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2026-09-21

心臓MRIのblack-blood(BB)法

♣ T2WBB(T2 Weighed Black Blood)
  • Spin echoシーケンスを用いて撮影し、血液の信号をゼロ(黒)とする.T2強調像での心筋内高信号域は心筋浮腫を反映すると考えられており,急性虚血や炎症性変化に伴う所見とされる.
  • 下図(Fig. 10)は心筋炎例のT2強調画像と遅延造影像の比較である.心筋炎では心筋中層から外膜側が侵されることが多く,LGE陽性部分にも一致して,炎症および浮腫を反映している.

♠ T1WBB(T1 Weighed Black Blood)
  • 心筋脂肪変性を検出するプロトコールである.ARVC(Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy:不整脈原性右室心筋症)の心筋脂肪変性や腫瘍の性状評価を目的として撮影する.
  • 従来の脂肪変性検出は疑陽性が多いが,このプロトコールによる右室および左室心筋の脂肪変性検出はARVCの診断や生検部位の参照としても有用で,簡便にも撮影できるので利用価値は高い.

💁MRIのブラッドブラック法の過去の投稿 → コチラへ
(投稿者 川崎)

2026-09-16

大動脈僧帽弁カーテン Aortomitral curtain

  • 大動脈弁と僧帽弁の間をつなぐ線維性の膜状構造(心臓の線維骨格の一部) 
  • 具体的には大動脈弁左冠尖・無冠尖と僧帽弁前尖の間をつなぐ組織(下図)
  • 別名は僧帽弁大動脈間膜様部(intervalvular fibrosa)やaortomitral continuity
  • 感染性心内膜炎で弁輪周囲膿瘍あるいは偽性瘤を形成しやすい部位として重要
  • 外科的には大動脈弁と僧帽弁の同時再建(Commando手術など)で操作必要
  • 不整脈領域では心室期外収縮や心室頻拍など心室性不整脈の基盤となりうる
  • 石灰化しやすくTAVR(経カテーテル大動脈弁置換術)では穿孔のリスク部位


大動脈僧帽弁カーテンのシェーマ

(投稿者 川崎)

2026-07-23

今週の一枚 🎯

2週間前からの動悸と息切れで来院

🔒 解説
  • 両側の外頚静脈が隆起(呼吸変動なく怒張)
  • 頚部に拍動ありそう → 陥凹の疑い(矢頭)
  • 左だが内頚静脈の視認なら非代償性心不全
  • その拍動は規則正しく早い(>100回/分)
  • 病歴からも頻拍誘発性の心筋症が疑われた
  • 最終診断は2:1伝導の心房粗動による心不全

😶 独り言
  • 座位での外頚静脈の視認は必ずしも心不全とは言えません。頚部の筋緊張等で静脈灌流が阻害されることがあるためです。しかし本例のように両側で怒張している場合は、中心静脈圧の上昇が疑われます。なお怒張という用語は注意を要しますが(過去の投稿)、本例ではOKです。
  • 本例の頚部の拍動は内頚静脈の陥凹です(陥凹時間<隆起時間)。しかし一見、隆起か陥凹かの区別が難しいかもしれません。これは特に頻脈症例で多いと思いますが、こういう場合は右側よりも左側の方が分かりやすい症例があります。なお隆起なら頚動脈拍動との鑑別が必要です。
  • 動脈か静脈かの鑑別は触診をすればすぐに分かると思います。しかしそこはじっと我慢して、視診でどこまで診断に迫れるかが腕の見せ所です。頚静脈拍動から不整脈の鑑別も可能ですが(過去の投稿)、そこはフロッグサインを除きあまり拘らないようにしています(苦い思い出)。

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-07-04

第141回日本循環器学会近畿地方会より

😗 個人的に気になった報告
 
1-15 海外留学生の未修復心室中隔欠損に伴う肺動脈性肺高血圧の一例
  • 症例はネパール出身の20歳代女性。未修復心室中隔欠損に伴う肺動脈性肺高血圧と診断した。患者はネパールの高地出身であり,慢性的な低酸素環境が肺血流増大による左心容量負荷の進行を抑制した可能性が考えられた。(投稿者追記:その解釈は興味深いが…)。

