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2026-08-20

今週の一枚 🎯嚥下負荷

心不全の悪化から改善中の症例(座位)

🔎 解説
  • 安静座位では内頚静脈の拍動は不明瞭
  • 偶然、患者さんが自発的に唾液を嚥下
  • 直後に内頚静脈の拍動が出現(矢頭)
  • その隆起は暫くすると見えなくなった

😋 独り言
  • 嚥下はとても複雑な生理現象で、胸腔内圧は相(口腔期・咽頭期・食道期)によって異なる変動を示します。ただし胸腔内圧は概ね陰圧になるため、静脈灌流が増加して中心静脈圧(あるいは右房圧)が上昇するようです。
  • もっとも胸腔内圧の陰圧程度は、吸気と比較すると嚥下では少ないようです(右下の図Cのグラフを参照)。吸気などの指示が入らない症例では、上肢挙上前屈に加えて、嚥下負荷も心不全評価に有用…世界初の報告?


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(投稿者 川崎)

2026-08-13

今週の一枚 🎯 時には外頚静脈も活用

体重が少し増加した心不全例(座位)

😐 解説
  • 外頚静脈の明瞭な上下運動あり(矢頭)
  • 吸気保持で拍動は消失し膨隆(=怒張)
  • 当日のBNPは前回の700から1300に増加
  • 本症例はDCMで心不全の悪化と診断した
  • 利尿薬を追加して早めに再診を予定した

😶 追加コメント
  • 心不全の評価で用いる頚静脈は、外頚静脈ではなくて、内頚静脈です(もちろん右側)。これは解剖学的な理由です(外頚静脈は右房と直線的関係でなく、有効な逆流防止弁があり、胸鎖乳突筋の緊張の影響を受ける)。
  • ただし本例のように心周期に伴う拍動が明瞭な場合は、中心静脈圧の推定(心不全判定)に用いてもOKです。あるいは呼吸変動(自発呼吸に伴う変動あるいは深吸気負荷に伴う変化)がある場合も、判定可能と思われます。
  • 本例では外頚静脈に目が行きますが、よく見ると内頚静脈の拍動も十分に視認できます。通常呼吸時には鎖骨上窩で陥凹があり、吸気負荷後は頚部の中央(外頚静脈を含む)が面として周期的に陥凹しています。

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(投稿者 川崎)

2026-07-23

今週の一枚 🎯

2週間前からの動悸と息切れで来院

🔒 解説
  • 両側の外頚静脈が隆起(呼吸変動なく怒張)
  • 頚部に拍動ありそう → 陥凹の疑い(矢頭)
  • 左だが内頚静脈の視認なら非代償性心不全
  • その拍動は規則正しく早い(>100回/分)
  • 病歴からも頻拍誘発性の心筋症が疑われた
  • 最終診断は2:1伝導の心房粗動による心不全

😶 独り言
  • 座位での外頚静脈の視認は必ずしも心不全とは言えません。頚部の筋緊張等で静脈灌流が阻害されることがあるためです。しかし本例のように両側で怒張している場合は、中心静脈圧の上昇が疑われます。なお怒張という用語は注意を要しますが(過去の投稿)、本例ではOKです。
  • 本例の頚部の拍動は内頚静脈の陥凹です(陥凹時間<隆起時間)。しかし一見、隆起か陥凹かの区別が難しいかもしれません。これは特に頻脈症例で多いと思いますが、こういう場合は右側よりも左側の方が分かりやすい症例があります。なお隆起なら頚動脈拍動との鑑別が必要です。
  • 動脈か静脈かの鑑別は触診をすればすぐに分かると思います。しかしそこはじっと我慢して、視診でどこまで診断に迫れるかが腕の見せ所です。頚静脈拍動から不整脈の鑑別も可能ですが(過去の投稿)、そこはフロッグサインを除きあまり拘らないようにしています(苦い思い出)。

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(投稿者 川崎)

2026-07-16

今週の一枚 🎯

息切れを訴える症例(座位)

