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2026-05-07

今週の一枚 🎯

- 労作時の息切れで来院した症例 -

👀 解説: ヒル徴候 陽性(Positive Hill's sign)
  • ABI(足関節上腕血圧比)の低下なし(高値) 
  • 血圧値は上肢より下肢で著増(>60 mmHg) 
  • 最終診断は重症 大動脈弁逆流による心不全

😲 ヒル徴候の機序💦
  • 重度の大動脈弁閉鎖不全症と診断された5人の患者において、動脈内圧測定では大動脈と大腿動脈、または腋窩動脈と大腿動脈のいずれにおいても、収縮期圧に著しい差は認められなかった。上肢の非侵襲的血圧測定では、腋窩動脈の測定値と良好な相関が認められた。しかしながら、下肢の非侵襲的測定では、動脈内測定値よりも収縮期圧が著しく高く、3人の患者では大腿カフの圧力を高くしても膝窩動脈上のコロトコフ音を消失させることができなかった。つまりヒル徴候は血圧計による下肢血圧測定のアーチファクトで生理学的根拠はない

 - 別の研究 -
AR 20例とコントロール50例の血圧(正中動脈と大腿動脈)

💁 ヒル徴候に関する過去投稿は コチラ

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-05-06

ミトコンドリア・カクテル療法

  • ミトコ ンドリア異常に対するビタミンやCoQ、カルニチンのカクテル投与
  • エビデンスは確立されていないが、一部の症例では有用(副作用が少ない)
  • 例:けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)に対し24時間以内の投与
  • ただしタウリン以外はミトコンドリア病や急性脳症としての保険適用なし
  • おまけ:MELASの発音は英語圏ではメラスよりもミーラスが主流(ココ

- カクテル療法の実際 -

(投稿者 川崎)

2026-05-05

社労士しゃろうし

  • 先日、ある会議で「社労士に確認してください」という旨の発言が、2人の医師から同時にでました。
  • 「弁護士の案件だろ~」と(ちょっと)睡魔に襲われてた私は、耳鳴れない言葉に目が覚めました😓

😈 社会保険労務士(社労士)
  • 労働・社会保険の問題の専門家で国家資格(合格率は例年6〜7%程度)
  • 社会保険諸法令に基づき行政機関に提出する提出書類や申請書等の作成
  • 個別で生じた労働に関する紛争の解決手続(調停、あっせん等)の代理
  • 労務管理や社会保険、障害年金、国民年金、厚生年金保険について指導
  • よく似た言葉の労務士は民間資格で主に企業内でのキャリアアップ目的

(投稿者 川崎)

2026-05-04

心内血栓:時期は?

😎 MRI vs 心内血栓
  • MRIでは、血栓に捕捉された赤血球のヘモグロビン(Hb)中の酸素状態と水分含有量によって血栓の年齢の推定が可能
  • 血栓中のHbは通常、オキシヘモグロビン → デオキシヘモグロビン → メトヘモグロビン → ヘミクロムへ経時的に変化
  • 最終的にHb分子は酵素によって複数の小さな断片に分解され、マクロファージによって取り込まれる(ヘモジデリン)
  • 復習:MRIのT1・T2強調画像の水分は、T1では黒(低信号)、T2では白(高信号)(覚え方:T1 白脂、T2 水ブシャー!)
  • オキシヘモグロビンとヘミクロムは不対電子を持たず、弱い反磁性(T1緩和時間やT2緩和時間に影響を与えない)
  • デオキシヘモグロビンとメトヘモグロビンは、鉄原子あたり4個と5個の不対電子を持ち常磁性(T1とT2を短縮する)
  • 血栓の検出可能は8時間内、信号強度が最大となるのは約3週間後、その後は横ばいで半年まで持続し数週間かけ消失