5-26 Arrhythmic mitral valve prolapseが疑われた1例
  • 症例は67歳男性。8年前の健診で心雑音を指摘され,他院で僧帽弁逸脱症(MVP),僧帽弁閉鎖不全症と診断された。6年前に心停止を起こしECPRで蘇生,ICD植え込みとなっていた。(投稿者追記:不整脈性MVPとは、他の不整脈基質がない状態で、僧帽弁輪離開の有無にかかわらずMVPと複雑な心室性不整脈が共存する病態)

6-14 Sense B noiseによるS-ICD不適切作動の1例
  • 症例は77歳男性。6年前に冠攣縮性狭心症を背景とした心室細動の診断で,皮下植込み型除細動器(S-ICD)の植込みを行った。昼食後に仰向けになり休んでいたところ,ショック作動があったが、エピソード記録では,不規則なアーチファクト様のノイズがみられ,オーバーセンシングによって心室細動と認識しショックが送出されていた。(投稿者追記:センスBノイズは、S-ICDシステムの問題に起因する、非生理的な信号過剰感知による不適切なショックの原因)


😀 当院からの発表
  • 2-13 高齢で診断された先天性左冠動脈閉鎖症の一例(循環器内科 大野貴都ほか)
  • 3-14 バレーボールの指導者に発症したPaget–Schroetter症候群の一例(循環器内科 足立沙瑛子ほか)
  • 4-20 通り抜け現象(ウォームアップ狭心症) を呈した冠動脈疾患の2症例(循環器内科 林 寛人ほか)
  • 7-1  運動誘発性のparadoxical jet flowを検出した心尖部肥大型心筋症の一例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 7-6 低調成分を主体とする大動脈駆出音を伴った左脚ブロックの1例(循環器内科 川﨑達也ほか)

4編は発表前に英語論文化(2編は出版済,2編は投稿中) 👏

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-05-31

ICLS研修

  • ICLS とは Immediate Cardiac Life Support の略語
  • 突然の心停止に対する最初10分間の処置を重要視
  • 心停止直後の処置には全医療者が一員として参加
  •  ICLSコースでは、その基本的な事項を習得できる


BLS・ACLS・ICLS 比較表(目安:AI作成のため細部は要確認)
BLS
Basic Life Support
ACLS
Advanced Cardiovascular Life Support
ICLS
Immediate Cardiac Life Support
日本語名 一次救命処置 二次心肺蘇生法(二次救命処置) 心停止初期対応教育コース(?)
主催団体 AHA(アメリカ心臓協会) AHA(アメリカ心臓協会) 日本救急医学会(JRC準拠)
対象者 一般市民〜医療従事者全般 医師・看護師・医療従事者 医療従事者全般(医師・看護師・救急救命士・薬剤師・臨床工学技士・研修医など)
対応範囲 心肺停止・呼吸停止への一次対応
  • 心肺停止・呼吸停止への二次対応
  • 重症不整脈(徐脈・頻脈)
  • 急性冠症候群
  • 急性肺水腫・ショック
  • 急性虚血性脳卒中
  • 蘇生後管理
突然の心停止に対する最初の10分間の対応に特化
主な処置内容
  • 胸骨圧迫(CPR)
  • 人工呼吸
  • AED操作
  • BLSの内容を含む
  • 気管挿管
  • 手動式除細動器の使用
  • 静脈路確保・薬物投与
  • 高濃度酸素投与
  • BLS(一次救命処置)
  • AED操作
  • 心停止時の心電図4波形の診断
  • 除細動・電気ショック
  • 気道管理
  • 薬剤投与
  • チーム蘇生
使用器具 AED・手のみ(特殊器具不要) 手動式除細動器・挿管セット・点滴セット・薬剤など専門器具 AED・除細動器・気道管理器具・薬剤など
コース形式 講義+実技 講義+実技+試験 実技実習中心(講義は少ない)・シミュレーション
コース時間 数時間〜半日 1〜2日程度 約1日
資格有効期間 2年間(要更新) 2年間(要更新) プロバイダーは期限なし
インストラクター・CDは2年ごと更新
特徴・目標 専門的医療機器なしに誰でも実施可能な救命処置 認定医・専門医試験の受験資格として必須。心停止以外も対象 「Immediate(即座)」な対応に特化。チーム医療を重視
準拠ガイドライン AHA Guidelines 2020(約5年ごとに更新) AHA Guidelines 2020(約5年ごとに更新) JRC蘇生ガイドライン2020

