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2025-09-24

MAC抗体 (抗酸菌抗体定性)

🍎 肺MAC症(MAC: Mycobacterium avium complex)
  • 慢性的に咳嗽や喀痰などの呼吸器症状を生じ中年以降の女性に多い
  • 胸部CTで中葉舌区に気管支拡張や小葉中心性粒状陰影を認めやすい
  • MACは環境常在菌なので喀痰から検出しても肺MAC症と確定されず
  • 画像検査や症状などを含め総合的に診断されることが一般的である
  • 喀痰から菌が検出できない場合に補助診断として血液中のMAC抗体
  • 抗体が0.7未満なら陰性:血清0.5mL,3~5日必要,144点(SRL



🍏 MACに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-23

チップ検出法 Tip Detection Method

  • 慢性完全閉塞(CTO)に対し冠インターベンション(PCI)で用いる技術
  • 血管内超音波(IVUS)を用いてガイドワイヤー先端を正確に観察・誘導
  • 本邦の岡村篤徳先生らが開発(JACC Cardiovasc Interv 2020;13:74-82
  • 直近のCVID近畿地方会では5演題がTip Detection Methodに関する発表

- Tip Detection Method -

(投稿者 川崎)

2025-09-22

Cabot-Locke murmur カボット・ロック雑音

  • 概要 重症貧血患者に認めることがある拡張早期雑音(大動脈弁逆流症と異なり減衰しない)
  • 由来 米国の医師 Cabot RC と Locke EA の報告(Bull Johns Hopkins Hosp 1903;14:115-20
  • 性状 胸骨左縁で最も大きく聴取され貧血の改善に伴い消失(弁膜症がないことが前提条件)


😐 独り言
  • 貧血や甲状腺機能亢進症、発熱時には心拍出量の増加による機能性雑音が生じることはよく知られています。しかし基本的には収縮期の駆出性雑音で、Cabot-Locke murmurのような拡張期雑音は稀と思われます(金沢大学十全医学会雑誌 1964;70:338-53)。
  • カボット・ロック雑音の原因は不明だそうですが、興味があります。Dock's murmur(ドック雑音)と同様に実際の音や心音図も見つけるころができませんでした。日常臨床で貧血を経験することは稀ではないため、何とか記録できるように努力してみます。

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(投稿者 川崎)

2025-09-21

サルコイドーシスの眼病変:首飾り状硝子体混濁

👤 サルコイドーシス vs 眼
  • 眼は肺に次いで2番目に病変の発生率が高い臓器
  • 最多はぶどう膜炎でサルコイドーシスの30-60%
  • 逆にぶどう膜炎例の10.6%がサルコイドーシス
  • 眼病変の好発は20-30歳台と50-60歳台の二峰性

👥 ぶどう膜炎
  • 前眼部:豚脂様角膜後面沈着物や虹彩結節など
  • 隅角:隅角結節やテント状周辺虹彩前癒着など
  • 硝子体:雪玉状や数珠状,首飾り状硝子体混濁
  • 眼底:網膜血管周囲炎や蠟様網脈絡膜滲出斑他


※上記6項目で2項目以上ならぶどう膜炎の原因としてサルコイドーシスを強く疑う


🚑 サルコイドーシスに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-20

レオポルド触診法 Leopold's Maneuvers

  • 触診で胎位や胎向,胎勢などを確認する方法(下図)
  • 独の産婦人科医 CG Leopold が1894年に開発(
  • 特別な器具は不要で現在でも妊娠健診時に広く活用

- レオポルド触診法の実際 -
  1. 両手掌をわずかに曲げて小指側を子宮底に当て子宮底の高さ、胎児の状態を観察
  2. 子宮底より両手を下方に移動し、左右の手を交互に動かし胎位、胎向、胎動、羊水量などを観察
  3. 右手の母指とほかの4指で恥骨結合上の胎児に触れ胎児の先進部分を確認
  4. 両手掌をわずかに曲げて左右の下腹部に当て、骨盤入口面方向へ静かに圧入し胎児の先進部、移動性、骨盤内侵入状況を観察

