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2023-05-31

最近の用語

💛 HSP(エイチ・エス・ピー)
  • Highly Sensitive Personの略で「感受性がとても強く敏感気質な人」
  • 米国の心理学者 Aron が1962年に提唱(New York: Broadway Books)
  • HSPスケール(27項目:低感覚閾・易興奮性・美的感受性)で診断
  • 全人口のある程度がHSPであると思われる(例,20%~30%:引用

💚 CQ(キューシー)
  • Quality Controlの略で本来は「品質管理」を意味
  • CQサークルは自発的に小グループで行う管理活動
  • 互いの活動を発表する(CQ大会やQC活動発表大会)
  • 自己と相互の啓発から最終的に全体の体質を改善

💁 用語に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-30

尿酸:覚え書

  • 痛風はおよそ男性120万人と漸増,女性は5万人で一定(厚労省)
  • 高尿酸血症に対する治療薬は生成抑制薬と排泄促進薬に大別可
  • 一次痛風は54%が排泄低下型,10%が産生過剰型,30%が混合型
  • 2011年に42年ぶりの新しい生成抑制薬(フェブキソスタット)
  • 近年,41年ぶりに新たな排泄促進薬(ドチヌラド)が販売開始
  • 尿酸の排出は2/3が腎臓経由で尿へ,残る1/3が腸管経由で便へ
  • ドチヌラド(ユリス®)は腎臓の再吸収過程を選択的にブロック
  • その高選択性のため尿酸結石の発症はほぼ考慮する必要がない
  • ガイドラインの推奨値6 mg/dlの達成率は痛風症例でも半数未満
  • 血清尿酸値の上昇は全死亡,心不全入院と有意に関連する(
  • 利尿薬の尿酸上昇はeGFR低下+NPT4を介す排泄の競合的阻害
  • 心不全患者の血清尿酸目標値は7.0 mg/dL以下(ただし推奨Ⅱb)

💁 尿酸に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-29

Katz Index カッツインデックス

  • 基本的日常生活動作(BADL)の評価法(他にBarthel IndexやDASC-21)
  • 米国の予防医学の医師 Katz らが原版を提唱(JAMA 1963;185:914-9
  • 入浴,更衣,トイレ使用,移動,排尿排便自制,食事の6領域で評価
  • 自立 / 介助の尺度でA(すべて自立)~G(すべて介助)の7段階判定

💁 ADL に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-28

市販後調査と言ってもいろいろあります

  • 主に販売前の臨床試験で得られなかった情報を収集するために行われる
  • 製造後販売後調査(PMS: Post Marketing Surveillance)と同意語である
  • 使用成績調査,製造販売後データベース調査,製造販売後臨床試験の3種
  • 使用成績調査は一般と特定調査および使用成績比較調査に細分類される


(投稿者 川崎)

2023-05-27

医療現場:リカレントとリスキリング

😐 独り言
  • どちらかと言うと閉鎖的であった医療業界にも,他業種の参入が相次いでいます.そして各種会議では医師やメディカルスタッフが苦手なビジネス用語が飛び交うようになりました.リカレントリスキングも何かと耳にします.

📀 リカレント(recurrent)
  • 形容詞の再発性・回帰性で,生涯学習を意味する
  • オンライン講座などを活用して自主的に実施する
  • 例:リカレント教育に取り組んで他施設の部長へ

💿 リスキリング(reskilling)
  • 現在と全く異なる分野の技術や知識などを身につけること
  • 病院発展のため,医師やスタッフが依頼されることが多い
  • 例:リスキリングで診療看護師(Nurse Practitioner:NP)

💁 ビジネスに関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-05-26

悪性高熱症

  • 悪性症候群は麻酔薬による副作用である悪性高熱症(Malignant Hyperthermia)と症状が類似していることから、かつてその発症機序は悪性高熱症と同様と推測する考えがあった。