参考

・ 三谷雄己(踊る救急医)「BLS・ACLS・ICLSの違いと要点まとめ」dancing-doctor.com(2021年4月24日)  https://dancing-doctor.com/2021/04/24/bls-acls-icls/
・ 「JRC 蘇生ガイドライン 2020 オンライン版」一般社団法人 日本蘇生協議会(JRC)
・ 日本救急医学会 ICLS  https://www.icls-web.com/index.html
・ 日本ACLS協会  https://acls.or.jp/

(投稿者 川崎)

2026-03-06

Bayés Syndrome ベイズ症候群

  • 心房間ブロック(P波持続時間>120ms)を特徴とする一連の病態
  • 由来はスペインの循環器内科医 Bayes de Luna の1979年の報告(#)
  • 第1度〜第3度に分類され、心房性不整脈(特に心房細動)と関連
  • 原因は炎症性、心アミロイドーシス、リンパ腫、電解質異常など
  • 治療は抗線維化薬、抗不整脈薬、抗凝固薬,心房再同期療法など


- 動悸を訴えるBayés症候群の76歳女性 -
図1 . II、III、VF誘導でP±が出現し、持続時間が120ミリ秒を超える進行性心房間ブロックの典型的な例。P波が増幅されると、3誘導におけるP波の始まりと終わりがより鮮明に見える。

図2 .心房活性化の図。(A) 正常な状況、(B) 部分的心房間ブロック、(C) 高度心房間ブロック(本文参照)。VFのP波はVF誘導のP波を示し、FPのPループは前額面のPループを示す。



(投稿者 川崎)

2025-11-29

マクドナルド

👻 先日のモーニングカンファレンスから
  • 今回の講師は2年目の研修医の先生でした(頼もしく成長)。そこでQT延長を生じる原因の語呂合わせを教えてもらいました。
  • 「食って延長、定価のマック、Newマック。家出さんざん、鬱になる。午前0時」。国試対策として医学生は覚えるようです。
  • 臨床で遭遇する頻度から考えると前半の「食って延長、定価のマック、Newマック」だけでもいいかも…(個人的な見解😉)

  1. 食って延長 ➜ QT延長
  2. 定価のマック ➜ 低Ca、Mg、K
  3. Newマック ➜ ニューキノロン系、マクロライド系(抗菌薬)
  4. 家出さんざん、鬱になる ➜ Ia、Ⅲ(群抗不整脈薬)、三環系抗うつ薬
  5. 午前0時 ➜ 抗精神病薬

🍔 マクドナルド関連トリビア
  • 1930年代にマクドナルド兄弟がホットドック屋としてスタート
  • ジャマイカや北朝鮮、アイスランド、イランなどには店がない
  • ドライブスルーは兵士のために始まった(車を離れられない)
  • マックナゲットの形は4種類のみ(ブーツ、骨、ボール、ベル)
  • 1秒でハンバーガーが平均75個売れてる(毎年550万頭の肉牛)
  • アメリカでは常夜勤の8人に1人がマクドナルドで労働している
  • 世界最大のレストランチェーンではない(サブウェイが世界一)
  • 略称は関西ではマクドでそれ以外の地域では「マック」が多い

参考)おもしろい事実15,雑学,ほか


(投稿者 川崎)

2025-10-03

日本内科学会 第249回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題5 中年期に診断された下垂体茎離断症候群の1例
  • 造影MRIで下垂体茎の離断、前葉の低形成、異所性後葉を認め、周産期異常に関連した下垂体茎離断症候群(PSIS)と診断した。原因として、周産期異常、頭部外傷や手術による機械的な下垂体茎の断裂、下垂体の胎生期の発生異常などが関係する可能性が考えられている。発症率は約0.5/10万人で、出生に伴うPSISは0.5/100万出生と極めて稀である。※PSIS=Pituitary stalk interruption syndrome

