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2021-05-10

喉仏サイン Adam's apple sign

薬剤を自己中断して増悪した慢性心不全症例

🍏 所見の解説
  • 通常呼吸時には座位で頸静脈拍動を視認しない(座位陰性).一方,深吸気保持では外頸静脈の怒張が出現(クスマウル徴候陽性)するため,中心静脈圧は潜在的にある程度上昇していることが推察される.
  • よく見ると前頸静脈(Anterior jugular vein)も密かに怒張している.個人的には喉仏サイン(Adam's apple sign)陽性と呼んでいる.頸静脈といえば内頸と外頸だけど,正面にいるのに目立たないシャイな前頸静脈も忘れないように.

🍎 独り言
  • 喉仏(Adam's apple)は俗称で,正式には喉頭隆起(laryngeal prominence?) です.なぜなのかですが,仏教では火葬時に喉仏が綺麗に焼き上がると四十九日を待たずに極楽浄土行きが決まるといわれているからだそうです.軟骨部だけを取り出すと,座禅したお坊さんやお釈迦さん,阿弥陀さんの結跏趺坐(けっかふざ)した姿に見えるという説もあるようです().しかし喉仏がうまく焼け残るには骨密度と火加減が重要だそうです.現在の火葬では喉頭隆起は焼けてしまい残らないので,仏事では第二頸椎を喉仏と呼んでいるようです().

💁 クスマウル徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-05-09

何気ない一言から

👥 カンファレンス中の一コマ 
  • 研修医A 「慢性心不全増悪の患者さんでCTの結果がこちらです」
  • 研修医B 「右側優位に胸水があるなー」
  • 研修医C 「なんで左右差あるんだろう…右に溜まりやすいのかな?」

心不全を原因とする胸水は両側性に出現することが多いが片側性も多く、その場合は右側が多い(両側性が64%、右側24%、左側12%)(JAMA 2009;301:309-17)。両側性胸水では右側優位の場合が多いと一般的に言われているが明確なエビデンスはないため、理由を考察してみました。

  • 考察1 還流量の違い ➜ 右肺と左肺の血流量は55:45で右肺のほうが多い(千葉医学会雑誌 1971;47:29-34)。そのため右肺は血液がうっ滞しやすく、胸水が出現しやすいと考えられる。
  • 考察2 リンパ管の太さの違い ➜ 左肺側の胸管が右肺側の右リンパ本幹と比べて太く()体液の吸収がスムーズに行われているため、左側に胸水が出現しにくいと考えられる。
  • 考察3 体位との関係性 ➜ 心不全患者は左側臥位を避け、右側臥位を取ることが多い(J Am Coll Cardiol 2003;41:227–30)。理由としては右側臥位になることで大動脈が大静脈より高くなり前負荷が減少するため。これにより右側に体液が集まりやすくなり、胸水も右側に多くなるのではないかと考えられる。

🌀 振り返り
  • 涅槃の体勢は右側臥位であり、仏陀は心不全であったという説があるようです。心不全の症例から仏陀にまでつながるのは意外でした。歴史を医学的に考察するのは面白いです。

(投稿者 後藤)

2021-05-08

💀 ノーマンズランド No man's land

  • 本来の意味は所有者がない土地,無法地帯,守備の死角など
  • 医学では手を出しては(メスを入れては)いけない部位のこと
  • 例えば手掌から指第2関節の屈筋腱(癒着して動かなくなる)

下図の Zone II がいわゆるノーマンズランド

💁 手に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-05-07

ホリスティック医学 Holistic medicine

  • holistic 【形容詞】 全体的な,総体的な/holistic medicine=全体観的な医学
  • 局所的あるいは疾患の治療だけでなく患者の精神や生活環境などを含めた治療
  • スピリチュアルな方法も排除せず医師主導より患者自らの癒しを重視している
  • 人をmind(心)とbody(体)とspirit(精神)を併せ持った全体的存在と認識

