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2017-07-31

Trousseau症候群 トルーソー症候群

悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により血栓症を生じた病態で腫瘍随伴症候群の一つ
狭義では悪性腫瘍に伴い生じた血栓性静脈炎あるいは脳卒中(※トルソーとも呼ぶ)

仏医師 Armand Trousseau が報告した癌と血栓性静脈炎の関連に由来
 (Clinique Médicale de l'Hotel-Dieu de Paris. Vol.3. 2nd ed. 1865:654–712)
発表2年後の1867年にTrousseau自身も胃癌による同症候群を発症し死亡

治療
原疾患の治療+ヘパリン(必要なら慢性期はヘパリンカルシウムの皮下注)
ワルファリンも用いられれるが効果が少し不確実(将来的にはNOACに期待)

(投稿者 川崎)

2017-07-30

卵円孔開存

胎児は肺呼吸をしていないため心房中隔の孔である卵円孔を介して血液が循環している
出生後に左房圧が上昇するため卵円孔は閉鎖するが,約2割では完全閉鎖には至らない
咳嗽などで右房圧が一過性に上昇すると右⇒左シャントを生じる(通常は臨床上無害)


自験例:右房の生食バブルが咳嗽時に左房へ大量移動している(経食道心エコー図)

卵円孔開存は稀に奇異性脳塞栓症の原因になる(例:深部静脈血栓による脳梗塞)
また卵円孔開存は片頭痛と関連することが知られている(保険適応外で治療可能

(投稿者 川崎)

白血球破砕血管炎 Leukocytoclastic vasculitis

病理学的診断名で血管壁フィブリノイド壊死+血管壁好中球浸潤+赤血球血管外漏出を伴う病態
全身のさまざまな血管に炎症が起こり血管の流れが障害される(具体的な疾患例は以下)

1. 大型血管炎
・巨細胞性血管炎(側頭動脈炎)

2. 中型血管炎
・結節性多発動脈炎

3. 小型血管炎
・多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)
・チャーグ・ストラウス症候群(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
・顕微鏡的多発血管炎
・IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
・過敏性血管炎(皮膚白血球破砕性血管炎)

(投稿者 川崎)

2017-07-29

脱水と言う前に…

脱水を疑ったらdehydrationとvolume depletionを鑑別しておきたい
  • dehydration⇒細胞内脱水⇒高張性脱水(高Na血症)
  • volume depletion⇒細胞外液量の減少⇒等張性あるいは低張性脱水(低Na血症)

医学用語である「脱水」は両者を漠然と含んだ大雑把な言葉である
両者を区別する習慣をつけると選択すべき点滴のイメージがしやすい
 

(投稿者 川崎)

GAS-GBS-GGS

臨床で注意すべきβ溶血性の連鎖球菌(グラム陽性球菌)
  • GAS=Group A Streptococcus=S.ピオゲネス=化膿レンサ球菌
  • GBS=Group B Streptococcus=S.アガラクティエ
  • GGS=Group G Streptococcus=S.ディスガテクティアエ亜種エクイシミリス(SDSE)など

いずれも劇症型溶血性レンサ球菌感染症を生じうる(β溶血性レンサ球菌感染症例の疫学
一般にβ溶血性(=完全溶血)の溶連菌は強い病原性を有する
ただしα溶血性でありながら強い病原性を有する肺炎球菌にも要注意

(投稿者 川崎)

2017-07-28

熱中症 vs 熱射病

熱中症重症度分類のⅢ度が熱射病(臨床症状からの分類)
  • 熱中症Ⅰ度=熱痙攣=めまい,立ちくらみ,筋痙攣=JCS 0
  • 熱中症Ⅱ度=熱疲労=頭痛,嘔吐.判断力低下=JCS ≦1
  • 熱中症Ⅲ度=熱射病=意識障害,痙攣,DIC=JCS ≧2
(投稿者 川崎)

2017-07-27

グラム染色クイズ

副鼻腔の感染症が疑われる子供の鼻腔拭い液のグラム染色

😶 本例はグラム染色像(写真が少しピンボケで双球菌が不明瞭であるが・・・)から菌種の推定が可能であったが,通常存在する莢膜を認めない点が通常株とは少し異なった.その理由にムコイド産生株であったことが考えられた.