演題10 虚血性心筋症と診断されていたが中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)と判明した1例
  • 経過中のLDLコレステロール値は50mg/dl前後で管理していたが短期間で冠動脈病変の著しい進行が認め、虚血性心筋症以外を疑いBMIPP心筋シンチ施行した所、Wash out rate 7.7%と低下認め、TGCVと診断した。TGCVは、2008年に提唱された新規疾患概念であり、細胞内の中性脂肪(TG)分解が障害され、難治性心不全、びまん性冠動脈疾患、心室性不整脈等を呈する循環器病の仮面をかぶった代謝病である。※TGCV=Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy

演題129 ジスチグミン臭化物によるコリン作動性クリーゼをきたした1例
  • 神経因性膀胱に対してジスチグミン臭化物5mg/日を10年前より内服していた。入院2日前より下痢を認め、入院当日より湿性咳嗽、排痰困難、多量の気道分泌物を認め、当院へ救急搬送された。ジスチグミン臭化物(ウブレチドなど)によるコリン作動性クリーゼは内服開始2週間以内に発症することが多いが、長期内服中に脱水や腎機能低下を契機に発症することもある。

演題131 HFNCによる100%酸素吸入法によって, シャント率の測定を行った肝肺症候群の1例
  • 経胸壁心エコーでは肺高血圧の所見はなく、バブルテストで 6,7心拍後に左房に大量のバブル流入を認め、肺内シャントが示唆された。右心カテーテル検査・肺血流シンチグラフィ・肺動脈造影CT検査で他疾患の除外を行った。右心カテーテル検査・肺血流シンチグラフィに加え、high-flow nasal cannula(HFNC)を用いた100%酸素吸入法によってシャント率を測定し、いずれも同等な値であった。HFNCを用いた100%酸素吸入法は、低侵襲な検査であり、利便性の点から有用であると考えられた。

演題155 SACIテストが局在診断に有効であったインスリノーマの1例
  • 造影CTで膵臓に早期濃染を伴う1cm台の腫瘤性病変を認め、EUSで膵頭体移行部に低エコー域を認め、EUS-FNAでクロモグラニンA、シナプトフィジン陽性細胞を認め神経内分泌腫瘍に矛盾しない所見であった。SACIテストでは脾動脈近位でグルコン酸カリウム注入前後でインスリン濃度が3.24倍に上昇したため膵中央部切除術を行う方針となった。※SACI=selective arterial calcium injection=選択的動脈内カルシウム注入法

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-09-30

薬剤性低血糖

  • 薬剤性低血糖はERで頻回に遭遇する病態です.今回,糖尿病薬と関連しない薬剤性低血糖が疑われた症例を経験したのでまとめてみました.
  • 参考は霧島市立医師会医療センター 薬剤部DIニュース No.325 (2025.9) ですが,その元論文「肥満と糖尿病 2009;Vol.8」には辿り着けず😔
  • 下記薬剤のうちジソピラミドの低血糖は経験あり.当時,循環器内科をローテート中だった初期研修医の先生が論文化 ➜ 心臓 2006;38:824-8

💊 薬剤の相互作用による低血糖症
  1. 肝のシトクロムP450多型によるSU剤の代謝阻害
    • 抗凝固薬 ➜ ワルファリン
    • ニューキノロン系抗菌薬 ➜ ガチフロキサシン、シプロフロキサシン
    • ST合剤 ➜ バクトラミン配合錠
    • ヒスタミンH₂受容体拮抗薬 ➜ シメチジン、ラニチジン
    • アゾール系抗真菌薬 ➜ フルコナゾール

  2. 薬剤同士が競合してSU剤の遊離血中濃度が上昇
    • ヘリコバクターピロリの除菌 ➜ クラリスロマイシン、PPI
    • 消炎鎮痛剤 ➜ フェニルブタゾン

  3. 薬剤が腎排泄を阻害しSU剤の排泄遅延
    • フィブラート系高脂血症治療薬 ➜ ベザフィブラート、フェノフィブラート、クロフィブラート
    • 尿酸排泄促進薬 ➜ プロベネシド