悪性症候群 悪性高熱症
原因薬剤 抗精神病薬,パーキンソン治療薬 揮発性吸入麻酔薬,脱分極性筋弛緩薬
機序 ドパミン神経系仮説(山脇ら,1986) 骨格筋Ca放出異常(Endoら,1983)
所見 発熱,筋強剛,自律神経症状(発汗・頻脈・尿閉など),CK高値,白血球増多 発熱,筋強剛(開口障害),頻脈,コーラ色の尿,K・乳酸・ミオグロビン・CK高値
治療 全身管理,ダントロレンナトリウム 全身管理,ダントロレンナトリウム
その他 - 遺伝性(常染色体顕性)

参考)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル悪性高熱症患者の管理に関するガイドライン2016

(投稿者 積木/川崎)

論文 🏆 HOCMの身体所見

  • 当院の循環器内科専攻医である野口先生が経験した症例が出版されました
  • 典型的なフィジカル所見を示した閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の1例です
  • 頸動脈は二峰性拍動(pulsus bisferiens)でspike and dome型の波形でした
  • 心尖もatrial kickと抬起性拍動のダブルインパルス(double apical impulse)
  • 心音は収縮中期の過剰音(偽駆出音/SAM音)およびそれに続く収縮期雑音


😀 追加コメント
  • 僧帽弁が収縮期に前方運動(SAM; systolic anterior motion)して非対称性中隔肥大と接触する時に生じる偽駆出音は是非とも覚えておきたい過剰音です.駆出性雑音が続く音感は独特であり,フィジカル診断の大きな武器になります.
  • 僕自身も外来でフォロー中のHOCM例で心音をもう一度注意して聞きなおしてみると,この音が決して稀でないことが分かりました.論文には音声ファイルが添付されていますが,ダウンロードや解凍が手間なので下記にアップしておきます.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-05-25

今週の一枚 🎯 座位アンサム徴候

慢性心不全の増悪で入院した高齢者の手背静脈

👽 解説
  • 端座位の卓上で手背静脈が隆起(高齢者では健常者でも稀でない)
  • 左鎖骨レベルでも手背静脈の怒張は消失せず ➜ 末梢静脈圧の上昇
  • Anthem(国歌斉唱)signは末梢静脈虚脱による中心静脈圧判定法
  • アンサム徴候は30度臥床で判定するが座位でも可能(特異度上昇)

 😁 独り言
  • 手背静脈と右房の解剖的つながりを考えると,末梢静脈を用いた中心静脈圧の推定に懐疑的な方が多いことにも納得できます.ただし本例で示したよう同一症例内で負荷に対する反応は,ある程度信用していいのではと思っています.
  • 末梢静脈を用いた判定方法は患者さんとのラポール形成にも役立ちます.とても簡便なため患者さんやその家族の方にも(頸静脈より)受けがいいと思います.患者さん自身がなにげに手を上下させていることを見ることがあります.

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(投稿者 川崎)

2023-05-24

EGSYSスコア

👿 EGSYSスコア
  • 心血管性失神か否かを鑑別するために作られたスコア
  • EGSYS = Evaluation of Guidelines in SYncope Study
  • イタリアから提唱された方法(Heart 2008;94:1620-6) 
  • 6つの臨床変数から合計得点を算出する(-2点~12点)
  • 3点未満なら心臓性は可能性低(LR, 0.12-0.17:引用
  • 4点以上で心臓性失神の感度95%,特異度61%(引用
  • 614日追跡で4点以上は死亡率が上昇(入院推奨:引用

👾 6つの臨床変数
  • 失神前の動悸 ➜ +4点
  • 心電図異常や心疾患の既往 ➜ +3点
  • 労作中の失神 ➜ +3点
  • 仰臥位での失神 ➜ +2点
  • 自律神経症状 ➜ -1点
  • 原因となる誘因 ➜ -1点 

復習 👽 失神の チェス・ルール(別名San Francisco Syncope Rule)

(投稿者 川崎)

2023-05-23

個室の対義語とは...