心臓血栓のMRIタイムライン

ステージ T1強調画像 T2強調画像
● 超急性期(12時間未満) 等信号 高信号
● 急性期/亜急性期(最初の2~3週間) 高信号 高信号(第1週では低信号の領域を含む)
● プラトー期(3週間~6ヵ月) 信号が徐々に不均一に減衰
● 慢性期(6ヵ月以上) 等信号 等信号


(投稿者 川崎)

2026-05-03

パジェット病 Paget病

  • 汗器官由来の細胞であるパジェット細胞が増殖した表皮内癌の一種
  • 真皮まで浸潤したらパジェット癌(パジェット病に含むこともあり)
  • 乳房パジェット病と陰部や腋などに生じる乳房外パジェット病に二分
  • 乳房パジェット病は乳頭や乳輪に生じて病乳癌と同じように扱われる
  • 乳房外パジェット病が狭義のパジェット病で60歳以上の高齢者に多い
  • 稀な皮膚がんで本邦での頻度は人口10万人あたり男女ともに0.8人/年
  • 乳房外パジェット病は原則として手術切除(+植皮や皮弁などの再建)
  • リンパ節転移が広範囲におよんだり臓器に転移がある場合は化学療法
  • 英国の外科医かつ病理医である Sir James Paget(1814–1899)に由来

参考)日本皮膚悪性腫瘍学会,ほか

パジェット病:肉眼とダーモスコピーの所見

👻 皮膚がんの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2026-05-02

🦴 ハバース管とフォルクマン管

  • 骨は外側の密度が高い緻密骨と内側の網目状になっている海綿骨に大別
  • 緻密骨は骨単位(オステオン)という構造の集まり(バームクーヘン様)
  • 骨単位の中心にはハバース管が通り(骨の長軸方向)、中に血管や神経
  • 一方、フォルクマン管はハバース管同士を横方向に連絡している(下図)

イメージと覚え方

 
💀 なんでも調査隊
(投稿者 川崎)

2026-05-01

胆嚢腺筋腫症 Adenomyomatosis of the Gallbladder

  • Rokitansky-Aschoff sinus(RAS)が増殖し胆嚢壁肥厚をきたす良性病変
  • 臨床的診断の目安は画像で4 mm 以上の壁肥厚+拡張したRAS や壁在結石
  • 本症の頻度は胆嚢切除例の2.1~14%,人間ドックの 0.12~0.49% である
  • 病変の局在で底部型,分節型,びまん型,特殊型に分類する(下図参照)
  • 癌除外困難,分節型+胆石合併や変形例,症候例, 結石充満例は摘出術
  • 経過観察は初回は 3~6 月後,変化がなければ以後 は 6~12 月毎が推奨

- 胆囊腺筋腫症の分類 -

(投稿者 川崎)

2026-04-30

今週の一枚 🎯

他院フォロー中の超高齢者が息切れで当院搬入



(投稿者 川崎)

2026-04-29

大阪府警察医会 死体検案マニュアル

🔍 死体検案
  • 医師が死体を死後診察して、死因や死亡時刻、異状の有無などを判断すること
  • 医師が行う死体検案は以下の2通りがある
    1. 検案して異状があれば所轄警察署に届け出(医師法第21条)
    2. 異状死体に対し捜査の一助で警察に依頼された医師が行う
  • 異状死を警察に届け出る状況の例
    1. 外因死(損傷、事故、水死、火災、中毒、自殺等)、もしくはその疑いがある
    2. 心肺停止状態で救急搬送され、死因がわからない
    3. 外傷が原因で入院後、死亡した(後遺症も含む、入院の期間は問わない)
    4. 病死かもしれないが、搬送時の状況がおかしい
    5. かかりつけの患者であっても、死亡時の状況がおかしい、不審な外傷がある、等
    6. 診療行為中や直後の予期せぬ死亡



👻関連投稿 → 監察医・検視官・警察医など

(投稿者 川崎)

2026-04-28

日本初の聴診器

  • 日本で初めての聴診器は1848年(嘉永元年),オランダの軍医オットー・モーニッケが長崎の出島で医師の吉雄圭斎に紹介し,実物が今も長崎大学属図書館に保存されている.
  • これは自分の書籍やウェブコンテンツでしばしば引用してきた文言です.引用論文は見つけられませんでしたが,AI(Claude sonnet 4.6)に依頼したらすぐに探してくれました.