🍷 糖代謝へ直接影響を及ぼす薬剤による低血糖症
  1. インスリンの増加
    • 抗不整脈薬 ➜ ジソピラミド、シベンゾリン
    • ニューキノロン系抗菌薬 ➜ ガチフロキサシン
    • 切迫早産治療薬 ➜ リトドリン
    • 抗結核薬 ➜ イソニアジド

  2. インスリン感受性の亢進
    • アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ARB)
    • 非選択性βアドレナリン受容体遮断薬

  3. 肝臓での糖放出の低下
    • エタノール ➜ アルコール飲料

(投稿者 川﨑)

2025-08-02

着用型心臓除細動器(WCD: wearable cardioverter-defibrillator)

  • 着用型ベスト内に接触型心電図電極と除細動パッドを有し有線で致死的不整脈に対して除細動を行う医療機器
  • 体表面から行うがICD(植え込み型除細動器)に劣らぬ診断感度,特異度でわが国でも2014年1月から保険適用
  • 使用例は急性虚血ならびに急性心不全のICD の一次予防の適応が確定するまでの期間,突然死予防を目的など
  • 非虚血性心筋症の報告は限定的:心筋炎後心筋症,たこつぼ心筋症,産褥後心筋症,拡張型心筋症の急性期など
  • 心移植待機例,ICD適応であるが感染でデバイス抜去後や他疾患の治療を優先すべき症例などにおいても要考慮
  • わが国ではWCDの使用は短期(3ヵ月間)が原則としているが,長期使用については,今後も検討が必要である



📍 WCDの使用を考慮する病態
  • 左室駆出率35%以下で、NYHAクラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する急性心筋梗塞発症後40日以内の症例
  • 左室駆出率35%以下で、NYHA クラス II もしくはクラス III の心不全症状を有する冠動脈バイパス後または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後 90 日以内の症例
  • 左室駆出率35%以下で、非虚血性急性心不全発症後90日以内の症例
  • 心移植待機条件を満たす非可逆性重症心不全症例
  • ICDの適応があるが、他の身体的状況により直ちに手術を行えない症例
  • ICDによる心臓突然死二次予防を考慮するが、臨床経過観察や予防治療の効果判定が優先される症例
  • 感染等の理由で一時的にICDを抜去する症例


🔦 おまけ
  • WCDの保険償還には植込み型除細動器(ICD)施設基準を満たす必要あり
  • つまり年に電気生理学的検査≧50例,開心術など≧30例,PM移植術≧10例
  • 関連医療従事者(医師およびメディカルスタッフ)がメーカー研修を受講
 
(投稿者 川崎)

2025-07-31

今週の一枚 🎯 サロンパスにも負けず

息切れで来院(座位)

😋 解説
  • 首に貼られたシップで頚静脈評価は困難?
  • しかしよく見ると頚部の中央に明瞭な隆起
  • しかも耳垂直下まで陽性拍動を確認できる
  • その後の検査で非代償性心不全を確認した

😎 現場実況
  • 本例はシップを見た瞬間に「これでは判定できないな」と安直に考えてしまい,頚部中央の明瞭な拍動に気が付くのに少し時間を要した.頚静脈拍動は用手的に圧迫できる弱い拍動であるが,最重症の陽性波(三尖弁逆流によるランチシ徴候が多い)はかなり力強い.実際に,本例も指で押さえてもなかなか消失しなかった.
  • 本例では動画の途中に大きな呼吸をしていることにも注目して欲しい(吸気負荷は未実施である).このように自発的な大きな呼吸も心不全所見の一つと考えられる(特にコロナ以降のマスク装着時).なお通常呼吸時に耳下まで達する陽性波を呈する頚静脈拍動は,深吸気負荷でさらに悪化することは少ないと思われる.
  • 本例は心電図で右脚ブロック+左軸偏位+ウェンケバッハ型2度房室ブロックであった(三枝ブロックならぬ四枝ブロック?😁).心電図検査後にもう一度,頚静脈拍動を見直したが,ウェンケバッハ型2度房室ブロックとは自信をもっては言えなかった(反省:同様の過去の経験).理論的にはほとんどすべての不整脈は,頚静脈+頚動脈所見(または橈骨動脈触知)で鑑別できるのだが…(匠の業)