  • 一般に大部屋や総室,相部屋などと呼ばれていますが多床室という言葉もあります
  • 多床室がより正確な表現と思われますがあまり分かり易い用語ではないと考えます
  • 一方,通常の総室(従来型多床室)に対して個室的多床室もあります(下図参照)
  • 米国ではヒルバートン法 (2006年改)で「新築病院はすべて個室」と決まっています

様々な病室の平面図

(投稿者 川崎)

2023-05-22

ベッカー母斑 Becker's nevus

  • 表皮,色素細胞(メラノサイト),毛包の異常増殖で通常は肩または体幹上部に発生
  • 男女比は5:1で男性に多く,男性の推定有病率は0.5%で,すべての肌タイプに発生
  • 原因不明であるが遺伝しないと考えられている(思春期から顕性化する:20〜30代)
  • nevus(英国:naevus)の発音 níːvəs/ニーヴァスで複数はnevi(níːvài,ニーヴァイ)
  • 名称の由来はアメリカの皮膚科医 Samuel William Becker による1948年の報告(
  • 良性病変で美容目的を除き治療不要(状況に応じカウンセリングやレーザー治療など)

参考)DermNet,他

15歳で気づいた小さい色素沈着斑が増大した29歳患者

💁 母斑に関する過去の投稿 ➜ コチラ
ベッカー母斑 Becker's nevus
(投稿者 川崎)

2023-05-21

急性大動脈解離の降圧療法

👥 先日のERカンファで...
  • 急性大動脈解離の血圧管理にはニカルジピン(ペルジピン®)の持続静注を行うことが多いと思います.でも「ベータ遮断薬ってどうなの?」という意見がでました.うまく答えられなかったので調べてみました.

📕 合同ガイドライン2020年改訂版より抜粋(一部改変)
  • 大動脈疾患では130/80 mmHg未満を目標に厳格な血圧管理が望まれる.β遮断薬は慢性大動脈解離における解離後のイベント発生率の低下や,Marfan症候群において瘤拡大速度の低下をもたらし,予後を改善する.一方AAAに対しては,β遮断薬を含むいずれの降圧薬も瘤拡大を抑制しない.したがって,大動脈疾患における降圧薬の選択は,併存疾患との兼ね合いも含め,短期・長期予後や薬物コンプライアンスを考慮して選択すべきである.併存疾患のない高血圧に対しては,Ca拮抗薬,レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB・ACE阻害薬),利尿薬の3剤の中から選択する.


👶 独り言
  • ガイドラインでは急性期降圧と慢性期降圧が明確に区別されて記載されていませんでした.ニカルジピン(ペルジピン®)で急性期を乗り越えて,その後に上記表の活用がいいのかもしれません.しかし大動脈瘤に対してはベータ遮断薬を含む降圧薬の効果が乏しいことは意外でした.
  • 降圧療法ではCa拮抗薬はとても重宝します.しかしマルファン症候群では注意する必要があるというツイートを最近見かけました().動物実験レベルですがCa拮抗薬は瘤拡大や解離の懸念があり第一選択としては使用されないようです(Tzu Chi Med J 2021;34:44-8).

💁 大動脈解離に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-20

回復体位 Recovery position

  • 自発呼吸はあるが意識がない傷病者に推奨される体位
  • 上側前腕を顎下頭部後屈顎前方上側下肢は90度
  • 胃内容物が問題になる時は側臥位(胃底部を下:図)
  • 意識がある傷病者では本人が最も楽な体位でよい(

- 回復体位 -

💁 体位に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-19

介護老人保健施設の他科受診

  • 介護老人保健施設の入所者が保健医療機関を受診する時(いわゆる他科受診),医療機関は原則その費用を請求できません(介護保険優先の調整).
  • 介護老人保健施設もその医療コストを別途算定できないため(施設サービス費に含まれる),原則的に介護施設の全額負担(持ち出し)になります.
  • ただし一部の検査や行為は算定できるため,保健医療機関は算定の可否をある程度把握したうえでの診察が求められます(必要なら入院後の検査).

