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2023-09-30

薬剤性腎障害 Drug-induced renal injury

📗 分類
  1. 直接型 ➜ 用量依存性に発症頻度が増加
  2. 過敏型 ➜ 用量非依存性でアレルギー機序が関与
  3. その他 ➜ 免疫学的機序を介した糸球体障害(微小変化型、膜性腎症)、腎血流低下、血管障害、閉塞性腎症など

📘 機序
  • 尿細管障害(急性尿細管壊死)➜ アミノグリコシド系、セファロスポリンなど
  • アレルギー機序(急性間質性腎炎)➜ メチシリン、NSAIDs、ST合剤など
  • 腎血流障害 ➜ NSAIDs、ACE阻害薬、造影剤、シクロスポリンなど
  • 血管障害 ➜ シクロスポリン、溶血性尿毒症症候群など
  • 尿細管閉塞 ➜ メトトレキセート、サルファ剤、化学療法時の高尿酸血症など
  • 尿細管機能異常 ➜ Fanconi症候群、尿細管性アシドーシス、リチウムなど
  • 免疫機序 ➜ 微少変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、血管炎など


🐾 豆知識
  • アレルギー機序が関与した薬剤性腎障害(急性間質性腎炎)では尿中の好酸球が増加

👤 実例(Sysmex Journal Web 2020;21:46-52)
  • 54才女性が1週間前から続く39度の発熱を主訴に入院した.前医で解熱鎮痛薬アセトアミ ノフェンと抗菌薬クラリスロマイシンとガレノキサシンが投与されていた. 
  • 尿細胞診は入院日の検査で好酸球増多はなかったが第2病日に14%に増加した.腹部エコーとCT検査で両腎に腫大を認めガリウムシンチグラフィで両側腎に集積を示した.
  • 腎生検所見では糸球体には異常なく,間質全体に高度の細胞浸潤があり好酸球も散在していた.薬剤性間質性腎炎と診断した.
  • Crは2.44 mg/dL まで上昇したが,上記薬物の中止とプレドニソロン30 mgの内服で,2月後に正常化した.ちなみに3剤のLST(リンパ球刺激試験)はいずれも陰性.

💁 尿検査に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-29

片頭痛の忘備録

先日のモーニングカンファレンスを担当された当院 脳神経内科 部長の滋賀先生のレクチャーがとても良かったので一部をメモしておきます.研修医の参加者が少なめだったのはちょっと残念でしたが...😑

  • 頭痛の有病率は全人口の40%で,片頭痛は全人口の8.4%を占めている
  • 片頭痛の男女比は1:4で小児~成人に発症することが多く半数に家族歴
  • 片頭痛は疾病負荷(DALY)が大きく神経疾患では脳卒中に続いて2番目
  • 片頭痛は前兆あり,前兆なし,慢性(月15回以上が3ヵ月以上)に分類
  • 様々な誘因が知られているが(ストレスや月経,におい,酒)雨もある
  • 筋緊張性頭痛で多い肩こりを伴うことが少なくなく,両側性頭痛も散見
  • 片頭痛や群発頭痛で仕事を休むことはあるが,筋緊張性頭痛で欠勤は稀

🉐 片頭痛 vs 群発頭痛 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-28

今週の一枚 🎯

左室のびまん性壁運動低下を認める2症例の心臓MR(造影)

💟 解説
  • 症例Aは下壁に遅延造影(=線維化/下図Aの矢印)
  • 心内膜側が造影されているため虚血性心疾患の疑い
  • 実際のカテーテル検査では完全閉塞を含む3枝病変

  • 症例Bは心室中隔に遅延造影が陽性(下図Bの矢頭)
  • 造影部位は心筋中層であるため拡張型心筋症の疑い
  • 実際のカテーテル検査では冠動脈に狭窄病変はなし



💞 追加コメント
  • 大動脈から派生する冠動脈は心筋の外側を走行するので,心筋の内膜側が虚血にさらされやすくなります.よって内膜側から進展する遅延造影を認めたら虚血性心疾患を疑います(貫壁性梗塞なら全層性の造影).この遅延造影領域が心筋壁厚の50%以下ならば心筋バイアビリティ(生存能)は保たれていると考えられます(N Engl J Med 2000;343:1445-53)
  • 拡張型心筋症(DCM)の遅延造影は通常,冠動脈走行に一致しない分布です.やや特異的な所見として中隔中層の線維化(遅延造影)があり約30%の症例に認めます.同所見を伴うDCMは遅延造影を認めない症例に比して心事故の頻度が高く,薬物治療によるリバースリモデリング(心機能改善)も少ないことが知られています(日内会誌 2016;105:2041-7)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-09-27

