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2019-11-04

ファブリー病 Fabry Disease (Anderson-Fabry Disease)

  • ドイツの皮膚科医ファブリーと英国の皮膚科医アンダーソンが別々に報告(Fabry J. Archiv für Dermatologie und Syphilis (in German) 1898;43:187–200/Anderson W. British Journal of Dermatology 1898;10:113–7)
  • 全身の細胞における酵素αガラクトシダーゼAの活性欠損・低下のためグロボトリアオシルセラミドがライソゾームへ進行性に蓄積して発症するX連鎖遺伝疾患

👶 ファブリー病を疑うべき臨床所見
  • 重度の四肢疼痛の周期的な発作(四肢末端感覚異常)
  • 皮膚血管病変(被角血管腫)
  • 発汗異常(無汗症,発汗減少,まれに多汗症)
  • 特徴的な角膜や水晶体の混濁
  • 脳卒中
  • 左室肥大
  • 蛋白尿および微量アルブミン尿を含む原因不明の腎不全


(皮膚の被角血管腫/angiokeratoma:Ann Indian Acad Neurol 2018;21:309-10)

😎 近年ファブリー病のバイオマーカーとして注目 ➜ 尿中マルベリー体

(投稿者 川崎)

2021-09-05

Binary Appearance バイナリーアピアランス


症例ADとBEはファブリー病,症例CFは肥大型心筋症(内膜肥厚が同一である点に注目)

  • 2年後に同じ雑誌がBinary Appearanceはあまりあてにならないという報告を掲載
  • イギリスからの報告で家族性の肥大型心筋症との鑑別では感度35%,特異度79%

症例1はファブリー病でバイナリー・アピアランスなし,症例2は肥大型心筋症で同所見あり

💀 おまけ

💁 ファブリー病に関連する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2020-02-06

ファブリー病の心電図


上記の症例では左室肥大に加えてPQ間隔の短縮(80 ms)が目立ちます.心電図で著明な左室肥大を示す疾患として肥大型心筋症が有名ですが,PQ間隔の短縮を示すことは稀(実は知らない循環器希少疾患/南江堂).PQ短縮の原因は不明ですが房室接合部への細胞内沈着物による刺激伝導系の修飾が疑われている様です(★)

👶 Fabry diseaseの復習
  • ドイツの皮膚科医Johannes Fabryと英国の皮膚科医William Andersonが別々に報告(共に1898年)
  • 加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA活性の欠損あるいは低下による不要な糖脂質GL-3の蓄積
  • 心臓や腎臓,神経,四肢,角膜,皮膚,消化器などの進行的な組織障害で多彩な臨床症状を呈す
  • 近年,尿中の特徴的な渦巻状成分(マルベリー体)がファブリー病のバイオマーカーとして注目

🉐 心電図に関連する投稿 ➜ コチラ(画面右の分類からも選択可能です)

(投稿者 川崎)

2021-09-18

心臓MRのT1 mapping

  • 静磁場内の組織が持つピクセル毎の固有T1値(ms)を定量評価してマップ表示
  • 心筋の組織性状を定量的に評価する方法でNative T1とECVの2通りの方法がある
  • 有用な心疾患はアミロイドーシスやファブリー病,心筋炎,鉄沈着など(下図)

(いずれも心臓 2018;50:1190-4)

1.Native T1
  • 造影剤は不要で細胞成分と間質の両者からの信号で決定される
  • 基準値は1,250 ms程度(各施設でボランティアによる設定要)
  • 延長する病態 ➜ 心筋線維化,心筋浮腫,アミロイド沈着など
  • 短縮する病態 ➜ 心筋への脂質や鉄成分の沈着または出血など

2.ECV(extra-cellar volume fraction:細胞外容積分画)
  • ガドリニウム造影剤の投与前後で T1値を計測して計算式で算出
  • 基準値は23〜28%程度(各施設でボランティアによる設定が必要)
  • 細胞外マトリックスを間接的に定量評価でき心筋線維化を反映
  • ただし心筋線維化以外の細胞外液容積が増加する病態でも増加


(投稿者 川崎)