(投稿者 川崎)

ティーツェ症候群 Tietze's syndrome

肋骨と胸骨との関節である肋軟骨に無菌性の炎症性疾患が生じた病態
ドイツの外科医Alexander Tietzeが報告(Bert. klin. Wschr. 1921;58:829)
  • 症状 胸痛と腫脹(第二あるいは第三肋軟骨に多い),肩痛,上腕痛
  • 疫学 稀,20~30代に多い,男女差はない
  • 原因 不明
  • 治療 安静,NSAIDs,重症ならステロイド局注
  • 予後 良好(ただし痛みが数週間~数カ月続く)

肋軟骨炎(40歳以上の女性に多く激しい運動やリウマチと関連しやすい)とは異なる病態と考えられている

(投稿者 川崎)

2017-07-26

マスター負荷

心筋虚血の有無を判定するための簡便な運動負荷心電図検査法
年齢・性・体重から算出された一定のリズムで2段階段を昇降する
米国の医師Arthur M. Masterが開発(Am Heart J.1935;10:495-510

方法
  • 標準12誘導の心電図を負荷前,直後,3分後に記録(必要なら5分後,7分後~回復まで)
  • 負荷前に血圧を測定し管理されていない高血圧の有無をチェックすることが望ましい

種類
  • シングルマスター:1分30秒
  • ダブルマスター:3分間 ← 通常はコチラ
  • トリプルマスター:4分30秒

判定(75%以上の冠動脈狭窄に対するダブルマスターの診断能:JSC2010ガイドラインより)
  • 0.5mmのST低下=感度86%・特異度73% ← コチラをお薦め
  • 1.0mmのST低下=感度77%・特異度83%

(投稿者 川崎)

APSの診断

APS=anti-phospholipid antibody syndrome=抗リン脂質抗体症候群
  • 半数は原発性で,残り半数は全身性エリテマトーデス(SLE)に合併した続発性
  • 血栓が静脈系(下肢静脈血栓や肺血栓)だけでなく動脈系(脳梗塞)にも生じる
  • 妊娠合併症として習慣流産(最多),子宮内胎児発育不全,妊娠高血圧症など


(投稿者 川崎)

PMRからRAへ

リウマチ性多発筋痛症polymyalgia rheumatica (PMR) から関節リウマチrheumatoid arthritis (RA) へ移行する症例が少なからず存在する

特に60歳以上で発症したRA患者=高齢発症関節リウマチelderly-onset RA (EORA) では20-40%の患者では急性発症・発熱・大関節から発症・筋痛症状などを認めPMRと類似する


関連投稿 👽 RS3PEと悪性疾患

(投稿者 川崎)

2017-07-25

第23回 松下バイリンガルカンファレンスより

発音
  • 肝硬変 cirrhosis 【siróusis】 シィロォゥシィス 音声はコチラ
  • カテーテル catheter 【kǽθətər】 カァサァタァ 音声はコチラ
  • セフトリアキソン ceftriaxone 【参考SEF-trye-AX-one】 セフゥトゥライアキスン 音声はコチラ
表現
  • その危険因子には~があります. ⇒ The risk factors include (or are)...
  • 尿は淡赤色でした. ⇒ The urine was light red.

(投稿者 川崎)

誤嚥性肺炎とグラム染色

喀痰でグラム染色を行うときには以下の二分類を考慮する必要あり

ただし誤嚥性肺炎が疑われる症例ではゲックラー分類にはこだわる必要はない
扁平上皮細胞数が多いということ(1~3群)は誤嚥を生じていることを示唆する

(投稿者 川崎)

2017-07-24

高カリウム血症の治療


・即効性は塩化カルシウム(カルチコール1A10mL)の緩徐投与(ジギタリス投与中は禁忌:心筋の過収縮)
・重炭酸ナトリウム(メイロン)はアシドーシスが目立つ場合を除き積極的に投与しないという意見あり

(投稿者 川崎)

腹痛クイズ

「繰り返す腹痛」で通常の検査ではなかなか診断がつかないときに思い出したい三疾患といえば?