4種類のカルベジロール

  • カルベジロール(先発品アーチスト©)には4種類の剤型があります(錠1.25mg、錠2.5mg、錠10mg、錠20mg).日常臨床で多用されているベータ遮断薬(厳密にはαβ遮断薬)の一つですが,厳密には各々の剤型で効能(適応疾患)が異なります.
  • 先日,心不全の病名がないためカルベジロール錠1.25mgが査定された症例の相談を受けました(効能の知識が曖昧でうまく答えられませんでした😢).全剤型で「年齢、症状により適宜増減する」と記載されていますが,各効能をまとめておきます. 

📤 疾患から剤型
  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)、腎実質性高血圧症 ➜ 10mg、20mg
  • 狭心症 ➜ 10mg、20mg
  • 慢性心不全 ➜ 1.25mg、2.5mg、10mg
  • 頻 脈性心房細動 ➜ 2.5mg、10mg、20mg

📥 剤型から疾患
  • 1.25mg ➜ 虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
  • 2.5mg ➜ 虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全、頻脈性心房細動
  • 10mg ➜ 本態性高血圧症(軽症〜中等症)、腎実質性高血圧症、狭心症、虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全、頻脈性心房細動
  • 20mg ➜ 本態性高血圧症(軽症〜中等症)、腎実質性高血圧症、狭心症、頻脈性心房細動

(投稿者 川崎)

2023-09-26

心電図マイスターへの道 ①

二方向性心室頻拍
  • 1拍毎にQRS波の軸が180°変化する心室頻拍で,多形性心室頻拍の一種.カテコラミン誘発多形性心室頻拍(Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia: CPVT)に対する特異度は高いが,その出現率は必ずしも高くない(感度は50%程度).

等頻度房室解離
  • 房室解離(洞結節からの興奮伝導が伝わる前に房室結節が興奮)のうち,P波とQRS波の周期がほぼ同じ状態(P波がQRS波の前後に出没).英名は isorhythmic atrioventricular dissociation で,房室弁の閉鎖時に心房収縮が生じるため心房圧上昇(cannon a wave)と血圧低下を来たし得る.

顕性WPW症候群
  • A型(最多)はV1誘導のデルタ波は陽性で波形はR型(R>S)=ケント束は左房-左室.B型はV1誘導のデルタ波は陽性で波形はrS型(R<S)=ケント束は右房-右室.C型(稀)はV1誘導でデルタ波は陰性で波形はQS型(Rなし)=ケント束は中隔.
  • Ⅱ,Ⅲ,aVF誘導でΔ波がすべて陽性ならケント束は弁輪の前壁,すべて陰性なら弁輪の後壁,不一致なら弁輪の側壁に存在(例:デルタ波がV1誘導で陽性かつ波形はrS型,下壁誘導で全て陰性なら,ケント付着部位は三尖弁輪の後壁)
  • デルタ波の極性は(最も早いQRS)の開始点から20 msの地点で判定

心房粗動
  • 三尖弁輪を反時計方向に旋回する通常型(common type,約90%)と時計方向に旋回する非通常型(uncommon type)がある.心房粗動の約9割は通常型でV1誘導ではF波がP波(陽性)のように見える.一方,非通常型ではV1では陰性P波のようにみえる.(※この分類はWellsの分類で,最近では前者を通常型反時計回り(common type AFL),後者を通常型時計回り(reverse common type AFL)とする.この場合の非通常型(uncommon type AFL)は三尖弁輪以外を旋回する心房粗動)
  • P波が陽性か陰性か分かりにくいときは,他誘導で明瞭なP波を見つけて,その時相で判断すればよい


💁 心電図マイスターに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-09-25

第102回(2013)看護師国家試験より

問題 心音の聴取部位を図に示す。肺動脈弁領域の聴診部位はどれか。ただし、点線は心臓を示す。

 
 
 
 
 

判定

😉 聴診部位(覚え方は ➜ コチラ)
  1. 第2肋間胸骨右縁(2RSB)は大動脈弁領域
  2. 第2肋間胸骨左縁(2LSB)は肺動脈弁領域
  3. 第3肋間胸骨左縁(3LSB)はErb領域
  4. 第4肋間胸骨左縁(4LSB)は三尖弁領域
  5. 心尖部は僧帽弁領域

