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2026-05-24

鼻疽びそ 類鼻疽るいびそ

  • 鼻疽は鼻疽菌 (Burkholderia mallei) が感染することによって起こる人獣共通感染症。おもに馬やロバに感染するが、ときにヒトにも感染する。 
  • 類鼻疽は類鼻疽菌 (Burkholderia pseudomallei)によって起こる人獣共通感染症。土壌や池の水など環境中から菌が分離されることがある。
  • いずれも東南アジア、アフリカ、中東地域などの熱帯・亜熱帯地域に分布し、自然感染の例がこれらの地域において散発的に発生している。
  • 鼻疽菌、類鼻疽菌、ともに感染症法にて4類感染症に分類されているため、診断後直ちに最寄りの保健所に届出を行う義務がある。 
  • 鼻疽は致死的感染~数年の潜伏感染など多彩。急性例では1~14日間の潜伏期を経て創部や鼻粘膜の感染およびリンパ節炎など。
  • 類鼻疽は、急性・慢性,局所性・全身性、顕性・不顕性の形態があり、菌血症・急性敗血症型、肺型、局所型、不顕性型に4分類
  • 採血では白血球数増加+核の左方移動を伴うが特徴的な生化学的所見はなし。確定は血液、喀痰、穿刺検体などの培養による同定
  • 治療は抗菌薬(特に鼻疽では早期の抗菌薬投与が必要)。利用可能なワクチンない。鼻疽菌、類鼻疽菌は生物兵器のリスクあり


類鼻疽(melioidosis、メロイドーシス)の発生率

(投稿者 川崎)

2025-11-19

ジアルジア症 Giardiasis

  • 概略 鞭毛虫類の一種 Giardia lamblia による人獣共通感染症
  • 形態 ランブル鞭毛虫症とも呼ばれて嚢子と栄養型の2種あり
  • 変化 嚢子が十二指腸,上部小腸,胆道系で脱嚢し栄養型へ
  • 感染 主に食物や水を介した嚢子の経口(塩素では死滅せず)
  • 保因 無症候嚢子保因者も感染源(性感染症でヒト-ヒトあり)
  • 疫学 感染者数は世界中で数億人に達する(本邦では極めて稀)
  • 日本 旅行者下痢症あるいは免疫不全時の日和見感染の病原体
  • 経過 10個程度の嚢子で感染が成立し潜伏期間は約1~3週間
  • 症状 下痢(必発),全身倦怠,体重減少,腹痛,悪心や脂肪便
  • 下痢 非血性で水様や泥状便(1日数回~20 回以上まで様々)
  • 診断 糞便から顕微鏡下に本原虫を証明あるいは抗原(キット
  • 重複 赤痢アメーバ,クリプトスポリジウム,チフス菌など5%
  • 治療 メトロニダゾール(metronidazole;MNZ)が 保険適用


- イメージ画像 -

(投稿者 川崎)

2025-01-01

ライム病のブルズアイ(牛の眼)

  • ライム病(Lyme Disease)の初期症状として皮膚に出現する古典的な遊走性紅斑の一形態
  • Ring-within-a-ring patternやtarget patternとも呼ばれる(頻度は低い,35例中2例=6%)
  • ライム病の起因菌はスピロヘータの一種 Borrelia でマダニ類が媒介する人獣共通感染症
  • 臨床症状と血清学的診断基準から総合的に診断(培養は困難で患者からの2次感染はない)
  • 遊走性紅斑例にはドキシサイクリン,神経症状例にはセフトリアキソンが第一選択である
  • 名前の由来は米国コネチカット州ライム地方で初めて確認(Arthritis Rheum 1977;20:7-17

古典的なbull's eye所見(下図のCとD)

(投稿者 川崎)

2024-12-15

日本内科学会 第246回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題101 肝硬変に生じたパスツレラ症の1例
  • パスツレラ症は代表的な人獣共通感染症であり,Pasteurella multocidaはヒトを除く哺乳類の口腔内常在菌で,イヌでは75%,ネコではほぼ100%に常在するとされる.免疫能の低下した症例で重症化しやすい.

演題179 Burkholderia属菌によるCepacia症候群の1例
  • Burkholderia属菌は特に嚢胞線維症に致死的な呼吸器感染症を起こす菌として報告され,Cepacia症候群と呼ばれる急性に進行する菌血症を伴う壊死性肺炎は致死率が非常に高く臨床的に問題となる.