👀 算定の可否(目安です)
  • Q1 血液検査
  • Q2 心電図
  • Q3 胸部X線・腹部X線
  • Q4 エコー検査
  • Q5 CT/MRI
  • Q6 内服薬
  • Q7 点滴
  • Q8 酸素吸入
  • Q9 胃瘻交換
  • Q10 摘便
  • Q11 鼻出血止血
  • Q12 尿道カテーテル


(投稿者 川崎)

2023-05-18

今週の一枚 🎯 扁平胸郭とフーバー徴候

激しい運動時に息切れを訴える症例

👾 解説
  • 漏斗胸ではないが胸板は薄くで呼吸は腹式
  • 吸気(腹部が膨らむ)時に肋間陥凹(矢印)
  • 心機能や冠動脈に問題はなくCOPDも認めず
  • 最終的に自覚症状は扁平胸郭に関連と判断

独り言 💤
  • フーバー徴候(Hoover's sign)は吸気時に下位肋間が内方に陥凹する現象で,通常はCOPDなどの肺疾患を示唆します(自験例).
  • 心不全でも出現することがありますが(自験例),その頻度は息切れ症例の3%程度と稀です(Rev Clin Esp 2005;205:113-5
  • 本例では扁平胸郭があり吸気時の胸郭の拡張が不十分であるため,本人が以前から無意識に腹式呼吸を行っていたのかもしれません.
  • ただし自転車エルゴメータでは運動耐容能は年齢相応に保たれていたため,特に追加加療(呼吸指導を含む)は行いませんでした.

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(投稿者 川崎)

2023-05-17

低カリウム血症:随時尿>20

😙 低カリウム血症の診断
  1. 低K血症の原因は偽性低カリウム血症,細胞内へのK移動,K欠乏(摂取不足や消化管・腎臓から喪失)に大別:鑑別には要蓄尿(下図)
  2. 蓄尿が難しい時は随時尿からカリウム排泄率を計算[(尿中カリウム➗血清カリウム)✖️(血清Cre➗尿中Cre)✖️100,正常値は10~20%]
  3. より簡便には随時尿K濃度を活用:<10~20mEq/lなら欠乏.上昇なら原発性アルドステロン・各種利尿剤・過剰K・異化亢進(参考

- 低カリウム血症の原因と鑑別 -

💁 随時尿に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-16

茹でガニ・腹痛・下痢

🦀 かに
  • 蟹を食べた後の体調不良(かゆみや皮疹)なら甲殻類アレルギーですが,下痢と腹痛なら腸炎ビブリオを思い出したい

💦 腸炎ビブリオ感染症Vibrio parahaemolyticus infection)
  • 腸炎ビブリオ(V. parahaemolyticus)の病原性菌株(1%)によって生じる腸管感染症
  • コレラ菌と同じビブリオ属菌で一端に1本のべん毛をもって活発に運動する短桿菌である
  • 海水から汽水域(淡水域への推移帯)に生息し塩分(1~8%)要(61℃10分間で死滅)
  • 腸炎ビブリオは15℃以上の海水の中で活動を始めるので水温の高い夏場に発生しやすい
  • 6-24時間の潜伏後に下痢症(水様性),腹痛,嘔気・嘔吐,発熱,悪寒,しぶり腹など
  • 刺身・寿司(貝除)49%,貝類16%,焼魚等の調理品12%,ゆでがに等のボイル類10%
  • 近年は発生頻度が低下:2017年食中毒統計資料では総数16,464人で腸炎ビブリオ97人
  • 診断は新鮮便を直接TCBS寒天培地に塗抹し37℃で一夜培養(特徴ある集落を形成する)
  • 治療は対症療法(多くは3~5日で回復:強力な止瀉薬は菌の排除を遅らせるので回避)
  • 食品衛生法上での取り扱いは食中毒が疑われる時24時間以内に最寄りの保健所に届け出


