このブログを検索

2023-03-09

今週の一枚 🎯 頸部は心のみにあらず

息切れで来院した症例(端座位)

🐦 解説
  • 胸鎖乳突筋と斜角筋の肥大 ➜ 慢性閉塞性肺疾患COPDに合致
  • 明瞭な鎖骨上窩と吸気時の陥凹 ➜ 陥没呼吸もCOPDに矛盾せず
  • 気管短縮(甲状軟骨下縁〜胸骨上縁:通常は>3横指 or 4cm)
  • 鎖骨上窩に呼吸と無関係の周期的な陥凹 ➜ 中心静脈圧の上昇
  • 座位で視認する外頸静脈が吸気負荷で明瞭化(クスマウル徴候)
  • 吸気保持で内頸静脈の拍動上縁も上昇 ➜ 心不全に矛盾しない
  • 本例はCOPDに伴う第3群の肺高血圧症(肺性心)と診断した

😀 ひとり言
  • COPDには多くの身体所見が知られています.本例で認めた所見以外にも,フーバー徴候や樽状胸郭,るい痩,口すぼめ呼吸,呼気相延長などがあります.ただしこれらの身体所見はるい痩を除き重症化するまで出現しにくい点に要注意
  • 肺疾患による心不全を以前は肺性心(cor pulmonale)と言っていましたが,最近ではあまり耳にしません.Google Scholar検索でも”肺性心”は1980-2000年に1270件,2000-2020年は800件と減少してます.
  • cor はラテン語も同じ綴りで心臓を意味するそうです.命名はWPW症候群の発見者として有名なPD White(JAMA 1935;104:1473-80).最近は第3群PHと呼ぶことが多くなってきましたが,あまり味わいがないような...

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-03-08

ドセタキセル(Docetaxel)と浮腫

👾 ドセタキセル(Docetaxel)
  • 概略 タキサン系抗がん剤で微小管に結合し有糸分裂を阻害(商品名:タキソテール他)
  • 適応 乳癌、非小細胞肺癌、胃癌、頭頸部癌、卵巣・子宮体癌、食道癌、前立腺癌(DI)

👿 注意点
  • 抗がん剤であるため脱毛・血球減少・嘔吐・アレルギーなどが生じ得るが,ドセタキセルには体液貯留という副作用あり.これはタキサン系薬剤による血管透過性の亢進による特徴的な有害事象で,四肢だけでなく体幹にも出現し胸水や腹水貯留を引き起こすこともある(引用).

👾 癌治療後の浮腫:リンパ節郭清後 and/orドセタキセル関連
  • 対象 5年内にドセタキセルの投与された乳がん43例
  • 除外 心機能障害例,肝機能障害例,深部静脈血栓例
  • 頻度 30.2%に下肢浮腫,投与4回目が最多(46.2%)


💁 乳がんに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-03-07

👴 歴史クイズ

(Public Domain)



(投稿者 川崎)

2023-03-06

時間外の病理検体

先日,休日の夜間に採取した検体の取り扱いに少し困ったので当院の病理検査室に確認しました

  • 休日であっても日中は検査室の担当者がいるため提出可能
  • 夜間(平日・休日ともに)は検体により対応が異なる
    1. 細胞診など湿潤固定する検体 ➜ 冷蔵保存となるため提出可能
    2. 組織診などホルマリン固定する検体 ➜ 常温でホルマリン保存し翌日の日中に提出
    3. 消化器系の病理検体(胆汁・膵液等)➜ 夜間でも提出可能

(投稿者 川角/川崎)

日本内科学会 第239回近畿地方会より

😐 個人的に気になった報告

演題5 上部消化管内視鏡検査を契機に診断されたCowden症候群の1例
  • Cowden症候群は、様々な臓器に過誤腫性病変が多発する常染色体優性遺伝形式をとる疾患であり、PTENと呼ばれるがん抑制遺伝子の病的バリアントが原因とされる。乳癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、大腸癌、腎細胞癌などの悪性腫瘍を高率に合併する。

演題15 著明な低脂血症で発症した後天性LCAT欠損症の1例
  • HDL-C9mg/dL、LDL-C5mg/dLと著明低値を認めた。LCAT欠損症は、コレステロールのエステル化に重要な酵素であるLCATの欠損や活性低下により、脂質代謝障害を来す稀な疾患である。

演題88 心不全を契機に診断された中性脂肪蓄積心筋血管症の1例
  • 中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)は非常に珍しい症例でありPNPLA2遺伝子ホモ型変異を伴うものを原発性、遺伝的原因が不明なものを特発性と分類する。

演題94 99mTc製剤によりアナフィラキシーショックに至った1例
  • 6分間のアデノシン持続静注及び99mTc製剤静注の数分後に顔面、前胸部、両上肢の紅潮及び掻痒感を伴う膨疹を認めた。ステロイド点滴で症状は速やかに軽快し、アデノシンによるアレルギー反応と考えた。予定通り3時間後に2回目の99mTc製剤静注を行った所、全身の膨疹・紅斑、気分不良、冷汗、胸部不快感が出現し、収縮期血圧70mmHgまで低下した。

演題115 移動盲腸により腸重積を来した1例
  • 移動盲腸は胎生期に右側結腸が後腹膜に固定されない発生異常であり、発生率は10-20%程度である。便通異常や腹痛など症状出現時は薬物療法や外科的治療を行う。

演題217 ニューマトセルの破裂で緊張性気胸・膿胸になった1例
  • 膿気胸(pyopneumothorax)=胸部CTでは肺内外にniveauを伴う嚢胞性病変。内部に感染を伴う場合、気胸・膿胸などの合併症のリスクがあり、縦隔偏位を伴う緊張性気胸になれば、致死的になることも留意が必要である。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-03-05

Mixed Aortic Valve Disease: MAVD 混合大動脈弁疾患

👍 ポイント
  • 中等度ASと中等度ARが共存した病態(MAVD)では,単独の中等症ASや中等症ARと比較して,有害事象の発生が有意に高い.
  • MAVD患者は重症AS患者と同等の転帰であるが,(一見)駆出率は保たれているため症状について注意深く観察する必要がある.