🔎 推理
  • 座位で右頚部に周期的な隆起を認める(矢頭)。左側ではあまり隆起が目立たないことより、頸動脈の拍動(コリガン脈)よりも頚静脈の拍動(ランチシ徴候)と考えられる。よって中心静脈圧は高度に上昇しているため、非代償性心不全と診断できる。
  • 次に心尖部を確認すると複数の肋間で心尖拍動を視認するため(矢印)、心拡大が疑われる。さらに男性であるにも関わらず、乳房が発達している(女性化乳房の疑い)。つまりスピロノラクトンなどミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の服用が疑われる。
  • さらに左前胸部に埋め込まれているデバイスは通常よりも大きいため、CRTD(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)等と思われる。これらすべてに合致するのはHFrEFで、肋間筋の萎縮も考慮すると悪液質に陥ったステージDの重症心不全の疑い。

🎩 独り言
  • 上記の予想はすべて正解です。まるでシャーロック・ホームズの推理でしょうか? 彼の推理は微細な事実の観察と、そこから論理を組み立てる推論の組み合わせです(AI解説)。
  • 身体所見も少し慣れれば、同じことができるかもしれません。以前にもフィジカルでここまで分かったという症例をアップしているので、よろしければご覧ください(ココ)。

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(投稿者 川崎)

2026-06-25

今週の一枚 🎯

先天性心疾患術後例の息切れ

🔒 解説
  • 胸部正中に手術瘢痕(問診でファロー四徴症と判明)
  • 座位で内頚静脈の陥凹(矢頭)→ 非代償性心不全
  • 吸気負荷で鎖骨上窩の内頚静脈拍動は一見、不明瞭
  • しかしよく見ると頚部中央に拍動が出現(矢印群)
  • 下腿浮腫はなく、心音は汎収縮期逆流性雑音+Ⅲ音
  • 最終診断は亜急性の僧帽弁逆流(腱索断裂の疑い)

🔓 独り言
  • 安静座位で頚部に視認する内頚静脈の拍動は高度の中心静脈圧の上昇を示唆します。この代償が破綻した状態が、吸気で改善することは(経験的にも)ないと考えます。
  • しかし本例のように、吸気で拍動が不明瞭になる症例を稀ながら経験します。その多くは頚部の筋肉(特に胸鎖乳突筋)の緊張に伴う静脈拍動の不明瞭化と考えます。
  • ご存じのように下腿浮腫は心不全で出現する身体所見の一つですが、特異性はありません。また本例のように比較的急な経過で増悪した心不全では、下腿浮腫は稀です。

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(投稿者 川崎)

2026-06-11

今週の一枚 🎯

息切れ増悪で呼吸器内科から紹介(座位)

🐣 解説
  • 目立つ胸鎖乳突筋はCOPDに合致
  • その奥に右内頚静脈の陥凹(矢印)
  • 吸気負荷で拍動上縁の上昇(矢頭)
  • 診断は心不全の合併(COPD安定)

🐔 独り言

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(投稿者 川崎)

2026-05-07

今週の一枚 🎯

- 労作時の息切れで来院した症例 -

👀 解説: ヒル徴候 陽性(Positive Hill's sign)
  • ABI(足関節上腕血圧比)の低下なし(高値) 
  • 血圧値は上肢より下肢で著増(>60 mmHg) 
  • 最終診断は重症 大動脈弁逆流による心不全

😲 ヒル徴候の機序💦
  • 重度の大動脈弁閉鎖不全症と診断された5人の患者において、動脈内圧測定では大動脈と大腿動脈、または腋窩動脈と大腿動脈のいずれにおいても、収縮期圧に著しい差は認められなかった。上肢の非侵襲的血圧測定では、腋窩動脈の測定値と良好な相関が認められた。しかしながら、下肢の非侵襲的測定では、動脈内測定値よりも収縮期圧が著しく高く、3人の患者では大腿カフの圧力を高くしても膝窩動脈上のコロトコフ音を消失させることができなかった。つまりヒル徴候は血圧計による下肢血圧測定のアーチファクトで生理学的根拠はない

 - 別の研究 -
AR 20例とコントロール50例の血圧(正中動脈と大腿動脈)

💁 ヒル徴候に関する過去投稿は コチラ

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(投稿者 川崎)