演題218 溺水により運動後急性腎不全(ALPE)を発症した 1 例
  • 溺水後の急性腎障害は溺水患者の43%に発生した報告もあり,原因は低酸素による尿細管障害,横紋筋融解症,多臓器不全による全身性炎症反応等が考えられる.

演題234 COVID-19肺炎の経過中にセフトリアキソン脳症が疑われた腹膜透析患者の1例
  • 抗菌薬投与中に意識障害,不随意運動を認めた際には,抗菌薬関連脳症を疑い抗菌薬の中止または変更が必要である.原因薬剤の診断のためには,血中濃度を測定しておくことが望ましい.


👻 当院からの発表
  • 演題35 左鎖骨下静脈経由の二腔ペースメーカ植込み後に両側気胸を生じた1例(総合診療科 國延拓也先生 🎉 すでに論文化してPubMedに収載
  • 演題210 腰椎神経根症による脱神経性筋障害を高CPK血症とともに呈し,炎症性筋疾患との鑑別を要した1例(膠原病・リウマチ内科 正木 暁先生)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-05-18

Q熱 Q fever

  • 概略 リケッチアの一種である Coxiella burnetii による人獣共通の感染症
  • 由来 1935年に豪州の屠畜場の作業者間で流行した不明熱(Query fever)
  • 経路 家畜やペット(特に猫)の出産で胎盤に感染している C.burnetii 吸入
  • 潜伏 一般的には2~3週間でインフルエンザ様症状(感染量が多いと短縮)
  • 症状 高熱や頭痛,筋肉痛,倦怠感など非特異的(2~10%に心内膜炎あり)
  • 診断 血液から病原体分離,PCR法で遺伝子検出,ペア血清(≧4倍)など
  • 慢性 回復後しばらくして倦怠感・不眠・関節痛などが数月~数年持続あり
  • 治療 テトラサイクリン系抗菌薬を2~3週間(予防大切:特に動物出産時)
  • 予後 基本的に良好(ただし肺炎型や肝炎型があり約1割が慢性Q熱に移行)
  • 法律 感染症法の4類感染症に分類(診断した医師は直ちに保健所に届け出)



(投稿者 川崎)

2024-01-19

ジビエ Gibier(仏語)

  • ハンターが狩猟で捕獲した食材の野生鳥獣(ソバージュ,sauvage [仏語])
  • 本邦でも15年ほど前から認知され,学校給食でも4割の道府県が導入(下図)
  • ジビエを介した人獣共通感染症の病原体はウイルス,細菌,寄生虫など多岐
  • 例えば野生シカ肉や野生イノシシ肉によるE型肝炎やO157など(詳細は下表)
  • ジビエ処理の標準はない(生食は避け中心部まで熱が通る十分な加熱が必須)


学校で出食されているジビエ給食

日本におけるジビエが原因で発生した人獣共通感染症(食中毒)事例

(投稿者 川崎)

2023-10-17

シャーガス病 Chagas' disease

  • 概要:トリパノソーマ・クルージ(T. cruzi )によって引き起こされる熱帯寄生虫病
  • 媒介:主にサシガメとよばれる昆虫の咬傷や感染した糞便から感染(人獣共通感染症
  • 由来:ブラジル人医師の Carlos Chagas が初報(Arch Schiff Tropenhyg 1909;13:120–2)
  • 地域:ラテンアメリカ大陸(カリブ海の島国を除)に蔓延(特に田舎)(本邦では輸血)
  • 疫学:主にメキシコ,中米,南米では約650万人が罹患して,年間に約9,490人が死亡
  • 症状:無症状〜軽度の発熱やリンパ節腫脹,頭痛,咬傷部の腫れなど(数週間〜数ヵ月)
  • 経過:感染10~30年後に心臓病(最大45%),消化器病(最大21%),神経損傷(最大10%)
  • 心臓:左心室の拡張および機能不全,心室瘤,心不全,血栓塞栓症,心室不整脈,突然死
  • 診断:急性期はPCRまたは血液などから寄生虫顕鏡/慢性期はT Cruzi に対するIgG抗体
  • 予防:サシガメ排除(殺虫剤や蚊帳の使用),輸血に使用される血液のスクリーニング
  • 治療:初期の感染症は抗寄生虫薬ベンズニダゾールまたはニフルティモックスで治療可能