ポリフィリア ポルフィリン 家族性地中海熱 副腎不全
(投稿者 川崎)

2017-07-23

松下金曜会 「歩行異常」

歩行異常のレッドフラッグと考慮すること
  1. 静注薬の使用・最近の細菌感染・発熱 ⇒ 硬膜外膿瘍や脊髄膿瘍
  2. 癌の既往歴・失禁・サドルブロック麻痺 ⇒ 転移性悪性疾患
  3. 心房細動・脳卒中の既往・視力喪失・脱力 ⇒ 脳卒中
  4. 失禁と思考力の低下(家族に質問) ⇒ 正常圧水頭症
  5. 胸痛,高血圧 ⇒ 脊髄虚血をもたらす大動脈解離
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-07-22

自宅浴槽で溺れた症例

口腔内から吸引された多量の水をグラム染色(ADLは自立していた症例で抗菌薬の先行投与なし)

周囲にムコイドを伴うグラム陰性の細長い小型桿菌 ⇒ 培養で緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa

緑膿菌はブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌であるため水回りに分布していることが少なくない
院内感染を生じた緑膿菌は何らかの耐性を有していることが多いが,本例では耐性はなかった

(投稿者 川崎)

2017-07-21

SOFAスコア

SOFA=sequential organ failure assessment
敗血症による臓器障害の程度を判定する方法

SOFAスコアが基礎点(ほとんどの症例で0点)より2点以上増加で敗血症と診断⇒死亡率10%以上

ERではquick SOFA(qSOFA)スコアが有用
  • 低血圧(収縮期血圧100mmHg以下)
  • 頻呼吸(呼吸数22回以上)
  • 意識障害(GCS15未満/つまり満点以外)
qSOFA2点以上なら敗血症と考えSOFAスコアを計算
qSOFA2点以上で1点以下より死亡率3倍から14倍

お薦め ⇒ 「敗血症・新定義とクライテリア!! 西伊豆早朝カンファランス」

(投稿者 川崎)

カルシフィラキシス Calciphylaxis

慢性腎臓病症例に生じた周囲に有痛性紫斑を伴う皮膚の有痛性難治性潰瘍
カルシフィラキシーやcalcific uremic arteriolopathyなどと呼ばれることもある
  1. 症状 有痛性の紫斑に続く難治性の皮膚潰瘍
  2. 部位 四肢や躯幹,手指,足趾など(上肢は稀)
  3. 病因 細動脈石灰化と多発性微小塞栓の疑い
  4. 頻度 透析患者人口10万人あたり3-4人/年
  5. 治療 ステロイド外用,副甲状腺機能亢進症の治療,細菌感染時は抗生物質
  6. 予後 感染により敗血症を併発することが多く,その死亡率は50%

参考ページ

(投稿者 川崎)

2017-07-20

醤油と高Na血症

症例報告 Furukawa S, et al. Fatal hypernatremia due to drinking a large quantity of shoyu (Japanese soy sauce). J Forensic Leg Med. 2011;18:91-2 より

  • 10年来うつ病の55歳女性が醤油700 ml(塩分75 g)を飲んだ後に意識障害をきたしERに搬入
  • GCS 6,血圧 100/40 mmHg,呼吸数 40 breaths/min,心拍数 128 beats/min,体温 36.3°C
  • 血液検査:Na 187 mmol/L, Cl >150 mmol/L, P 4.5 mmol/L, pH 7.101, bicarbonate 6.6 mmol/L
  • 人工呼吸管理を含む集中治療を行ったが来院12時間後に死亡/剖検による最終死因は肺うっ血

