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2020-09-21

食道憩室 Esophageal diverticulum

🚑 臨床現場
  • 先日,アブレーション前の経食道心エコー図で,プローブの挿入が困難な症例を経験しました.最終的に食道憩室があることが判明しました.経食道心エコー図のガイドラインにも食道憩室はしっかり明記されていますが…

🍚食道憩室 
  • 頻度 エックス線造影検査で1.03%~1.4%,内視鏡で1.6%
  • 症状 無症状~つかえ感,嚥下障害,胸痛,胸焼け,咳嗽など
  • 成因 内圧性憩室,牽引性憩室,内圧牽引性憩室の3つに分類
  • 部位 咽頭食道15.8%,気管分岐部73.0%,横隔膜上11.2%
  • 治療 無症状や小憩室では不要/強い症状やに瘻孔では手術


👹 経食道心エコー図の原則禁忌(ガイドライン2010年改訂版)
  • 食道狭窄・食道静脈瘤・潰瘍・腫瘍・憩室・食道裂孔ヘルニア
  • 胃・食道手術後
  • 頸椎の可動性低下の認められる状態
  • 頸部への放射線治療後
  • 検査への理解・同意・協力が得られないなどの場合

👺 経食道心エコー図の主な合併症(ガイドライン2010年改訂版)
  • 痛み・嘔吐・喉頭部出血
  • 気管支攣縮・喉頭攣縮
  • 肺水腫・頻脈発作・完全房室ブロック・狭心症発作
  • 低酸素血症・血圧低下・血圧上昇
  • 食道損傷・食道穿孔

🔗 関連投稿(食道疾患編)

(投稿者 川崎)

2022-12-10

経食道心エコー法の禁忌

食道静脈瘤があると分かっている症例に経食道心エコーを行なうことになりました.禁忌?相対禁忌?など少し曖昧な認識でした.そこで同検査の禁忌などを調べてみました.


❌ 行うべきではない疾患や病態
  • 食道狭窄,食道静脈瘤(red color sign[RC]1以上),食道憩室,胃・食道術後,食道癌
  • 胃・食道の出血・潰瘍・腫瘍
  • 頚部・縦隔放射線治療の既往
  • 頚椎損傷など頚部の可動性に問題がある疾患
  • 検査への理解・同意が得られない,または協力が得られない症例
  • 局所麻酔薬や鎮静薬に対する過敏症の既往

▲ 慎重さが求められる疾患や病態
  • 不安定狭心症や急性心筋梗塞の発症3日以内
  • 血圧がコントロールされていない急性大動脈解離や腹部大動脈瘤
  • 脳出血・脳梗塞急性期,破裂リスクの高い脳動脈瘤

● 注意点
  1. 滑脱型食道裂孔ヘルニアでは,プローブの位置に注意すれば安全に検査を施行できる
  2. 肝硬変では,上部消化管内視鏡検査で食道静脈瘤の有無を事前に確認するほうがよい
  3. 検査施行前に,出血傾向,血小板や凝固機能の異常の有無を確認することも必要

💁 禁忌に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2019-12-01

📌 今週の一枚

大量飲酒後の嘔吐に引き続いて出現した呼吸困難感



(投稿者 春名/川崎)

2021-04-18

黒色食道 ◆ Black esophagus

  • 観念 上部消化管内視鏡検査で特徴的な食道粘膜の黒色変化を呈する疾患
  • 初報 米国の内科医Goldenbergらが報告(Gastroenterology 1990;98:493-6) 
  • 患者 糖尿病(特にDKA),感染症,腎不全,術後,癌の高齢者らに多い
  • 原因 現在のところ不明であるが,虚血および胃酸の逆流が推測されている
  • 症状 吐血または下血が主で,他に腹痛や嘔気,嘔吐,嚥下障害,貧血など
  • 治療 絶食(平均13日間),中心静脈栄養,胃酸分泌抑制剤などの対症療法
  • 予後 死亡率31.8%と不良(ただし急性壊死性食道炎そのものでの死亡は稀)
  • 合併 食道狭窄が10~20%に発症(一般に7~10日後にみられることが多い)



👺 診断基準(胃と腸 2017年52巻5号) 
  1. 急性に生ずる食道粘膜全周性の黒色変化
  2. 病変の主座が下部食道(遠位側1/3)に認められ,胃粘膜は正常で胃粘膜との境界が明瞭
  3. 食道粘膜を損傷する他の要因がない