- 日本感染性腸炎学会資料の入院例 -

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(投稿者 川崎)

2023-05-15

網膜硝子体手術 Vitrectomy (surgery)

  • 眼の硝子体〜網膜疾患に対する手術(通常局麻で20分〜1時間)
  • 強膜に設置したトロッカーから器具を眼内に挿入して行われる
  • 黄斑上の膜除去や内境界の膜剥離など高度な熟練を要する手術
  • 合併症は感染症や網膜剥離,角膜障害,緑内障,黄斑浮腫など
  • 手術装置の進化に伴い(下図)手術を行う施設や術者が増加中


主流の小切開硝子体手術(micro incision vitrectomy surgery: MIVS

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(投稿者 川崎)

2023-05-14

インスピリス(Inspiris)RESILIA大動脈弁

  • 生体弁には通常,ウシ心膜弁とブタ大動脈弁の2種類がある
  • 僧帽弁位での生体弁の耐久性は大動脈弁位よりもやや劣る
  • インスピリスは近年登場の抗石灰化処理されたウシ生体弁
  • 石灰化の原因グルタルアルデヒドを除くRESILIA心膜を使用
  • エドワーズライフサイエンスが販売(機器承認カタログ
  • 将来のTAVIに備えて弁輪が拡張する機能も内蔵(下図参照)


インスピリス(Inspiris)RESILIA大動脈弁

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(投稿者 川崎)

2023-05-13

チェリー・ピッキング&ヘーゲル

🍒 チェリー・ピッキング(cherry picking)
  • 事例から自分に有利な証拠のみを選ぶこと(結論ありき)
  • 由来はサクランボで熟した果実のみを選び未熟ものを排除

🎓 ヘーゲルHegel GWF) 
  • ドイツの哲学者(1770-1831年)で弁証法という哲学的手法を完成
  • これは対立する立場を維持して上位の解を見つけるという思考技術

😐 独り言
  • 日常臨床での判断はヒューリスティック(経験則/第六感的な直感/ゲシュタルト)による部分が少なくありませんが,臨床推論に潜む様々な罠(認知バイアス)に陥らないことが大切
  • 同様に臨床研究では,結論に都合の悪いデータや他の報告を無視(チェリー・ピッキング)するのではなく,ヘーゲル的な議論から,よりより高みに到達することが大切には同感(

(投稿者 川崎)

2023-05-12

健康運動指導士 Health Fitness Programmer

  • 保健医療関係者と連携し安全で効果的な運動を実施するための運動プログラム作成や実践指導計画の調整等の役割を担う
  • 昭和63年厚生大臣の認定事業で創設(公的資格),平成18年〜健康・体力づくり事業財団の事業として継続(民間資格
  • 養成講習会を受講または養成校の養成講座を修了し認定試験に合格する必要がある(その後は5年毎の更新が必要である) 
  • 受講133,650円~288,750円,認定試験13,619円,登録料24,200円,5年毎に再度登録費用22,000円を要する(参考
  • 令和4年12月1日現在,健康運動指導士として登録されている方は全国で18,244人である(女性11,594人,男性6,650人)

健康運動指導士の活動状況(平成18年)

💁 民間資格に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2023-05-11

今週の一枚 🎯

他科で加療中の担癌症例(胸痛なし)



(投稿者 川崎)

2023-05-10

尿失禁 Urinary Incontinence

🐦 復習
  • 尿失禁とは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう症候名
  • 尿失禁は加齢と伴に増加して女性に多く男性の約2倍の頻度
  • 男性では大半が60歳以上,女性は40歳以上の約40%が経験
  • 男性尿道は長さは男性では約20 cmであるが女性では約4 cm