(投稿者 川崎)

失語

大脳半球の言語領域の損傷によって生じた言語を使用する能力の障害
  • ブローカ野の障害⇒運動性失語=言葉を理解できるが文法的に複雑な文章が作れない
  • ウェルニッケ野の障害⇒感覚性失語=言葉を理解できず発語は流暢だが無意味な内容

ブローカ野とウェルニッケ野を共に含む全失語や両者の連絡が絶たれた伝導失語の病態もある



(Public domain)

※言語領域は右利きでは左半球95〜96%,右半球4〜5%にあり,左利きでは左半球61〜70%,右半球15〜19%,両半球15〜20%にある(紀要 2000;19:119-124

(投稿者 川崎)

2017-07-19

グラム染色クイズ

尿路系の感染症が疑われる症例の尿グラム染色



😶 酵母様真菌は大きいため好中球による細菌の貪食像とは少し異なる

(投稿者 川崎)

胃カメラ用語 NBIとRAC

NBI(エヌビーアイ)=narrow band imaging=狭帯域光観察
ヘモグロビンが吸収しやすい青色光と緑色光を用いて観察する手法
毛細血管が詳細に観察できるため早期胃癌の検出に有用である
(左,通常;右,NBI.OLYMPUS 内視鏡について より引用)

RAC(ラック)=regular arrangement of collecting venules
胃表面に規則的に配列して見える集合細静脈(遠景で多数の点,近景で鳥の足様)
同所見を認めれば高い確率(概ね95%の正診率)でピロリ感染は陰性と考えられる
(A,ラック陰性;B,ラック陽性.Korean J Gastroenterol 2011;58:252-257 より引用)

(投稿者 川崎)

2017-07-18

グラム染色クイズ

尿路感染による敗血症が疑われる症例の尿グラム染色

おまけ 本例の血液培養からは大腸菌のみが検出された

(投稿者 川崎)

PBL形式

PBL=problem based learningの略
日本語名は課題解決型学習あるいは問題解決学習法(problem solving learning)

能動的学習として自ら問題を発見し解決していく能力を取得するのに有効は方法
 例 「腹痛と発熱で来院した若年女性」を参加者で議論 ⇒ 問題点を指摘し解決法を見出す

受動的学習(知識の丸暗記)である系統学的学習に対比すると考えられる用語

(投稿者 川崎)

2017-07-17

フルニエ壊疽 Fournier's gangrene

陰部や肛門周囲に生じた壊疽性筋膜炎
壊疽の進行が早く(最悪1時間に1インチ),予後不良(死亡率40%)


原因 肛門周囲膿瘍,尿路感染,外傷,医原性など
症状 発赤,腫脹,発熱,疼痛,水疱,出血,壊死,ショックほか
細菌 好気と嫌気の混合感染が多い(特に溶血性レンサ球菌を含む)
危険 糖尿病,免疫低下,長期臥床の高齢者,担癌,アルコール性肝障害他
治療 早期の外科的デブリードマン+広域の抗菌薬,高気圧酸素治療

名称はフランスの性病科医Jean Alfred Fournier(1832~1914)による5例の報告(1883年)に由来

(投稿者 川崎)

2017-07-16

上腸間膜動脈症候群 & ナットクラッカー症候群

Superior mesenteric artery syndrome (SMA症候群)
十二指腸水平脚が上腸間膜動脈と大動脈で圧迫⇒若い痩せた女性に多く食後の腹痛や腹部膨満感

Nutcracker syndrome (別名,クルミ割り現象)
左腎静脈が下大静脈に合流する手前で上腸間膜動脈と大動脈で圧迫⇒肉眼的血尿や片腹部痛


(投稿者 川崎)

