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2022-01-31

心不全の低血糖

  • 先日,急性心不全の症例で低血糖を合併した症例を経験しました.本例には糖尿病の既往はなく,血糖降下薬の服用やインスリンの投与もありませんでした.
  • 心不全を発症時に自覚症状を伴う低血糖を経験することはあまりありませんが,血糖低下自体は起こりやすいようです(下図:ただしいずれの症例も無症状)

💟 機序
  • 血中インスリンは最終的には腎臓の糸球体で分解され尿中に排泄されます.心不全では通常,うっ血(稀に低拍出量)のため腎機能が低下します.よってインスリンの代謝が遷延するため,その血中濃度が上昇して,結果的に心不全の発症時に血糖が低下するのではと推測されます.
  • それ以外には,低酸素やカテコラミン増加によるインスリンの分泌亢進,グルカゴンの分泌低下,低栄養に伴う糖質の供給低下,貯蓄能の低下による糖新生阻害などがあるようです(※).また心不全時に著増するBNPには,直接的+間接的な血糖低下作用があるようです(#).

💁 低血糖に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-01-30

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

中隔虚血と中隔性Q波の消失
運動負荷Tl心筋SPECT(上)およびその時の心電図(下)



(投稿者 杉原)

2022-01-29

心不全を防止する4回のチャンス

  • 心不全は下図のように進行していく病気で増悪を予防することが大切
  • 各ステージでとどまれるようにしたい(提唱はおそらく小室一成先生)
  • つまり心不全は発症前に3回と,発症後に1回の予防タイミングがある

    1. リスクなし ➜ 0次予防(リスク予防=よい生活習慣)
    2. Stage A ➜ 1次予防(疾患の発症を予防=リスク管理)
    3. Stage B ➜ 2次予防(心不全の発症予防=適切な治療)
    4. Stage C ➜ 3次予防(心不全の再発予防=包括的治療)


💁 心不全の関連投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2022-01-28

レビー小体型認知症 Dementia with Lewy bodies (DLB)

  • 病理学的に大脳皮質のLewy小体(主成分はα‒シヌクレイン)を特徴とする変性疾患
  • 本邦のKosakaらによって初めて報告された疾患(Acta Neuropathol 1976;36:221-33)
  • 中核症状は反復する幻視,認知障害,パーキンソニズム(筋強剛や運動緩慢,振戦)
  • 特に50~80%にレム睡眠行動障害=夢で見たことをそのまま行動に移してしまう状態
  • パーキンソン病(PD)および認知症を伴うPDと一連のスペクトラム上にある疾患群
  • 根本的治療法はなく,コリンエステラーゼ阻害薬やL-ドパ,周辺症状への抑肝散など
  • 検査は線条体DATシンチグラフィやMIBG心筋シンチグラフィ,睡眠ポリグラフなど


典型例の画像所見



今回経験した症例は,急性心筋梗塞を発症したため他施設から当院に転院されました.しかし安静が保てずにカテーテル治療やICUでは強力な鎮静を要し,翌日にはやむなく元の施設に戻られました.

(投稿者 川崎)

2022-01-27

🎯 今週の一枚

腹痛で来院した若者の腹部エコー



(投稿者 川崎)

2022-01-26

3点柵とは…

【第109回看護師国家試験問題 A120】
  • Aさんは、2か月間のリハビリテーションの結果,健側(左側)を使ってベッド上で端坐位ができるようになり,補装具をつければ軽介助で歩行できる状態まで回復した.退院後はベッド柵をつけた介護用ベッドを設置し,自宅で生活をする予定である.A さんが自宅で使用する介護用ベッドの柵の配置を図に示す.ベッド柵の配置で適切なのはどれか.






判定

🛏 解説
  • 柵とはベット周囲の囲いのことで,2点柵や3点柵,4点柵などがあります.看護の現場ではベット柵の設定は常識のようですが,医師では一部を除きその知識は乏しいと思われます.
  • 本例では健側である左側を用いる必要があり,同時に患側である右側への転落防止を考慮した柵の設定が必要です.正解の1以外は健側下肢側に柵があっては端坐位が妨げられます.

