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2021-07-31

アルバラード・スコア Alvarado score

第113回医師国家試験E問題より(平成31年2月実施)

解釈として正しいのはどれか。






判定

😇 補足

米国の腹腔鏡外科医Alvaradoが提唱した虫垂炎のスコアリングシステム(Ann Emerg Med 1986;15:557-64). 症状+身体所見+血液検査の8項目から構成され合計10点(7点以上で陽性 ➜ 感度81%・特異度74%).上記の出題は9項目で微妙に異なるが,本スコアを知らなくても正当にたどり着けるところが国試らしい.それぞれの頭文字を取ってMANTRELS scoreとも呼ばれている.
  1. Migration to the right lower quadrant(右下腹部への疼痛移動)➜ 1点
  2. Anorexia(食思不振)➜ 1点
  3. Nausea and vomiting(悪心・嘔吐)➜ 1点
  4. Tenderness in the right lower quadrant(右下腹部の痛み)➜ 2点
  5. Rebound pain(反跳痛)➜ 1点
  6. Elevation of tempreture>37.3℃(体温>37.3℃)➜ 1点
  7. Leukocytosis(白血球数>10000/μL)➜ 2点
  8. Shift to the left(好中球分画>70%の左方移動)➜ 1点 
(投稿者 川崎)

2021-07-30

昔ポリクリ 今クリクラ?

ポリクリ
  • ドイツ語のPoliklinik(総合診療病院)の略語で,本邦では臨床実習を意味する.ベッドサイド・ラーニング(Bed Side Lerning)の意味が近いため,ポリクリの代わりにBSLと略すこともある.
クリクラ
  • クリニカル・クラークシップ(Clinical clerkship)の略で,医学生が医療チームの一員として参加する臨床実習のこと.最近ではポリクリの代わりに用いられ,臨床へより積極的に参加している.

👾 おまけ
  • 医学教育のカリキュラムにはプラカンというものもあります.これはドイツ語のPraktikant(実習生)から派生した言葉のようです(practice conferenceの略かと思っていました😓)
  • 小グループで実際の症例を担当して,病歴〜検査所見〜治療など深く掘り下げる学習スタイルです(以前は講義室に実際の患者さんがきて身体所見を確認する場合もありました)

💁 医学の業界用語集 ➜ コチラ(懐かしいものも満載です)
(投稿者 川崎)

2021-07-29

🎯 今週の一枚

発熱が続く症例の左示指



(投稿者 川崎)

2021-07-28

片頭痛関連めまい

  • 通常型の片頭痛とめまいが共通の病因によって生じると考えられる疾患単位で英名はmigraine associated vertigo/dizziness, migraineous vertigo, vestibular migraineなど
  • 頻度は553名のめまい外来患者の46例(8.3%)で典型的な臨床像は30-40台の女性で以前から片頭痛があり年に一度程度の頭痛+1~24時間の回転性+浮動性のめまい
  • 治療薬は片頭痛の適応症をもつCa拮抗薬塩酸ロメリジン(ミグシス®/87%に有効)や三環系抗うつ薬の塩酸アミトリプチリン(トリプタノール®),バルプロ酸など
  • 発症機序として血管収縮による虚血,拡延性抑制による神経障害,神経原性炎症に起因する障害や内リンパ水腫,アロデニアと類似の感作,イオンチャンネル異常などが提唱されている



🐤 頭痛に関連した過去の投稿 ➜ コチラ

🐦 めまいに関連した過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-07-27

先天性QT延長症候群:周術期管理

  • Bazett式による修正QT時間が440 msec以上と定義され5,000人に1人の割合で性差なし
  • 常染色体優性遺伝Romano-Ward症候群では7つの染色体に10種の異常が報告されている
  • 常染色体劣性遺伝形式で両側性感音性難聴を伴うJervell & Lange-Nielsen症候群は2種
  • 患者頻度はLQT1が40%,LQT2が30~40%,LQT3が10%でこの3つで90%以上を占める
  • 概略 LQT1は運動制限(水泳),LQT2は音注意(目覚まし),LQT3はメキシレチン有効



👺 QT延長症候群の周術期管理・対策ガイドラインのP55~57)
  • 洞不全症候群や房室ブロックの既往または徐脈症状が明らかな症例にはあらかじめ右心室にペーシングリードを挿入して手術を行う.
  • 心筋梗塞や左室拡大を伴う大動脈弁閉鎖不全症を合併しなければ侵襲的なモニタリングや術前の治療は必要ないと報告されている.
  • 先天性LQTSのTdp発作が術中に起こった場合,LQT1とLQT2ではβ遮断薬の静注,LQT3ではメキシレチンの静注が第一選択である.
  • 術中の心筋虚血や心室への過剰な水分負荷,電解質異常(例:低カリウム血症や低マグネシウム血症)では不整脈が起こりやすくなる.
  • 術中に心室細動に移行した際は速やかに電気的除細動を行う(尤も心室細動や心停止の既往を有する者はICDのクラス1適応である).

