阻害薬配合を使用
  • セフメタゾール 腸管内感染(Bacteroides fragilisなど)で有用,他のセフェム系は概ね無効
  • カルバペネム 横隔膜上下の嫌気性菌全般に有効な万能型

おまけ
   ニューキノロンは概して嫌気性菌に効きが悪いがレボフロキサシンは有効

(投稿者 川崎)

MMSE

MMSE=mini mental state examination=ミニメンタルステート検査(11の質問から構成)
国際的に使用されている認知症の診断用テスト(J Psychiatr Res. 1975;12:189-98.


判定 (参考:認知機能の評価法と認知症の診断 - 日本老年医学会
  • 30点満点で正常は28~30点
  • 27点以下なら軽度認知障害の疑い(感度45-60%,特異度65-90%)
  • 23点以下なら認知症の疑い(感度81%,特異度89%)

※認知機能を評価するモントリオール認知評価検査MoCAの日本語版MoCA-Jは コチラ

(投稿者 川崎)

2017-10-12

九鬼(くき)

九鬼とは南北朝時代から江戸末期頃まで志摩国(現在の三重県志摩市)で活躍した一族名
ごまの総合メーカー「九鬼産業株式会社」(本社は三重県四日市市)は九鬼氏の同族企業
ただし九鬼自体は日本各地(例:徳島,三重,大阪,京都,山梨,福島)にある地名(Wiki

※九鬼氏の「鬼」は「鬼(オニ)」とは少し違うようです

(投稿者 川崎)

線維筋痛症 Fibromyalgia (FM)

診断のための圧痛点(アメリカリウマチ学会1990年)

2010年にアメリカリウマチ学会が提案した新しい診断基準(下記2項目で診断)
  • 少なくとも3ヵ月以上持続する広範囲の疼痛の既往がある
  • 手指による触診で18カ所の圧痛点部の11カ所に圧痛あり

ただしどちらの診断基準も不完全なようです ⇒ 線維筋痛症の診断基準の不備と誤った解釈

(投稿者 川崎)

2017-10-11

ブルガダ症候群/Brugada syndromeの診断

V1~V3誘導でタイプ1(coved型)ST上昇の場合
  • 以下の1つを認めれば診断
  1. 記録された多形性心室頻拍あるいは心室細動
  2. 家族歴に45歳以下の突然死
  3. 家族に典型的タイプ1の心電図を認める
  4. 多形性心室頻拍や心室細動が心臓電気生理学的検査によって誘発
  5. 失神や夜間の瀕死期呼吸の既往あり

V1~V3誘導でタイプ2(saddleback型)ST上昇の場合
  • 薬物負荷(ピルジカイニドやフレカイニドなど)でタイプ1に変化した場合のみ上記の診断基準を適応


タイプ1(coved型)ST上昇の例(松下心電塾 症例238 より)

タイプ2(saddleback型)ST上昇の例(松下心電塾 症例193 より)

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ GNR編

グラム陽性球菌(GPC)に加えて,グラム陰性桿菌(GNR)もその形態から一部鑑別可(最終確認は要培養)
  • 短くて小さい ⇒ インフルエンザ(桿)菌Haemophilus influenzae
  • 細長い ⇒ 緑膿菌Pseudomonas aeruginosa) 周囲にムコイドを認めることあり
  • 標準サイズ ⇒ 大腸菌Escherichia coli
  • 太くて大きい ⇒ クレブシエラKlebsiella pneumoniae) 周囲に莢膜(まれにムコイドもあり)

(投稿者 川崎)

2017-10-10

グラム染色クイズ GPC編

グラム陽性球菌(GPC)ならその形態である程度の鑑別は可能(最終確認は要培養)
  • 双球菌(diplococcus) ⇒ 肺炎球菌Streptococcus pneumoniae
  • 短い連鎖(short chain) ⇒ 腸球菌Enterococcus) 一部双球菌で大小不同あり
  • 長い連鎖(long chain) ⇒ Group A Streptococcus(GAS)やGroup B Streptococcus(GBS)など
  • ブドウ状集簇(cluster) ⇒ ブドウ球菌 黄色か表皮などのCNSかは鑑別できない

(投稿者 川崎)

