このブログを検索

2022-03-31

足背も地味ですが語っています

無症候性の大動脈弁逆流(高度)でフォロー中の症例の左足背

😁 コメント
  • 中等度以上の大動脈弁逆流では大脈・速脈を反映した動脈拍動を認めることがある
  • コリガン脈や水槌脈,反跳脈などと呼ばれ定番部位は頸部(実例)や肘部(実例
  • 同病態では下肢動脈の血圧と脈圧も上昇する(ヒル徴候)が動脈拍動は目立たない
  • しかし高感度の圧センサーである指先の腹部を使えば,動脈拍動をビンビン触れる
  • もちろん足背動脈は通常でも触知できるが拍動を感じるのに少し圧迫が必要である
  • ポイントは指先で軽く触れるだけで動脈の拍動を感じることができるか否かである
  • 心尖部で有名?な”触ってナンボ”の法則自験例1自験例2)を是非応用してみて

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-03-30

ヒトヘルペスウイルス 6(human herpesvirus 6 : HHV-6)

  • βヘルペスウイルス亜科ロゼオロウイルス属に属するDNAウイルスで突発性発疹の原因
  • SalahuddinらがAIDS+リンパ腫の患者の末梢血から分離(Science 1986;234:596-601
  • HHV-6はT細胞やNK細胞,分化した肝細胞などに感染し,先進国では成人の95%が陽性
  • HHV-6再活性時も無症候例が多いが骨髄抑制や移植片対宿主病,脳炎,胃腸炎などあり
  • 健常児ではHHV-6感染は自然治癒の経過を辿ることが多く,一般に治療は必要としない
  • 免疫不全によるHHV-6再活性化では対応を要すが,予防ワクチンや特異的治療薬はない


👀  おまけ
  • 6番目に発見されたヒトヘルペスウイルスなのでHHV-6と呼ばれ,類縁ウイルスにHHV-7
  • 最も重篤な合併症は脳炎・脳症で,本邦では年間60~100例程度が発生していると推定


(投稿者 川崎)

2022-03-29

腰部交感神経ブロック

👶 2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン 中の記載

下肢閉塞性動脈硬化症(lower extremity artery disease: LEAD)
  • 腰部交感神経節ブロックは,交感神経の過緊張を低下させることにより,疼痛緩和と側副血行路の血管拡張からの下肢血流増加を目的とする.
  • CLTI(包括的高度慢性下肢虚血)を対象とした研究で疼痛緩和の報告はあるが,切断のリスクを軽減する明確エビデンスはない.

バージャー病(Buerger disease)
  • 血行再建術の適応のない重度の虚血肢には,内視鏡的交感神経焼灼術などの交感神経遮断手術も考慮してよい.
  • ただし足関節血圧が60 mmHg未満やABIが0.3未満では効果は期待しづらい.

レイノー現象(Raynaud syndrome)
  • 壊死に陥った場合には,内科的治療では疼痛コントロールも困難であることが多く,交感神経節ブロックないし交感神経節切除を行うことになるが長期にわたる効果にはエビデ ンスはない
  • 膠原病を背景疾患とする場合には,原疾患が活動性の場合には原疾患に対する治療を行いつつ上記内科的治療が無効な場合には交感神経節切除を考慮する.

肢端紅痛症(erythromelalgia)
  • 有効な治療法は少なく,まずアスピリンに加え血管拡張作用のある抗血小板薬を使用する.無効な場合には交感神経節切除を考慮するが,その効果に定まった評価はない.

複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome: CRPS)
  • 薬物療法が有効でない場合には,交感神経ブロックや外科的な交換神経節切除などを考慮する

💁 下肢動脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-03-28

GFR時計 GFR clock

  • ついつい忘れがちな慢性腎臓病のステージ分類を時計に見立てたイメージ
  • GFRはglomerular filtration rate(糸球体濾過量)の略で糸球体の排泄能力
  • 本来は24時間蓄尿によりクレアチニン・クリアランスを測定する必要がある
  • 成人なら採血で推定可能(この場合はestimated GFR=推算糸球体濾過量)
  • 計算式:eGFR(男)=194✖️Scr-1.094✖️年齢-0.287, GFR(女)=GFR(男)✖️0.739
  • GFR時計のオリジナル(BMJ 2002;325:85-90)は反時計回り(下図の上)
  • 時計というのなら時計回転の方がわかりやすい(下図の下は投稿者が作成)
  • GFRは加齢で低下(ざっくりGFRは1年に1 mL/min/1.73m2程度低下する)

(オリジナル)
(投稿者 川崎)

2022-03-27

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

心尖部肥大型心筋症における心筋虚血
心尖部肥大型心筋症の運動負荷Tl心筋SPECT像
杉原洋樹、他 : 呼吸と循環 41 ; 1089-1093 ;1993



(投稿者 杉原)