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-05-17

🏆 論文

  • 当院の初期研修医の江上先生が循環器内科で経験した症例報告が出版🎉
  • 主訴は安静時の胸部違和感で身体所見や心電図(茶),胸部X線は正常
  • 心エコーも正常 ➜ 運動負荷Tl心筋シンチとホルター心電図を予約した
  • 検査当日,負荷前の問診で「数日前から強い息切れがある」ことが判明
  • 心電図(緑)ではST-T変化はないが,負荷は中止して循環器外来を受診
  • 頚静脈所見に異常はなかったが左胸部で呼吸音と音声振盪の減弱を確認
  • 画像で左側気胸 ➜ 心電図を見直すと気胸部位の誘導でR波減高(矢印)
  • 左側にトロッカーを挿入して気胸は改善 ➜ 直後の心電図も改善(青)
  • 退院後に行った冠動脈CTは正常,ホルターで発作性心房細動が判明した

🙈 本論文の考察より
  • 気胸による心電図異常所見の発生率は,自然気胸を呈した57人の青年のうち21%で,心エコー検査で異常所見を示した患者は4%のみであった.
  • 気胸は電気軸の変化やST部分の変化,T波の異常,不整脈などの心電図変化を引き起こすが,これらの変化は気胸の重症度や部位によって異なる.
  • 自然気胸連続40人の心電図解析では,左気胸ではV2からV6誘導のQRS振幅が有意に減少し,右気胸ではV5およびV6誘導のQRS振幅が増大した.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

※ 心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-04-05

本邦独自の評価ツー ル:HELT-E2S2スコア

  • 脳梗塞発症リスクを判断するCHADS2やCHA2DS2-VAScのスコアは海外で開発
  • HELT-E2S2スコアは本邦のデータに基づき開発された脳梗塞リスク評価ツール
  • 具体的には5つのレジストリの統合解析J-RISK(Circ J 2021;85:1254-62、他)
  • 独立危険因子6つ:年齢、高血圧,脳卒中既往,BMI、持続性/永続性心房細動
  • HELT-E2S2スコアの何点以上を抗凝固療法開始とするかは今後の検討を要する
  • 読み方はヘルツ(独語herzは心臓 😁)・イーツー・エスツーが多いと思う...



(投稿者 川崎)

2025-03-26

不整脈原性心筋症 ACM: arrhythmogenic cardiomyopathy

  • 電気的不安定性を引き起こしやすい顕著な「非虚血性」の心筋瘢痕化を特徴とする心筋疾患
  • 不整脈性右室心筋症(ARVC)+左側変異体の不整脈性左室心筋症(ALVC)+両室性(ABVC)
  • 心筋の遅延造影LGE(瘢痕)のリング状パターンはALVCの診断的特徴として認識されている 


- 不整脈性心筋症に関連する遺伝子型と表現型の関係 -
不整脈性右室心筋症 (ARVC),不整脈性左室心筋症 (ALVC),両室性不整脈性心筋症 (BiVAC)
(Appl Clin Genet 2023;16:181–203)
DSP PKP
(投稿者 川崎)

2025-03-09

レット症候群 Rett syndrome

  • 概要 神経系発達障害を主体とした重度かつ進行性のX連鎖性疾患(ほとんどが女児)
  • 命名 ウィーンの小児神経科医である Andreas Rett が1966年に報告した疾患(※)
  • 原因 80~90%にXq28に連鎖するMECP2遺伝子の変異(他はCDKL5やFOXG1の変異)
  • 疫学 出生女児10,000人当たり約1例の頻度(男児は出生前または乳児期早期に死亡)
  • 症状 乳児期早期に外界への反応の欠如、筋緊張低下,その後に手の常同運動など
  • 治療 根本的治療法ななく対症療法(理学療法,療育,薬剤療法,側弯などは手術)
  • 予後 全身進行性で生命予後は感染症や誤嚥,QT延長の不整脈などの合併症による

参考)難病情報センター,他

- Rett症候群の経過 -

- レット症候群の2児 -

(投稿者 川崎)