2017-10-09

イーグル症候群 Eagle’s Syndrome

茎状突起が過長した解剖学的特徴に関連する病態で邦名は茎状突起過長症
※聞きなれない病名ですがこの半年に2度遭遇(ともに院内勉強会 松下金曜会

  • 原因 先天性,茎状舌骨靭帯の石灰化,茎状突起の延長(ただ根本原因は不明)
  • 症状 咽頭痛,嚥下時の痛みや不快感,扁桃に異物触知,頸部痛,耳鳴りなど
  • 診断 3cm以上の茎状突起(通常は2.5cm程度)+関連した自覚症状の出現
  • 治療 NSAIDs内服,ステロイドや局所麻酔薬の局注,外科的茎状突起切除術

分かりやすい症例報告 ⇒ Eagle症候群(茎状突起過長症)の画像診断(耳展 2014;57:160-162)

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

抗菌薬で治療されている肺炎症例の喀痰のグラム染色

抗菌薬 治療 肺炎症例 喀痰 グラム染色 球状化
抗菌薬を投与中なら細菌が球状化あるいは伸展化(うまく分裂できないため複数菌がつながる)することがある

(投稿者 川崎)

2017-10-08

大腿骨骨幹部骨折

大腿骨骨折は近位部から,頸部・転子部・転子下(小転子から5㎝以内)・骨幹部・遠位部に分類
頸部骨折や転子部骨折より大きな力が加わらないと骨幹部骨折は生じない(転子下骨折も同様)

大腿骨骨幹部骨折
  • 原因 小児=高エネルギー外傷や虐待,成人=高エネルギー外傷(高齢者では軽微な外傷でもあり
  • 特徴 大腿骨に付着する筋肉の牽引による明らかな変形,強い疼痛,歩行不能
  • 治療 整復+固定(小児では第一選択),整復困難や保存療法不成功なら手術(成人では第一選択)
  • 問題 大量出血(最低500ml~1000ml),変形癒合,脂肪塞栓症,保存療法なら最低半年要など

(投稿者 川崎)

有機リン中毒

農薬の服毒による自殺がとても多い(致死率は15%以上)
主病態はコリンエステラーゼ阻害による副交感神経の嵐
 ⇒ 低血圧,徐脈,縮瞳,流涙,流涎,気管収縮,嘔吐など

ポイント
  • 農薬の臭い
  • 縮瞳(ただし15%には出現しない!)
  • 血中コリンエステラーゼの著明低値(例:10U/L
  • 治療は硫酸アトロピン(例:まず2-6A静注,平均80A/日)

お薦め ⇒ 急性有機リン中毒の治療(Review)西伊豆早朝カンファランス

(投稿者 川崎)

2017-10-07

STSTAE 感染症の病歴問診

感染症が疑われる症例の病歴聴取で確認しておくべきこと(徳田安春先生の講義より)
  1. Sick contact ➞ 病人との接触
  2. Tuberculosis contact ➞ 結核例との接触
  3. Sexual history ➞ 性行為歴
  4. Travel history ➞ 海外渡航歴
  5. Animal contact and intake ➞ 動物との接触や生肉の摂取
  6. Environmental exposure ➞ 環境(温泉,山,川など)

※講義中にでてきた「恐ろしい咽頭痛5疾患」コチラ からどうぞ

(投稿者 川崎)

松下金曜会 「腕および手の疼痛」

腕および手の疼痛のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 呼吸困難,胸痛,めまい,動悸,腕の愁訴(特に左側) ⇒ 虚血性心疾患またはその他の心肺疾患
  2. しびれや灼熱感,刺痛などの持続性の感覚異常(特に頸部) ⇒ 急性頸部神経根障害または脊髄障害
  3. 疼痛を伴う発赤,腫脹,浸出液,発熱,疲労,倦怠感(特に外傷) ⇒ 敗血性肘頭部滑液包炎や軟部組織感染
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-10-06

FIM 機能的自立度評価法

FIM=functional independence measure
具体的に自力で行える日常生活活動(ADL)の評価方法
米国のリハビリ医Granger CVらが1980年代に開発(Adv Clin Rehabil. 1987;1:6-18

FIM質問表は運動項目13項目と認知項目5項目の計18項目から構成されている
各項目を全介助1点〜完全自立7点の7段階で評価(最低点18点~満点126点)


具体的な判定方法 ⇒ FIMの評価方法と点数付けに必要な基礎知識 or FIMによる評価マニュアル

(投稿者 川崎)

肺炎球菌ワクチン vs 尿中抗原検査

従来からあまり影響はないという論文が多かったようだが・・・

やはりある程度影響するだろうという論文が比較的最近でた
  • Open Forum Infectious Diseases. 2015;2:ofv135 ➽ 市中肺炎で入院した症例のうち,ニューモバックス(23価肺炎球菌ワクチン)の接種が確認できない群では尿中PCV13セロタイプの検出は7%(1917例中136例).一方,入院中にワクチン接種を行った症例では接種同日あるいは接種早期の検査で33%(109例中36例)に検出.