👉 日本ホリスティック医学協会による定義(
  1. ホリスティック(全的)な健康観に立脚する
  2. 自然治癒力を癒しの原点におく
  3. 患者が自ら癒し、治療者は援助する
  4. 様々な治療法を選択・統合し、最も適切な治療を行う
  5. 病の深い意味に気づき自己実現をめざす

(投稿者 川崎)

2021-05-06

One-pill killers 💀 致死的一錠

  • 小さい子供(例:8歳未満)だったら1錠でも死に至る可能性のある薬のこと
  • 頻度順に抗精神病薬・鎮痛薬・心血管薬・外用薬・抗菌薬・感冒薬/喘息薬
  • 幼児などがキャンディーと間違わないよう薬剤は高所で別保管が大切です


米国中毒情報センター協会による One-pill killers 犠牲者数

💁 中毒に関する過去の投稿 ➜ コチラ(ウェブ版なら右欄からも選択可能)

(投稿者 川崎)

2021-05-05

酸素飽和度100%

カンファレンス中の一コマ 💨
  • 研修医 「サチュレーションは100%で正常でした」
  • 指導医 「室内気で酸素飽和度100%は正常なの?」
  • 研修医 「100%…正常…異常??」
  • 指導医 「呼吸数はどうだったん?」

  • 健常者のSpO2は96-99%とされています。しかしSpO2=100%でアラームは鳴りません。SpO2=100%は安全域か否かは原因によると思います。
  • 室内気でSpO2=100%になる原因として多いのは過換気状態です。過換気状態になる原因として代表的な病態は過換気症候群です。
  • 一方、過換気状態には過換気症候群以外にもさまざまな病態があります。体表的な病態と具体的な疾患を下の表にまとめます。

参考)内科救急見逃し症例カンファレンスM&Mでエラーを防ぐ(医学書院 2012;53-8)

病態 想定される疾患
疼痛、発熱や交感神経亢進による呼吸数増加 大動脈解離、急性心筋梗塞、急性腹症、感染症、骨折、甲状腺機能亢進症、薬物中毒(アンフェタミン中毒など)、セロトニン症候群など
呼吸中枢障害による呼吸数増加 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血)
低酸素に対する代償で呼吸数増加 急性呼吸不全(気管支喘息、肺炎など)、急性心不全、肺塞栓症など
代謝アシドーシスに対する代償性過換気 糖尿病ケトアシドーシス敗血症など
呼吸筋麻痺による換気量低下に対する代償で呼吸数増加 ギランバレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症など

🎻 振り返り
  • 今回、救急外来で経験した症例は、急性虫垂炎の痛みにより過換気状態になりSpO2=100%(室内気)になっていたと考えられました。

(投稿者 中西)

2021-05-04

内頸静脈:凹 ➜ 凸 ➜ 凹

息切れが辛くて受診した症例

🐶 解説
  • 内頸静脈の周期的な陥凹が額下まで観察可 ➜ 中心静脈圧の高度上昇
  • 深吸気止めで内頸静脈の拍動は陥凹から隆起に変化 ➜ ランチシ徴候
  • 深吸気の息止め終了後には内頸静脈拍動は隆起から陥凹に戻っている
  • ちなみに外頸静脈の怒張は深吸気止めの終了後に拍動が出現している

🐷 おまけ発言
  • 内頸静脈の収縮期陽性波(巨大v波あるいはcv merger)を意味するランチシ徴候(ランチージ徴候)は高度の三尖弁逆流を示唆します.よって本例の呼吸負荷による内頸静脈の反応(凹 ➜ 凸)は,肺高血圧が容易に(さらに)上昇する病態が考えられます.肺高血圧の増悪は負荷心エコー図の専売特許ではありません.
  • 内頸静脈の巨大v波にも関わらず,三尖弁逆流がほとんど観察されない症例も少なからず経験します(特に開心術後症例).その理由は不明ですが,stiff LA syndromeが背後にあるためと思っています.開心術中に切開された心房がコンプライアンスを失うことは想像に難くありません.右房も含むためstiff RA syndromeまたはstiff atrial syndromeと呼ぶ方が正確かもしれません.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-05-03

✨ 僧侶に糖尿病は多いか?