(投稿者 川崎)

2025-09-19

Dock's murmur ドック雑音

  • 概要 左前下行枝に高度の狭窄がある場合に生じる拡張期雑音(特に拡張早期と拡張後期)
  • 由来 アメリカの心臓専門医 William Dock (1898-1990) の初報(Am J Med 1967;42:617-9
  • 性状 第三肋間で胸骨中央から4cm左側に限局して座位時に心音図で記録することができる


- 音響分析結果と対応する血管造影 -

😉 呟き
  • 当院では虚血性心疾患でも多くの心音図を記録してきましたが、Dock's murmurを思わせる不思議な雑音(拡張早期と拡張後期にアクセント)を経験したことはありません。これは方法論の問題?(座位かつ特殊な部位での記録が必要)
  • ウェブ上にきれいな音ファイルあるいは心音図はアップないようです。個人的にも興味があるので、なんとか記録できるよう挑戦してみます。心音図でなければ記録できないという記載も見かけますが…記録されるなら聴取できるのでは⁉

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(投稿者 川崎)

2025-09-18

今週の一枚 🎯

朝の歩行時に胸痛が出現するが15分程度で改善しその後は何ともない症例

💣 重症の冠動脈疾患
  • 本症例の心電図と心エコー図は正常
  • しかし明瞭なⅣ音(第4音)を聴取
  • 病歴からも冠動脈疾患が示唆される
  • 翌日入院して冠動脈造影 CAG を実施
  • 右冠動脈には有意な狭窄なし(左図)
  • 左冠動脈は主幹部に高度の狭窄あり!
  • 4F(直径1.3 mm)のカテがウェッジ
  • 同日,転院し準緊急バイパス術を施行

😑 独り言
  • 本例では毎朝歩行時に症状が出るが,その後は何ともないという点が興味深い.これは通り抜け現象(walk-through phenomenon)あるいはウォームアップ狭心症(walk-through angina)<ICD-11用語> と呼ばれ,循環器用語集にも掲載されている.
  • 臨床では稀ながら経験し(過去の自験例),重症の冠動脈疾患であることが多い(個人的見解).正確な機序は不明であるが,「心筋虚血時にブラジキニンなどが産生され疼痛が出現→ブラジキニンの強力な血管平滑筋弛緩作用があり血管拡張」など?

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-09-17

The “5-5-5” sign 「5-5-5」徴候

  • 心臓アミロイドーシスの心エコー図で認められるドプラ所見
  • 全ての組織ドップラー(e', a', s')速度が5cm/秒未満の状態
  • ただし病気の初期の段階では診断感度が低い可能性はある
  • 従来のパルスドプラによる拡張障害のGrade II or IIIも有用


 
(投稿者 川崎)

2025-09-16

脊髄刺激療法 Spinal cord stimulation:SCS

  • 硬膜外腔から脊髄に電気刺激を与え疼痛緩和+血流改善
  • 1968年に米メドトロニックが発売(世界で100万人以上)
  • 本邦では1992年に難治性慢性疼痛に対し保険適応で急増
  • 例:脊柱管狭窄症,幻肢痛,帯状疱疹後,バージャー病
  • 患者さん自身で電源のオン・オフや刺激の強さを調整可
  • 機序は下行性抑制系の賦活や上行性脳幹疼痛の抑制など?

 - 電極の留置例とイラスト -


😑 目安
  • ジアテルミ(温熱療法)および磁気共鳴装置(MRI)は禁忌(ただしMRI対応デバイスを使用時は設定変更後に可)
  • 放射線検査は可能,放射線治療は電源オフ後に実施(ただし緊急時は可能).基本的に家電や携帯電話は問題なし


(投稿者 川崎)

2025-09-15

フィジカルクイズ(No. 21 & 22)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-09-14

把握対象疾患

👀 先日のカンファレンスで…
  • カルバペネム耐性緑膿菌(カルバペネマーゼ陰性)の届け出が議論されました.届け出を要する感染症(1類~5類)も更新されているため再度まとめておきます.
  • 届け出を要する耐性菌は下記の赤文字です.ちなみに薬剤耐性緑膿菌感染症は定点把握対象疾患ですが,当院は現在定点医療機関ではないため届け出は不要でした.