メイヨークリニックのホームページでは・・・
  • "Streptococcus pneumoniae vaccine may cause false-positive results, especially in patients who have received the vaccine within 5 days of having the test performed." ➽ 「ワクチン接種5日以内なら擬陽性になり得る」

(投稿者 川崎)

PMR覚え書

PMR=polymyalgia rheumatica=リウマチ性多発筋痛症
  • 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)に高頻度に合併(50~75%)
  • PMRにもしばしば巨細胞動脈炎を合併する(15~40%)
  • 関節リウマチ(RA) へ移行する症例が少なからず存在
  • 主に65歳以上に発病 ⇒ 50歳未満ではほぼないと考える
  • 頸部や肩甲帯のこわばりが朝に強い⇒ 症状の日内変動
  • Birdらの診断基準を用いることが多いが今だ統一されていない
日内会誌 2015;104:2157-2162より)

関連投稿 👽 RS3PEと悪性疾患

(投稿者 川崎)

2017-10-05

スタチンと虚血性腸炎

虚血性心疾患に対するスタチンの効果は絶大(目標はLDL 100mg/dl,高リスク症例では70mg/dl)
一方,虚血性腸炎に対するスタチンの有用性のエビデンスは検索範囲では確立されていないようです

PubMedで"ischemic enteritis" or "ischemic colitis" and "statin"で検索
⏩ わずかに4編が抽出され,その中にスタチンの有用性に言及した論文はなし
⏩ 一つはロスバスタチンが虚血性腸炎を誘発した症例報告(BMJ Case Rep. 2012;2012

(投稿者 川崎)

グラム染色クイズ

血尿症例のグラム染色を行った

所見
  • 多数のグラム陽性球菌 ⇒ 連鎖している部分あり(双球菌も存在)
  • わずかにグラム陰性球菌あり ⇒ おそらく染色不良あるいは死菌
  • グラム陽性菌の白血球による貪食像 ⇒ 尿路系の感染症の疑い

尿中の連鎖球菌と考えればB群連鎖球菌双球菌と考えれば腸球菌が疑われる
最終的に培養から検出された細菌は腸球菌 Enterococcus faecium であった

(投稿者 川崎)

2017-10-04

ADCマップの経過

急性期脳梗塞に対するMRIの継時的変化
  • DWI 発症30分程度~高信号 ➜ 1~4週間は高~等信号 ➜ 1ヵ月以降は低信号
  • ADC 発症1~24時間で低下 ➜ 1~4週間は低下~正常 ➜ 1ヵ月以降は上昇
  • T2 発症1~7日以降は高信号

おすすめページ:画像診断まとめ 脳梗塞の画像の経時的変化
ADC (apparent diffusion coefficient) については コチラ

(投稿者 川崎)

ベル麻痺 Bell's palsy

原因不明の顔面神経(第七脳神経)麻痺で特発性顔面神経麻痺とも呼ばれる
名称はスコットランドの外科医チャールズ・ベル(1774-1842)に由来する


James Heilman, MD/右側が麻痺側

症状 顔面神経麻痺(多くが片側性),聴覚過敏,味覚障害,角膜潰瘍
原因 不明であるが帯状疱疹ウイルスやEBウイルスと関連している?
疫学 20~60歳が多い(生涯罹患率1/65人),妊婦や糖尿病例に多い
鑑別 脳腫瘍・外傷,脳卒中,ライム病,サルコイドーシスなど
治療 ステロイド,抗ウイルス薬,ビタミンB12,点眼薬(角膜潰瘍)など
予後 3週間程度から回復が始まり1年後には70-80%が完治

(投稿者 川崎)