2026-04-17

論文 🏆

  • 当院の初期研修医の先生が循環器内科で経験された症例が出版されました
  • 心不全で入院し,その後の精査で大動脈弁逸脱による重症の逆流症と診断
  • 左主冠動脈が右冠動脈洞から起始し中隔内走行を示した先天性冠動脈奇形
  • 同所見は”ハンモックサイン”として知られているようです(下図2D 矢頭)
  • 意外にも予後は悪くないようなので、本例も弁置換術のみを実施しました


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(投稿者 川崎)

2026-03-24

第90回 日本循環器学会学術集会より

📢 心音に関する臨床研究

演題OJ01-8 Utility of a Digital Stethoscope for Severity Assessment of Aortic Stenosis(奈良県立医科大学)
  • 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)外来を受診した大動脈弁狭窄症(AS)患者をデジタル聴診器で評価し、デバイスで割り当てられたAS重症度と心エコー図の重症度を検討。デジタル聴診器はASの重症度を判定するのに有用であり、専門医への紹介を検討する際に、心臓専門医以外の医師にとって実用的なトリアージツールとして役立つ可能性がある。(投稿者追加:使用した聴診器名とその判定基準の記載なし)

演題PE019-6 Simple Auscultation of the Heart for Detecting Valvular Heart Disease(大阪府、松下記念病院)
  • 標準5点聴診とシンプル聴診を、心エコー検査と心音図を行った992人で検討。5点で心雑音が認められないことは、VHDを除外する特異度75.2%、感度58.9%。第2肋間胸骨左縁と心尖部(特異度74.7%、感度59.2%)または左第3肋間胸骨左縁と心尖部(特異度74.9%、感度59.1%)に限定した場合も、同様の診断能。(投稿者追記:当院からの英語ポスター発表、演者は初期研修医で発表前に論文完成👍)

演題LBCT3-5 Evaluation of the Diagnostic Utility of Pre-Echocardiographic Digital Auscultation: A Prospective Comparative Study(香川大学)
  • 心エコー検査を受ける240人の患者で、AI分析を行うスーパー聴診器を使用して聴診を先に行い、検査者に結果が開示されるグループと、事前の聴診なしで心エコー検査を受ける対照グループに1:1で割り当て。スーパー聴診器は、収縮期駆出雑音(大動脈弁狭窄症)、逆流雑音(僧帽弁逆流症)、拡張期雑音(大動脈弁逆流症)を、なし~軽度または中等度~重度に分類した。主要評価項目全体で有意差は認められなかった。しかし、聴取可能な心雑音のある患者では、聴診先行群で大動脈弁逆流症の評価が有意に改善された。

演題CRJ27-6 Experience with the Use of an AI-Assisted Digital Stethoscope in Combination with Echocardiography(香川大学)
  • 心エコー検査の前に実施するAI支援デジタル聴診の臨床的有用性を評価。対象は心臓内科および心臓血管外科から心エコー検査のために紹介された患者。デジタル聴診によって得られた弁膜症の診断を心エコー検査の結果と比較では、僧帽弁逆流症と大動脈弁狭窄症については、デジタル聴診は心エコー検査と一致する診断結果。ただし、僧帽弁狭窄症はこの方法では検出されず。(投稿者追記:検討数や診断能などの数値は未記載)

演題PJ67-4 Detection of Moderate or Greater Aortic Stenosis Using a Deep Learning Model with Digital Phonocardiogram in a Multicenter Validation Cohort(AMI株式会社, 熊本大学病院)
  • 心音図(PCG)と単一誘導心電図(ECG)信号を利用して中等度以上の重症度のASを特定する深層学習ベースのモデル(eASモデル)の診断性能を評価。954人の患者のうち、7.3%が中等度以上のASを有していた。eASモデルはAUC 0.962(95%信頼区間:0.946~0.978)を達成。事前に指定された閾値では、感度は92.9%、特異度は87.7%であり、LR+は7.55、LR-は0.08であった。モデルから得られた確率は、心エコー図パラメータと強い相関あり。(投稿者追記:さすがに超聴診器開発元の解析👏)