2017-07-15

松下金曜会 「耳鳴」

耳鳴のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 一時的な耳鳴,回転性めまい,悪心,聴力障害 ⇒ メニエール病
  2. 拍動性耳鳴 ⇒ 血管腫瘍,動静脈狭窄,動脈瘤,シャント
  3. 両側で進行性の伝音難聴と耳鳴 ⇒ 耳硬化症(常染色体優性遺伝)
  4. 一側性で進行する聴力障害 ⇒ 聴神経腫(第Ⅷ脳神経腫)
  5. 焦点神経症状 ⇒ 脳卒中,頭蓋内腫瘍,多発性硬化症
  6. 体重減少や発熱,疲労,頭痛 ⇒ 頭蓋内腫瘍,巨細胞性動脈炎
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

メニエル (投稿者 川崎)

2017-07-14

熱中症

暑くなってきたので再確認の意味を込めて…


(投稿者 川崎)

血培からグラム陰性”らせん状”桿菌

カンピロバクター(特にC.ジェジュニやC.コリ)とヘリコバクター・ピロリが有名
他にビブリオ属(コレラ菌や腸炎ビブリオなど),スピロヘータ(梅毒やライム病など)

らせん状桿菌が血培から検出されることは稀であるが,カンピロバクターによる敗血症の報告は散見される.リスクファクターは末期腎不全,肝硬変,免疫不全,悪性疾患,HIV感染などで,胃腸症状を伴わない症例が半数以上である.(Clin Microbiol Infect. 2010;16:57-61Clin Infect Dis. 2008;47:790-6

最近ではヘリコバクター・シネディ(H. cinaedi)による蜂窩織炎や腸管のバクテリアトランスロケーションによる敗血症も少なくない(北大病院感染対策マニュアル ヘリコバクター・シネディ H28.5

(投稿者 川崎)

2017-07-13

低リン血症

血清P濃度が2.5mg/dl未満の状態(基準値2.5〜4.5mg/dl)
リンは80%は骨に分布,その他は筋肉や各臓器内で,細胞外液中は僅か0.1%

原因(各病態の合併あり)

具体的疾患
  • refeeding syndrome(利用亢進による細胞内への移動)
  • 下痢やアルミ製剤投与(腸管での吸収低下)
  • P含有量が少ない中心静脈栄養(摂取低下)
  • 副甲状腺機能亢進症(Pの骨吸収増加+尿排泄増加)
  • 活性型ビタミンD不足(腸管の吸収低下+副甲状腺機能亢進)
  • fibroblast growth factor 23増加(腎の再吸収低下)
  • 細胞内pH上昇による解糖系の亢進(Pが細胞内に移動)
  • 呼吸性アルカローシス(Pが細胞内に移動)
  • 白血病(急速な細胞増殖=利用亢進による細胞内への移動)
  • レジオネラ肺炎(原因は不明?)


(投稿者 川崎)

コロトコフ音 Korotkoff sounds

動脈を圧迫したときに発生する音および雑音で聴診法による血圧測定時に使用
1905年にロシア軍医ニコライ・コロトコフが発見 Военно-мед. Акад. 1905;9:365

コロトコフ音は5つの時相に分類される

  • 第1相~音が聞こえ始める⇒開始点をSwan第1点=収縮期血圧
  • 第2相~音が雑音に変化する(ザーザー)⇒開始点をSwan第2点
  • 第3相~雑音が再び鋭い音になる(トントン)⇒開始点をSwan第3点
  • 第4相~音が急速に減少する⇒開始点をSwan第4点
  • 第5相~音が消失する⇒開始点をSwan第5点=拡張期血圧

(投稿者 川崎)

2017-07-12

HACEK群 (ハシェックまたはハチェック)

口腔内~上咽頭に常在するグラム陰性桿菌のグループで心内膜炎の原因菌(全体の1-5%)となる

  • Haemophilus属(パラインフルエンザ菌,H. aphrophilus,およびH. paraphrophilus)
  • Aggregatibacter(以前はActinobacillus) actinomycetemcomitans:
  • Cardiobacterium hominis
  • Eikenella corrodens
  • Kingella kingae

