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2024-06-23

テレストローク Telestroke

定義
  • ICT(Information and Communication Technology;情報通信技術)を使用して遠隔地にいる専門医が,現地で急性期脳卒中患者(疑い例も含む)の対面診療を行う医師を支援する遠隔医療

対象範囲
  • 脳卒中,一過性脳虚血発作,およびこれらが疑われる患者の,急性期における診断・治療,管理を主な対象とする.急性期リハビリテーション,合併症管理を含む急性期管理の遠隔コンサルテーション,回復期以降の治療や管理については本ガイドラインの対象としない.また,救急隊と脳卒中受け入れ施設との病院前連携における遠隔医療については本ガイドラインの対象としない.

導入が推奨される施設
  • 急性期脳卒中患者を受け入れる施設で,脳卒中診療に精通する医師が常に対応することが困難なすべての施設


  • Hub施設 ➜ テレストロークにおける支援を行う保険医療機関で日本脳卒中学会が認定するPSC(primary stroke center;一次脳卒中センター)もしくはPSCコア施設
  • Spoke施設 ➜ テレストロークを受ける保険医療機関で頭部CTまたはMRI検査,一般血液検査と凝固学的検査,心電図検査が施行可能であることなどが条件


(投稿者 川崎)

2024-06-22

市民啓発活動: ACT-FASTアクト ファスト

脳卒中を疑う下記の症状(FAS)が一つでもあればすぐ(T)行動(ACT),つまり救急車(119番)を呼ぶということ(なおTは発症時刻の確認も含んでいる).米国脳卒中協会が推奨する市民教育で15年以上前から提唱されている(Prev Chronic Dis 2008;5:A49).一般市民への周知がかなり広がっている循環器領域のBLS(一次救命処置:Basic Life Support)の脳卒中版と考えられる.

  • Face ➜ 突然の顔の歪み
  • Arm ➜ 手の力が入らない
  • Speech ➜ 呂律が回らない・言葉がでない・他人の言うことが理解できない
  • Time ➜ 症状が出た時刻を確認


(投稿者 川崎)

2024-06-21

NOBLADS score ノブラッド・スコア

  • 下記に示す8つの因子から下部消化管の出血リスクを予測する指標の一つ(実際の計算ページ
  • 国立国際医療研究センターの Nagata らが開発(Clin Gastroenterol Hepatol 2016;14:1562-70
  • ノブラッド・スコアが4以上なら重症で出血のリスクは高い,2以下なら低い,1以下は否定的

    • NO ➜ nonsteroidal anti-inflammatory drugs use,no diarrhea,no abdominal tenderness
    • BL ➜ blood pressure of 100 mm Hg or lower
    • A ➜ antiplatelet drugs use,albumin level less than 3.0 g/dL
    • D ➜ disease scores of 2 or higher(Charlson comorbidity index
    • S ➜ syncope

- 大出血予測に対するNOBLADS scoreの感度と特異度 -

(投稿者 川崎)

2024-06-20

今週の一枚 🎯 漏斗胸:V1 ≒ aVR

検診で心電図異常を指摘された男性(無症状)

👶 解説
  • 前胸部に陥凹があり漏斗胸と判断
  • 心窩部に周期的陥凹もあり(矢印)
  • 橈骨動脈の拍動と一致し右室拍動
  • 本例は無症状で心エコー図も正常

😃 追加コメント
  • 漏斗胸では胸郭の前後径が小さくなり,右心系の異常がなくても明瞭な右室拍動をしばしば経験します(他の自験例:コチラ).三尖弁や僧帽弁の逆流を伴うこともありますが,本例くらいの漏斗胸で問題になることは少ないと思います.
  • 本例の受診契機は心電図異常でした.漏斗胸26例の手術前後での心電図検討:術後にII誘導のP振幅とV1のP陰性振幅が減少,平均QRS幅の減少,Sokolow-Lyon指数の減少,V4-V6のJ波が増加(J Electrocardiol 2016;49:174-81)   
  • 漏斗胸の心電図にはもっとピンポイント判定法があるようです.それはV1の陰性P+Qrパターン+陰性T波です(北海道医報 第1249号).V1電極がaVRと同じ角度になるからだそうです(なるほど&何事もその道の匠はすごい😳)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-06-19