👌 ガイドラインの文言:大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(ASR)
  • 単独のASまたはARにおいては,重症度分類に基づいた手術適応基準が各ガイドラインにおいて提唱されているのに対して,ASRに関する研究は少なく治療ガイドラインは明らかにされていない.このため,より重症な弁膜症の治療ガイドラインに基づいた管理および治療方針の決定が行われていると想定される.しかし,ASRは単独ASまたは単独ARとは異なる臨床経過をたどる可能性がある.過去の研究によれば,ASとARがともに中等症のASRであっても,その予後は重症ASと変わらないと報告されている680-682).ASRの特徴であるASによる圧負荷とARによる容量負荷が,中等度であっても複合的に予後へ影響する病態を生じるためと考えられる.ASRではASの圧負荷によって求心性肥大が生じ,ARの容量負荷によって遠心性肥大を生じるため,単独ASおよび単独ARに比較して心筋重量が増大する680-682).従来から心筋重量の増加は心疾患の予後と関連することが知られており,心筋重量の増大がASRの複合的な病態の重症度を反映している683,684).高度心肥大は左室拡張機能を低下させるが,ARによる容量負荷によって左室拡張期圧を急激に増加させ,心不全症状を顕性化させる685).ASRでは弁膜症の進行がなくても症状が認められるようになることがあり,弁疾患よりも拡張機能障害の進行が原因であると考えられる680-682).このように,従来のASもしくはARのガイドラインではASR患者の管理には不十分である.ASRでは弁膜症の重症度評価に加えて心筋重量や拡張機能評価を行い,中等症弁膜症ではなく重症ASに相当するより厳密な経過観察が推奨される.


👻 ガイドラインに関する過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-03-04

コテージ・ローフ徴候 Cottage loaf sign

  • Cottage loaf(コテージ・ローフ)はイギリスを起源とする伝統的なタイプのパン
  • 横隔膜欠損による肝臓の部分的ヘルニアを伴った右側横隔膜破裂を示す画像所見
  • 横隔膜のくびれで上下に連結したコテージ・ローフ(左下の写真)を連想させる


💁 横隔膜に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-03-03

眼球運動障害 Ocular motility disorder

  • 眼球運動の担当は外眼筋=4直筋(外直筋・内直筋・上直筋・下直筋)+2斜筋(上斜筋・下斜筋)(下図参照)
  • これらの6つの外眼筋を支配する3神経(動眼神経・滑車神経・外転神経)が障害されると眼球運動障害が生じる
  • 原因は血流障害・神経の炎症・腫瘍の神経圧迫・外傷などで,症状は複視・斜視・眼振・眼瞼下垂・視力障害など
  • 治療は原因疾患の治療が基本であり,対症療法として両眼の視線のずれを補正するプリズム眼鏡,片眼の眼帯など

外眼筋の作用方向

72歳男性:上下複視に対する術前(上段)と術後(下段)

💁 眼に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄からも選択可能)

(投稿者 川崎)

2023-03-02

今週の一枚 🎯 頸静脈評価の思考プロセス

息使いが荒くなった症例

🐤 臨床現場
  • 呼吸は荒く外頸静脈を座位で視認 ➜ 中心静脈圧は上昇?
  • 呼気より吸気で外頸静脈の隆起が明瞭 ➜ 静脈圧は上昇!
  • よく見ると耳垂の下に拍動する部分がある(陥凹っぽい)
  • 深吸気を保持した後は拍動はより明瞭へ(おそらく隆起)
  • 僅かながら耳垂の拍動もあり(イヤウインクサイン陽性)
  • 最終的に内頸静脈のランチシ徴候を伴った心不全と判断

🔗 思考プロセス
  • 心音は頭で考えてもダメだと思っています.歌謡曲のイントロクイズと同様に,耳にした瞬間に反応できるまで聴き込むべきです(英語耳ならぬ心音耳👂の作成)
  • 一方,頸静脈に関しては本例の様にじっくり考える方がいいと思います(個人的な経験論).これは聴覚に比べて,視覚はあまりにも多くの情報を含むからです.
  • ただし匠の業を極めたフィジカルの達人であれば一見で判断できるかもしれませんが...😅 いずれにしても百聞は一見に如かず:多くの動画に接してください.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-03-01

SDGs 3 持続可能な開発目標3

  • Sustainable Development Goals(SDGs)は2015年に国連総会で採択された持続可能な開発のための17の国際目標
(パブリックドメイン)

  • その中でも医療に関してはSDGs 3(持続可能な開発目標3)➜ ”すべての人に健康と福祉を/Good Health and Well-Being” ➜「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」 
(パブリックドメイン)

🙋 目標3を構成する13個のターゲット
  • 3.1 ➜ 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
  • 3.2 ➜ すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生 1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
  • 3.3 ➜ 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
  • 3.4 ➜ 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
  • 3.5 ➜ 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
  • 3.6 ➜ 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
  • 3.7 ➜ 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
  • 3.8 ➜ すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・ カバレッジ(UHC)を達成する。
  • 3.9 ➜ 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
  • 3.a ➜ すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
  • 3.b ➜ 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS 協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定 (TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
  • 3.c ➜ 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
  • 3.d ➜ すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。


(投稿者 川崎)