💁 食道に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2018-11-26

バレット食道 SSBT vs LSBE

  • バレット食道=扁平上皮がバレット粘膜に置換された食道で腺癌の発生母地
  • バレット粘膜=胃~下部食道へ連続する円柱上皮化生で原因は胃食道逆流症
  • 初報はオーストラリア生の英国人Norman Barrett(Br J Surg 1950;38:175-82)


SSBT/LSBE分類
  1. SSBT ➜ Sort Segment Barrett’s Esophagus(食道胃接合部から3cm未満)
  2. LSBE ➜ Long Segment Barrett’s Esophagus(食道胃接合部から3cm以上)

😶 食道癌の発生はSSBTよりLSBEで高頻度&SSBTは本邦で多くLSBEは欧米で多い

(投稿者 川崎)

2021-03-14

Dysphagia aortica 下行大動脈による食道通過障害

  • 大動脈瘤や下行大動脈の蛇行による外方からの食道圧迫で嚥下障害を呈する病態
  • 初報はドイツ (?) のPapeによると思われる(Fortschr Roetgenstr 1932;46:257-69)
  • 高齢女性,側彎症,短食道などが危険因子で食道潰瘍や大動脈食道瘻の可能性あり
  • 診断は消化管造影やCT(解剖学的評価)および内視鏡や食道内圧検査(血管拍動)
  • 治療は食事療法(粘稠食物や食後臥床の回避+よく咀嚼)で難治例には外科的治療



😊 おまけ
  • 上記写真の論文の筆頭著者である谷口先生は以前に当院循環器内科で勤務されていたことがあります.表題にある”dogleg”は犬の後ろ足=くの字で,本病態を的確に表すとてもイケているタイトルだと思います.
  • Dysphagia aorticaのあまりいい邦名はないようですが,日本食道学会の用語解説集には大動脈性嚥下困難と記載されていました.なおdysphagia aorticaは3年前に本ページに投稿されていましたがすっかり忘れていました(以前の投稿).

(投稿者 川崎)

2022-09-29

🎯 今週の一枚

安静時の左胸痛を訴える高齢者



(投稿者 川崎)

2018-04-28

ロキタンスキー憩室 Rokitansky diverticulum

食道憩室の1つでドイツの医師・哲学者・政治家 Baron Carl von Rokitansky (1804–1878)が報告
(自験例:食道の前方にある窪み)

部位 解剖原因 特徴
ツェンカー憩室咽頭と食道の接合部輪状咽頭筋の後方に突出する仮性憩室圧出性食物貯留による口臭の原因
ロキタンスキー憩室気管分岐部真性憩室縦隔の炎症などによる牽引広い入口部とテント状の形態
横隔膜上憩室胃と食道の接合部仮性憩室圧出性アカラシアやびまん性食道痙攣を伴いやすい

🐧 食道憩室は基本的にはいずれの憩室でも無症状で臨床上問題になることは少ない

(投稿者 川崎)

2018-04-11

ナットクラッカー食道 Nutcracker Esophagus

  • 食道がらせん状に異常収縮した病態(ねじ式のクルミ割り器に似る?)
  • 他の食道運動障害には食道アカラシアやびまん性食道痙攣などがある


  • 症状 胸痛~嚥下障害~無症状(基本的に非進行性の良性疾患)
  • 治療 食事指導,Ca拮抗薬,硝酸薬など(稀にボトックスや手術)

(投稿者 川崎)

2018-09-10

画像クイズ

嚥下時の胸痛を訴えて来院した症例の上部内視鏡検査(食道の写真)




(投稿者 川崎)

2016-09-24

Boerhaaveの読み方(内科学会より)

Boerhaave Syndrome = 特発性食道破裂
男性の下部食道に好発する全層性の食道破裂

食道下端に粘膜裂傷を来たすMallory-Weiss(マロリーワイス)症候群とは異なる病態
Boerhaave Syndromeの死亡率は30~80%と極めて高く,緊急手術の適応となる疾患

ブールハーフェ症候群と発音するようです(長年,ボーエルハーブ思っていました)