MR画像: STIRスター

  • short TI inversion recoveryの略で,脂肪と水のT1緩和の時間の差を利用した脂肪抑制画像の一つ
  • 磁場不均一に強くT2強調像(T2WI)の脂肪抑制の代用として使用されるがコントラストに制限あり
  • 他に脂肪と水のプロトン間の位相差を利用するWFS法や共鳴周波数の差を利用するCHESS 法(下表)



💁 MRIに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-06-18

遺伝性多発性骨軟骨腫 Hereditary Multiple Osteochondromas: HMO

  • 多発性骨軟骨腫の増殖を特徴とする常染色体顕性(優性)遺伝性疾患
  • 旧名は遺伝性多発性骨腫である(Hereditary Multiple. Exostosis: HME)
  • 頻度は 約1/5万出生で診断年齢の中央値は3歳(全員が12歳までに診断)
  • 原因遺伝子として90%以上の症例でEXT1もしくはEXT2にヘテロ変異
  • 症状は成長低下,骨変形,関節運動制限,低身長,末梢神経圧迫など
  • 軟骨腫は特に成長軟骨の閉鎖する思春期終了時期までに増大傾向あり
  • 神経圧迫症状や関節可動域制限などが出現する場合は外科的切除術
  • 軟骨腫は多くが良性であるが生涯で約2~5%が癌化すると思われる


軟骨腫の多発を認めた5歳7ヵ月のHMO男児

(投稿者 川崎)

2024-06-17

忘備録:透析症例の頚静脈

  • 先日,第69回日本透析医学会学術集会・総会(パシフィコ横浜)でフィジカル(特に頚静脈の座位定性法)の話をさせていただく機会を得ました.早朝8-9時のセッションで軽食や飲み物のサービスはなく,地味なテーマなわりに比較的大きな会場でした(下記写真は7:30の時点).
  • 「ガラガラだったらどうしよう...」という演者の心配とは裏腹に,立ち見が出るほどの盛況でした(本当にありがとうございます🙏).その後の質疑応答が有意義だったので忘れないように記録しておきます.もっとも臨床で検討しエビデンスとして確立された内容ではありませんが... 

📣 会場でのやり取りの要約
  • 透析例で頚静脈評価のタイミングは透析後(退室前)に座位で行うのでよさそう
  • 透析例は少なくとも透析後に座位定性法を陰性に(除水後に中心静脈圧上昇なし)
  • ただ透析例の理想は透析前も座位定性法が陰性(日常生活で中心静脈圧上昇なし)
  • 透析前の体重増加が少し多くても座位定性法が陰性なら必ずしも水分制限は不要
  • 透析後に臥位で頚静脈拍動を視認してもOK(むしろなければ血管内脱水の疑い)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2024-06-16

心臓限局性サルコイドーシスの診断

  • サルコイドーシスの診断は確定できる組織像が得られない症例では容易ではありません.心臓限局性サルコイドーシスが疑われ心筋生検陰性または未施行例は言うに及びません.
  • 心臓限局性サルコイドーシスの頻度は,本邦の心臓サルコイドーシス症例(疑い例を含む)の5~15%と報告されています.一方で組織診断の陽性率はわずか10~17%にすぎません.
  • ただし以下の5項目(心臓所見の主徴候)のうち,(d)を含む4項目以上が陽性の場合は心臓限局性サルコイドーシス(臨床診断群)と診断できるとガイドラインに記載されています.

