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2023-12-06

心電図マイスターへの道 ⑤

特殊なCLBBB
  • 通常は I 誘導にQ波はない.もしQ波があれば左室前側壁の障害を疑う.また右軸偏位(IでR<S)なら右室の障害を疑う.

特殊なCRBBB
  • 通常は I 誘導で深いS波がある.もし深いS波がなければ左室の作業心筋の障害を疑う.またQRSが150 ms以上ならCRTが有効な可能性あり.

特殊な心室内伝導障害
  • TCA(Tricyclic Antidepressants/三環系抗うつ薬)中毒などの右室障害(左室よりも障害を受けやすい)ならRBBB様であるがrSR'なし(偽性心室調律=Brugada phenocopy:aVRでR波が3 mm以上で北西軸).DCは無効(原疾患の治療とメイロン投与など).Naチャネルの遮断による0相障害で,他に I 群不整脈中毒やコカイン中毒,重症虚血,高K血症などで生じる.
  • 一方,左心系の障害なら I 誘導でsmall Qなし.ともに後半成分を見て障害部位を推定可能.心室頻拍と間違わないように.これもQRSが150 ms以上ならCRTが有効な可能性あり.

SSSルーベンシュタイン分類 Ⅱ 群(洞停止・洞房ブロック)
  • 1度洞房ブロック ➜ S-Pが長いが体表心電図では分からない
  • 2度洞房ブロック(type 1)➜ ウェンケバッハ型でP1P2>P2P3=P3P4で時にP脱落(一定のパターン [グループ] が続く/一見,呼吸性変動に見える)
  • 2度洞房ブロック(type 2)➜ モビッツ型でP1P2の2倍がP2P3(従来の洞房ブロック)
  • 3度洞房ブロック ➜ 補助調律のみが示され,体表心電図では洞停止との鑑別はできない

De Winterパターン
  • V1-6で1 mm以上のJ点の低下+上向きST低下+高い対称的なT波が2誘導以上+aVRで1 mm以上のST上昇.発症早期(目安1時間以内)のLAD近位部の心筋梗塞を示唆.
  • ちなみに Ⅲ 誘導にミラーイメージのST低下があれば同様にLAD近位部の心筋梗塞を示唆(これは一般論).

Long RPタキ
  • AT,ORT(orthodromic AVRT/順方向性のAVRT,slow Kent束によるAVRT=90%のWPW),FS-AVNRT(非通常型AVNRT)を考える
  • ATはしばしば2:1伝導で,停止はQRSの後になる(他の2つはPでもQRSでも終了可能).ORT(slow Kent)は必ず1:1伝導である.FS-AVNRTは2:1伝導(LCP [lower common pathway] ブロック時)や1:2伝導(UCP [upper common pathway] ブロック時)になりえる.
  • (逆行性)P波が見えなければ通常型(Slow-Fast型)AVNRT.ただし通常型AVNRTではQRS波の終末部にP波を認めることもある(いわゆるpseudo S波).
  • QRS直後にP波があって,頻脈停止時にP波がなければ(termination without P)なら,はやりAVNRT


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-12-04

心電図マイスターへの道 ④

急性心筋梗塞 AMI
  • RCA 近位部閉塞=V1でST低下なし(ST上昇とミラーイメージのST低下で相殺),V3R・4RでST上昇あり,ST上昇はIII>II(ただし右室梗塞を合併すればV1で上昇あり)
  • RCA 遠位部閉塞=V1でST低下あり,V3R・4RでST上昇なし,ST上昇はIII>II
  • Cx 遠位部閉塞=V1でST低下なし,V3R・4RでST上昇なし,ST上昇はIII<II
  • おまけ1:V1で上昇があれば急性前壁梗塞,なければタコツボ心筋症(過去の投稿).ちなみにたこつぼではaVRでST低下を生じやすい
  • おまけ2:ST上昇は1 mm以上でV2,3に限れば女性1.5 mm以上,男性なら~40歳は2.0 mm以上,40歳~なら2.5 mm以上.ちなみにST低下は0.5 mm以上

プログラマー心電図
  • 例:上段に心房波形,次段が心室波形,その下に下記記号
  • AP=心房ペーシング,VP=心室ペーシング,AS=心房センシング,VS=心室センシング,AR=心房不応期内センシングVR=心室不応期内センシング,BP/BV=両室ペーシング,TS(VT/VF)=タキセンシング,TP=タキペーシング

偽性心室頻拍
  • pseudo VTあるいはpseudo ventricular tachycardiaは国際的には通じない(PubMedの検索で各々2件と14件).pre-excited atrial fibrillationあるいはAtrial fibrillation in the Wolff-Parkinson-White syndromeなどと表現される.

