このブログを検索

2025-05-31

SAMの機序:ベンチュリ効果とドラッグ力

  • 閉塞性肥大型心筋症では僧帽弁の収縮期前方運動(systolic anterior motion, SAM)のため流出路狭窄が生じます.その原因として,かってはベンチュリ効果(venturi effect:流体が狭い箇所を通過する際に流速が増加し,その結果圧力が低下する現象)が提唱されていました.
  • しかし詳細な時相解析では,SAMは左室流出路の速度が正常なタイミングで始まります(上図).つまりベンチュリ効果でSAMを説明することは少し困難です.近年では流れが押し出す力(drag forces:日本語では抗力?)がSAMの主要な流体力であることが示唆されます(下図).
ベンチュリ―

💁 閉塞性肥大型心筋症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-30

頚部で動脈拍動と静脈拍動を同時に視認すれば…part 2

息切れで来院した症例(座位)

👼 解説
  • 頚部全体が周期的に隆起(動脈 or 静脈)
  • 下部~上部がほぼ同時の隆起で動脈の疑い
  • 吸気で外頚静脈の怒張(膨隆+拍動なし)
  • クスマウル徴候陽性→右房圧の上昇の疑い
  • 最終的に中等度のARを伴う心不全と診断

👳 独り言
  • 先日,頚部で収縮期に動脈拍動(隆起=コリガン脈)と静脈拍動(陥凹=右房圧の上昇)を同時に視認した高心拍出性の心不全例を経験(ココ
  • 本例は少し違うパターンの動脈拍動と静脈拍動が併存した高心拍出性の心不全です.この2例は一週間ほど間に連続して当科を紹介受診しました.
  • 臨床現場では不思議と「このように稀な症例が続くんだ~」と感じることがあります.しかし実は今まで気づいてなかっただけかもしれません...😅

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-05-29

今週の一枚 🎯

- 開心術後例の定期エコー -

😊 解説
  • 僧帽弁レベルの短軸層が描出されている
  • 拡張期に僧帽弁の中央が解放していない
  • 中央が離れず(矢印)∞ の形をしている
  • 本症例は僧帽弁へのアルフィエリ縫合

💁 追加コメント
  • Alfieri Stitch(アルフィエリ縫合)は僧帽弁逆流の前尖と後尖の中央付近を縫合する手術です.イタリアの心臓外科医 Alfieri が開発し,経皮的僧帽弁クリップ術 MitraClip® の元祖になります.
  • MitraClip®後の心エコー図に比べて,僧帽弁中央の異物が小さいことや,その背部に出現するアコースティックシャドウ(音響陰影)が少ないことで鑑別することが可能ではないかと思われます.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-05-28

MAMIS(マミス)

  • Medical Association Member Information Systemの略で,医師会の会員情報システム(日本医師会が構築し2024.10に公開)
  • 医師会への各種申請手続き(入会・異動・退会など)を複写式届出用紙からWEB化して、会員や事務局作業の負担を軽減
  • インターネット上の「MAMIS」専用ページにアクセスして初回の利用登録(つまりマイページを作成)後に利用が可能


👽 おまけ
  • マミスをミマスと聞き違えて土星を思い出した方もおられるのでは?木星の4大衛星(ガリレオ衛星:イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)に比べて低い知名度ですが,ミマスは土星の第1衛星です。
  • ギリシア神話の巨人族タイタンの一人ミマースにちなみ命名され、その直径は約400km(地球の約0.03倍/月の0.08倍の大きさ)。氷および少量の岩石だけで構成されると考えられているそうです。
  • 医師(医師免許取得者)は医師会に加入しなくても診療が可能ですが、弁護士は弁護士会への所属が必須です。強制加入組織には長短がありますが、このマミスは医師会が巨人化する一石になるかも…

💁 医師会に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-27

キャノンボール転移 Cannonball metastases

  • 両肺に境界明瞭で大きく丸い外観を呈した転移形態
  • 肺の豊富な血管床では腫瘍の塞栓が生じやすいため
  • 肺転移が著しく進行するとしばしば原発が診断困難
  • 診断時には病気は進行し治癒不能・予後不良が多い
  • 腎細胞癌はキャノンボール転移の最多の原因の一つ
  • 他は絨毛癌や黒色腫,精巣腫瘍,骨肉腫,甲状腺癌


- 急速に進行した縦隔絨毛癌(矢印)の18歳男性 -

🎾 おまけ
  • AIによるCannonballの概要 ➜「キャノンボール」にはいくつかの意味があり,具体的には,球形の砲弾・高速で威力のあるテニスのサーブ・特急列車・非公式の自動車レースなどを指します.また抱え型飛び込みや無駄な時間を使ったりする状況を表すスラングとしても使われます.
  • 個人的には『キャノンボール』(英題:The Cannonball run)という,市販車でどれだけ速くアメリカを横断できるかを競う非公認レースの映画を思い出します(1981年公開:公式トレーラー).なお当院で経験した症例の原発は,剖検で下肢の血管肉腫であることが判明しました.

