微小変化型ネフロ―ゼ症候群(MCNS:Minimal Change Nephrotic Syndrome)
1次性糸球体疾患によるネフロ―ゼ症候群の一種。
【疫学】
小児(3-6才)と若年者に好発する。小児の1次性ネフロ―ゼ症候群の80%以上を占め、成人の1次性ネフロ―ゼ症候群でも主要な原因である。
【症状】
全身性浮腫、タンパク尿、低Alb血症、高LDL血症、腎機能低下、末梢循環不全、免疫異常
【原因】 糸球体のたんぱく質透過性が変化することによって起こると考えられる。他の糸球体疾患のような膜構造の破壊ではなく、活性型T細胞の産生するサイトカインによって膜電荷の消失が起こり、分子量の比較的小さなたんぱく質のみが漏出するため、たんぱく質の選択性を生じると考えられている。(分子量の大きなたんぱく質は糸球体の膜構造によって糸球体を通過できず、分子量の小さなたんぱく質は膜電位による反発で通過できない)
【臨床像】 発症は急激で、全身性浮腫や高LDL血症を伴いやすい。
尿蛋白の選択性が高く、ステロイド反応性も高い。血尿は伴いにくい。
【検査】 光顕上はほぼ正常の糸球体構造であるが、
電顕上にて糸球体係蹄壁の上皮細胞に足突起の消失を認める。
【治療】
副腎皮質ステロイドが著効する。60mg/dayより開始、効果あれば適宜漸減。(効果判定は一日尿蛋白<1.0gを目安に) 抵抗性の場合は免疫抑制剤の併用も有効。
【予後】 基本的にステロイドが著効するため良好だが、再発を繰り返す症例も多い。
【診断基準(ネフローゼ症候群全体)】
①一日の尿中蛋白量3.5g↑が持続する
②低Alb血症(血清Alb<3.0g/dLor血清総蛋白量<6.0g/dL)
③浮腫
④高LDL血症
※①②が必須、③④は必須ではない
(投稿者 室谷)