2022-01-12

カッツ・ ワクテル現象 Katz-Wachtel phenomenon

  • 心電図でV2〜V4誘導に50 mm以上のRS高を持つQRS複合体が存在する状態で,右室肥大と左室肥大が共存しる両室肥大を意味する
  • 先天性心疾患(特に心室中隔欠損)を有する小児に認めることがあり,カッツ・ ワクテル兆候(Katz-Wachtel sign)と呼ばれることもある
  • 命名は米国シカゴの循環器内科医であるLouis Nelson Katz (1897–1973)とHans Wachtel (1909–1977)の初報(Am Heart J 1937;13:202-6)

心室中隔欠損(VSD)症例で認めたカッツ・ ワクテル現象(Katz-Wachtel phenomenon)
👪 言葉の整理 
  • 本例の心電図はdiphasic QRS complexesと表現されます.diphasicは電気用語で2相性(1サイクルに2つのピーク:つまり高いR波と深いS波)を意味します.よく似た意味でbiphasicやbimodalなどがあります.しかしbiphasicは本来,生活環が胞子体(核相2n)と配偶体(核相n)の2相からなることを意味し,bimodalは統計の頻度分布曲線で2つの山をもつことを意味するようです.


🉐 マニアックな心電図所見
(投稿者 川崎)

2026-06-01

フェノコピー Phenocopy

  • pheno(表現型)+ copy(複製)の合成語で、芳名は表現型模倣など
  • 遺伝子型は異なるが、環境要因により同じ表現型が現れる現象のこと
  • 類語にジェノコピー(Genocopy): 異なる遺伝子変異で同じ表現型
  • Phenocopy=環境の遺伝子模倣、Genocopy=遺伝子同士の相互模倣

👬 臨床現場での実例
  • 肥大型心筋症は遺伝子の異常に関連する心肥大と考えられるが、高血圧性心疾患や大動脈弁狭窄症、スポーツ心臓、心臓アミロイドーシス、ファブリー病などもよく似た左室形態を呈する(phenocopy 現象)。よって肥大型心筋と診断する時には、これらのフェノコピー疾患を除外する必要がある。

(投稿者 川崎)

2025-05-13

第11回日本心筋症研究会より

😀 個人的に気になった報告

SY4-3 肥大型心筋症のエレクトリカルストームに対する最終戦略:体外放射線治療
  • 単極カテーテルアブレーション(RFCA)後の再発性心室頻拍(VT)に対し、2015年に初めて心臓定位放射線治療(Cardiac-SBRT)の臨床報告が発表 され、新たな治療アプローチとして注目されている。2017~2024年の225人を対象としたレビューではSBRT後のVT再発が90%、ICDショックが91%減少した。一方で完全寛解はまれであり、6か月間の生存例のうちVT再発が30%認められた。有害事象は軽症なものが大多数を占めており、心機能低下例は報告されていない。

YIA-2 がん治療関連心機能障害(CTRCD)発症予測における新規心エコー指標 Myocardial Work Index(MWI)の意義
  • MWIは左室心筋仕事量を解析する新しい心エコー指標でCTRCDの発症予測の一助となる可能性がある。(追記:3つの心尖ビューにおける標準的な全体的縦方向歪みGLS分析+収縮期カフ血圧+大動脈弁および僧帽弁の開閉のタイミングからソフトウェアで計算)

P1-6 プレセニリン2欠損心筋細胞の超微形態学的解析
  • プレセニリン2(PS2)は、小胞体(ER)のミトコンドリア関連膜に存在する蛋白分解酵素の触媒蛋白である。PSEN2遺伝子変異は家族性アルツハイマー病の原因となるが拡張型心筋症の発症にも関与する。

P2-4 重症大動脈弁狭窄症を合併した閉塞性肥大型心筋症に対する治療戦略
  • 大動脈弁狭窄症と閉塞性肥大型心筋症は一定数で併発することが知られている。両疾患が合併した症例に対し大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)を施行した後に、左室流出路閉塞の増悪による収縮期僧帽弁前方運動から僧帽弁逆流が増悪し、血行動態が破綻する症例があり、"Suicide left ventricle”として知られている。