(投稿者 川崎)

2021-07-26

ダブルリトラクション(二峰性陥凹) Double retraction

健診で心電図異常を指摘された無症状の症例

💞 解説
  • 坐位で窩部左側に周期的な皮膚面の陥凹(心尖周囲には拍動なし)
  • 時相解析から収縮期陥凹と判断 ➜ 収縮性心膜炎で有名であるが…
  • よくみると陥凹は二峰性で小さい凹が抬起性の陥凹に先行(付箋)
  • 収縮性心膜炎を示唆する所見なく最終診断は非閉塞性肥大型心筋症

💕 迷?探偵
  • 本例の拍動は部位からも左室心尖の拍動とは考えられず,右室の拍動を見ているものと推測した.実際に本例では明瞭なⅣ音を聴取したが,心尖以外の広い範囲でも確認できた(つまり右心系Ⅳ音の疑い:いわゆるどこでもⅣ音).
  • この聴診所見は,本例のダブルインパルスならぬダブルリトラクション(収縮期の二峰性陥凹)が右心系の由来という推測を支持する.ちなみに本例は右室拡大や右室肥大はなく,左室の心尖拍動の牽引(?)による右心尖周囲の偏位と思われる.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-07-25

Merseburg triad メルゼブルグの三徴

バセドウ病で認めることが多い3徴 
  1. 甲状腺腫
  2. 頻脈
  3. 眼球突出

😛 トリビア命
  • バセドウ病の名前の由来になったドイツの内科医 Karl Adolph von Basedow(1799 - 1854)が診療に従事した場所がドイツの Merseburg という町であった.そこで発見した3徴であるため Merseburg triad(メルゼブルグまたはメルセブルグの三徴)と呼ばれている.
  • ちなみにバセドウの初報はアイルランドの外科医 Robert James Graves(1796-1853)である(London Medical and Surgical Journal 1835;7:516–7).これは内科医バセドウの報告(Wochenschrift für die gesammte Heilkunde, Berlin, 1840;6:197–204, 220–228)より5年先行
  • よってドイツ医学を取り入れた本邦ではバセドウ病と呼ばれるが,英語圏ではグレーブス病(Graves' Disease)と呼ばれることはよく知られた事実.ちなみに甲状腺クリーゼの Krise はドイツ語で危機や急場の意味

🉐 バセドウ病に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-07-24

肢端紅痛症 Erythromelalgia

  • 肢末端の灼熱感,潮紅,皮膚温の上昇を3主徴とする稀な病態で,原発性と続発性(骨髄増殖性疾患や糖尿病,SLE,多発性硬化症など)に分類される
  • 原因は不明(血管内腔の閉鎖によるAVシャントやセロトニン・ヒスタミン・プロスタグランディンなどの放出過多,交感神経の機能障害説などが提唱)
  • 米国の医師・科学者である Silas Weir Mitchell (1829–1914) が初めて報告したためMitchell's diseaseと呼ばれることもある(Am J Med Sci 1878;76:2-36
  • 治療はアスピリンや神経プロック,抗セロトニン薬やβ遮断薬,血管拡張薬,セロトニン再取り込み阻害薬である塩酸クロミプラミン(アナフラニール®)など 

図1 ➜ 両下腿から足背部にびまん性の発赤・腫脹・熱感+大腿部にはリベド様皮斑
図3 ➜ 足背部の亀裂と小潰瘍+頻回にわたる冷水浸漬で皮膚はびまん性に白く浸軟

🉐 関連投稿(下肢の疼痛編)
(投稿者 川﨑)

2021-07-23

ピグマリオン効果 Pygmalion effect

  • 教育者が期待すると学習者の成績が向上する心理的行動現象
  • その名称はギリシャ神話の変身物語に登場するの名に由来
  • 教師期待効果やローゼンタール効果などととも呼ばれている
  • 米国の心理学者Robert Rosenthal(1933-)らが報告した() 
  • 教育者の心得と言われることもあるが効果を疑う意見も散見
  • 逆に教師の期待度が低いと成績が下がる現象はゴーレム効果
  • その命名はユダヤ教の伝承に登場する自動の泥人形ゴーレム

(投稿者 川﨑)

2021-07-22

セロトニン症候群 Serotonin syndrome: SS

  • 概要 セロトニン作動性薬の投与が発症の原因で脳内セロトニン機能の異常亢進によって自律神経系症状を呈した病態
  • 薬剤 モノアミン酸化阻害薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),三環系抗うつ薬の併用による報告が多い
  • 命名 米国のInselら(Am J Psychiatry 1982;139:954-5)(以前は5-HT behavioral syndromeと呼ばれていた)
  • 症状 神経筋(腱反射亢進・ミオクローヌス),自律神経(発熱・頻脈・発汗・下痢・皮膚紅潮),精神変化(不安・焦燥・錯乱)
  • 経過 約75%の症例で原因薬剤の投与開始または用量変更後24時間以内に発症して,約60%で断薬後24時間以内に改善する
  • 頻度 セルトラリンやパロキセチンなどの5種類のSSRIを単剤のみ過量服用した469例中67例(14%)と決して稀ではない
  • 鑑別 悪性症候群甲状腺クリーゼ,脳炎,中枢性抗コリン薬中毒,抗うつ薬の離脱症候群(安易にうつ病の悪化としない)
  • 治療 原因薬剤の中止+補液や体温冷却などの保存的な治療が中心になる(セロトニン症候群の予後は一般的に良好)


分かりやすいイメージ

日内会誌 2007;96:1627-33より引用/上記の文献5はコチラ

(投稿者 川崎)