2022-03-26

肥大型心筋症の頸静脈a波

🔍 a波の復習
  • 頸静脈波は3つの陽性波(a,c,v)と2つの陰性波(x,y)で構成(復習
  • a波は心電図のP波直後(QRS直前)に出現する陽性波で右房の収縮を反映
  • 診断は陽性波の視診+時相を触診(動脈拍動前)や聴診(Ⅰ音直前)で確定
  • a波は通常では不明瞭:頸静脈は陥凹として視認されることが多い(特にx谷)
  • 大きなa波は完全房室ブロック心室期外収縮などで有名(Cannon a wave)
  • 三尖弁狭窄でも認めるが,日常臨床では肥大型心筋症が最多(下図:典型例

ー 肥大型心筋症での検討(自験例)ー

👶 独り言
  • 肥大型心筋症で認めるa波は,右室への流入障害(コンプライアンス低下)を反映していると予想されます.ただしこの機序には,必ずしも右室肥大を伴う必要がないことに要注意です.左室の肥大が心室中隔を介して右室の拡張能にも影響していると考えられるためです(ベルンハイム効果
  • 日常外来には,検診で心電図の左室肥大を指摘されて受診される方が少なくありません.無症状で血圧も正常なら是非,臥位で頸静脈のa波を探してみてください.肥大型心筋症をフィジカルで診断して,心エコー図で確認するスタイルは十分に可能です(たま?に失敗しますが 😅 実例

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-03-25

急性高山病 Acute mountain sickness

高山病のタイプ
  1. 山酔い(acute mountain sickness, AMS):頭痛や倦怠感など
  2. 高地脳浮腫(high-altitude cerebral edema, HACE):運動失調や混乱など
  3. 高地肺水腫(high-altitude pulmonary edema, HAPE):息切れや呼吸困難感など

高山病の予防及び治療
  1. アセタゾラミドダイアモックス®など)➜ 高地に上がる前あるいは症状出現後に服用.作用機序は利尿作用というより,血液が酸性になり呼吸数が増加して高地に順応できるため.通常の投与量は125mgあるいは250mgを1日2回,高地に行く前日から服用
  2. デキサメタゾンデカドロン®など)➜ 副腎皮質ホルモン剤で山酔いと高地脳浮腫の予防と治療に効果がある(ただし高地順応への効果はなし).山酔いの防止のためにアセタゾラミドを服用し,激しい症状に対する屯用として使用.投与量は6時間毎に4mg
  3. ニフェジピンニフェジピン®など)➜ 高地肺水腫を起こしやすい人に対して高地肺水腫を予防し改善することが知られている.投与量は8時間毎に10mg


🌄 追加コメント
  • 高山病のかかりやすさは生まれつきの要因による部分が多いようで(),2000メートル程度でも生じる場合があるようです.山に登る時は積極的な水分摂取に加えて,アルコールや睡眠薬の回避が望まれます.治療は速やかな下山や酸素投与が有効ですが,上記の3剤は知っておきたい知識です(いずれも保険適応なし).処方箋を発行してもらえる施設のリストはコチラです.

(投稿者 川崎)

2022-03-24

🎯 今週の一枚

二尖弁による高度の大動脈弁逆流を有する症例


💪 解説
  • 肘伸展時に左肘窩内側に拍動(矢印)➜ 肘屈曲で拍動はより明瞭になっている
  • 拍動は触知で明らかに動脈性 ➜ 水槌脈反跳脈コリガン脈と呼ばれる所見
  • 大脈・速脈を示唆し大動脈弁逆流で有名(甲状腺機能亢進症や高度貧血でも有)

😉 独り言
  • 高度の大動脈弁逆流ではほとんどの症例で観察可能だと思います.軽く曲げると描出が容易になります(別の自験例
  • 加齢に伴う動脈の蛇行+表在化による偽コリガン脈には要注意.この場合は肘なら伸展した方が見やすいと思います

🉐 関連投稿(大動脈逆流に関連する他の身体所見)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2022-03-23

研究でのFFP

  • 研究の立案〜実施〜出版に至るあらゆる段階で様々な誤りが生じ得る
  • 観察や分析の単純なミス〜悪意を持って意図的に行われるものがある
  • 臨床医も研究に関わるため「研究公正と出版倫理」を学ぶことが重要

FFP=意図的に行われる特定の研究不正
  1. Fabrication(捏造):存在しないデータや研究成果を作成すること
  2. Falsification(改ざん):データ他を操作して真正でないものに加工
  3. Plagiarism(盗用):他の研究者のアイデアなどを了解や引用なく流用

  • 研究の過程ではFFPの他に,QRP(Questionable Research Practices=疑わしい研究行為:研究記録の不誠実な保存や管理,学生への不誠実な研究指導等など)やQPP(Questionable Publication Practices=疑わしい出版行為:重複出版やサラミ出版など)があります.ちなみに臨床現場でFFPといえば,やはり新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma)でしょうか...😅
  • 不適切なオーサーシップも意識しておく必要があります.これには論文著者の要件を満たさないメンバーを著者として記載する「ギフト・オーサーシップ」だけでなく,要件を満たすにもかかわらず著者として記載しない「ゴースト・オーサーシップ」,あるいは本人の承諾なしに著者に加えることなどがあります.


💁 倫理に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-03-22

60/60 Sign


三尖弁逆流CWの圧格差は43mmHgかつ肺動脈血流PWの加速時間は46ms

💁 肺塞栓に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)