洞不全症候群 SSSのルーベンシュタイン分類
  • Ⅰ 群 ➜ 特定原因のない洞徐脈(心拍数<50回/分)
  • Ⅱ 群 ➜ 洞停止・洞房ブロック
  • Ⅲ 群 ➜ 徐脈-頻脈症候群

頭の整理:AVRTとAVNRT
  • WPW症候群の頻拍は2種類:①房室結節と副伝導路の間で興奮が旋回する房室回帰頻拍(AVRT),②心房細動の興奮が副伝導路を介して高頻度に伝わる偽性心室頻拍(pseudo VT)
  • 房室結節回帰頻拍(AVNRT)も2種類:①通常型AVNRT:興奮が遅伝導路(slow pathway)を順行性+速伝導路(fast pathway)を逆行性に旋回,②非通常型AVNRT:fast pathwayを順行性+slow pathwayを逆行性に旋回(発症が RP'>P'RのLong RP' tachycardia
  • narrow QRS tachycardia中にPVC出現 ➜ 直後のRR間隔が少し短縮すればAVRT(リセット現象あり),RR間隔に変化がなければAVNRT(リセット現象なし)

その他
  • ペースメーカのAV delayの最大設定は300ms程度
  • aVR誘導でST変化がなければ左主幹部梗塞の可能性は低い
  • QRSの始まりから頂点までの時間maximum deflection index(MDI)とQRS幅の比が0.55以上なら心外膜あるいは中隔深部が起源のPVCを疑う
  • ATがP波で停止することは通常ない
  • 下壁誘導,V1,V6誘導でP波(あるいは粗動様の波)が全て陽性なら三尖弁を回る心房粗動とは考えにくい(心房頻拍を考える)(おまけ:通常型のAFLはIIで陰性・V1で陽性・V6で陰性のワンパターン)
  • AVNRTは通常1:1伝導であるが,下位共通路があれば2:1伝導も生じ得る
  • 移行帯はR<Sになる誘導(R波高が下がり始める誘導ではない)で,通常はV3あるいはV4
  • 心拍数は5mmマスで300,150,100,75,60,50,43,38,33,30・・・


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2020-02-29

家族性PSVT

👶 現場レポート

先日,外来に発作性上室頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia; PSVT)が疑われる方が来られました.親と兄弟がPSVTでアブレーションを受けておられるようです.遺伝性疾患の認識はなかったので調べてみました.

  • 発作性上室頻拍(PSVT)の多くは房室結節回帰性頻拍(AVNRT)または房室回帰性頻拍(AVRT/WPW症候群
  • AVNRTの頻度は一般人1万人あたりおよそ22.5人/AVNRT症例の1.27%に少なくとも2親等以内の家族歴あり
  • 家族性AVNRTの特徴は比較的若い(44.2歳 vs 54.8歳)・男女差なし・親子が兄弟よりも多い(67% vs 29%)
  • 遺伝様式は不完全浸透(incomplete penetrance)の常染色体優性(顕性)遺伝(Autosomal dominance)の疑い



🉐 関連投稿(PSVT編)

(投稿者 川崎)

2024-03-04

🔍 最新論文:流し読み

📍 Cannon A wave validation as a diagnostic tool in paroxysmal supraventricular tachycardias



  • 背景 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグ徴候(キャノン A波)は伝統的に知られているが体系的評価はされていない
  • 対象 短いVA間隔(AVNRT+中隔副経路AVRT)と長いVA間隔(非定型AVNRT+左自由壁副経路AVRT)に分類した100名
  • 結果 キャノンA波はAVNRTと関連しないが(p = 0.058),短いVA間隔と関連(p<0.001).CVPはVA間隔と反比例(p<0.001)
  • 結論 キャノンA波の存在は短いVA間隔の頻脈という最終診断と関連する

CVPとVA間隔は逆相関
CE-542-03(同グループの発表抄録)

👽 追加コメント
  • フロッグ徴候の機序(房室弁の閉鎖時に右房収縮)を考えれば本研究の結果は理にかなっています.きっと症例数が増えればフロッグサインとAVNRTは有意に関連してくると推測します(本研究では100症例の検討でp = 0.058).
  • 中心静脈圧の上昇は頻脈期間や基礎心疾患とも関連しそうです.心不全を伴えば中心静脈圧が上昇し頸静脈拍動がより明瞭になるからです(自験例).このカエルサインハミングバード徴候(当院提唱)の普及に期待しています.

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(投稿者 川崎)

2023-06-29

今週の一枚 🎯 フロッグサイン

突然生じた動悸でERを受診した症例(仰臥位)

🚑 現場実況
  • 血圧低下はないが頻脈(動画中のモニター音に注目)
  • 内頸静脈は視認できないが外頸静脈(陥凹)は明瞭
  • 拍動パターン解析は困難であるが静脈圧上昇はなし
  • 頸動脈の拍動(もちろん隆起)も僅かに観察できる
  • 吸気負荷で外頸静脈は怒張(隆起して拍動が消失)
  • PSVTと診断:修正バルサルバ法は無効でATPで停止

🐸 追加コメント
  • 本例はおそらく房室回帰性頻拍(AVRT/WPW症候群)と考えられました.外頸静脈の拍動であるため,単なる洞頻脈でも同様の所見になると思われます.房室結節回帰性頻拍(AVNRT)で有名なフロッグサイン(frog sign)とは少し異なる身体所見です(右房と右室がほぼ同時に収縮するため内頸静脈に出現).ただしこのカエル徴候はAVRTや心房頻拍(AT)でも出現することがあるので(自験例),AVNRTとイコール関係ではありませんが...