(a)高度房室ブロック(完全房室ブロックを含む)または致死性心室性不整脈(持続性心室頻拍,心室細動など)
(b)心室中隔基部の菲薄化または心室壁の形態異常(心室瘤,心室中隔基部以外の菲薄化,心室壁の局所的肥厚)
(c)左室収縮不全(左室駆出率 50% 未満)または局所的心室壁運動異常
(d)67Ga citrate シンチグラフィまたは 18F-FDG PET での心臓への異常集積
(e)ガドリニウム造影 MRI における心筋の遅延造影所見


    💁 サルコイドーシスに関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2024-06-15

    GLIMグリム基準 GLIM criteria

    • Global Leadership Initiative on Malnutritionの略で成人の低栄養診断基準
    • 世界の栄養学のエキスパートが協力して提案(Clin Nutr 2020;39:2872-80
    • glim(古俗でろうそくや明かり)とかけている?(グリム童話はGrimms) 
    • 世界基準で多くのガイドラインにも記載(例:日本循環器学会の合同GL) 
    • 第1段階で栄養スクリーニングを行い,問題があれば第2段階へ進んで診断


    💁 栄養に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下欄からも選択可能)

    (投稿者 川崎)

    2024-06-14

    血清ACE活性の上昇

    😗 ACEの復習
    • ACE(angiotensin-converting enzyme)はCl-およびZn2+依存性のカルボキシペプチダーゼで,アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換の触媒に関与する.炎症促進作用のある強力な血管拡張物質ブラジキニンやその他のタキキキニン(サブスタンスP他)なども不活性化する.
    • ACE活性の亢進は主に肉芽腫性疾患など単球系細胞株の刺激を伴う病態で報告されている.肺病変の有無にかかわらずサルコイドーシスはこれらの疾患の中で最も頻度が高い.しかし他の肉芽腫性疾患(感染性あるいは非感染性いずれも含む)や非肉芽腫性疾患でも増加する可能性がある.

    💥 ACE濃度が上昇する病態(サルコイドーシス以外)
    • 新生児や未熟児(その原因は出産後の肺毛細血管の発達が原因と思われる)
    • 多くの非感染性の播種性肉芽腫性疾患(マクロファージや単球などが産生)
    • 肉芽腫性疾患を生じる多岐にわたる感染症(非感染性肉芽腫性疾患と同様) 
    • 石綿肺(アスベストーシス)(内皮細胞およびマクロファージの両方が原因)
    • サルコイド様病変の類上皮細胞肉芽腫(サルコイドーシスと同等ではない)
    • ゴーシェ病(常染色体劣性遺伝性疾患で最も一般的なライソゾーム蓄積病)

    😕 その他
    • アジソン病,α1-アンチトリプシン欠乏症,アミロイドーシス,ブラウ症候群,ディジョージ症候群,糖尿病,胆汁うっ滞,慢性疲労症候群,扁平苔癬,多発性硬化症,乾癬でも上昇した症例の報告あり


    (投稿者 川崎)

    2024-06-13

    今週の一枚 🎯 外頚静脈はほどほどに

    容易に息切れするため来院した症例(座位)

    👻 解説
    • 座位で外頚静脈の明瞭な上下運動(矢印)
    • よく見ると内頚静脈の拍動もあり(矢頭)
    • 本例の最終的な診断は慢性心不全の増悪

    👽 つぶやき
    • 外頚静脈は中心静脈圧の推定には推奨されていません(理由:右房と直線関係にない+有効な静脈弁を有する).しかし本例のように明瞭な(心周期や呼吸に伴う)上下運動がある場合は利用できます.
    • 本例では内頚静脈の拍動をうっかり見落としかけました.もし外頚静脈の所見のみで判定すれば静脈圧を5cm水柱ほど低く見積もってしまいます.やはり外頚静脈はほどほどにしておく方が良さそうです.