5年生時の実習で『お坊さんは糖尿病治療のアドヒアランスが良くない』と聞いたことがありました。私が実習で出会った僧侶の方も糖尿病で片足を切断していたにも関わらず糖尿病治療には消極的でした。しかし一般的に僧侶のアドヒアランスが悪いのかは不明でした。

👀 そこで宗教家と糖尿病発症率・アドヒアランスの関係について調査しました。

🎻 結果
  • タイでの研究では、仏教の僧侶に糖尿病が多いことが報告されていますが(文献1,2,3)。これは食生活(長期の断食とそれに続く高炭水化物、高脂肪、低繊維、タンパク質の不足した食事)と座りがちなライフスタイルが関係しているという意見もありました(文献4)。
  • 同じくタイでの研究で、仏教的価値観が高いことは、より良いアドヒアランス、HbA1c低下と相関すると報告されています(文献5)。仏教的価値観のスコア化については研究データを閲覧できなかったため不明です。
  • ネパールでの研究で、チベット人僧侶群と僧侶と違う生活習慣を持つチベット移民群との間において、2型糖尿病、空腹時血糖異常、肥満の発症率に有意差はなかったと報告されています(文献6)。

【参考文献】
  1. International Journal of Diabetes in Developing Countries 2013;33:23–8
  2. The Island: Sunday Island epaper 2012
  3. J Relig Health 2013;52:1319–32.
  4. Indian J Endocrinol Metab 2018;22:806-11
  5. Int J Psychiatry Med 2008;38:481-91
  6. 福岡大学医学紀要 2006;33:265-70

議論&結論  💨
  • 今回日本での研究は見つからなかったためタイやネパールの研究を参考にします。タイでは仏教の僧侶に糖尿病が多いですがネパールではそうではありませんでした。国によって僧侶のライフスタイルが違うのかもしれません。
  • タイでは仏教的価値観が高いとアドヒアランスが良いということでしたので、仏教的価値観が高いであろう僧侶のアドヒアランスも良いのではと思いますが詳細は不明です。一方タイの僧侶は糖尿病が多いので、元々の生活習慣に問題がありそうです。
  • 日本での宗教家とアドヒアランス、糖尿病についての調査は見つかりませんでした。 タイでは僧侶に糖尿病が多いので、国によっては糖尿病のリスクとなる職業であると思われます。一方、仏教的価値観が高いとアドヒアランスが良いので、仏教自体は糖尿病の治療にとって良いものだと思われます。

(投稿者 中西)

2021-05-02

ICLS: Immediate Cardiac Life Support

  • 日本救急医学会が提唱している医療従事者のための蘇生トレーニングコースのこと
  • ICLSの到達目標は突然の心停止に対し最初の10分間で行う適切なチーム蘇生の習得
  • 一方ACLSはAdvanced Cardiovascular Life Supportの略でアメリカ心臓協会が提唱
  • ACLSは一次救命処置であるBLS(Basic Life Support)に続いて行う二次救命処置
  • ざっくり言うとICLSは心停止に特化しているが,ACLSは他の急を要する病態も含む

🚑 蘇生に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-05-01

シンシナティ病院前脳卒中スケール CPSS: Cincinnati Prehospital Stroke Scale


  1. 顔面の麻痺 ➜ 歯を見せるようにあるいは笑顔を指示(正常なら左右対称/異常なら片側が動かない)
  2. 上肢の麻痺 ➜ 閉眼で10秒間上肢を挙上(正常なら左右とも挙上または全く挙がらない/異常なら片方が挙上または一方が下がる)
  3. 言語の異常 ➜ 簡単な文章を喋ってもらう(正常なら正しい言葉を明瞭に話す/異常なら不明瞭な言葉や間違った言葉,または話せない)

💁 脳梗塞に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)