演題CO1-10 次世代心不全スクリーニングツール:心音・心電図AIシステムとNT-proBNP診断能の比較検証(愛知県、あま市民病院)
  • 超聴診器AMI SSS1による検査を施行した連続347例のうち、NT-proBNP値が前後7日間以内に測定されていない、またはeGFR 30未満の症例を除外した225例が対象。心負荷判定とNT-proBNP値との関連を後方視的に解析。NT-proBNP各値(125/400/900)と心負荷判定を用いたROC曲線分析の結果、> 900 pg/mLと心負荷判定B以上(AUC=0.81)、またはA2以上(AUC=0.81)の相関が最も良好。超聴診器は心不全スクリーニングにおいてNT-proBNP値の代替ツールとして有用である可能性が示唆。

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(投稿者 川崎)

2026-03-20

論文 🏆 低灌流の身体所見パート2

  • 当院で行った臨床研究が論文になりました.Kasai K, Kawasaki T. Peripheral Perfusion Index as a Marker of Hypoperfusion in Heart Failure. Cardiology 2026 Feb 9:1-10. Epub ahead of print. (PMID: 41662304
  • 以前に当科から,心不全症例の低灌流を反映する身体所見の中で,腋窩と指先の温度差および指先の冷感の有無はいずれも,Nohria-Stevenson分類と同程度のリスク分類に利用できることを報告(Cardiology 2025 May 5:1-11
  • 今回は簡便かつ客観性のある指標 Perfusion Index (PI) を用いた検討です.PIはパルスオキシメータの拍動性血流成分と非拍動性血流成分の比から算出される指標で,心不全例でのリスク評価は初めてと思われます.

- 心不全例の末梢PIと心血管事故 -

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(投稿者 川崎)

2026-03-18

論文 🏆 低灌流の身体所見パート1

  • 当院の臨床研究が論文になりました.Kasai K, Kanehiro C, Honda S, Sakai C, Shindo A, Harimoto K, Kawasaki T. Physical Assessment of Congestion and Perfusion Status in Heart Failure. Cardiology 2025 May 5:1-11. Epub ahead of print.(PMID: 40324360
  • 現在の心不全ガイドラインでは,血行動態評価を4つの臨床プロファイル(すなわち dry-warm,wet-warm,dry-cold,wet-cold )に基づいて行うことが推奨されています.そこで活用されるのがノリアスティーブンソン分類ですが,必ずしも簡便とは言えません.
  • 本検討では心不全症例の低灌流を反映する身体所見の中で,腋窩と指先の温度差および指先の冷感の有無は共に,予後予測に有用であることを示しました.そして頚静脈所見と組み合わせた場合,Nohria-Stevenson分類と同程度の診断能を有していました.

- 心不全例の末梢所見と心血管事故 -

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(投稿者 川崎)

2026-02-12

今週の一枚 🎯

息切れで来院(血液疾患で化学療法中)

😐 解説
  • 眼周囲の明瞭な浮腫(puffy eyes)
  • 浮腫は下眼瞼より上眼瞼で目立つ
  • 浮腫の部分は心持ち蒼白?(pale)
  • 座位で右側内頚静脈の拍動は陽性
  • 心音はギャロップ+全収縮期雑音
  • 最終診断は薬剤性心筋症(HFrEF)

👽 心不全 vs 眼
  • 眼瞼浮腫は必ずしも病的とは言えません(寝不足や号泣後).しかし本例のように上眼瞼が主体の浮腫なら心不全を想起させます(ただしエビデンスは見つからず)
  • 眼瞼浮腫で発赤がないことは炎症やアレルギーに伴う変化の除外に有用と思われます.(本例は血液疾患による貧血に加えて,心不全による血液の希釈も影響?)
  • 心不全の浮腫と言えば下腿浮腫ですが,眼瞼や陰嚢などにも出現することがあります.心不全での眼瞼浮腫の頻度を調べましたが見つけることができませんでした.
  • 心不全ガイドラインは「下腿(末梢あるいは四肢)の浮腫とそれ以外の浮腫」という分類がされています.「眼」という漢字は一つも記載されていませんでした.