(投稿者 川崎)

2022-01-25

用語:医療事故 vs 医療過誤

  • 医療事故(Medical accident)とは,医療において生じた事故すべての事象を指す用語である.予測不能や回避不可能であったことなど患者,医療従事者すべてを含めた人身事故のことで,予期しない悪い結果の総称である.
  • 医療過誤(Medical malpractice/医療ミス)とは,主に医療従事者側等の人的または物的な過失のことを云う.またはそれら過失によって患者側に生じた人身事故のことであり,過失の法的構成要件が揃っている必要がある.


  • 広い意味での医療事故とは医療に関わる場所で,医療の全過程において発生するすべての有害事象を包括するものである.これには医療行為とは直接関係のないものや,対象が患者ばかりでなく医療従事者が被害者の場合も含まれる.
  • 医療過誤とは医療従事者の過失によって起こる医療事故のことを指す.すなわち医療事故には過失の結果起こる医療過誤のほか,不可抗力や偶然の結果発生するものも含まれる.術後の合併症なども広義の医療事故として考える必要がある.


  • 医療事故とは、医療に関わる場所で医療の全過程において発生する人身事故一切を包含し,医療従事者が被害者である場合や廊下で転倒した場合なども含む.
  • 医療過誤は,医療事故の発生の原因に.医療機関・医療従事者に過失があるものをいう.


😐 ひとり言
  • 医療事故=医療過誤という誤った考えは,患者さん側だけでなくて,医療者サイドにも少なくないような…同じく混同しやすい言葉にアクシンデントとインシデントがあります(💁 違いはコチラ)

(投稿者 川崎)

2022-01-24

進行性多巣性白質脳症
PML (progressive multifocal leukoencephalopathy)

  • 概略 免疫不全状態で再活性化したJCウイルスによる脳内の多発性の脱髄性疾患
  • 原因 JCウイルスの初感染は幼・小児期で成人の抗体保有率は全人口の80%程度
  • 発病 片〜四肢麻痺・認知機能障害・失語・視覚異常などで初発して亜急性に進行 
  • 診断 症状,脳MRI(白質に病変が散在),脳脊髄液や組織から JCV DNA(PCR)
  • 治療 特異的な治療法はない(基礎疾患の治療による免疫能低下の回復を目指す)
  • 予後 週〜月単位で進行し不良(HIVなら中央生存期間は1.8年でその他は3カ月)


リンパ腫に対して分子標的薬を投与中にPMLを発症した40歳女性のMRI経過

(投稿者 川崎)

2022-01-23

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

Beer負荷Tl心筋SPECT
症状発現時の携帯型心電図波形とbeer負荷Tl心筋イメージング
Kaneko N et al : J Cardiol cases. May;9 8(1) : e54-e56 ; 2013



(投稿者 杉原)

2022-01-22

JCウイルス JC virus (JCV)

  • 分類 ベータポリオーマウイルス属の Human polyomavirus 2 に属するウイルス
  • 経路 幼児期や小児期において経口もしくは経気道的に侵入(持続 or 潜伏感染)
  • 疫学 多くの成人(50〜80%)がアーキタイプ(原型)に感染するが,終生安定
  • 発病 宿主の免疫低下や稀に変異株のため進行性多巣性白質脳症(PML)を発症
  • 診断 臨床症候や頭部MRI,病理,脳脊髄液中のJCVゲノムDNAの検出(PCR)など
  • 経過 週〜月単位で麻痺・認知障害・失語などが進行し数カ月で死亡(HIVを除く)


😓 命名...
  • その不思議な名称 JC は,同ウイルスが初めて同定された患者さんのイニシャルだそうです(Lancet 1971;1(7712):1257-60).これはSLEの 抗Sm抗体 と同様ですが,学術的には好ましくない命名であるためここでは実名は記載しません.なお病態の初報はウイルスの同定に遡ること6年前です(Science 1965;148:1477-9).

🉐 ウイルスに関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)