🐤 分類
  • 腹圧性 ➜ 咳などの腹圧上昇時に膀胱が収縮せずに尿漏れ
  • 切迫性 ➜ 過活動膀胱などで強い尿意とともに尿が漏れる
  • 溢流性 ➜ 薬剤や糖尿,前立腺肥大症の排尿障害で生じる
  • 機能性 ➜ 膀胱機能とは無関係で歩行障害や認知症で失禁
  • 反射性 ➜ 下肢麻痺など脊髄障害で兆候や尿意なく尿漏れ


💁 尿失禁に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-09

10年後の心房細動予測スコア

  • 吹田研究のデータを用いた10年後の心房細動(AF)罹病率を予測するリスクスコア
  • 国立循環器病研究センターの予防医学科のKokuboらが報告(Circ J 2017;81:1580-8
  • 吹田市人口登録簿から無作為に抽出された95,180人年の追跡で,311件にAFが発生
  • 欧米人以外を対象とした初めてのスコアで健診や一般診療から得た指標で算出可能
  • 具体的には年齢・性別・冠危険因子・過度の飲酒・心雑音などから計算する(下表)
  • スコアが2以下,10~11,16以上なら10年内にAF発症の可能性が各々1%,9%,27%
  • 目的は高リスク者に対しては早期に心電図検査を実施したり生活習慣の改善を促す

本邦の10年後の心房細動予測スコア

(投稿者 川崎)

2023-05-08

低体温と不整脈

🐶 動物実験
  • 血液希釈されていない犬を20°Cまで急冷すると50%が心停止に至った
  • 26°Cに冷却した犬の心室筋ではVFやVTは冷却よりも再加温中に頻繁
  • 21°C猫で通常量強心剤(アドレナリン他)が心室性不整脈を全例誘発

👴 ヒトデータ
  • 深部体温が16.9°C~29°Cの偶発的低体温19例では7人がVF, 2人は心静止
  • 日本の60人の検討では深部体温>26°CでVF を発症した患者はいなかった
  • 低体温療法中に低カリウム血症+QTc間隔延長なら平均34.7°CでVTが発症


低体温時の一般的な電気生理学的所見
洞調律 房室伝導 心室脱分極 心室再分極 不整脈
軽度〜中等度
(>30度)
不変〜低下 不変〜低下 短縮〜不変〜延長 延長 心房細動,心室期外収縮,心室頻拍
高度
(<30度)
停止まで延長 延長〜停止 遅延〜不変 延長,消失 心房細動,心室細動心静止

🍧 低体温に伴う様々な変化
  • 電解質 ➜ 寒冷利尿による喪失と細胞内移動により低下するため,低Ca血症,低K血症,低Mg血症,低P血症を認める.逆に復温期では高カリウム血症に注意
  • 凝固系 ➜ 35°C以下では血小板機能低下や血小板数の減少が認められる.33°C以下では凝固に関わる酵素活性の低下から出血傾向となる. 
  • 免疫系 ➜ 白血球の遊走能・貪食能および炎症性サイトカイン産生・反応の低下が生じる.また感染時に白血球数やCRPが必ずしも上昇しない
  • 耐糖能 ➜ 低体温ではインスリンの感受性が低下し,膵細胞からのインスリン分泌ならびに糖代謝も低下するため高血糖が助長される.

💁 低体温に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-07

糖尿病:高くてもいいのです

問題 糖尿病の評価で高い方がよい指標は?

 
 
 
 

判定

😎 1,5AG(読み方:イチゴエージー)
  • 血中に存在するぶどう糖類似の糖類で主に食物から摂取される
  • ただし食事に影響されずほぼ一定値(基準値は14μg/mL以上)
  • 1,5AGは尿糖が多いと低下する(尿細管での再吸収で競合阻害)
  • つまり血糖コントロールの指標の中で唯一、値が高いほうが良い
  • 良好HbA1cでも1,5-AGが10μg/ml以下なら血糖の大変動を示唆
  • 注意点:α-グルコシダーゼ阻害薬やSGLT2阻害薬の内服中は低下
  • 一部の漢方薬は多量に含(加味帰脾湯,葛根湯,小柴胡湯など)


