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2022-03-02

福田式足踏み検査 Fukuda's stepping test

  • 一側性あるいは左右差のある両側性の前庭機能障害を検出する簡便な方法
  • 京都帝國大學の耳鼻科の福田 精先生が考案(耳鼻臨床 1943;38:193-9)
  • 定量的評価が可能な動的検査で,障害程度や患側の推定,経過観察に有用

📐 方法
  1. 平坦な硬い床の上で,両上肢を前方に伸ばして手掌を下に向け,足を揃えて立つ(音がしない静かな環境が必要)
  2. 眼を閉じ,大腿を水平まで上げて50歩/30秒ないし100歩/60秒の足踏みをする(できれば検査は3回繰り返す)
  3. 開始点から終了時の回転角(体軸の回転角度),移行角(体軸の移動方向の角度),移行距離,軌跡などを測定

📎 解釈と注意点
  • 一側性の前庭障害では多くは患側に偏倚するが,代償期においては健側へ偏倚することもある.著明な動揺や転倒は,両側前庭または中枢性障害,脊髄後索障害,末梢性疾患の急性期などが考えられる.また開眼での動揺や転倒は中枢性障害が疑われる.下肢に器質的障害および運動障害がある場合は,判定を阻害するため検査対象とならない.また被検者の転倒には充分注意する.


💁 前庭機能に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-05-14

人形の目現象 Doll’s eye phenomenon

  • 頭部を受動的に速やかに回旋させると,頭部の回旋方向と反対向きに眼球が偏倚する現象のこと
  • 頭位変換眼球反射(OCR),前庭眼反射(VOR),ヘッドインパルステスト(HIT)とも呼ばれる
  • 脳幹障害:同現象は低下しうる(HIT陽性)が、前庭―眼球運動系が障害されていない場合正常のこともある
  • 小脳障害:同現象は正常に保たれる(HIT陰性)ことが多い 前庭神経炎:同現象は低下・消失(HIT陽性) AICA梗塞:同現象は低下する(HIT陽性)こともある

頭部外傷で脳幹部障害の症例の動画(YouTUBEより)

👽 呟き
  • 少しややこしいのですが,「頭位回旋時に眼球復位あり」➜「人形の目現象が陽性」➜「正常」です.僕は長年,逆だと思っていました.
  • 人形の目が固定されているか動くかは人形次第ですが,例えば高級なフランス人形などをイメージすると理解しやすいかもしれません.

メニエル
(投稿者 川崎)

2021-05-17

ヘッドインパルステスト Head Impulse test (HIT)

例:重度の右末梢前庭病変を有する症例
  • 図A:患者に何らかのターゲットを注視してもらうよう依頼する
  • 図B:患者の頭を素早く(患者からみて)左に約15度回転させる
  • 図C:左の前庭機能は正常なので素早く目標物を注視可能である
  • 図D:患者の頭を素早く(患者からみて)右に約15度回転させる
  • 図E:右の前庭機能低下のためターゲットに視線を固執できない
  • 図F:少し遅れて目標物を注視する ➜ 同テスト陽性と判断する


👻 おまけ
  • 本テストはめまい症例で行われるHINTS(ヒンツ)のHI(Head Impulse/頭部回転刺激)です
  • もう一つのHIT(Heparin-induced thrombocytopenia/ヘパリン起因性血小板減少症)はコチラ

💁 めまいに関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄から選択可能)
(投稿者 川崎)

2024-03-19

日本内科学会 第243回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題14 痙攣発作にて発症したMOG抗体関連疾患(MOGAD)の1例
  • 自己免疫性脳炎の診断でステロイドパルス療法および抗てんかん薬投与を行った。血液・髄液検査にて抗MOG抗体陽性が判明しMOG抗体関連疾患と診断した。成人発症のMOG抗体関連疾患は視神経炎や脊髄炎として発症することが多い。

演題37 急激な経過で死亡したpheochromocytoma multisystem crisis(PMC)の1例
  • 来院時は不穏状態で,体温38.5℃・血圧200/110mmHg・心拍数142/分・SpO2 70%(カヌラ2L/分)で末梢冷感著明であった。腹部CTで長径7cm大の左副腎腫瘍を認め褐色細胞腫の合併が疑われた。著しい低左心機能を原因とした肺水腫であったためECMO/IABPを導入し血管拡張薬やα遮断薬を開始したが,5時間後に再度心停止となり永眠された。PMCは多臓器不全や精神症状,血圧異常など多彩な症状を示し,急性期での診断は困難である。