2025-02-22

マーシャル静脈へのエタノール注入

  • 概略 AFの肺静脈隔離時に追加するケミカルアブレーション
  • 背景 マーシャル静脈には神経支配がありAFトリガーになる
  • 対象 初回アブレーションの持続性心房細動 AF 患者350名
  • 方法 アブレーション単独とエタノール併用を無作為に割当
  • 評価 術後6ヵ月と12ヵ月のAF or 30秒超の心房頻拍の有無
  • 手技 エタノール注入を試みた185名中155名に成功(83.7%)
  • 予後 不整脈無はエタノール49.2%,アブレーション単独38%
  • 有害 エタノール注入に関する有害事象に群間の有意差なし


Marshall静脈への化学的アブレーション法が有用であった持続性AF例

👽 おまけ
  • マーシャル静脈は左上大静脈の遺残で周囲にはマーシャル筋束が存在している
  • 同静脈は冠静脈洞から左房後側壁で分岐し左肺静脈と左心耳間の心外膜側を斜走
  • 成人の20~30%はマーシャル静脈が造影されない(一読をお薦め ➜ 月の裏側)
  • 名前の由来は初報の英国の外科医 John Marshall (R Soc Lond 1850;140:133–170)
  • 現時点では保険外診療で倫理委員会への申請要+病院の自己負担あり(約5万)

(Public Domain: マーシャル静脈は上図のoblique vein of the left atrium)

(投稿者 川崎)

2025-01-17

薬剤性好中球減少症 Drug-induced neutropenia

  • 末梢血の好中球数が500/μl以下と定義することが多く,無顆粒球症や顆粒球減少症,agranulocytosisなども概ね類似した意味で用いられる.
  • 発生頻度に関して1.1~5.0例/100万人/年という報告がある.早期に認められる症状として発熱は必発で,その他に悪寒や咽頭痛などが挙げられる. 
  • 機序には免疫学的(アレルギー性:抗甲状腺薬のプロピルチオウラシル他)と骨髄造血細胞に対する毒性(中毒性:クロルプロマジン塩酸塩やβラクタム系抗菌薬など)がある.
  • アレルギー性なら過去にその医薬品に感作されていれば1時間~1日以内に発現し,感作されていなければ抗体が産生されるまでに1週間~10日を要する.中毒性なら発症までに数週間を要する.
  • 患者側のリスク因子:高齢,女性,腎機能低下,自己免疫疾患の合併などの場合に発症頻度が高い.明確ではないが遺伝的素因(HLA型、薬物代謝酵素の遺伝子多型)なども考えられている.
  • 発現投与量は医薬品により異なる.例えば抗甲状腺薬では用量非依存性で,サルファ剤(サラゾスルファピリジン)では用量依存性との報告がある.一方,同じ医薬品でも報告により用量依存性、非依存性の相反する報告もみられる.
  • 添付文書で血液検査が求められている薬剤には,チクロピジン塩酸塩やチアマゾール(開始2月は2週に1回),サラゾスルファピリジン(開始3月は2週間に1回,次の3月は4週間に1回,その後は3月ごと),クロザピン(投与初期に発現する例が多いので投与開始後18週間は入院管理下)がある.
  • 無顆粒球症の原因となり得る医薬品は多数にのぼるが,抗甲状腺薬,チクロピジン塩酸塩,サラゾスルファピリジン,クロザピン(治療抵抗性統合失調症治療薬)など頻度が高い医薬品以外にも,H2ブロッカー,NSAIDs,抗不整脈薬,ACE阻害薬などが重要である.


💣 おまけ

(投稿者 川崎)

2025-01-05

冠攣縮とノルアドレナリン

  • つい先日,敗血性ショックに一過性ST上昇(下壁誘導)が合併し治療に難渋した症例を経験しました.緊急冠動脈造影で右冠動脈に高度狭窄(初回造影)を認めましたが,再造影時には狭窄は概ね消失していました.
  • しかしICU帰室後もST上昇を繰り返しました.大量補液と抗菌薬に加えて,ノルアドレナリンやステロイド,鎮静薬を併用し,2~3日で嵐は過ぎ去りました.そこで冠攣縮とノルアドレナリンに関して調べてみました.