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心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2026-01-19

ChatGPT(GPT-5.2)の返答

  • AIを仕事で利用する頻度がとても増えました.とんでもない嘘を自信満々で答えるときがあるため,返答を鵜吞みにすることはできません.しかし大いに参考になります(特に基本的な知識がある領域)
  • AIは進化がとても早い領域です.その変化を知るため現時点のレベルをまとめておきます.各設問に対するAIの答えをそのまま記載します.忘れなかったら😅1年後に同じことを最新AIに問うてみます

 
Q1 心尖拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心尖拍動は左心室収縮により生じる胸壁の拍動で、心機能評価に重要な身体所見である。正常では左第5肋間・鎖骨中線上に触知され、範囲は限局する。外側・下方への偏位は心拡大を示唆し、びまん性で強い拍動は左心室肥大や容量負荷を考える。触知困難な場合は肺気腫や肥満が原因となることがある。このように心尖拍動は心疾患の存在や重症度推定に有用である。

Q2 心音の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心音は心臓の弁運動や血流変化により生じ、心機能や弁膜症評価に重要な身体所見である。第Ⅰ音は房室弁閉鎖を反映し、増強は頻脈や僧帽弁狭窄、減弱は心筋障害を示唆する。第Ⅱ音は半月弁閉鎖音で、分裂の変化は肺高血圧や右脚ブロックなどの診断に有用である。第Ⅲ音は容量負荷や心不全、第Ⅳ音は心室拡張障害を示すことが多い。さらに心雑音の有無や性状から弁膜症や先天性心疾患の推定が可能であり、心音聴診は非侵襲的に循環器疾患を評価できる基本かつ重要な診察手技である。

Q3 頚静脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚静脈拍動は右心系の圧・容量状態を反映する重要な身体所見である。内頚静脈の拍動を観察することで中心静脈圧を推定でき、右心不全、容量負荷、脱水の評価に有用である。正常では半坐位で鎖骨上に軽度の拍動を認める程度であり、明らかな怒張は右心不全、三尖弁閉鎖不全、心タンポナーデ、収縮性心膜炎などを示唆する。波形の観察も重要で、a波増高は右房圧上昇、v波増高は三尖弁閉鎖不全を考える。Kussmaul徴候(吸気時の頚静脈怒張増強)は収縮性心膜炎や右室梗塞に特徴的である。頚静脈拍動は非侵襲的かつ迅速に右心機能を評価でき、循環動態把握に欠かせない所見である。

Q4 頚動脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚動脈拍動は左心室からの駆出血流を直接反映する重要な身体所見であり、心拍出量や大動脈弁疾患の評価に有用である。正常では立ち上がりが速く、なだらかに下降する拍動を触知する。拍動の減弱や遅延(parvus et tardus)は大動脈弁狭窄を示唆し、逆に強く跳ねるような拍動(bounding pulse)は大動脈弁閉鎖不全や高拍出状態で認められる。二峰性拍動は肥大型心筋症を、拍動の左右差は頚動脈狭窄や大動脈解離を疑う所見となる。また、頚動脈雑音の聴取は動脈硬化性病変のスクリーニングとして重要である。頚動脈拍動の触診・聴診は簡便かつ非侵襲的に全身循環や弁膜症の手がかりを得られるため、循環器診察における基本かつ不可欠な所見である。

Q5 傍胸骨拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 傍胸骨拍動は胸骨左縁で触知される心拍動で、主に右心系や心室負荷の状態を反映する重要な身体所見である。正常では明瞭に触知されないが、持続的で強い傍胸骨拍動は右心室肥大や右心系圧負荷を示唆する。肺高血圧、肺動脈弁狭窄、慢性肺疾患に伴う肺性心などで認められることが多い。また、胸骨左縁下部での拡張期に強い拍動は右心室容量負荷や三尖弁閉鎖不全を考える手がかりとなる。心室中隔欠損などでは拍動が増強する場合もある。傍胸骨拍動は視診・触診のみで評価可能であり、右心機能や肺循環異常を推定するうえで有用な、基本的かつ重要な循環器身体所見である。

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(投稿者 川崎)

2026-01-01

今週の一枚 🎯 元旦 🎍

労作時の息切れで来院例(座位)