👺 全数把握対象疾患(全ての医療機関から報告される疾患)
一類感染症
エボラ出血熱,クリミア・コンゴ出血熱,痘そう(天然痘),南米出血熱,マールブルグ病,ラッサ熱,ペスト

二類感染症
急性灰白髄炎(ポリオ),結核,ジフテリア,重症急性呼吸器症候群(SARS),中東呼吸器症候群(MERS),鳥インフルエンザ(H5N1),鳥インフルエンザ(H7N9)

三類感染症
コレラ,腸管出血性大腸菌感染症,細菌性赤痢,腸チフス・パラチフス

四類感染症
E型肝炎,A型肝炎,エキノコックス症,エムポックス(サル痘),黄熱,オウム病,回帰熱,Q熱,コクシジオイデス症,ジカウイルス感染症,ダニ媒介脳炎,炭疽,つつが虫病,鳥インフルエンザ,ボツリヌス症,マラリア,野兎症,ライム病,リフトバレー熱,類鼻疽,レジオネラ症,ウエストナイル熱,狂犬病,重症熱性血小板減少症候群(SFTS),チクングニア熱,デング熱,日本紅斑熱,日本脳炎,ハンタウイルス肺症候群,ブルセラ症,レプトスピラ症,ロッキー山紅斑熱

五類感染症
アメーバ赤痢,ウイルス性肝炎(A型・E型を除く),カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症,急性脳炎クリプトスポリジウム症,クロイツフェルト・ヤコブ病,劇症型溶血性レンサ球菌感染症,後天性免疫不全症候群(HIV/AIDS),ジアルジア症,侵襲性インフルエンザ菌感染症,侵襲性髄膜炎菌感染症,侵襲性肺炎球菌感染症,先天性風しん症候群(CRS),梅毒,播種性クリプトコックス症,破傷風,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症バンコマイシン耐性腸球菌感染症,百日咳,風しん,麻しん,薬剤耐性アシネトバクター感染症

👹 定点把握対象疾患(定点医療機関<指定医療機関>より報告される疾患)
RSウイルス感染症,咽頭結膜熱(プール熱),A群溶血性レンサ球菌咽頭炎,感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルス等),水痘,手足口病,伝染性紅斑,突発性発しん,ヘルパンギーナ,流行性耳下腺炎,インフルエンザ,新型コロナウイルス感染症,急性呼吸器感染症,急性出血性結膜炎,流行性角結膜炎,クラミジア肺炎(オウム病を除く),細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌を原因として同定された場合を除く),マイコプラズマ肺炎,無菌性髄膜炎,性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマ,淋菌感染症,ペニシリン耐性肺炎球菌感染症メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症薬剤耐性緑膿菌感染症

(投稿者 川崎)

2025-09-13

CTの3段階読影

🚑 救急CTで見逃しを防ぐためにDIRECT研究会などが推奨する読影法
  1. 臨床推論に基づく疾患の検索・否定
  2. チェックリストを利用した重要病態の有無の確認
  3. 「画像推論」に基づく,想定外病態の拾い上げ


 💫 追記
  • 先日のモーニングカンファレンスで当院の(若いがとても優秀な)放射線科の先生は「①疑い,②見落とし,③臓器毎」と説明していました.また「個人的には②から始めている」とも言っておられました.  