💁 聴診器に関する過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2026-04-27

新アプリ:循環器フィジカル - 100本ノック -

  • 2025年4月から1年間にわたり循環器に関するフィジカルクイズを毎週X(旧Twitter:@PhysicalExamin1)で発信してきました(監修:循環器Physical Examination講習会).
  • こちらのページには2週分ずつまとめてアップしてきました(ココ).この計100問を簡単に復習できるように無料アプリにまとめました循環器フィジカル -100本ノック-
  • アプリ化にあたり福田先生に全問題をレビューいただきました(本当にありがとうございます🙏).成績に応じて格付けされ,100問をミスなく完遂したらマイスターに認定
  • マイスター到達時は,フィジカルの巨匠 坂本二哉先生の金言が表示されます(下図右下:ご本人の了解を得ております).練習モードや復習モードもあるのでご活用ください.


心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-04-26

コーラ溶解療法 Cola Dissolution Therapy

  • 腸石は通常無症状で特定の集団における有病率は0.3%から10%程度
  • 小さい腸石は断続的に排出される(画像では必ずしも視覚化されず)
  • 腸石は一次型(髪石、植物石、糞石など)と二次型(移動胆石など)
  • 症候性症例は治療:ダブルバルーン内視鏡、手術、コーラ溶解療法
  • コーラは腸石と酸塩基反応を生じ微細気泡が線維結合を軟化させる
  • コーラ注入に伴うリスクは炭酸による粘膜損傷や腸内圧の上昇など

イレウス管からのコーラ注入(1回100~200ml,1日2〜3回)を行った胃石嵌頓による小腸閉塞の1例

(投稿者 川崎)

2026-04-25

キャサヌル森林病 Kyasanur forest disease

  • 概要 フラビウイルス科のキャサヌル森林病ウイルスによる感染症
  • 経路 主にマダニとげっ歯類で感染環が維持→刺咬によりヒト感染
  • 症状 潜伏期間は3~12日で、発熱や頭痛、筋肉痛、咳嗽を生じる
  • 経過 約40%に出血性肺水腫→一部は寛解後に髄膜炎や脳炎を発症
  • 予後 致死率は3~5%であるが、基本的に後遺症を残すことはない
  • 診断 血液や髄液のPCR、IgM抗体の検出、ペア血清による判定など
  • 地域 インドの南西部が主な流行地で、年間400~500人が発症する
  • 治療 有効な抗ウイルス薬は未開発で対症療法(予防では刺咬回避)



👿 おまけ
  • キャサリヌス森林という名称は、この病気が1957年3月にインドのカルナータカキャサヌール森林地帯にあるカッティナケレ村で初めて報告されたためだそうです。当時はサルの間で流行したため、地元ではサル病(monkey disease)またはサル熱(monkey fever)としても知られているようです。
  • サル痘(Monkeypox)は、差別的表現を避けるため最近、エムポックス(Mpox)に改称されました。地域差別や偏見を避けるため、WHOは病名への地名使用を控えるよう勧告しています。キャサヌル森林病という病名が消えるのも近いかも…ちなみに本邦では、同疾患は4類感染症に指定されています。

(投稿者 川崎)

2026-04-24

ケトーシス(ケトン症) Ketosis

  • 体内ケトン体が増加した状態で体液が酸性に傾くためケトアシドーシスともいう
  • ケトン体(アセトンやアセト酢酸,β-ヒドロキシ酪酸)は肝での脂肪分解で生成
  • 誘因は感染やストレス,糖尿病,ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)
  • 糖尿病でインスリン不足ならブドウ糖の代りに脂肪代謝が亢進しケトン体が増加
  • 細胞が損傷を受けて,さらに脱水が加わると意識障害(ケトアシドーシス昏睡)