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    👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

    (投稿者 川崎)

    2024-06-12

    STRONG-HF試験:GDMT急速増量戦略

    • 心不全に対する標準治療薬(例:Fantastic four)の早期導入の有効性と安全性を検証した前向きのランダム化比較試験
    • AHA2022で発表され同時に論文も掲載(Lancet 2022;400(10367):1938-52).STRONG-HF試験の視覚的資料は  ココ です

    💕 STRONG-HF試験
    • 対象 標準的な薬物治療(GDMT)が充分には行われていない急性心不全入院例
    • 介入 退院2日前までに標準薬の至適用量の1/2以上導入+退院2週後までに全量
    • 結果 180日目までの心不全再入院と全死亡は介入群で低率(リスク比=0.66)
    • 解釈 急性心不全で入院後はGDMTの急速増量戦略が標準的な治療法よりも有用

    😶 つぶやき
    • 心不全入院を経験した症例の5年生存率はおよそ50%(日本医事新報)で,全がん症例の62%(国立がん研究センター)より不良です.
    • 当院の心不全入院311例(2019.4~2021.3)の解析でも,院内死亡率5.7%,退院1年内に死亡5.3%,退院1年内に再入院31.7%と不良
    • 予後改善には心臓リハビリの外来継続や多職種介入,ハートノート導入に加え,GDMT急速増量戦略がとても重要と感じるこの頃です.

    (投稿者 川崎)

    2024-06-11

    表皮水疱症 Epidermolysis bullosa

    • 概略 わずかな外力によって水疱形成を反復する一群の疾患
    • 疫学 男女ほぼ同数で5歳未満が最多(発症は約9割が<1歳)
    • 機序 基底細胞やヘミデスモゾームの脆弱化(単純型)など
    • 原因 常染色体の優性(顕性)遺伝または劣性(潜性)遺伝
    • 診断 病歴と身体所見,病理学的所見(光顕・電顕)による
    • 病型 単純,接合部,優性・劣性栄養障害,キンドラー症候群
    • 症状 四肢末梢や大関節部などに軽微な外力で水疱やびらん
    • 合併 皮膚がん,食道・幽門狭窄,関節拘縮,成長遅延など
    • 治療 根治療法はなく対症療法(それも病型により異なる)
    • 予後 生後間もなく死亡例〜普通の社会生活可能まで多様


    手足の局所的な皮膚病変から粘膜・内臓の水疱形成まで多様

    (投稿者 川崎)

    2024-06-10

    🏆 論文

    • 当院の専攻医の野口先生の臨床研究が出版されました 🎉
    • 慢性心不全症例に対する各種負荷頚静脈の比較検討です
    • 実際の負荷法は吸気・5回立ち上がり・蹲踞の3種類です
    • いずれの負荷も予後予測に有用で予後予測能に大差なし
    • ただ5回立上がりと蹲踞は膝痛や腰痛で実施不能例あり
    • 最終的には負荷頸静脈は吸気が最も実用的な方法と結論


    😎 つぶやき
    • これは当院で行ってきた一連の負荷頚静脈研究(①6分間歩行,②吸気負荷,③PEF vs REFなど)の最終報告です.臨床で生じた疑問に対する研究を行い,新たな疑問に対する追試を行うということの繰り返しでした.最終的に「吸気による頚静脈負荷は様々なタイプの心不全で予後予測に有用」というゴールにたどり着けました.
    • 本論文の査読者から負荷の様子を追加するよう指摘されました.実際の動画よりもピクトグラムの方がいいのではと考え,無料画像を検索しました.しかしふさわしいものなかったので自作しました(上記のFigure 1).思ったより簡単で,今ではあらゆる体位や動作を表現できるようになりました.やっぱ何事も挑戦ですね.

    👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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    (投稿者 川崎)

    2024-06-09

    セザリー症候群 Sézary disease

    • 概要 皮膚T細胞性リンパ腫による慢性的皮膚疾患(菌状息肉症と類似)
    • 三徴 紅皮症,リンパ節の腫大,末梢血異型リンパ球(セザリー細胞)
    • 皮膚 通常の皮膚治療薬には反応せず強い掻痒感や手掌角化などを伴う
    • 命名 フランスの皮膚科医 アルベール・セザリー (1880-1956) が報告
    • 疫学 100万人あたり約10人,男女比は2~5と男性に多く平均53~63歳
    • 診断 フローサイトメトリーと遺伝子解析で末血・皮膚の同一性を証明
    • 治療 ステロイド外用,紫外線療法,インターフェロン,化学療法など
    • 予後 早期は良好であるが皮膚外臓器浸潤の5年生存率は40%以下と不良