演題57 Eight-and-a-half症候群を呈しMRI拡散強調像は偽陰性であった橋梗塞の1例
  • One-and-a-half症候群に末梢性顔面神経(VII)麻痺を合併するものをeight-and-a-half症候群と呼ぶ。本例は左MLF(medial longitudinal fasciculus:内側縦束)症候群と左側方注視麻痺を認め,左one-and-a-half症候群であった。さらに左末梢性顔面神経麻痺も認め,eight-and-a-half症候群を呈しており,病巣は左橋下部被蓋の傍正中部と局在診断した。

演題139 胃glomus腫瘍の1例
  • 症例は50歳代,女性。卵巣腫瘍術前の胸腹部造影CTにて胃前庭部に18mmの濃染される粘膜下腫瘍を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃前庭部大弯に20mmの粘膜下腫瘍(SMT)を認めた。glomus腫瘍は四肢末端に存在し体温や血流調節に寄与しているとされるglomus体に由来する非上皮性腫瘍である。glomus腫瘍は胃の間葉系腫瘍の約1%と稀である。

演題191 児にFemoral Facial Syndromeを認めた2型糖尿病合併妊娠の1例
  • 第2病日に選択的帝王切開術施行。児は口唇口蓋裂,大腿骨・腓骨欠損、四肢拘縮・短縮を認めFemoral Facial Syndrome (FFS)が疑われた。FFSは大腿骨低形成や眼瞼斜列上・上唇の菲薄化・小顎症等特徴的な顔貌を呈する疾患で,本邦では数例しか報告されていない。


👻 当院からの発表
  • 演題228 膿胸治療中にバンコマイシン関連円柱腎症を来した1例(腎臓内科 野一色陽菜先生)

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-02-07

🌀 BPPVならぬPPPD

  • BPPV: Benign Paroxysmal Positional Vertigo(良性発作性頭位めまい症) 
  • PPPD: Persistent Postural-Perceptual Dizziness(持続性知覚性姿勢誘発めまい) 

😨 PPPD 
  • 持続性のふらつき・不安定感を中核症状とする機能性めまい疾患
  • 非回転性のめまいが3月以上継続し、立位・動作・視覚刺激で悪化
  • 何らかの前庭症状を先行後に発症することが多く、重症例が多い
  • 40-60代の女性に多く、めまい疾患の15~20%(BPPVに次いで多い)
  • 自然寛解が少なく、長期に生活機能障害や抑うつ・不安をきたす
  • 治療は認知行動療法、前庭リハビリ、薬物療法(SSRIとSNRI)など


- PPPDの診断基準 -

💁 めまいに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-06-29

今週のモーニングレクチャーより 👂

  • メニエール病の耳症状は片側で特に低音が障害されることが多い(低音障害型の感音難聴)
  • 原因が同定できないめまい(検査前に改善例を含む)は”めまい症”として生活指導+経過観察
  • 前庭代償とは患側の前庭障害に対して健側が順化するため自覚症状が改善する機序のこと

メニエル
(投稿者 川崎)

2019-03-01

めまい HINTS(ヒンツ)

急性前庭症候群(acute vestibular syndrome; AVS)が中枢性か末梢性の評価方法
初報はアメリカの脳神経内科医である Kattah JC ら(Stroke 2009;40:3504-10)

HINTS=Head-Impulse Nystagmus Test-of-Skew
  1. Head Impulse (頭部回転刺激)
  2. Nystagmus(眼振)
  3. Test-of-Skew(斜偏奇)
👀 一つでも陽性なら中枢性の感度100%,特異度96%(全部なければ中枢性のめまいをほぼ否定)

1.Head Impulse (頭部回転刺激) 
(VOR=前庭眼反射;半CP=規管機能低下;日耳鼻 2017;120:1224-30)

2.Nystagmus(眼振)

3.Test-of-Skew(斜偏奇)

(投稿者 川崎)

2023-07-14

騒音性難聴 Noise-induced hearing loss

  • 慢性音響性聴器障害で最もよくみられる職業性疾病の1つ
  • 85dB以上の環境は蝸牛に有害(短時間では難聴に至らず)
  • 1日8時間,5~15年以上の経過で徐々に難聴が発生,進行 
  • オージオグラムで左右差のない4,000Hzの低下(c5 dip)
  • 症状は高音性耳鳴りや難聴(電子体温計のブザー音など)
  • 有効な治療法なし(転職や耳栓などの防音保護具で対応)