😐 解説
  • 頚部の上1/3(顎下)に陥凹(右向き矢印)
  • 吸気負荷で別の部位に隆起(左向き矢印)
  • 拍動はいずれも不規則 ➜ 心房細動の疑い
  • 外頚静脈の怒張 ➜ クスマウル徴候(矢頭)
  • 内頚静脈の陥凹+外頚静脈怒張 ➜ 心不全
  • 頚動脈隆起(コリガン脈)➜ 大動脈弁逆流
  • 心エコー図では中等度の大動脈弁逆流あり
  • 最終的にARとAFを伴った心不全と診断した

💟 現場実況
  • 本例で初診時に身体所見を確認したときには,安静時の内頚静脈の陥凹が吸気後には隆起(ランチシ徴候)へ変化しました.もちろんこれで,中心静脈圧が高度に上昇した非代償性心不全と診断できました.
  • その後,看護師さんと車いすで検査に回ってもらいました(心電図や胸部X線,採血).その後の結果説明時(←この時に上記動画を記録)には,ランチシ徴候はなく代わりにクスマウル徴候を認めました.
  • 本例は吸気後に頚動脈拍動(コリガン脈)を認めます.よく見ると安静時にもすでにありそうです.通常,吸気で頚動脈所見は変化しません.本例は筋緊張などが加わり拍動が顕性化したと考えられました.

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(投稿者 川崎)

2025-12-25

今週の一枚 🎯

呼吸困難感を訴える高齢者(数年前にペースメーカ植込み後)
血圧84/40mmHg,心拍数60bpm,酸素飽和度93%(酸素3L)


(投稿者 川崎)

2025-12-21

第140回日本循環器学会近畿地方会より

😗 個人的に気になった報告
 
2-7 世界遺産姫路城天守閣で心肺停止になった身長190cm,体重100kgのドイツ人旅行者を後遺症なく救命し得た一例
  • 症例は68歳ドイツ人男性。姫路城天守閣登頂後に心肺停止となり,同伴者によりCPRが開始された。姫路城常駐看護師がAEDを携行して駆けつけ除細動2回で心拍再開。救急隊と他院ドクターカー医師が急峻で狭小な階段を駆け上がり,身長190cm,体重100kgの大柄な患者を迅速に搬出した。

5-18 繰り返す心室細動を伴った難治性冠攣縮発作に対して塩酸ファスジルが著効した1例
  • ニトログリセリン等の投与を行なったが,心室細動に対して頻回に除細動を要した。冠攣縮発作によるものと判断し塩酸ファスジルを投与したところ,ST上昇は改善を認め,心室細動も停止した。その後薬剤調整を行い,第10病日に塩酸ファスジルを終了したが,ST上昇および心室細動の再発なく経過した。※塩酸ファスジルの効能または効果:くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善/#Rhoキナーゼ阻害薬冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)にも記載あり(P14) ➜ 難治性冠攣縮性狭心症患者の発作寛解のためのファスジル投与(クラス IIa)

6-33 診療報酬改定を契機に在宅強心薬療法を導入し得た重症心不全の1例
  • 令和6年診療報酬改定で「在宅強心薬持続投与管理料」が新設された。本制度を活用し在宅強心薬持続投与を導入した症例を報告する。【症例】60代男性。虚血性心疾患により心不全ステージⅣ,EF10〜15%,CRT-D植込み,MVR施行歴あり。カテコラミン依存状態で一年半の間に入院8回167日在院。【経過】入退院を繰り返す中で「自宅で過ごしたい」と希望し,ハートケアチームで検討し在宅DOB導入を決定。【結果】導入後6か月で再入院は1回18日のみ。

8-12 胸骨圧迫で Sapien3 Ultra Resilia が変形した一例
  • 第8病日にTAVIを施行して人工弁S3UR 23mmを留置した。帰室後long pauseを来したため胸骨圧迫を行い心拍再開を得たが,その後も洞不全症候群が遷延するため一時的ペースメーカを留置した。その際の透視で人工弁の変形が疑われた。CTで確認するとS3URが扁平な楕円に変形しており,血栓弁の合併や弁周囲組織の損傷はなかった。


😀 当院からの発表
  • 2-16 術前評価の冠動脈CTで稀な冠動脈起始異常を発見した1例(循環器内科 中野 佑哉ほか)
  • 4-5 β遮断薬を含む点眼薬で誘発された薬剤性3度房室ブロックの1例(循環器内科 吉富 新一ほか)
  • 5-17 難治性の冠攣縮に対してステロイド治療が有効であった急性下壁梗塞の1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 6-27 心不全症例の末梢温と予後との関係(循環器内科 川﨑達也ほか)