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2020-03-30

奇跡のタイミング

心不全のためHCUで加療中の症例:夜間にモニターが鳴ったため看護師さんが心電図を記録

🍏 解説
  • QRS幅の狭い規則正しい頻脈(約150bpm)➜ 3つの不整脈を想定:発作性上室頻拍(PSVT: paroxysmal supraventricular tachycardia),発作性心房頻拍(PAT: paroxysmal atrial tachycardia),発作性心房粗動(AFL: atrial flutter).本例は先行P波や粗動波が確認できないためPSVTが疑われる(ただし狭義のPSVTでAVNRTまたはAVRTのこと/通常,広義のPSVTはPATやAFLを含む).

🍎 臨床現場
  • 興味深いことは四肢誘導の頻脈が胸部誘導で消失していること.さらにその停止タイミングがまさに四肢誘導から胸部誘導への移行部❗ 心電図の記録中に頻脈が停止したため患者さんは喜んで,それをうまく記録できた看護師さんも喜んで,翌朝に絶妙のタイミングを確認した医師も喜びました 😙(臨床の醍醐味だね)

(投稿者 川崎)

2024-02-02

ハミングバード徴候 Hummingbird sign

ひと月前に突然出現した動悸とその後の息切れ(座位)

👶 解説
  • よく見ると右側の頸部が細かく振動している
  • 深い吸気の保持中に外頸静脈が怒張(矢頭)
  • 病歴+フィジカル診断は頻拍誘発の心不全
  • 最終診断は2:1伝導のAT+頻拍誘発性心筋症

🐝 ハミングバード徴候(Hummingbird sign)
  • 同徴候はハチドリの激しい羽ばたきを想定して命名しました(当科論文).房室結節回帰性頻拍(AVNRT)によるフロッグサイン(frog sign)のおよそ2倍の周期で振動します.
  • 頸部の拍動では動脈性か静脈性かの鑑別が必要ですが,このような早い拍動(>200 bpm)なら静脈性と考えられます.安静時に生じる超頻脈では動脈圧が低下するためです.
  • 静脈性拍動には隆起と陥凹の二通りありますが,本例のように周期が極めて短い場合は隆起が多いと思います.x谷とy谷の2峰性陥凹は早ても100 bpm程度でしょうか(自験例).

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(投稿者 川崎)

2023-02-08

カエル徴候 🐸 Frog sign

😊 興味深い報告J Innov Card Rhythm Manag 2022;13:5184-7
  • 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)でアブレーションを予定した78歳の男性.発作中にカエル徴候(Frog sign)が明瞭だったため,電気生理学的検査中に右房圧も同時測定.

上室性頻脈発作中の12誘導心電図

発作開始(VA = 0 ms)直後から右房圧に大砲波(Cannon a waves)が出現

発作終了後は右房圧の大砲波(Cannon a waves)が消失

💁 カエル徴候(Frog sign)の過去投稿は コチラ

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(投稿者 川崎)

2023-08-17

今週の一枚 🎯 フロッグサイン

数日前から動悸が続く症例(体位は座位)

🐸 解説
  • 座位で頸静脈は視認しないが吸気後には出現(矢印)
  • 拍動はとても早い(まるでハチドリの羽ばたきの様)
  • 最終診断は心房頻拍(2:1伝導)による心不全の増悪
  • DCを予定したがジギタリス点滴で洞調律に回復した

🐝 独り言
  • 頸静脈の早い拍動としては,房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグサイン(frog sign)が有名です.フロッグサインの拍動は140回/分前後の周期ですが,本例は240回/分程度で一見静止している様にみえます(勝手に命名:ハチドリ徴候/Hummingbird sign).
  • このハチドリサインは頻脈誘発性の非代償性心不全になれば,吸気負荷を行わなくても観察できる様になります(自験例).一方,フロッグサインは心不全を伴わなくても観察できることが多いと思います.心拍数がそれほど早くないので拍動自体が大きくなるためでしょうか...
  • 進行性核上性麻痺(PSP)では中脳被蓋が萎縮するため,そのMRI像をハミングバード徴候と言うそうです(下図).頸静脈Hummingbird signの命名は,あまりにも素早い翼の羽ばたき(ホバリング中は約3,000回/分)からなので,厳密には被ってはいないと思いますが...😅

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)