(投稿者 川﨑)

2025-09-12

頚静脈波形

  • 頚静脈拍動と中心静脈圧、ドプラ波形の関連を概説する論文(Ther Adv Pulm Crit Care Med 2025 Jul 16;20:29768675251359700)を眼にしました。
  • 頚静脈の波形の分かりやすいイラストがあったのでアップしておきます。なお図の説明文はAIによる自動翻訳を活用(説明文中の引用論文は割愛)

頸静脈拍動(JVP)および頸静脈血流速度(JVFV)の生理学
(A) 心電図(ECG)、心音図(PCG)、および右心房圧(PRA)の時間的関係を示す。PCG の SX は心音を表す。PRA または JVP の上昇波は本文で説明される a波、c波、v波 である。下降波は x下降、x′下降、y下降 と呼ばれる。IC は等容収縮ノッチを示す。灰色で塗られた領域は JVFV を表し、s波(収縮期) および d波(拡張期) を含む。図解は心周期における右心の変化を示し、RA は右心房、RV は右心室を意味する。 (B) JVP の波形記録は19世紀半ばに初めて発表され、12 世紀末から20世紀初頭にかけて Mackenzie によりさらに詳細に発展した。JVP の陽性波は、その解剖学的・生理学的な起源に基づいて命名され、a波は右心房、c波は総頸動脈、v波は右心室 を反映するとされた。Mackenzie はまた、三尖弁逆流症における JVP の病的変化を記載しており、初期には a(心房型) から v(心室型) へと移行することを示した。疾患の初期段階では、顕著な v波 は心房細動(すなわち「心房性」)により生じる。心房収縮が失われることで右心房がうっ血し、右心房圧(PRA)が収縮後期に上昇するため、機能している三尖弁(TV)が心基部方向へ戻る際に高い v波が発生するためである。しかし疾患が進行すると、v波はさらに顕著になり、収縮期の早期に出現するようになる。これは逆流性の血液量が機能不全の三尖弁から逆流するためであり、いわゆる「心室型 v波優位」と呼ばれる。 同様の進行は、肺高血圧患者において Ranganathan と Sivaciyan によって内頸静脈(IJV)ドプラ超音波で記録された JVFV でも報告されており、以下で述べる。(C) JVFV は 装着型ドプラ超音波 によって測定され、これについても以下で記載する。

Sivaciyan と Ranganathan が提唱した頸静脈血流速度(JVFV)の分類システムの模式図
詳細は本文を参照のこと。ここおよび図1において、右心房方向への JVFV は y軸の下向きに、頭部方向への血流速度は y軸の上向きに示されている。 仰臥位では、最上段のパターン(s > d)が正常であり、持続的な逆行性 a波は認められない。大きな逆行性 a波および v波は、単相性拡張期パターン(ここでは表示されていない)で観察されることがある。 逆行性収縮期速度(最下段のパターン)は、臨床的に重要な**三尖弁逆流(TR)**を示す典型的な所見であるが、房室解離において心房収縮が閉じた三尖弁に対して生じる場合にもみられる。この場合、逆行性収縮期速度は不規則である。 略語: RA = 右心房 RV = 右心室 TAPSE = 三尖弁輪収縮期移動量(tricuspid annular plane systolic excursion)

😇 おまけ

上記論文では当院で行った頚静脈の臨床研究を4編も引用してもらいました 😊 謝謝
  1. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Inami S, Shindo A, Shiraishi H, Matoba S. Response of Jugular Venous Pressure to Exercise in Patients With Heart Failure and Its Prognostic Usefulness. Am J Cardiol 2020;125:1524-1528 ➜ 日本語の解説
  2. Shako D, Kawasaki T, Kasai K, Sato Y, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Shiraishi H, Matoba S. Jugular Venous Pressure Response to Inspiration for Risk Assessment of Heart Failure. Am J Cardiol 2022;170:71-75 ➜ 日本語の解説
  3. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Kanehiro C, Yabu S, Shindo A, Matoba S. Jugular Venous Pressure and Kussmaul's Sign as Predictors of Outcome in Heart Failure. Int Heart J 2023;64:1088-1094 ➜ 日本語の解説
  4. Noguchi M, Kasai K, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Kawasaki T. Jugular Venous Response for Risk Stratification in Heart Failure. Cureus 2024;16:e58423 日本語の解説

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(投稿者 川崎)

2025-09-11

今週の一枚 🎯

重症感染症でICUに入院した超高齢者

💙 解説
  • QRS波の後にP波が観察される(V1誘導に注目)
  • よく見るとPがQRS波に少しずつ追いついている
  • 房室解離であるが等頻度房室解離と考えられた
  • 最終的にPがQRSを追い越し通常の伝導が回復

