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2018-06-30

フレイル Frailty

定義厚生労働省研究班 2016年05月12日公開)
フレイルは「身体的」、「精神・心理的」そして「社会的」要素からなり、健常な状態よりは虚弱化が進行しているが、いわゆる「身体機能障害(disability)」とは異なり、適切な介入によって健常状態に回復することが可能な状態(原文そのまま)
  • フレイルは3種類に分類=身体的(Physical),精神的(Cognitive or Mental),社会的(Social)
  • 本邦のフレイルの頻度は身体的フレイル=7~9%,精神的あるいは社会的フレイル=20~30%
  • 本邦で用いられることが多いロコモティブシンドローム(ロコモ)は身体的フレイルとほぼ同義

診断基準(一例)
  1. 歩行速度低下(<1m/秒)
  2. 握力低下(男性は30kg未満,女性は20kg未満)
  3. 易疲労感(自己申告)
  4. 活力低下
  5. 体重減少(年間>5kg)
判定 ➜ 3項目以上でフレイル,1~2項目でフレイル予備軍(プレフレイル,Prefrailty)

参考文献)フレイルの概念と予防(Jpn J Rehabil Med 2015;52:51-4

👴 関連投稿 ➜ 老年症候群(Geriatric Syndrome)

(投稿者 川崎)

2018-06-29

ALARAの原則

ALARAAs Low As Reasonably Achievable 
合理的に達成可能な限り低く”を意味しアララと読む

  • 食品中の汚染物質など様々な状況で活用される用語
  • 医学では放射線防護の点で用いられることが多い

(投稿者 川崎)

2018-06-28

歩隔(ほかく)

歩行運動の分析に用いられる指標のひとつ 🐾
  • 歩隔=step width=左右の足の間に生じる横幅
  • 歩幅=step length=一方の足から他方の足までの進行方向の距離
  • 足向角=foot angle=進行方向に対する左右の足跡の角度


🏃 関連投稿


(投稿者 川崎)

尿沈渣クイズ

カテーテル尿を遠沈してラボステインSで染色後に検鏡(×200倍)



(投稿者 川崎)

2018-06-27

尿クイズ

倦怠感で入院した症例の尿沈査(一般採血では高KおよびWBCやCr,BUN,LDHの軽度上昇以外は問題なし)



(投稿者 川崎)

2018-06-26

メプチン吸入を急性心不全症例に使うと・・・

メプチン®=プロカテロール塩酸塩水和物=高β2選択性アドレナリン作働薬(心臓にはβ1受容体が多い)

🔎 添付文書(大塚製薬株式会社)
  • 効能又は効果 気管支喘息,慢性気管支炎,肺気腫の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(発作時に限る)
  • 慎重投与 甲状腺機能亢進症・高血圧・心疾患・糖尿病(ともに増悪),妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
  • 重大な副作用 ショック、アナフィラキシー,重篤な血清カリウム値の低下(特に喘息重症例)(ともに頻度不明)
  • 循環器副作用 動悸・頻脈(<0.1~5%),心電図異常・血圧上昇・ほてり等(<0.1%),不整脈など(頻度不明)

独り言
  1. 検索範囲ではSABA(メプチン®など)の急性左心不全に対する副作用を検討した報告はなかった
  2. しかしβ1刺激作用による血圧上昇や頻脈は急性心不全の病態(特にCS 1)を悪化させると考える
  3. 肺音喘息➜連続音=ウィーズ/心不全➜断続音=クラックル)や心音(ギャロップ)で鑑別!

(投稿者 川崎)

2018-06-25

ICS+LAMA+LABA

COPD悪化の予防効果を吸入治療の組み合わせで検討(N Engl J Med 2018;378:1671-80
  • 方法 症候性COPDの10,355例を1日1回ICS+LAMA+LABA,ICS+LABA,LAMA+LABA吸入に割付
  • 結果 52週後の中等度~高度のCOPD悪化の頻度は1年当たり順に0.91,1.07,1.21 (P<0.001)
  • 解釈 1日1回のICS+LAMA+LABA吸入はCOPD悪化予防に有用(ただしICSでは肺炎頻度が増加 👴)

ビデオ解説 英語ですがプレゼン形式なので分かりやすいです



(投稿者 川崎)

2018-06-24

ガイドラインの位置

順位 英語 日本語具体例(震災時)
1Regulation規制立ち入り禁止
2Direction指示避難指示
3Recommendation勧告避難勧告
4Guideline基準行動基準
※平盛勝彦先生 白衣を脱いだらみな奇人(日本評論社)より