シャーガス心筋症(Chagas Cardiomyopathy)の様々な壁運動異常

(投稿者 川崎)

2022-06-07

アナプラズマ病 Anaplasmosis

  • アナプラズマ属の細菌 A. marginale あるいは A. centrale による感染症(伝染なし)
  • ダニ媒介性疾患で主に偶蹄目(反芻動物)や犬,馬の赤血球に感染(ヒト報告あり)
  • 動物は体重減少・下痢・攻撃的行動・高熱など,人は発熱・肝機能上昇・貧血など
  • 対策はダニやハエの駆除で,治療はテトラサイクリン系の抗菌薬(ワクチンはない)


 主なダニ媒介性感染症

💁 人獣共通感染症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-02-11

リーシュマニア症 Leishmaniasis

  • サシチョウバエ類によって媒介される原虫リーシュマニアによる人獣共通の感染症
  • 内臓リーシュマニア(肝脾腫・貧血)と皮膚リーシュマニア(潰瘍・結節)に大別
  • 100ヵ国(東アジアは希)で年間70-100万人が新規発症(総罹患者数は1000万以上)
  • 有効ワクチンはなく,アムホテリシンが95%で有効(Br Med Bull 2012;104:175-96)

📎 本邦ではあまり聞きなれない病名ですが,最近のLancet (2018;392:951-70)やN Engl J Med (2019;380:379)でも取り上げられています

(投稿者 川崎)

2019-02-07

ジアルジア症 Giardiasis

  • 鞭毛虫であるランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)を原因とする寄生虫病

(public domain)

  • 人獣共通感染症でありヒトや犬など多くの哺乳類の消化管で増殖
  • ヒトの好発年齢は1〜9 歳の子供と35~44 歳の成人の二峰性
  • 糞便内へ排泄されたシストを生水や食品を介した経口摂取で感染
  • 感染後6~15日で急性下痢症(小腸型)を発症(不顕性感染例も多い)
  • 日本での発症は毎年100人前後(ほとんどが発展途上国の帰国者)
  • 五類感染症(全数把握疾患)に指定され診断医は届け出が義務がある
  • 治療は一週間程度のメトロニダゾール内服(ただし保険適応外)

参考)日獣会誌 2013;66:701-8

(投稿者 川崎)

2018-08-02

ブルセラ症 Brucelllosis 

ブルセラ症はブルセラ属菌による人獣共通感染症
  • 分布 地中海地域,西アジア,アフリカ,ラテンアメリカなど
  • 宿主 Brucella melitensis(ヒツジとヤギ),B. suis(ブタ),他
  • 経路 感染動物の乳の摂取,感染動物自体やその死体との接触
  • 潜伏 感染から発症まで通常1~3週間(稀に数ヵ月)
  • 症状 発熱(特に午後),全身の疼痛,倦怠感,衰弱,泌尿生殖器の症状など
  • 診断 血培で病原体検出(長期培養が必要),血清反応(早期はIgM,活動型はIgA+G)
  • 治療 テトラサイクリン系薬にリファンピシンやキノロン系薬などの併用する
  • 届出 全数報告対象(4類感染症)であり診断医は直ちに最寄りの保健所に報告

参考)国立感染症研究所 ブルセラ症とは

👿 典型例 ➜ 感染症学雑誌 2016;90:138-41

※ブルセラは比較的徐脈で有名であるが日本の臨床現場では稀 🌌 発熱 0.55ルールも再確認

(投稿者 川崎)

2017-07-03

Leptospirosis レプトスピラ症

主に病原性レプトスピラ(スピロヘータ目のグラム陰性菌)の感染による人獣共通感染症
自然宿主はネズミなどの野生動物で,排泄物を介して水や土壌から経口・経皮的に感染
中南米や東南アジア(特にタイ)に多く,ヒトからヒトへの感染は生じないと考えられている

  • 潜伏期間は2~21日で,自覚症状は発熱・悪寒・筋肉痛・結膜充血
  • 重症型はワイル病(Weil's disease) で黄疸や出血傾向が出現
  • 診断は血液・尿・髄液から病原体の分離あるいはPCR,血清の抗体測定
  • 治療にはペニシリン系またはテトラサイクリン系の抗生剤を投与する

NEJMに掲載された典型的例 ⇒ Spiraling Out of Control. N Engl J Med 2017;376:2183-8

(投稿者 川崎)