3編は発表前に英語論文化(2編は出版済,1編は投稿中) 👏

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-18

今週の一枚 🎯

動悸と息切れで来院した症例(座位)

😗 解説
  • 右頚部に隆起性の拍動あり(矢印)
  • 左側にも隆起性の拍動あり(矢頭)
  • 右側の隆起は左側より先行している
  • よく見ると右側拍動は隆起後に陥凹
  • 左側の拍動は隆起のみ(陥凹なし)
  • 心エコー図では重症の大動脈弁逆流
  • 最終診断はARによる非代償性心不全

💫 追加コメント
  • 右側隆起は前収縮期で用手的に容易に圧迫 ➜ 頚静脈の増高a波
  • 左側隆起は収縮期で用手的圧迫は困難 ➜ 頚動脈のコリガン脈
  • 注意深く診察すれば視診だけで両者の鑑別は可能と思われます
  • そしてこの組み合わせならARの非代償性心不全と診断できます

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(投稿者 川崎)

2025-11-13

今週の一枚 🎯 手抜きダメ

10年前にペースメーカ植込み術を受けた症例
ひと月前から息切れ(座位ですべて吸気後)

😐 解説
  • 頚静脈の拍動なし(ただし下部は見えず)
  • 吸気後の鎖骨上窩にわずかに陥凹あり?
  • 立ち上がって診察室内を2周してもらった
  • すると頚部の中央に明瞭な陽性波(矢印)
  • 触診にて動脈拍動でなく静脈拍動を確認
  • 本例は最終的に心不全と診断(HFpEF)
  • ペースメーカ本体も確認したが問題なし

😞 現場実況
  • 長年安定している症例でありシャツの襟を立てたまま観察(反省)
  • 安定しているというバイアスで鎖骨上窩の拍動もスルー(反省2)
  • 患者さんの訴えが強くしぶしぶ歩行負荷を追加で陽性波(反省3)

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(投稿者 川崎)

2025-10-16

今週の一枚 🎯 診療室内で運動負荷

無理すると息切れがあるという男性(座位)


👀 解説
  • 安静座位で内頚静脈の拍動なし
  • 吸気負荷で一瞬,僅かに拍動?
  • 診察室内を2周歩いてもらった
  • すると座位で明瞭な拍動(➢)
  • 最終診断は非代償性の心不全

👶 コメント
  • 頚静脈の座位定性法の可能性は無限です.様々な負荷が追加できるからです.吸気負荷が最も簡便ですが,前屈負荷蹲踞負荷左上肢挙上負荷立位負荷なども可能です.そしてそれらを組み合わせることも有用です.
  • 当院で最初に行った負荷頚静脈法は6分間歩行でした(論文).しかし診察室やベットサイドでは実施が困難で活用範囲が限定されます.今回行った診察室内を少し歩きまわってもらう負荷はベットサイドでも可能です.

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(投稿者 川崎)

2025-10-09

今週の一枚 🎯 無塩食

長年安定していた心不全例(座位)


🍟 現場実況
  • 通常は安静時も吸気時も頚静脈は陰性
  • 今回は安静時に鎖骨上窩で陥凹(矢印)
  • 深吸気保持で外頚静脈が怒張している
  • 内頚静脈の拍動の上縁も上昇(矢頭)
  • しかも拍動パターンは陥凹から隆起へ
  • 予定していた心エコー図には著変なし
  • 問い直すと自覚症状は悪化していたと

🍙 追加コメント
  • 安定していた心不全が悪化した原因を尋ねたら「継続していた無塩食を少し前に辞めた」ことを教えてくれました.
  • 無塩食は思っているよりも簡単なようです.自宅で無塩調理(食塩や醤油,味噌などの調味料を使用しない)だけ
  • 無塩食だから外食不可も古い考えだそうです.現在では無塩を依頼すれば多くのお店で対応してもらえるようです.
  • 無塩(かつ無糖)の食生活を20年以上も継続されている循環器内科専門医が霧島記念病院におられます(コチラ

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(投稿者 川崎)