🎊 ガイドラインは軽視できないが決して金科玉条(絶対的な拠り所)ではありません

(投稿者 川崎)

2018-06-23

Procalcitonin (PCT) プロカルシトニン

  • 初報は米国の医師Nylenらによる気道熱傷熱時の重症度指標(Horm Metab Res 1992;24:439-43
  • PCTはアミノ酸116 個よりなる分子量約13kDaのペプチドでその名の通りカルシトニン前駆体
  • 細菌感染時などでは肺・腎臓・肝臓・脂肪・筋肉など全身の臓器で産生され血中に分泌される
  • 白血球とは異なりステロイドや抗癌剤の影響は少なくCRPより早期に反応(半減期は約22時間)



👀 PCTプチ応用
  1. 偽痛風 ➜ 細菌性関節炎との鑑別(偽痛風ではPCT陰性
  2. 壊死性筋膜炎 ➜ 蜂窩織炎との鑑別(壊死性筋膜炎ではPCT著増

(投稿者 川崎)

2018-06-22

Lung sliding

  • 肺エコーで臓側胸膜が呼吸運動とともに左右に移動すること(あれば正常)
  • Lung sliding がなければ壁側胸膜と臓側胸膜の間に空気がある(=気胸)
  • Lung sliding sign とは呼ばないようです 👺 (日集中医誌 2016;23:123-32


🉐 おまけ Seashore sign
  • Mモードで胸膜(高輝度部分)の下に肺実質がさざ波のように見える所見(あれば正常)
  • 気胸で消失=成層圏サイン(stratosphere sign),バーコードサイン(barcode sign)

過去の関連投稿

(投稿者 川崎)

2018-06-21

松下GIMカンファレンス

本日,第1回松下GIMカンファレンスが開催されました 💫
演者の先生,参加していただいた方々,本当にありがとうございました



おまけ 😋
  • GIM=General Internal Medicine=総合内科(一般的には)
  • GIM=「んばった 者を る」 カンファレンス(DAIGO風)

(投稿者 川崎)

Magnetic gait 磁石歩行

  • まるで足の裏が磁石で床に張り付いているように足の挙上が低下する歩行様式
  • 特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus, iNPH)に特徴的




🐾 iNPHの三大歩行障害老年期認知症研究会誌 2010;16:113-4
  1. 足の挙上高の低下(magnetic gait)
  2. 歩幅の減少(small-step gait)
  3. 歩隔の拡大(broad-based gait) 

(投稿者 川崎)

2018-06-20

重症薬疹

重症薬疹の一欄厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル ➜ 皮膚
日本語名 英語表記 特徴
スティーブンス・ジョンソン症候群 Stevens-Johnson syndrome (SJS) 粘膜疹と皮膚の紅斑(体表面積の10%未満)
中毒性表皮壊死症 Toxic epidermal necrolysis (TEN) 高熱と全身の表皮剥離・水泡(10%以上),高い死亡率
薬剤性過敏症症候群 Drug induced hypersensitivity syndrome (DIHS) ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化と関連
急性汎発性発疹性膿疱症 Acute generalized exanthematous pustulosis (AGEP) 全身の紅斑と無菌性小膿疱

※薬剤性過敏症症候群の以前の名称はDRESS(drug rash (or reaction) with with eosinophilia and systemic symptoms)など

☆ 各病態の特徴と診断基準 ➜ アレルギー 2015;61:1061-1066

(投稿者 川崎)

発熱 0.55ルール

生理的には体温が華氏1度増加すると心拍数10/分増加すること
華氏で1度の差は摂氏で0.55度に相当 🔃 摂氏=(5/9)×(華氏-32)
(Sapira JD.The Art and Science of Bedside Diagnosis, 1990)

🆙 過去の関連投稿

(投稿者 川崎)

2018-06-19

サリドマイドについて

サリドマイドは1950年代に催眠薬として開発され世界各国で販売されたが、妊娠中の女性が服用することにより胎児に重度の先天異常を引き起こしたため、世界各国で販売中止と回収の措置がとられた薬剤である。

しかし、1965年に重篤ならい性結節性紅斑に対してサリドマイドが有効であることが報告され、1998年には米国において、らい性結節性紅斑治療薬として承認されている。