(投稿者 川崎)

2023-05-06

ハーラー症候群 Hurler syndrome

  • 概要 ムコ多糖症Ⅰ型の一つで最重症型(他の型はシャイエ症候群で緩徐に進行)
  • 原因 α-L-iduronidase の先天的な欠損による常染色体の潜性(劣性)遺伝性疾患
  • 由来 独の小児科医Hurlerの1919年の報告(実は1917年にHunterが報告すみ:
  • 疫学 ムコ多糖症Ⅰ型の発症は約10万人に1人と報告(本邦では約70症例が報告)
  • 特徴 特異的顔貌,精神運達障害,肝脾腫,眼耳の疾患,関節拘縮,ヘルニア他
  • 診断 尿中ウロン酸測定(1次検査),血中α-L-イズロニダーゼ活性測定(確定)
  • 治療 酵素補充療法や造血細胞移植(進行は完全には止められない)+対症療法
  • 予後 病初期に診断して治療を開始することができた症例では予後は比較的良好


(a,b)生後6ヵ月のハーラー症候群男児,(c)ハーラー症候群の4歳少女,(d)3歳のHurler-Scheie症候群の男児,(e)4歳のHurler-Scheie症候群の男児

(投稿者 川崎)

2023-05-05

首の回しすぎに要注意

息切れを訴える症例(端座位)

🐦 解説
  • 顔がほぼ90度左側を向いている ➜ 各種頸静脈にも影響あり
  • 内頸静脈 ➜ 拍動を視認し吸気後は上縁上昇(頸部の上1/3)
  • 外頸静脈 ➜ 胸鎖乳突筋までは怒張(吸気負荷への反応なし)
  • 前頸静脈 ➜ 安静時に周期的拍動が明瞭(上縁は内頸と同じ)
  • ただ吸気では前頸静脈上縁はあまり変わらない(内頸と乖離)

😀 ショート動画は多くを語る
  1. 安静時の前頸静脈の心周期に伴う明瞭な拍動(上縁の上下運動)を考えると,外頸静脈にも同様の拍動が観察されてしかりです.よって本例は顔を左方に強く向けたことで外頸静脈が胸鎖乳突筋に圧排されていると考えられます.つまり「頸静脈拍動の評価時には首の回転はほどほどに」
  2. 内頸静脈の拍動上縁は吸気負荷後にかなり上昇しています(広義のクスマウル徴候が陽性).一方,明瞭な拍動を認めた前頸静脈の上縁は,吸気負荷でもさほど上昇していません.つまり「中心静脈圧の推定に,内頸静脈以外はあまり頼ってはいけない(特に周期的拍動を欠く時)」
  3. 「内頸静脈が座位で視認できる時に,吸気負荷で拍動が消失する症例があるのでは...」という意見があるようです.一見もっともらしく聞こえますが,個人的にはあまり経験したことがありません.つまり「座位で陽性ならクスマウルで悪化(吸気陽性)」😑 これは現在調査中です

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2023-05-04

循環器診療のコスト

  • 先日,心臓MR(造影)のコストを患者さんに聞かれた時,歯切れ良い答えができませんでした.反省を込めて循環器関連検査の保険点数を調べてみました 😐 もちろん通常の診療では1点10円

※下記の点数は目安です(条件によって変動)

心電図
  • 12誘導 130点
  • 運動負荷 380点
  • ホルター 1,750点(8時間以上)

他の生理検査
  • 心音図 150点(心機図を含)
  • ABI(血管伸展性検査)100点
  • 皮膚灌流圧(SPP)100点
  • 体成分分析(InBody)60点 
  • 心肺運動負荷 1,600点

胸部X線
  • 1方向 210点
  • 2方向 287点

血液検査
  • BNP 133点
  • NT-proBNP 136点
  • ANP 221点
  • トロポニン 112点
  • Dダイマー 128点

エコー
  • 経胸壁心 880点
  • 経食道心 1,500点
  • 負荷心 2,010点
  • 頸動脈 350点
  • 下肢血管 450点
  • 腎動脈 530点