 特徴 👀 
病原性は低いが,栄養要求性が高く発育が遅いため血液培養陰性と判断を誤ることがある
セフトリアキソンまたはセフォタキシムを4~6 週間投与(日本循環器学会ガイドライン
Streptococcus viridans,Streptococus bovisとともに感染性心内膜炎に典型的な病原微生物
HACEK群による感染性心内膜炎は他の微生物と比較して心不全や死亡に至る頻度は少ない

(投稿者 川崎)

2017-07-11

離人症 Depersonalization

自分が自分の心や体と無関係に感じたり,自身の観察者だと感じたりする状態
単独発症は稀で,うつ病や統合失調症などの精神疾患,薬物乱用などを伴う
10~40歳の女性に多く,突然発現し長期にわたって症状が継続することが多い

具体的な訴えの例
  • 座っている自分を上から見ているような感覚
  • 鉛筆を持つ手が自分の手ではないような感覚
  • 家族との会話がドラマを見ているような感覚
  • 自分の手足が通常よりも大きく思われる感覚
  • 触れている物と自分の手の境が分からない感覚

(投稿者 川崎)

2017-07-10

猩紅熱 しょうこうねつ

A群β溶血性連鎖球菌(GAS)の外毒素に対する過剰反応
発熱や咽頭痛に加えて全身の紅色発疹やいちご舌を生じる

小児に多いが稀に成人例もあり/ペニシリン系の抗菌薬で数日で改善
英名はscarlet fever/scarlet= 緋(ひ)色, 深紅色

(投稿者 川崎)

2017-07-09

めまいとアタP

壮年男性が回転性めまいを訴えERを受診 ⇒ 中枢性は否定的で良性発作性頭位めまい症BPPVの疑い
メトクロプラミド(プリンペラン)や炭酸水素ナトリウム(メイロン)静注/点滴を行ったが全く無効であった

ベットから起き上がることもできなかったため入院を考慮していたが,ヒドロキシジン塩酸塩(アタラックスP)50㎎の点滴後に症状が劇的に改善して独歩で帰宅することができた

アタPのDI上の効能・効果は「蕁麻疹,皮膚疾患に伴う掻痒,神経症における不安・緊張・抑うつ」
ただし抗ヒスタミン作用と制吐作用を有するため急性めまいに用いることある(日耳鼻 2016;119:1194-1200

(投稿者 川崎)

前房蓄膿 hypopyon

角膜と水晶体の間にある空間(前房)の底部に膿が貯留した病態

前房蓄膿は炎症で出現した白血球の沈殿でベーチェット病に比較的特徴的な所見
hypopyonの発音は【haipóupiɑ`n / ハイポオゥピアン】 実際の音声 ⇒ コチラ

(投稿者 川崎)

2017-07-08

松下金曜会 「急性消化管出血」

急性消化管出血のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 持続性の吐血・血性排便,不安定なバイタルサイン ⇒ 食道あるいは胃静脈瘤の出血,消化性潰瘍,大動脈腸瘻,デュラフォイ病変
  2. 経鼻胃管洗浄中に血液を認めない持続性の血便排泄 ⇒ 憩室症,血管拡張症,NSAIDs潰瘍による下部消化管出血,バイタルが不安定なら十二指腸潰瘍または大動脈腸瘻
  3. 出血後に腹痛 ⇒ 腸間膜または結腸の虚血
  4. 大動脈再建の手術歴 ⇒ 大動脈腸瘻
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)

2017-07-07

両心室の劇症型心筋炎

当院の初期研修医(当時)の先生が作成された論文が出版されました
両心室に心筋炎が及んだ症例の病理像はありそうでほとんどありません

Yuki M, Kawasaki T, Honda S, Sakai C, Kamitani T, Kawabata K. Biventricular fulminant myocarditis: A case report. Open J Clin Med Case Rep. 2017; 1268

(投稿者 川崎)