一方で1999年には治療抵抗性の多発性骨髄腫に対する有効性が報告され、2006年に米国で、2008年に本邦で多発性骨髄腫の治療薬として承認された。現在、サリドマイドは多発性骨髄腫及びらい性結節性紅斑の治療薬として世界10カ国以上で承認されている。

最近ではサリドマイド誘導体のレナリドミド及びポマリドミドが多発性骨髄腫の治療薬として承認されている。

これらの薬剤については、催奇形性が認められていることから、胎児への薬剤曝露を防止するための厳格な管理手順として、「サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS)」、「レブラミド・ポマリスト適正管理手順(RevMate)」の実施が義務付けられている。今年度の診療報酬改定では、厳格な安全管理が必要な医薬品の管理に対する評価として、「特定薬剤治療管理料2 100点」が算定可能となった。


(投稿者 小森)

胆石症の心電図変化

胆石症と心疾患-心電図異常を中心とした検討-(日本消化器外科学会雑誌 1977;10:598-99
  1. 胆石症の手術症例1,090例中25%に心電図異常(半数以上はST−T異常)
  2. 対照群である胃十二指腸潰瘍手術例532例の心電図異常は15%であった
  3. 心電図異常を有する胆石症50例ではST−T異常の70%が術後に改善した
  4. 逆に変化した(悪化?不変?)4例は全て器質的な心疾患を有していた
  5. 胆石症のST−T変化は可逆性の冠動脈虚血性変化を有することが多かった
☆ 本研究は東京女子医科大学消化器病センターからの昔の学会報告(抄録)であり論文化はされていない(ようです)

🉐 心疾患以外の心電図変化

(投稿者 川崎)

CA 19-9

  • CAはcarbohydrate(炭水化物・糖質)antigenあるいはcancer antigenの略
  • マウスモノクローナル抗体NS19-9で認識されるシアリルLea抗原の糖鎖抗原
  • 胎児では唾液腺,膵管,胆管,胆嚢などの上皮細胞で多量に産生されている
  • 成人でも膵管,胆管・胆嚢,唾液腺,気管支腺などで微検出(癌化で大量産生)

健診での連続32,508例での検討 (人間ドック 2015;30:22-29
  • CA 19-9が高値(>37.0 U/mL)であった790例中,再検でも高値であった320例を解析
  • 最終的に8例に悪性疾患を認めた(膵癌4例・十二指腸癌2例・胆管癌1例・大腸癌1例)
  • 併存した良性疾患は耐糖能障害37例,肝機能障害4例,胆石20例膵嚢胞性疾患22例,膵石(慢性膵炎)3例,肺気腫4例,び慢性汎細気管支炎・細気管支炎5例,間質性肺炎・肺線維症4例,非定型性抗酸菌症15例,気管支拡張症10例,好酸球性肺炎1例,喘息5例,子宮内膜症10例,卵巣嚢腫・奇形腫18例,子宮腺筋症・子宮筋腫36例,結核性腹膜炎1例,橋本病3例(記載順は論文どおり/緑文字は比較的高頻度)

👴 早期癌では上昇しにくく,偽陽性も多いためスクリーニングには不適(人間ドック 2015;30:22-29

(投稿者 川崎)

2018-06-18

振戦 vs 不随意運動

振戦(tremor)
  • 反復性かつ周期性のリズミックな筋収縮で,多くは本態性振戦
  • 筋電図では主動筋と拮抗筋の交代性または同期性の筋放電

不随意運動(involuntary movement)
  • 抑制することができないか部分的にしか抑制できない運動
  • 下表の運動過多に示される如く多様な病態から構成される

参考)梶龍兒.不随意運動の診かた.(臨床神経生理学 2015;43:122-41

🉐 過去の関連投稿

(投稿者 川崎)

2018-06-17

第220回近畿地方会(日本内科学会)

2018年6月16日(土)に大阪国際交流センターで開催されました

当院からの発表
  • 演題65 肉眼的・病理学的に異所性子宮内膜症を確認できた月経随伴性気胸の1例 (呼吸器内科 谷口隆介,山田崇央/外科 和泉宏幸)
  • 演題82 聴診が人工弁不全の診断に有用であった1例 (循環器内科 羽生桃子,川崎達也,山野倫代,川俣博史,城田あゆみ,酒井千恵子,張本邦泰,神谷匡昭)
  • 演題99 治療に難渋した鎖骨下動脈盗血症候群の1例 (総合診療科 佐伯雅史,川崎達也,室谷昌俊,羽生桃子,篠本真紀子,小山田裕一/神経内科 藤原康弘)