2017-10-03

COPD+るい痩

COPD症例ではるい痩が目立つ症例が多い(下図の%IBWはideal body weight=基準体重比)

るい痩が目立つ理由
  • 呼吸筋のエネルギー消費量が増大(健常者36~72kcal/日,COPD患者430~720kcal/日)
  • TNF-αなどの炎症性サイトカインが増えエネルギー消費量が増加(健常者の1.3~1.5倍)
  • 肺過膨張による腹部臓器の押し下げや咀嚼や嚥下に伴う呼吸困難感が食欲を減弱
  • レプチン(満腹中枢を刺激)やグレリン(食欲中枢を刺激)といった食欲関連ホルモンの異常

よってCOPD症例には糖尿病や心疾患の既往がなければ積極的なカロリー摂取を勧める
 間食(1日5食),高脂肪食(蛋白質や炭水化物より呼吸商が少ない),プルモケアExなど

COPD症例では栄養障害が非常にゆっくり進行するため,体重や脂肪,筋肉の減少に比べて,血清アルブミンなどの血液データの異常は栄養障害がかなり進行するまで異常値にならないようです(典型的なマラスムス型栄養障害

参考資料:プラクティカル講座 COPD患者の栄養管理 Nikkei Medical 2010;1:136-139

(投稿者 川崎)

ジギタール・ルンバール

直腸(指)診=digital rectal examination
  • digital 【形容詞】デジタル(式)の,数字の,指の,指先の
  • 【発音】dídʒitəl (ディズィトゥやディジタル) 実際の音性 ⇒ コチラ

腰椎穿刺=lumbar puncture
  • lumbar 【名】腰部(脊椎),【形】腰部の,腰部に関する
  • 【発音】lʌ́mbər (ラァンバァ) 実際の音性 ⇒ コチラ

ジギタールやルンバールはドイツ語読みからきていると思われるが日本語と正確な英語発音を用いたい

(投稿者 川崎)

2017-10-02

Ⅰ音の成因

一般的にⅠ音の成因は房室弁(僧帽弁+三尖弁)の閉鎖音で説明される
ただし厳密にはⅠ音は4つの成分から構成され,その音源はより複雑である
  1. 前成分(前節IL):左室収縮開始に伴う心筋振動(通常は聞こえない)
  2. 主成分(主節M):僧帽弁の閉鎖
  3. 主成分(主節T):三尖弁の閉鎖
  4. 後成分(後節A):大血管起始部の急激な伸展(通常は聞こえない)

参考:福田信夫先生「心疾患の視診・触診・聴診(心エコー・ドプラ所見との対比による新しい考え方)」(医学書院)

(投稿者 川崎)

胸水ADA+リンパ球

ADA=adenosine deaminase=アデノシンデアミナ-ゼ
核酸のアデノシンを加水分解しイノシンとアンモニアを生成する酵素
体内に広く分布するが腸管粘膜・胸腺・脾臓・扁桃やリンパ球で高活性
  • 基準 5.0~20.0U/L
  • 高値 肝疾患,血液疾患,感染症,悪性腫瘍など
  • 低値 ADA欠損による重症複合免役不全症,癌性胸膜炎など

胸水中のADAが高値(例:40-50U/L以上)なら結核性胸膜炎の可能性が高い
ADA 60U/Lをカットオフとすると感度95%,特異度96%(Chest. 1999;116:97-103
ただし胸水のリンパ球優位が必須条件好中球優位ならADA上昇でも細菌感染を疑う

(投稿者 川崎)

2017-10-01

グラム染色クイズ

肝膿瘍のグラム染色.診断は?


最終培養結果は フソバクテリウム Fusobacterium (口腔や腸管に常在するGNRで細くて両端が尖る紡垂型が特徴)
グラム染色では細いため緑膿菌に似るが,緑膿菌は好気性であり肝膿瘍の原因菌になることは稀


(投稿者 川崎)

子宮外妊娠 vs 異所性妊娠

  • 異所性妊娠=ectopic pregnancy=学術用語
  • 子宮外妊娠=extrauterine pregnancy=一般用語
日本産婦人学会の統一見解として用語「異所性妊娠」が推奨されている.
これは間質部妊娠と頸管妊娠が子宮外と断定できないためである.

※未破裂の異所性妊娠はメトトレキセートMTXで加療することもある(本邦では保険適用外使用)

(投稿者 川崎)