自己炎症症候群 Autoinflammatory syndromes

自然免疫異常が炎症サイトカインを惹起し臓器障害に至る病態(獲得免疫の異常による自己免疫疾患とは異なる
三大項目:原因不明の炎症所見あり+高力価の自己抗体や自己反応性T細胞なし+先天的な自然免疫の異常あり
マクロファージや好中球,NK細胞が責任細胞と考えられ,皮膚や関節,消化管,漿膜,中枢神経などに症状が出現
英国リーズ大学の免疫学者McDermottが1999年に提唱した観念 (McDermott MF, et al. Cell. 1999;97:133-144

疾患例
  • 家族性地中海熱(FMF)
  • 高IgD症候群
  • TNF受容体関連周期熱症候群(TRAPS)
  • クリオピリン関連周期熱症候群
  • 成人発症型スティル病
  • 若年発症サルコイドーシス
  • クローン病
  • PAPA(化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・座瘡)症候群
  • SAPHO症候群
  • 遺伝性血管性浮腫(HAE/C1インヒビター欠損症)
  • ベーチェット病
  • 痛風/偽痛風

(投稿者 川崎)

2017-07-06

非肝臓性の高アンモニア血症

アンモニア産生源と代謝経路

肝機能は正常かつシャントがなくても,ウレアーゼ産生菌の感染に伴う尿素分解亢進による高アンモニア血症が生じ得る(上図における右下のボックス
特に腸内細菌科のProteus属による尿路感染症の症例が多いようである(日呼吸会誌.2000;38:117-121

詳しくまとまっているページ ⇒ 感染症・リウマチ内科のメモ 聖隷三方原病院 勤務医ブログ

(投稿者 川崎)

ロンベルグ試験 Romberg's test

失調が感覚性(位置覚の消失/脊髄後索の障害)に起因するか否かを判定する
ベルリンの臨床医Moritz Heinrich Romberg(1795-1873)が1846年の自著で報告

Public domain

  • 方法 足をそろえ直立保持し,その後に閉眼するよう依頼
  • 判定 倒れれば陽性(検者が必ず支えられるように)
  • 解釈 感覚性失調(位置覚の消失による失調)を示唆
  • 疾患 亜急性脊髄連合変性症,脊髄癆,糖尿病性ニューロパチーなど

注意すべきことは本試験は小脳失調を判定するものではない.小脳性運動失調では開眼していても直立保持ができない(もちろん閉眼時も不能).開眼時に直立できなければロンベルグ徴候は陰性である.

(投稿者 川崎)

高Ca血症の心電図パート2(右胸痛)


V1-3誘導で僅かにST部分が上昇しているように見える
本症例も高Ca血症(補正血清カルシウム値14.1mg/dl)
最終的に肺癌による骨転移(胸痛)+高Ca血症と診断

(投稿者 川崎)

2017-07-05

高カルシウム血症と心電図(嘔吐で来院)


少しST部分が上昇しているように見える(特にV2-V4誘導)
心エコー図は正常で,血清Ca濃度が15.1mg/dlと判明

カルシウムイオンは心筋細胞の活動電位第2相に作用する
高Ca血症ではQT間隔が短縮してST上昇様に見えることがある

(投稿者 川崎)

忘れてはいけない劇症型の感染症

  1. 脾摘後の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)による敗血症 ⇒ 侵襲性肺炎球菌感染症
  2. A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)による壊死性筋膜炎 ⇒ 人食いバクテリア
(投稿者 川崎)

2017-07-04

クールボアジェ徴候 Courvoisier sign

定義 腹部触診で無痛性の胆嚢腫大を触知すると陽性
機序 下流の胆管閉鎖により胆嚢内に胆汁が蓄積する
疾患 総胆管癌,乳頭部癌,膵頭部癌など(結石では稀)

復習
肝内胆管 ⇒ 総肝管(肝臓外) ⇒ 総胆管(胆嚢管が合流後) ⇒ 共通管(主膵管の合流後) ⇒ オッディ括約筋を経て十二指腸へ開口

(投稿者 川崎)