😳 独り言
  • 上記領域は単なる命名で個人差もあるから特にこだわる必要はないと思うけど、肺動脈領域とErb領域がごっちゃになっている方も少なくないのでは...
  • 聴診順は ① ➜ ⑤ でも ⑤ ➜ ① でもどちらでもOKです。心尖部に多い重要音(過剰音やランブル)をすぐ聞きたいか後に取っておきたいかの違いかな

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-09-24

ヘンダーソンの14の基本的欲求

  • The Nature of Nursing (1966) で挙げられた人の基本的欲求と基本的看護の構成要素
  • アメリカの看護師かつ教育者である Virginia Avenel Henderson(1897-1996)が提唱
  • 看護の指導者として フローレンス・ナイチンゲール に次いで有名だそうです(※)
  • 看護師は患者の欲求を判断する時,下記14項目を考慮する必要があると教育される

ヘンダーソンの14の基本的ニード(Wiki)
  1. 正常に呼吸する
  2. 適切に飲食する
  3. あらゆる排泄経路から排泄する
  4. 身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する(歩く、座る、寝る、これらのうちのあるものを他のものへ換える)
  5. 睡眠と休息をとる
  6. 適当な衣類を選び、着脱する
  7. 衣類の調節と環境の調整により、体温を生理的範囲内に維持する
  8. 身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
  9. 環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
  10. 自分の感情、欲求、恐怖あるいは“気分”を表現して他者とのコミュニケーションをもつ
  11. 自分の信仰に従って礼拝する
  12. 達成感をもたらすような仕事をする
  13. 遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
  14. “正常”な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる

💁 看護に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-09-23

リカンベント Recumbent bicycle

  • recumbent【形】仰向けの,横向けの,臥位の,横臥の
  • 背もたれ付きシートに坐り足を前方に向け行う屈伸運動
  • 脚力の伝達効率が安定しているため長時間の運動も可能
  • 通常の自転車に比べ前面投影が小さく空気抵抗が少ない
  • セミリカンベント型自転車エルゴメータはリハでも多用
自転車エルゴメータ(左)やリカンベント(中央・右)を用いた有酸素運動

(投稿者 川崎)

2023-09-22

心雑音の性状(quality, character)

👤 篠山重威先生が25年ほど前にまとめられた心雑音の日本語表現
  • rumbling(遠雷様,輪転様)
  • blowing(吸気性)
  • machinary(機械様)
  • musical(音楽的)
  • rustling, rippling(流水様,さらさら)
  • grating(すり砕くような,きしるような)
  • rasping(やすりをかけような)
  • sawing(鋸をひくような,曳鋸性)
  • pouring(液水性)
  • scratching(爬くような)
  • whistling(吹鳴性)
  • harsh(荒い,ざらざらした)
  • soft(やわらかい)


- 種々の心雑音の典型的な形 -

(投稿者 川崎)

2023-09-21

今週の一枚 🎯

変動する左側腹部痛(NRS 6-10)を訴える若い男性

🔍 左尿管結石による疝痛発作
  • COPEの疝痛パターン(NRSで5~10)は尿路結石を示唆
  • 本例は身体所見で左側の肋骨脊椎角(CVA)叩打痛も陽性
  • 随時尿検査では尿潜血および尿沈渣赤血球はいずれも陽性
  • 無晶リン酸も "3+" で検出(ただし検出=異常ではない)
  • 本例は左腎盂の拡大があり膀胱尿管移行部に5 mmの結石

👿 無晶性リン酸塩 
  • アルカリ性あるいは中性で認める無色かつ無晶性(結晶のように原子や分子が規則正しい配列をとらない)、無粒状の個体
  • 鏡検では無晶性尿酸塩と区別することはできないが、無晶性リン酸塩は無晶性尿酸塩と異なり60度に加熱しても溶解しない
  • 健常者にも出現し単独での病的意義はないが(単に尿アルカリ化を示唆)、頻回な燐酸塩尿例では尿路結石が多い(引用)
  • 一般に尿沈渣の結晶は尿路結石の成分の推定に役立つことあり(ただし結石成分と尿沈渣が一致しないことも稀ではない)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 積木/川崎)