P3-7 解釈の誤りにより診断が遅れ治療機会を逸した女性心ファブリー病の一例
  • 心筋生検では核の腫大・不正化、空胞変性を高度に認め、電顕でzebra body を確認し Fabry 病を疑った。αガラクトシダーゼ活性は正常で、遺伝子解析(GLA エクソン・IVS4 含むイントロン)も異常なく、心 Fabry 病は否定的と判断。10年後に本人の了承を得てLyso-Gb3を測定したところ 13.9ng/mL(cut off<2)と高値で Fabry 病の可能性が極めて高いと判明した。

P4-3 ピロリン酸シンチ陽性ATTR心アミロイドーシス probable診断連続20症例の腹壁脂肪吸引生検アミロイド陽性率
  • 従来15%とされているよりもはるかに高い80%ものアミロイド陽性率を認めた(全てTTR免疫染色でも陽性)。


💁 参加記
  • 今回は山形県の天童市での開催でした(同研究会への参加は初めてです).空港から天童市へのアクセスが良くありませんでしたが(なんと公共交通機関なし),とても落ち着いたきれいな街でした.
  • (個人的に好きな)将棋の街で,至る所で将棋の駒のオブジェを目にしました.会場の天童ホテルの横に水車生そば(鳥中華の発祥の店)や広重美術館(東海道五十三次を展示中)もあり楽しめます.
  • 全体的に少しこじんまりした会でしたが,心筋症に特化しているだけあって,尖がった濃い演題が多かったように感じました.僕も「肥大型心筋症の身体所見:その頻度と臨床的意義」を発表しました.

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2019-09-25

日本内科学会 第225回近畿地方会より

🎃 個人的に気になった演題

演題10 ニボルマブによるirAEでSchmidt症候群を合併した症例
  • irAEとはimmune-related adverse event(=免疫関連副作用).Schmidt(シュミット)症候群とはアジソン病に橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患を合併する多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyglandular syndrome, APS)のⅡ型.ちなみにAPSのⅠ型はアジソン病に特発性副甲状腺機能低下症や皮膚カンジダ症を合併(HAM症候群:Hypoparathyroidism, Addison’s disease, Mucocutaneous candidiasis).詳しくはコチラへ 🐤

演題41 経過観察中に尿中マルベリー体を認めたことからFabry病の診断に至った肥大型心筋症の1例
  • マルベリー=mulberry=クワの実.灰白色で透明の特徴的な渦巻状成分で,近年ファブリー病のバイオマーカーとして注目されている.


演題109 右上肢に発症した複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1例
  • 複合性局所疼痛症候群(CRPS)は骨折などの外傷や神経損傷の後に疼痛など多彩な症状が遷延する病態.CRPS=complex regional pain syndrome.本ページでも昨年にアップしています ➜ コチラ 🐥

演題129 動悸・呼吸苦にて来院、診断に苦慮したMa2脳炎の1例
  • 血清中の抗Ma2抗体は細胞内抗原を認識する自己抗体.ほとんどの症例で腫瘍を合併し,本抗体陽性脳炎では辺縁系脳炎を伴うことが多い.

演題185 免疫阻害法でCKMB高値を認めた大理石骨病疑いの1例
  • 大理石骨病は破骨細胞の機能障害によるびまん性骨硬化性病変の総称.CK-BBは通常血中に流出することはほとんどないが,大理石骨病では高値になり得る.CK-BB出現時やマクロCK血症では,通常の検査(免疫阻害法)で誤ってCK-MBが高値に算出されることがある.



🎴 当院からの発表は以下

  • 演題19 市販鎮痛薬の内服で急性ブロム中毒をきたした1例(宗川ちひろほか,総合診療科)
  • 演題164 メサラジンにより薬剤性肺炎を発症した潰瘍性大腸炎の1例(春名優甫ほか,消化器内科)

  • 宗川先生が若手奨励賞(後期)の最優秀演題賞を獲得 🏆
  • さらにすごいことに今回の発表前に英語で論文を完成 🎊

関連投稿 👀

(投稿者 川崎)