💣 等頻度房室解離(isorhythmic atrioventricular dissociation)
  • P波とQRSにはつながりが無く心室は房室接合部からの刺激で収縮する房室解離のうち,洞結節の興奮発生頻度と房室接合部の興奮発生頻度がほぼ等しい状態
  • 房室解離が出現する原因として,①洞調律が遅くなった状態,②下位中枢の興奮発生機能が亢進した状態,③両方が組み合わされた状態が考えられます(引用
  • 房室解離は可逆性ですが,心房収縮が無効になり血行動態が悪化することがあります.本例でも感染性ショックが遷延 → 炎症の鎮静化に伴い房室解離も消失

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(投稿者 川崎)

2025-09-10

FNH:Focal Nodular Hyperplasia 限局性結節性過形成

  • 特徴 組織学的に正常もしくはほぼ正常に見える肝細胞より構成される結節
  • 病理 中心性瘢痕と放射状に広がる線維性結合織(内部は動脈と胆管の増生)
  • 画像 ドプラで中心→辺縁の車軸状動脈性血管構築(spoke wheel pattern)
  • 疫学 良性肝腫瘍性病変では肝血管腫の次に高頻度で比較的若い女性に多い
  • 原因 局所的な動脈血流の異常に伴う過形成性変化が成因と考えられている
  • 鑑別 肝細胞癌(fibrolamellar含),肝腺腫,血管筋脂肪腫,肝血管腫など


- 健診で発見された肝限局性結節性過形成(FNH)の1例 -



(投稿者 川崎)

2025-09-09

化膿性脊椎炎の起炎菌

台湾の三次医療機関での12年間の検討(計414例)

本邦の二次医療機関での11年の検討(計48例)

⚡ 化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis)の復習
  • 発症は10万人に対し年2~6人(米国)
  • 平均67.8歳で基礎疾患合併59%(本邦)
  • CTガイド下生検およびMRI推奨(米国)
  • 抗菌薬の投与期間は長い(6週間~)
  • 神経的異常所見や脊椎不安定なら手術
  • 最終的に手術に至るのは全体の10~20%
  • ≒Vertebral osteomyelitis(椎体骨髄炎)

参考)J Spine Res 2021;12:4-9,他

🚑 椎体に関する過去の報告 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-08

Gerhardt sign ゲルハルト徴候

  • 大動脈弁逆流で出現する左上腹部の拍動(脾臓の収縮期拍動)
  • 命名はドイツの医師 Carl JAC Gerhardt(1833-1902)に由来
  • ただし脾臓の動脈性拍動の初報は Nicolaes Tulp (1594–1674)
  • ザイラー徴候とも呼ばれている(Am Heart J 1928;3:447-53

 

😐 コメント
  • 上記の動画はローゼンバッハ徴候(大動脈弁逆流による肝拍動)でリンクした動画と同じものです.脈圧の開大(大脈)に伴う肝拍動と脾臓拍動は基本的に同じ現象ですが,ネット上に動画としてはほとんど検索しません.綺麗な動画が記録できたらぜひアップをお願いします(投稿者も努力します) 

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(投稿者 川崎)

2025-09-07

Wickham's Striae ウィッカム線条

  • 扁平苔癬の病変の表面に認める白い線条あるいはドット
  • 典型的には口腔粘膜に出現し,顕微鏡的では過顆粒症
  • 仏の医師 Louis Frédéric Wickham (1861–1913) が初報(

- Wickham線条を伴う口唇炎 -
(a)網状線条,(b)放射状線条,(c)年輪状線条,(d)複数の青灰色の点(矢印)
(投稿者 川崎)

2025-09-06

頸静脈孔 Jugular foramen

  • 頚静脈所見は心不全診療の肝です(関連投稿).よってjugularというキーワードを登録し,関連論文が出版されたらすべてお知らせが入るようPubMedに登録しています.先日,jugular foramenという用語に眼が留まりました.何のことかすぐにイメージできなかったので調べてみました.