Evans症候群

エヴァンス症候群=自己免疫性溶血性貧血(AIHA)+特発性血小板減少性紫斑病(ITP
その頻度はAIHAまたはITP症例の0.8%~3.7%(Br J Haematol 2005;132:125-137

AIHA=autoimmune hemolytic anemia ⇒ 難病センターのページ AIHA
  • 原因 赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体
  • 誘引 感染,免疫不全,薬剤,腫瘍,寒冷曝露など
  • 症状 溶血性貧血,発熱,黄疸,レイノー現象,腹痛など
  • 治療 副腎皮質ステロイド薬,摘脾,免疫抑制薬

ITP=idiopathic thrombocytopenic purpura ⇒ 難病センターのページ ITP
  • 原因 血小板膜蛋白に対する自己抗体の発現
  • 誘引 成人では不明が多い,小児ではウイルス感染や予防接種
  • 症状 無症状~歯肉出血,鼻出血,下血,血尿など
  • 治療 ピロリの除菌+副腎皮質ステロイド,脾摘など

(投稿者 川崎)

2017-07-03

Leptospirosis レプトスピラ症

主に病原性レプトスピラ(スピロヘータ目のグラム陰性菌)の感染による人獣共通感染症
自然宿主はネズミなどの野生動物で,排泄物を介して水や土壌から経口・経皮的に感染
中南米や東南アジア(特にタイ)に多く,ヒトからヒトへの感染は生じないと考えられている

  • 潜伏期間は2~21日で,自覚症状は発熱・悪寒・筋肉痛・結膜充血
  • 重症型はワイル病(Weil's disease) で黄疸や出血傾向が出現
  • 診断は血液・尿・髄液から病原体の分離あるいはPCR,血清の抗体測定
  • 治療にはペニシリン系またはテトラサイクリン系の抗生剤を投与する

NEJMに掲載された典型的例 ⇒ Spiraling Out of Control. N Engl J Med 2017;376:2183-8

(投稿者 川崎)

2017-07-02

せん妄 Delirium

意識障害の一つで,意識に加えて注意や知覚なども障害された状態
死亡率上昇や入院期間延長,医療費増大と関連するため加療が必要

治療:抗精神薬
商品名(一般名)長所短所
リスパダール(リスペリドン)経口投与できる液体で用途が広い慢性腎臓病では慎重投与
セロクエル(クエチアピン)内服で半減期が短い(3~6時間)糖尿病には禁忌
セレネース(ハロペリドール)静注で腎不全や糖尿でも投与可能半減期が長い(>24時間)
せん妄 不眠 睡眠薬 
補助剤として副作用の少ない抑肝散(漢方),ベルソムラ(オレキシン受容体拮抗薬:非ベンゾジアゼピン系であるが効果は同等),ロゼレム(メラトニン受容体作動薬:非ベンゾジアゼピン系で体内時計を調整,ただし効果は少し弱め)などと組み合わせて対応したい

(投稿者 川崎)

2017-07-01

松下金曜会 「炎症性皮膚疾患(発疹)」

炎症性皮膚疾患(発疹)のレッドフラッグと重篤な原因
  1. 皮膚の痛み ⇒ スティーブンス・ジョンソン症候群,中毒性皮膚壊死症,壊死性筋膜炎,カルシフィラキシー
  2. 融合性紅斑(皮膚全体が明るい赤色) ⇒ トキシックショック症候群,中毒性皮膚壊死症,好酸球増加および全身症状を伴う薬疹
  3. 口唇の腫れ,嚥下困難,手掌や足底のそう痒 ⇒ アナフィラキシー
  4. 関節痛 ⇒ 全身性エリトマトーデス,播種性淋菌感染,膵皮下脂肪炎
  5. 触知可能な紫斑 ⇒ 白血球破砕血管炎,ロッキー山紅斑熱
参考書籍:「聞く技術 答えは患者の中にある」

(投稿者 川崎)