👉 転移に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-26

フィジカルクイズ(No. 5 & 6)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-05-25

オリゴジェニック遺伝 Oligogenic inheritance

📗 単一遺伝子遺伝
  • 一つの遺伝子の変異によって病気が発症する遺伝形式のこと
  • 例:嚢胞性線維症(CFTR変異)やハンチントン病(HTT変異)

📘 二遺伝子遺伝
  • 二つの異なる遺伝子が協力し一つの表現型を決定する遺伝形式
  • 単一の遺伝子変異では発症しない病気が二つの変異で発症する
  • 例:遺伝性難聴(GJB2とGJB6という二つの異なる遺伝子が関与)

📙 三遺伝子遺伝
  • 三つの異なる遺伝子が協力して一つの表現型を決定する遺伝形式
  • それぞれの遺伝子が独自の役割を持ち補完し合い最終的な表現型
  • 例:バルデ-ビードル症候群(BBS1、BBS2、BBS6が関与して発症)


📚 オリゴジェニック遺伝
  • 少数の遺伝子のレアバリアントの組み合わせによって発症する病態
  • 例:先天性心疾患(MYH7、MKL2、NKX2-5などの遺伝子が相互作用)

参考)ミネルバクリニック、ほか

💁 遺伝に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下らんから選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-05-24

終末期予後予測:PaPスコア & PPI

PaPスコア(Palliative Prognosis Score:計算ページ
  • 月単位の中期的な生命予後を予測するためのスケール(客観性にやや欠ける)
  • イタリアの医師 Pirovano らが開発(J Pain Symptom Manage 1999;17:231-9
  • 臨床予後、活動・症状、白血球(多い=悪)、リンパ球(低%=悪)から算出
  • 判断の目安は9点以上を21日以下(週単位)、5.5点以下を30日以上(月単位)

PPI(Palliative Prognostic Index:計算ページ
  • 日本で開発された短期的な予後(週単位)を予測する指標で血液検査が不要
  • 聖隷ホスピスの Morita らによって報告(Support Care Cancer 1999;7:128-33
  • 経口摂取量(TPN=0点)、浮腫、安静時呼吸困難、せん妄の合計得点から算出
  • 6.5点以上なら21日以下(週単位)、3.5点以下なら42日以上(月単位)と判断

💁 緩和 に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-05-23

有害事象グレード

  • 2017年11月に米国のNational Cancer Institute(NCI)の Cancer Therapy Evaluation Program(CTEP)が公表した「Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v5.0」に準ずることが多い。
  • 本邦ではその日本語版である有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版(略称はCTCAE v5.0 - JCOG)を使用(JCOGとは日本臨床腫瘍研究グループ Japan Clinical Oncology Groupの略)(PDF版はコチラ

  • Grade 1 ➜ 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ、または治療を要さない
  • Grade 2 ➜ 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する、または年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限*
  • Grade 3 ➜ 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長 を要する; 身の回りの日常生活動作の制限**
  • Grade 4 ➜ 生命を脅かす; 緊急処置を要する
  • Grade 5 ➜ 有害事象による死亡

👾 注意点
  • Grade 説明文中のセミコロン(;)は「または」を意味する。
  • *身の回り以外の日常生活動作(instrumental ADL)とは、食事の準備、日用品や衣服の買い物、電話の使用、金銭の管理などをさす。
  • **身の回りの日常生活動作(self care ADL)とは、入浴、着衣・脱衣、食事の摂取、トイレの使用、薬の内服が可 能で、寝たきりではない状態をさす。

💁 有害事象に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-22

今週の一枚(音) 🎯

倦怠感を自覚している症例

😎 解説
  • 第3肋間胸骨左縁(3L)でS2が明瞭に分裂している。健康な成人でもしばしば分裂するが(特に吸気時)、通常は前半(2A、大動脈弁成分)が後半(2P、肺動脈弁成分)よりも大きい。本例のように2Pが2Aよりも大きい場合、肺高血圧が示唆される。肺高血圧で2Pが亢進する機序は、収縮末期に肺動脈と右室間の圧較差が大きくなり肺動脈弁の閉鎖速度および閉鎖後の振動が増加するためと考えられている。本例では心尖部で大きなS3も認め、最終的に拡張型心筋症による左心不全と診断された。
😛 深堀
  • 2Pは高調成分が主体であるため、その聴取には特別な技術は要らない。エルプ領域(2L~3L)で聴診器の膜を用いて評価すればよい。しかし2Pが亢進していると判断するにはある程度の慣れが必要である(英語の疑問文のように上がり調子↗)。S3が鑑別に含まれるが、通常S3は心尖部に限局する低調音で聴診器の膜では聴取できない。また2PとS3は出現するタイミングも異なる(目安:2A-2P間隔は~70ms、2A-S3間隔は100~200ms)。2P亢進とS3が共存する本例で、その音感やタイミング、出現場所の違いを実感して欲しい。繰り返すが聴診のコツは耳で覚えること。お気に入りの曲のイントロと同じ😊

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)