【第103回医師国家試験問題より】
50歳の男性。心窩部痛のため搬入。多量の飲酒後に激しく嘔吐し痛みが出現。胸部エックス線写真で中等量の左胸水貯留を認めた。ドレナージにて混濁した胸水を認める。最も考えられるのはどれか。

a 急性心筋梗塞
b Mallory-Weiss 症候群
c Boerhaave症候群
d 十二指腸潰瘍穿孔
e 急性膵炎

(答え c)

(投稿者 川崎)

2026-01-10

血管 輪りん Vascular Ring

  • 大動脈弓やその分枝が気管や食道の周囲を取り囲み圧迫する先天異常
  • 両側第4鰓弓動脈の遺残で重複大動脈弓 ➜ 一部の血管が退縮し血管輪
  • 重複大動脈弓によるものと右側大動脈弓に伴うものが多くを占めている
  • 右側大動脈弓では動脈管索例と動脈管索に加え鎖骨下動脈の起始異常例
  • 無症状~喘鳴,反復呼吸器感染,嚥下障害,頻回の嘔吐,体重増加不良
  • 重症の気管(支)軟化合併なら啼泣や哺乳で致命的呼吸不全(dying spell)
  • コメレル憩室(鎖骨下動脈起始部の瘤状拡張)による血管輪あり(下図)
  • 症候性なら早期に血管輪の解除術(+気管支や食道の再建術やステント)


- 血管輪による食道の後方圧迫像 -

図2. ( a ) 後方を向いた 3D 再構成の CT スキャンでは、異常な左鎖骨下動脈とコメレル憩室を伴う右側大動脈弓が示されている。 ( b ) コメレル憩室を伴う閉鎖遠位左大動脈部分を伴う二重大動脈弓を示す。CT スキャン 3D 再構成。 ( c ) 食道造影写真では、異常な鎖骨下動脈のコメレル憩室 (白い矢印でマーク) によって引き起こされる後方圧迫が示されている。 AA = 大動脈弓、KD = コメレル憩室、DA = 下行大動脈 (AI訳)

(投稿者 川崎)

2022-07-10

心筋イメージング:輝きを放つ一枚

逆流性食道炎?
運動負荷tetrofosmin心筋シンチグラムの静注後50分のplanar像



(投稿者 杉原)

2018-02-10

症例クイズ(咽頭の違和感)





(投稿者 川崎)

2024-12-24

嚥下性失神 Swallow syncope

  • 慢性心不全で長年フォローしている患者さんが定期受診の時に,不意に「先日,失神したんですよ」と笑いながら言いました.その時の状況をお聞きすると食事中に一瞬生じたようです.循環器疾患は長年安定しています.
  • 窒息という感じではなかったのですが,高齢者で嚥下機能も心配です.そこで耳鼻咽喉科をコンサルトしたら,嚥下性失神(疑)と診断されました.少量ずつよく噛んで食べるなどの食事指導も行ってくれました 😊 感謝

🍚 嚥下性失神(Swallow syncope)
  • 嚥下という特定の動作で誘発される神経調節性失神のひとつ
  • 食道の拡張や収縮による食道壁の緊張が迷走神経反射を誘発
  • 機序は徐脈や心停止,血圧低下,両者の合併から失神に至る
  • 基礎疾患は食道疾患(痙攣やヘルニア,癌)や心筋梗塞など
  • 治療は食事指導(難治性ならペースメーカ植込み術を検討) 


嚥下性失神が生じたパーキンソン病の73歳女性
  • 頸部食道をバルーン拡張するとP波が消失し5.9 秒の静止と意識消失
  • 引き続いてバルーン拡張を解除するとP波が出現し洞調律へ復帰した

(投稿者 川崎)

2017-03-30

Supragastric Belch SGB

日本語の病名は不明(・・・ご存知な方は是非教えてください 🙏)
Supragastric=胃の上の,belching=おくび(医学用語)/げっぷ

  • 食道に溜まっている空気が口腔内に急速に吐き出される現象
  • 胃内のガスとは無関係で,1日数百回も生じて生活のQOLが低下
  • 逆流性食道炎や食道の運動低下(hypomotility)と関連
  • 24時間食道インピーダンスpHモニタリングが診断に有用
  • 治療は行動療法,言語療法,GABA作動薬バクロフェン

参考論文 Supragastric Belching. J Neurogastroenterol Motil 2015;21:398-403

(投稿者 川崎)

2021-04-11

日本内科学会ことはじめ2021より

😀 個人的に気になった演題

演題 7 急性壊死性食道炎による黒色食道を合併した糖尿病性ケトアシドーシス

演題 8 Hamman症候群を合併した糖尿病性ケトアシドーシスの一例
  • Hamman症候群とは直接的な外傷や食道破裂などの原因を伴わずに発症する縦隔気腫のこと.特に糖尿病性ケトアシドーシスに合併することが知られている.