CT
  • 単純 1,470点
  • 造影 2,970点(心臓なら+600点

MRI
  • 単純 1,900点(心臓なら+400点
  • 造影 3,150点(心臓なら+400点

核医学
  • 運動負荷 約8,000点
  • 薬剤負荷 約9,500点
  • 安静検査 約6,000〜7,000点

💁 保険点数に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-05-03

シャルコー足 Charcot foot

  • 深部知覚障害を伴う状況で足部や足関節に非感染性の破壊型関節障害を生じた病態
  • 初報は仏蘭西の病理神経学者Charcot(Arch Des Physiol Norm et Path 1868:1;161-71)
  • Charcot neuroarthropathy(シャルコー関節症)や糖尿病(性)足とも呼ばれている
  • 原因は不明(不適切血流による骨吸収の進行あるいは繰り返される微細損傷の蓄積?)
  • 神経障害の原因は糖尿,脊椎疾患,先天性無痛覚症,アルコール多飲,ステロイド他
  • 糖尿病症例の約1%にCharcot関節症が合併(糖尿病タイプや重症度,性別とは無関係)
  • 症状は不安定歩行,後足部の内外反変形,足部アーチの扁平〜ロッカーボトム変形ほか
  • 治療は下肢挙上,保護,靴型装具,進行例は外科的手術,胼胝・潰瘍なら下腿切断など


進行したシャルコー足でロッカー底変形を生じている

(投稿者 川崎)

2023-05-02

Life's Simple 7(生活の簡単な7つ)

  • 米国心臓協会は2020年にすべての米国人の心血管疾患と脳卒中による死亡を20%削減することを目標に掲げた.
  • その目標達成のために利用可能な最良の証拠としてLife's Simple 7と呼ばれる健康の処方箋を作成した(下表)
  • 4つの行動(禁煙・体重管理・食事調整・身体活動)と3つの値(血圧・総コレステロール・血糖)から成る.
  • 各因子は理想・中間・不良に分類され,7指標すべてが理想的な個人は心血管の健康状態が理想的と判断される

  1. 喫煙をやめる ➜ 理想:1年以上吸っていないまたは吸ったことがない
  2. 上手に食べる ➜ 理想:果物・野菜>4.5カップ/日以上,魚≧2人前/週など
  3. アクティブになる ➜ 理想:中程度〜激しい運動 (早歩きなど) >150分/週など
  4. 体重を減らす ➜ 理想:BMIが18.5~25 kg/m2
  5. 血圧を管理する ➜ 理想:血圧<120 mmHg/80 mmHg
  6. 脂質を管理する ➜ 理想:総コレステロール<200 mg/dL
  7. 血糖値を下げる ➜ 理想:空腹時血糖<100 mg/dL

(投稿者 川崎)

2023-05-01

ナクソス病 Naxos disease

  • 概要 羊毛状の毛髪と掌蹠角化症,および心筋症を合併した病態
  • 名称 ギリシャのナクソス島の家系(Br Heart J 1986;56:321-6
  • 原因 デスモソーム蛋白の遺伝子変異(常染色体の劣性遺伝疾患)
  • 心臓 不整脈原性右心室心筋症(多くは小児期に症状が出現する)
  • 疫学 ギリシャの島々で1人/1,000人(他にトルコやイスラエル)
  • 予後 年間の疾患関連死亡率は約3%,突然死は2.3%程度と不良
  • 治療 心不全治療,抗不整脈薬,除細動器植込み,心臓移植など


ナクソス病の皮膚表現型: 羊毛 (A),手掌角化症 (B),足底角化症 (C)

(A) LBBB 形態の心室頻拍,(B) イプシロン波を伴う RBBB (矢印),(C) 拡張した右心室,(D) TAPSE 7 mm(右心室収縮機能が不良)

(投稿者 川崎)