📗 冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドラインのノルアドレナリン記載(以下の2点のみ)
  • 冠攣縮発作は冠動脈平滑筋受容体に作動するさまざまな刺激によって誘発されるが,自律神経機能の異常による刺激もそれに含まれる.ノルアドレナリンなどの血管収縮性神経伝達物質の遊離という直接作用のほか,交感神経系を介する血小板活性化によって,強力な冠動脈収縮作用を有するセロトニンの遊離も生じる.(7ページ)
  • 冠攣縮が遷延し,血圧低下や心原性ショック,重症不整脈,心停止などの危険な状態が起こりうることである.このような場合,硝酸薬(ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビド)の冠動脈内注入により,すみやかに冠攣縮を解除する必要がある.また,血圧低下に対しては,昇圧薬(ノルアドレナリン)の投与も必要となる.(22ページ)

📘 冠攣縮誘発アセチルコリン負荷試験時にショックを呈した4例(J Cardiol 2007;49:41–7)
  • 冠攣縮解除目的で硝酸薬の投与をショック時に行うとかえって血行動態悪化に拍車をかける可能性があり血圧上昇が先決と思われる.
  • 冠動脈の拡張作用と血圧上昇作用を有するノルアドレナリンの大動脈内投与が必須と考える
  • その投与方法としてはノルアドレナリン1 mlを生理食塩水100 mlに溶解し,1 mlが10 μgの濃度に調整しショック時に大動脈内に3-5 ml注入することが推奨される.
  • 血圧上昇を認めた後に,硝酸薬を少量から冠動脈内投与するほうが安全と思われる.

📙 ノルエピネフリンの冠動脈径に対する影響(ChatGPTの回答:英語の日本語訳) 
  • ノルエピネフリン (NE) はノルアドレナリンとしても知られ、さまざまなアドレナリン受容体との相互作用を通じて冠動脈の直径に影響を与え、受容体のサブタイプと血管の状況に応じて血管拡張または血管収縮を引き起こします。
  • β₂アドレナリン受容体を介した血管拡張:単離されたヒト冠状動脈および小動脈において、NEは主に平滑筋にあるβ₂アドレナリン受容体の活性化を通じて血管拡張を引き起こします。この効果は内皮および一酸化窒素合成とは無関係です。研究により、この拡張はβ₂受容体遮断薬によって阻害できることが示されており、この反応を媒介するβ₂アドレナリン受容体が重要な役割を果たしていることを示しています。(Circulation 2002;106:550-5)
  • α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮:逆に、NEはα₂アドレナリン受容体を刺激することで冠動脈の血管収縮を引き起こす可能性があります。血管造影検査で冠動脈が正常な人では、α₂アドレナリン受容体の選択的活性化により冠動脈の血流と動脈径の両方が減少することが観察されています。これは、α₂アドレナリン受容体を介した血管収縮が冠動脈の血管緊張の調節に重要な役割を果たしていることを示唆しています。(Circulation 1992;86:1116-24)

(投稿者 川崎)

2024-10-24

今週の一枚 🎯 頻脈は止めたいが...

動悸を訴える症例(モニター音に注目)

😎 解説
  • 座位で鎖骨上に周期の短い陥凹(外頚静脈)
  • モニター音と拍動が一致(陥凹は多分 x谷)
  • 吸気負荷で静脈膨隆(クスマウル徴候陽性)
  • 突然生じた動悸が約2週間持続していた様子
  • 本例の最終診断は頻脈の持続による心不全
😑 独り言
  • PSVTなど頻脈性不整脈を停止すること自体はそれほど難しいことはありません.しかし本例のように頻脈誘発性心筋症などから心不全に至った例には注意が必要です.徐脈化に伴い血行動態が破綻することがあります(ショックに陥った自験例あり).
  • よって本例のように中心静脈圧の上昇が疑われる症例(座位で頚静脈視認あるいはクスマウル徴候陽性など)では不整脈の停止よりも心不全加療が優先されると思われます.もちろん類似した頻脈の心房粗動などでは左房血栓の有無の検索も重要です.
  • 頚静脈拍動から各種不整脈の診断は可能です(a波=P波,x谷=収縮期など:過去の報告).ただし頻脈時にはフロック・サインを除き不整脈の鑑別は容易ではありません.むしろ中心静脈圧上昇の有無に注視してもいいように個人的には思っています 😐

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-10-12

👴 歴史クイズ

(CC BY 4.0)



(投稿者 川崎)