    セザリー症候群の67歳男性(皮疹発症後約5ヵ月で死亡)

    (投稿者 川崎)

    2024-06-08

    左脚領域ペーシング(LBBAP)

    刺激伝導系ペーシングCSP: conduction system pacing) 
    • 刺激伝導系(ヒス束,右脚,左脚本幹〜枝)を捕捉するペーシング法の総称

    右室心尖部ペーシングRVP: right ventricular pacing)
    • 非同期的収縮からペーシング誘発性心筋症(PICM: pacing induced cardiomyopathy)が12~20%に生じてイベントが増加

    ヒス束ペーシングHBP: His bundle pacing)
    • 最も生理的なペーシング法であるが,リード留置が可能な領域が狭くかつ伝導途絶部位の遠位側を捕捉する必要があり一般的に手技難易度は高い

    左脚領域ペーシングLBBAP: left bundle branch area pacing)
    • リード留置の標的となる領域が広く,心室波高やペーシング閾値がHBPより優れ手技成功率が90~98%前後と高い



    😑 独り言
    • 右室心尖部ペーシング(RVP)でペーシング誘発性心筋症(PICM)を生じた場合には心臓再同期療法(CRT: cardiac resynchronization therapy)へのアップグレードが推奨されます.ただしCRTは施設制限があるため(新規届出なら心臓血管外科で開心術やバイパス術15例),自施設で行えない場合の敷居は高くなります.
    • PVPが実施できる施設では,左脚領域ペーシング(LBBAP)も可能です.上記ガイドラインにも「正常心機能症例において,心室ペーシング率が20%を超える,もしくは将来心室ペーシング率が増加すると予測される病態では,ペーシング誘発性心筋症を回避する目的でCSPを考慮してもよいと考えられる」と記載されています.
    • CSPの植込みには先端のヘリックス電極が格納されていない特徴的な構造を有する細径(4.1 Fr)のルーメンレスリード(SelectSecure™リード)を用いることが一般的です.厳密には現時点ではオフラベルの使用になるようですが,この問題も1-2ヵ月以内に解決されると聞いています(2024年5月末時点).

    (投稿者 川崎)

    2024-06-07

    第21回 循環器Physical Examination講習会より


    循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


    👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

    心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

    (投稿者 川崎)

    2024-06-06

    今週の一枚 🎯

    新たな鼾と嗄声,便秘で来院した高齢者

    👻 解説
    • 扁桃がやや腫大しているように見える
    • 甲状腺もびまん性に低吸収で軽度腫大
    • 採血ではCK 1535,TSH 155,fT4 0.04
    • 喉頭鏡で軽度浮腫あり(声帯麻痺なし)
    • その後の精査で慢性甲状腺炎と診断した
    • チラーヂンの投与で主訴は徐々に軽快

    💀 追加コメント
    • 本例では体重増加(3㎏程度)もあり粘液水腫と考えられた.ただし下腿浮腫や易疲労感,低体温(寒がり),動作緩慢は認められなかった
    • 本例では妻が「今までなかった鼾の出現」に気がついたことが病院受診の契機になった.甲状腺腫大に加え咽頭浮腫などが原因と考えられる.
    • 甲状腺ホルモンの低下時に認めることがあるCK上昇の機序として,代謝の低下あるいはATP減少で筋細胞の透過性亢進などが推測されている().

    👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

    (投稿者 太田/川崎)

    2024-06-05

    Rusty Pipe Syndrome 錆びたパイプ症候群

    • 妊娠後期〜授乳期初期に生じる良性の生理学的状態
    • 錆びたパイプ内の水に似た茶色〜血性の乳汁を呈す
    • 通常は両側性で痛みなく自然に治癒する(7日以内)
    • 頻度は非常に稀(妊娠中の全血性乳汁でも約0.1%)
    • ホルモン刺激による乳管周囲の毛細血管網の障害?
    • 診断は現病歴と身体診察(持続は細胞分析やエコー)
    • 必要に応じ乳管乳頭腫,乳管拡張症,癌などと鑑別
    • 母乳でも成長遅延や母乳不耐症などの疾患は生じず