- 特殊なケトーシスの鑑別 -

(投稿者 川崎)

2026-04-23

今週の一枚 🎯

温泉に行った後に発熱と咳嗽が続く若者

👾 解説
  • 採血でCRP 16 mg/dL, CK 970 U/Lであった.Na値は正常範囲内であったが,温泉後の発熱などから,レジオネラ肺炎を強く疑った.しかし迅速尿中レジオネラ抗原は陰性であった.咽頭ぬぐい液のパネル検査を追加したところ,マイコプラズマPCR陽性が判明した.他のインフルエンザ・コロナ・百日咳.アデノ・RS・パラインフルエンザなどはすべて陰性.マクロライド感受性マイコプラズマであったため,アジスロマイシンの点滴で加療した.

😊 独り言
  • 病歴聴取(to obtain a thorough history)と身体所見(to perform a physical examination)が臨床推論において重要であることは言うまでもありません.本例の初期対応にあたった研修医らはこの点,とてもしっかりしていました.最終診断はレジオネラ肺炎ではありませんでしたが,逆にこのような体験を共有することも重要と思われます.なおCK上昇の原因は頻回な咳嗽?

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 林/川崎)

2026-04-22

ダーメンコルセット

  • 軟性体幹装具のひとつで、主として脊椎の支持および固定に使用
  • 効果機序:椎体は前方1/3に荷重が集中するため体幹前屈を制限
  • ダーメンはドイツ語のDamenに由来(女性・婦人Dameの複数形)
  • 元は中世に女性がウェストを細く見せるため使用したコルセット
  • 現在では性別を問わず腰椎・胸椎装具の一般名として用いられる

(投稿者 川崎)

2026-04-21

👂フィジカル講習会から忘備録

💫 S2の肺動脈成分(Ⅱp)
  • Ⅱ音肺動脈成分の確認は第三肋間胸骨左縁(3L)と心尖部
  • Ⅱ音肺動脈成分の亢進は3LでIIa<IIpまたは心尖部でIIp聴取
  • Ⅱ音肺動脈成分評価の臨床的な意義:IIp亢進≒肺高血圧症
  • Ⅱ音分裂がないと判定できない「吸気で2音を割りに行く
  • 肺高血圧の重症例ではIIpを触知することもある(自験例

💫 S4(第4音、Ⅳ音)と拡張能
  • 拡張障害グレードのabnormal relaxation(下図B)ではⅣ音を聴取するだけ
  • それがpseudonormal~restrictive pattern(下図C)ではS4を聴取かつ触知


💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2026-04-20

フィジカルクイズ(No. 49 & 50)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-04-19

エワルト徴候 Ewart sign

  • 大量の心膜液が貯留した時にみられることがある局所的な肺の聴打診所見
  • 心膜液で左肺底部が圧迫され左肩甲骨下角下方に打診上の濁音域が生じる
  • 通常は左側(稀に右側)に触覚振盪の増強と吹鳴呼吸音(blowing sound)
  • 英医師 William Ewart (1848-1929) の報告に由来(Br Med J 1896;1:717–21) 
  • 別名はBamberger–Pins–Ewart徴候(循環器学用語集に収載)やPins症候群


Dr. Ewartの実際の報告より ← 200年近く前の論文が読めます)

💁 打診に関する過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2026-04-18

死亡診断書の老衰

  • 死亡診断書に老衰と記載していいか問われとっさに答えられませんでした
  • もちろんOK(ただし言うまでもありませんが,安易な乱発は避けるべき)
  • 厚労省の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルにも記載されています
  • 全37ページの同マニュアル中に「老衰」という記載は計3ヵ所のみ(下図)

(投稿者 川崎)