騒音性難聴症例の典型的なオージオグラム

📢 c5 dip 深堀 
  • 十二平均律ではAが440Hzと定義され,12√2倍ずつ周波数を高くして音階が作られます.コードは,A, A#, B, C...と続くので,Cは440*(12√2)3の523.3 Hzとなります.ドイツ式のオクターブ表記で523.3 HzのCは,c2と表記されます.c5は3オクターブ高い音なので,523.3*23 = 4,186 Hz となるようです(引用) 
  • c5 dipのメカニズムについては,外耳道共鳴説・リンパの渦流説・血管血流説などが提唱されています.その中でも,この周波数領域が解剖学的に固有蝸牛動脈と前庭蝸牛動脈蝸牛枝の吻合部に相当するため,血流障害に基づく有毛細胞障害が起こりやすいと説明する血管血流説が最も合理的と考えられるそうです(引用)

💁 耳に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-08-24

マン検査 Mann's test

  • 静的に体平衡検査(深部感覚)を判定する方法(≒ 足を前後にそろえたロンベルグ試験)
  • 両足を前後一直線上に揃えて開眼と閉眼でそれぞれ30秒間直立して転倒傾向の有無を観察
  • 姿勢が不安定なために転倒し易く高齢者では偽陽性が多くなる/小児や高齢者には不向き
  • 開眼,閉眼時共に30秒以内の転倒傾向を異常と判定する(ロンベルグ試験とは異なる基準)
  • 足の前後を変えても同一方向に転倒する時は,同側の内耳~前庭神経~小脳の障害を疑う


💁 小脳に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-07-06

悪心・嘔吐の原因:NAVSEA

  1. Neuro CNS ➜ 頭蓋内病変、脳血管障害
  2. Abdominal ➜ 消化管および消化器腹膜
  3. Vestibular ➜ 前庭神経刺激
  4. Somatopsychiatric/Sympathetic ➜ 心身症・精神疾患・交感神経系の亢進
  5. Electrolyte/endocrinologic disorder ➜ 電解質異常・内分泌疾患
  6. Addiction ➜ 薬物中毒

😶 呟き
  • この略語は一体なんなんだと思いましたが,nausea(嘔気)をモジったものと教えてもらってちょっと納得しました(マッスル先生ありがとう)
  • ただし英語でNAVSEAと言えばThe Naval Sea Systems Command (海軍艦艇システムコマンド)のことのようですが...公式Twitterがなかなかシブい

💁 語呂合わせに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2024-09-26

今週の一枚 🎯 を予想しよう

数日前より大きなげっぷをするようになった症例:どんな画像?



(投稿者 川崎)

2026-01-06

脳死判定

  • 自発呼吸が消失し脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態で,法に規定する脳死判定(下の3項目)を行って診断
  • 第1回目の脳死判定が終了した時点から6歳以上では6時間以上,6歳未満では24時間以上を経過した時点で第2回目の脳死判定を開始

    • 深昏睡
    • 瞳孔散大固定・脳幹反射(対光反射,角膜反射,毛様脊髄反射,眼球頭反射,前庭反射,咽頭反射,咳反射)の消失  
    • 平坦脳波(高感度記録を含むことが望まれる)

(投稿者 川崎)

2019-08-31

耳管開放症 Patulous Eustachian tube

心不全で入院中の症例と朝の回診での会話
  • 患者 「先生,最近なんか耳も調子が悪いんです」
  • 医師 「それはお困りですね.どう悪いのですか?」
  • 患者 「TVの音なんかはちゃんと聞こえるんです」
  • 医師 「耳鳴りがあるのですか?それとも痛み?」
  • 患者 「なんか自分の声が割れて聞こえるんです」
  • 医師 「自分の声だけが…ウ〜ん,なんだろう?」

👿 耳鼻咽喉科に紹介して耳管開放症と診断された



耳管開放症 👂 (日耳鼻 2016;119:1336-72)
  • 症状 自声強聴,自己呼吸音聴取,耳閉感
  • 特徴 症状の体位による変化(臥位で軽快)
  • 診断 鼓膜の呼吸性動揺,話声聴取,耳管機能検査,座位耳管CT
  • 治療 原則は保存的治療,必要なら耳管ピン挿入術

耳管開放症の症例では鼻すすり癖が稀ではない(448例中113例:25.2%).これは鼻をすすることにより耳管が閉塞して快適な状態となるためである.


🙉 耳の模式図

1=頭蓋骨,2=外耳道,3=耳介,4=鼓膜,5=卵円孔,6=ツチ骨,7=キヌタ骨,8=アブミ骨,9=前庭,10=蝸牛,11=聴神経,12=耳管

(投稿者 川崎)