    出産初日に注射器で吸い取った母乳の色調変化

    💁 授乳に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2024-06-04

    劇症型溶血性レンサ球菌感染症 STSS: streptococcal toxic shock syndrome

    • 通常は小児に急性咽頭炎などを引き起こすA群溶連菌による重篤な病態の一つ
    • 主にA群溶血性レンサ球菌(S. pyogenes [ピオゲネス] /別名,化膿レンサ球菌)
    • STSSは子供から大人まで広範囲の年齢層に発症(特に30歳以上の大人に多い)
    • 免疫不全などの重篤な基礎疾患がなくても突然発病する例がある点に注意する
    • 初期の症状は四肢の疼痛・腫脹,筋肉痛,発熱・悪寒,血圧の低下,下痢など
    • 発症数十時間以内には軟部組織壊死,腎不全,ARDS,DIC,MOF,ショックへ
    • 診断は通常無菌部(血液、脳脊髄液、胸水、腹水など)から上記細菌の検出
    • 治療はPC系(+CLDM,免疫グロブリン),広範囲病巣(菌の生息部位)切除
    • 2023年の報告数は本邦で941人と統計以降の最多(本年も3/17で既に517人)
    • 今までは毎年100-200名が確認されて,約30%が死亡する致死率の高い感染症
    • 全数報告対象(5類感染症)で診断医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出

    2024-06-03

    先天性小耳症 Congenital microtia

    • 1万〜1.5人に1人発生する先天性疾患(本邦では年間約100人前後出)
    • 外耳道閉鎖・狭窄を高率に合併するが片側性が90%で対側聴力は正常
    • 妊娠初期の外耳形態形成時期での多因子遺伝や環境因子が関与する?
    • 治療は形成外科が中心で73例中男児52例で平均11.8歳(10歳〜20歳)


    肋骨軟骨を使用したベース フレーム製作の模式図
    症例提示
    合併症:鋼線突出(1.4%),皮弁静脈うっ血(2.3%),皮膚壊死・軟骨露出(1.7%)

    💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2024-06-02

    Coral reef aorta (CRA) サンゴ様大動脈

    • 米外科医 Qvarfordt らが提唱した病態(J Vasc Surg 1984;1:903-9
    • 腎動脈レベルの大動脈に限局性の石灰化による狭窄を呈した病態
    • 症状は腎血管性高血圧や腹部アンギナ,間欠性跛行,腎不全など
    • 正確な原因は不明(ただし通常の動脈硬化性疾患と異なると予想)
    • CRA 124名の検討では平均年齢は59歳(37-84歳)で62.1%が女性
    • 以前の主な治療は血栓内膜摘除(しかし高い手術死亡率:11.6%)
    • 近年は高リスク例に非解剖学的バイパスやステント(下図)など


     A:石灰化病変が腎下大動脈に突出/B:ステントグラフトで拡張(矢印)

    💁 大動脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    (投稿者 川崎)

    2024-06-01

    HPKI

    • 保健医療福祉分野公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)の略称
    • PKIとは公開鍵とその持ち主の対応関係を第三者の機関が保証するための技術
    • HPKIは厚生労働省によって運営され,医療・福祉分野の資格を電子的に証明
    • 日本医師会,日本薬剤師会,医療情報システム開発センターでHPKIカード発行

    - HPKIカード例 -

    - 発行までの流れ -

    👽 独り言
    • 電子処方箋の導入期限が2024年3月31日と1年を切りました.そのためには少なくとも医師がHPKIを有することが必須です.HPKIカードの発行には少なくとも数ヵ月かかるようです(2024.5時点).慌ただしく動きはじめた施設も少なくない?
    • マーナンバーカードやパスポート,免許書のように身分を証明するものはいくつかあります.しかしほとんどの医師は携帯可能な医師証明書を有していません(病院採用時には医師免許の提出が多い?).よく考えるととても不思議な世界かも?

    (投稿者 川崎)