演題 91 坑GPIHBP1抗体による高中性脂肪血症を繰り返した一例
  • GPIHBP1(グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー高比重リポ蛋白結合蛋白1)は毛細血管内皮細胞で発現する蛋白で,リポ蛋白リパーゼと結合し毛細血管腔内の作用部位まで運ぶ.高トリグリセリド血症の一因としての坑GPIHBP1抗体があることが比較的最近に報告された(N Engl J Med 2017;376:1647-58).

演題 126 炭酸リチウムによる腎性尿崩症にラトケ嚢胞によるバソプレッシン分泌不全の併発が疑われた一例
  • ラトケ嚢胞とは胎生期の遺残組織(Rathke's pouch)から発生する非腫瘍性嚢胞性病変である.多くは正常下垂体の前葉と後葉の間に進展し,視神経・視交叉・視床下部などの圧迫やホルモン異常を来したりすることがある.

演題 195 初めてのサーフィンでご注意を!!Surfer's Myelopathyの3例
  • Surfer's Myelopathyは2004年に初めて報告された疾患観念で,40歳未満のサーフィン初心者に生じることがある非外傷性脊髄障害である.サーフィン🏄のパドリング中の体幹進展による脊髄虚血が原因と考えられている.

😎 当院からの発表演題
  • 演題 63 ペースメーカ植込み時にリードが経胸壁心エコー図で描出できないキアリ網に捕捉された1例(循環器内科 酒井健紀先生)
  • 演題 166 亜鉛過剰摂取にともなう銅欠乏性貧血,白血球減少を来した一例(総合診療科 堀内萌生先生)
  • 演題 189 慢性下痢・習慣性顎関節脱臼を伴った非アルコール性Marchiafava Bignami病の1例(総合診療科 塩見海斗先生)
  • 演題 277 血球貪食症候群を合併した甲状腺クリーゼの一例(総合診療科 大神浩司先生)

😃 皆とてもいい発表でした(塩見先生と大神先生は優秀演題賞ゲット!)

💁 “学会”に関連する過去の投稿 ➜ コチラ(ウェブ版なら右欄からも選択可能)
(投稿者 川崎)

2017-05-28

PTEG ピーテグ

PTEG=Percutaneous Trans-Esophageal Gastro-tubing,経皮経食道胃管挿入術のこと
経皮内視鏡的胃瘻造設術Percutaneous Endoscopic Gastrostomy (PEG) ペグ困難時に考慮

エコーと透視を用いて頸部食道に食道瘻を作成しチューブ先端を胃内に留置(内視鏡は不要)
胃切除術後,胃腹壁間に他臓器などが存在(腹水や腸管など),食道裂孔ヘルニア等でも可能

詳しくは 日本PTEG研究会 を参照してください

(投稿者 川崎)

2024-11-21

今週の一枚 🎯

夕食で刺身を食べた後に胸の違和感(食道癌術後)



(投稿者 川崎)

2017-08-16

プランマー・ビンソン症候群  Plummer-Vinson syndrome

鉄欠乏性貧血,舌炎,嚥下困難を三主徴とする疾患/食道膜や口角炎,口唇炎を伴うこともある
メイヨークリニックのPlummer HS (Am Med Assoc. 1912;58:2013-5) とVinson PP (Med Clinics North Am. 1919;3:623-6)が報告
Paterson–Brown–Kelly症候群あるいはsideropenic dysphagia(鉄欠乏性嚥下困難)と呼ばれることもある

  • 原因は解明されていないが,遺伝的要因あるいは食生活の関与が疑われている
  • 中年女性(特に50歳以上の閉経後)に多いが,栄養状態の改善した現代では珍しい
  • 鉄剤の投与(稀に食道拡張要)で予後は良好だが,食道や咽頭の扁平上皮癌のリスク

(投稿者 川崎)