💀 頸静脈孔(Jugular foramen)
  • 頸静脈孔は,側頭骨と後頭骨で囲まれてできた孔 (foramen)で,頭蓋内から見るとダンベル型を呈する (図1A).
  • 前方部は神経部 (pars nervosa)と呼ばれ下位脳神経が走り,後方部は静脈部(pars venosa)と呼ばれ頸静脈球が存在
  • 頭蓋外から見ると,外側部は乳様突起,後方部は頸静脈突起 (jugular process),内側部は後頭顆(occipital condyle) で囲まれている(図1B).
🚑 頚静脈 vs 頸静脈コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-05

WAVE 経尿道的水蒸気治療

  • Water Vapor Energyの略で,前立腺肥大に対する低侵襲外科的治療(2022年9月に本邦保険収載).Rezum™システム(ボストン・サイエンティフィック)を用い経尿道的に前立腺の中心領域に専用針で103℃の水蒸気を噴霧し組織を壊死
  • 従来の手術が適切でない症例に対してのみ保険適用:①全身状態不良のため合併症リスクが高い,②抗血小板薬・抗凝固薬内服により術中出血リスクが高い,③高齢もしくは認知機能障害のため術後せん妄,身体機能低下リスクが高い,など
  •  

- Rezum™システム -

🚑 前立腺に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-09-04

今週の一枚 🎯

上腹部痛と動悸を訴えるショックバイタルの超高齢者(認知症あり)


👺 偽性 Smaller SMV sign
  • 通常では上腸間膜静脈(SMV)が上腸間膜動脈(SMA)よりも大きい
  • 本例ではSMVの方が小さい(Smaller SMV sign/スモーラーSMV徴候)
  • 同サインを認めればSMAの閉塞(血栓症や塞栓症,解離など)を疑う
  • しかし本例ではSMA周囲の脂肪織濃度の上昇はなくDダイマーも陰性
  • 最終診断は発作性の頻脈性心房細動(+脱水など)による循環虚脱

👹 独り言
  • グーグルおよびGoogleScholarの検索では"pseudo smaller SMV sign"や"pseudo smaller superior mesenteric vein sign"は何もヒットしませんでした.
  • しかし本例の様に循環虚脱を生じている症例ではsmaller SMV signが偽陽性になることは容易に想像できると思われますのでここにアップしておきます.

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(投稿者 川崎)

2025-09-03

トリプタン感覚

  • トリプタン系薬剤(片頭痛治療薬)に出現する特有の副作用で、頚部や胸部,咽頭,肩の絞扼感~圧迫感,痛み,息苦しさなどがある。通常は服用後20~30分で出現し、10分から数時間で自然に消失することが多い。 食道平滑筋の運動亢進や肺動脈に対する影響、骨格筋のエ ネルギー代謝の異常、痛感受性の増加などが原因と考えられている。


👺 トリプタンの問題点
  1. ノンレスポンダー ➜ 頻度は約10–30%でブランド変更やNSAIDsを併用
  2. トリプタン感覚 ➜  心電図変化なく心臓や脳の有害事象にも関連せず
  3. 血管収縮作用 ➜ 心疾患や脳血管障害、未コントロール高血圧で禁忌


🚑 片頭痛 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

 
(投稿者 川崎)

2025-09-02

Burch-Wartofsky ポイントスケール(BWPS)

  • 甲状腺クリーゼの可能性および重症度を評価するための簡便な臨床の診断ツール
  • 米医師BurchとWartofskyが提唱(Endocrinol Metab Clin North Am 1993;22:263-77
  • 項目:体温調節障害,心血管系,消化器系,中枢神経系,増悪因子(計算ページ
  • 判定:45点以上=確定,25~44点=切迫甲状腺クリーゼ,25点未満=可能性は低い

 本甲状腺学会の甲状腺クリーゼ診断基準(第2版)-

🚑 クリーゼに関する過去の投稿 ➜ コチラ

 
(投稿者 川崎)

2025-09-01

フィジカルクイズ(No. 19 & 20)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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(投稿者 川崎)