気になった発表
  • 演題15 インフルエンザB型感染に肝機能障害を合併した1例 (Yamagata系統 ➜ B型は山形系統やビクトリア系統など/A型は香港型やAH1pdm09など)
  • 演題31 GAD抗体陽性1型糖尿病にA型胃炎を合併した多腺性自己免疫症候群の1例 (A型胃炎 ➜ 血中抗壁細胞抗体陽性の胃炎/陰性の胃炎はB型胃炎)
  • 演題38 3度熱傷への皮膚移植全身麻酔下手術中に大量出血を来したCurling潰瘍の1例 (カーリング潰瘍 ➜ 広範熱傷後に生じる胃十二指腸潰瘍で受傷後1週間以内の発症が多い)
  • 演題51 漢方薬の長期服用にて発症した腸間膜静脈硬化症の1例 (腸間膜静脈硬化症 ➜ 腸間膜静脈の線維性肥厚や石灰化のため生じる虚血性消化管疾患で別名は静脈硬化性大腸炎)
  • 演題66 胃癌に伴う胸水をドレナージ後に発症した再膨張性肺水腫に対して非侵襲的陽圧換気(NPPV)で救命できた1例 (再膨張性肺水腫 ➜ 胸腔ドレナージ後に生じる虚脱肺の再膨張・再灌流・血管透過性亢進に起因した肺水腫)
  • 演題69 気管支結石症による閉塞性肺炎の1例 (気管支結石症 ➜ その名の通り気管支内の結石で,肺結核により石灰化したリンパ節が気管支内腔へ穿孔した例が多い)

(投稿者 川崎)

2018-06-16

Modified Rankin Scale




👿 介助なく生活できるmodified Rankin Scale 2以下であるかどうかがひとつの目安

神経内科関連の各種スコア 👶

(投稿者 川崎)

2018-06-15

包帯の巻き方

😇 静脈血のうっ滞を低減するため末梢 ➜ 中枢に向かって巻く

第106回看護師国家試験(平成29年)より
【問題A24】包帯法の原則として適切なのはどれか。





判定

(投稿者 川崎)

2018-06-14

5H5T(ファイブエッチ・ファイブティー)

救急現場で・・・(実話)

若手医師 「5H5Tの採血依頼をお願いします」
指導医師 「エッ何,FABPのオーダー?」
若手医師 「・・・」



5H5T=緊急事態を生じる主要な病態の略語

5H
  • Hypovolemia(循環血液量減少)
  • Hypoxia(低酸素症)
  • Hydrogen ion(水素イオン ➜ 代謝性アシドーシス)
  • Hyper or Hypokalemia(高あるいは低カリウム血症)
  • Hypothermia(低体温)

5T
  • Tension pneumothorax(緊張性気胸)
  • Tamponade, cardiac(心タンポナーデ)
  • Thrombosis, coronary(急性心筋梗塞)
  • Thrombosis, pulmonary(肺塞栓症)
  • Toxins(中毒)

5H5Tの兄弟姉妹
  • 5H5TにHypoglycemia(低血糖)のHを加えて6H5Tに拡大
  • Thrombosisで冠動脈と肺動脈をまとめTrauma(外傷)を追加

🉐 過去の関連した投稿

(投稿者 川崎)

自己抗体

抗核抗体は自己免疫性疾患の診断に重要な役割を果たすが,その活用は容易ではない
疾患毎に多数の抗体があり,陽性率は時期や臓器障害の有無,治療などに影響を受ける

💫 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)

👀 ポイント 検査前確立を考慮して除外(rule out)目的なのか確定(rule in)目的なのかで使い分けること


(投稿者 川崎)

2018-06-13

緑内障の患者に禁忌の薬剤

総合感冒薬や抗アレルギー薬、睡眠薬など緑内障の患者に禁忌の薬剤は多い。
一般に影響を受けるのは閉塞隅角緑内障であるが、薬物療法や外科的処置(レーザー虹彩切開術など)により眼圧がコントロールされていれば、緑内障発作は起こりにくい。
また、開放隅角緑内障の場合もほとんど影響を受けない。日本人のほとんどは隅角が開放している正常眼圧緑内障である。

たいていは影響を受けないであろうが、添付文書に禁忌と記載されている以上、眼科医との連携が必要であると考える。


(投稿者 小森)