このブログを検索

2021-06-30

英語論文の投稿先に迷ったら…

英語論文を作成しても数度rejectされると投稿先に迷うことがあります.そんな時にアブストラクトを用いて28,653誌以上のジャーナルから適切な医学誌を検索できる秀逸な無料ページがあります.
  • EdanzJournal Selector(エダンズは英文校閲や事前査読など研究者向けサービス提供会社)

😗 方法
  1. (右)上にある赤い検索窓をアブストラクト/キーワードに変更
  2. 出現するボックスに英語抄録をコピペして検索ボタンをクリック
  3. 表示ジャーナルをインパクトファクター順に並び替えも可能です

(投稿者 川崎)

2021-06-29

🏃 短距離選手と心拍数の関係

  • 今の一流選手がどんな心拍数で本番に臨んでいるかは、調べてみたものの見つけられませんでした… ただ、心拍数とタイムの関係について、現役選手として興味深いと思ったものがいくつか文献にあったので紹介します。
  • 大学時代、当時エースだった先輩に「土橋、コンビニに行く用事あったら(某エナジードリンク)を買ってきてくれへんか?」とよく言われていました。 エナジードリンクで変わるのか?と聞いたことがありましたが、「カフェインがタイムに影響している気がする」と先輩が言っていたのを思い出します。 実際、カフェイン摂取により心拍数が上がることが良い結果に繋がっていたのかもしれませんね。
  • 前置きが長くなりましたが、色々調べていると「心拍数が大きく上昇した選手ほど、スタート時の膝関節伸展速度が増加し、タイムが短縮した」と報告したものがありました ➜ コチラ
  • 短距離(特にスタートダッシュ時)では、股関節や膝関節、足関節といった下肢の関節をいかに素早く、力強く操れるかが勝負のカギとなります。 この研究では、20mダッシュに条件を課して心理的なプレッシャーを与えることで心拍数を上げていたようですが、失敗できないという状況下で集中力を高まったという要因の他に、心拍数を上げることが関節運動の俊敏性向上と関連しているのではないかと思われます。
  • これだけでは、「プレッシャーで集中力が上がったからタイムも良くなった」という仮設を棄却することはできないので、さらなる文献 ➜ コチラ
  • 一流選手と城西大学の短距離選手(この大学も十分すごいですが)では、最大酸素摂取量に8%(体重あたりの最大酸素摂取量では5%)の差があったようです。 最大酸素摂取量は心拍数と直線的な関係があることが知られているので、やはり心拍数が高いほど最大酸素摂取量も多くなるはずで、一流選手の好タイムに心拍数が寄与している可能性を示唆します。100mは無酸素運動なのに、最大酸素摂取量が関係するというのも興味深いです。

今日自分で人体実験してきた結果と考察です
心拍数の測定は15秒×4、距離は60m、土用スパイクを履いています

心拍数 60mのタイム
52/分 7.77秒
68/分 7.69秒
80/分 7.75秒
116/分 7.63秒
140/分 7.64秒

  • 1人の練習でこれ以上心拍数を上げることは困難でした やはり心拍数が上がると短距離走のタイムは良くなりました。一方で、完全に比例するわけではなく個々によって頭打ちの値があり、僕の場合は予想以上にすぐでした …笑
  • 走ってみた感想としては、心拍数が上がるにつれ大きな筋肉(大腿二頭筋や四頭筋) が温まり動かしやすくなったので、心拍数上昇→筋温上昇もタイム向上の要因だと考えられます。

(投稿者 土橋)

2021-06-28

伸展と屈曲

動悸と頻脈で紹介受診した症例の左肘部

🐦 解説
  • 伸展した肘に正中動脈の拍動 ➜ 大脈・速脈が示唆される
  • 同所見は水槌脈 反跳脈コリガン脈などと呼ばれている
  • 大動脈弁逆流や甲状腺機能亢進症,貧血,発熱などで出現
  • しかし本例には洞頻脈はあったが他の異常を認めなかった
  • 最終的に日常生活のストレスに関連した反応性頻脈と診断

😊 臨床現場
  • 正中動脈をビンビン触れたため,安易に病的な大脈・速脈と考えてしまった.しかし各種検査でも明らかな原因がないため,もう一度注意深く観察してみると,肘を少し屈曲すると分かりにくくなることが判明した.これは以前に経験した高度の大動脈弁逆流による病的な正中動脈の拍動とは真逆であった(実際の症例).自分で試してみても伸展時は正中動脈をよく触れるため,病的な大脈・速脈は少し屈曲して判定する方がいいのかも...

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-06-27

日本内科学会 第232回近畿地方会より

🐤 昨日WEBで開催/個人的に気になった演題
演題36 ニコチン依存症3例への在宅酸素療法の検討−火災リスクの評価と対策
  • 教訓として認知症もしくはアルコール依存症を合併している独居で見守りのないニコチン依存症患者には,在宅酸素療法の適応はないとおもわれる.

演題37 化学熱傷後の難治性潰瘍を契機に診断となったWerner症候群の1例
  • ウェルナー症候群とは常染色体劣性の遺伝性疾患で,思春期以降に白髪や白内障,皮膚の萎縮・硬化, 音声異常などさまざまな老化徴候が出現する.

演題59 オムツ誤食によりステーキハウス症候群をおこした1例
  • 問診・画像検査から高分子吸水材誤食によるステーキハウス症候群であると判断.緊急内視鏡では食道内におむつの高分子吸水材が充満していた.

演題124 精神疾患があり診断が遅れたGitelman症候群の1例
  • 本症例は幼少時からの塩分嗜好,疲労感,筋痙攣といったギッテルマン症候群の症状が不定愁訴として見過ごされ,精神疾患として対応されてきた可能性がある.

演題145 グラム染色を含めた繰り返す喀痰検査が有用であったCorynebacteriumによる肺炎の1例
  • コリネバクテリウムは皮膚,口腔内,腸管等に常在するグラム陽性桿菌で感染症の起炎菌となることは稀であるが,院内肺炎の起炎菌の11.8%を占めたという報告もある.

演題148 Symmetrical peripheral gangrene(SPG)を来した急性腎盂腎炎の1例
  • SPGは四肢遠位部の虚血性壊死で,二肢以上が同時に侵され,近位動脈閉塞を伴わないものと定義される.多くはDICを併発する敗血症を背景とし,四肢末梢血管の微小血栓や攣縮により発症すると考えられている.

🎓「学会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2021-06-26

遷延するno reflow:冠動脈内エピネフリン投与

😱 最終兵器かつ自己責任の手技ですが…(もちろん適応外投与😶)
  • 初めての報告は難治性の29例に対してエピネフリン139±189μgを冠動脈に投与して69%にTIMI 3の血流改善を得た(Catheter Cardiovasc Interv 2002;57:305-9
  • ニトロプルシドやベラパミルなどに抵抗性の12例に333±123μgを投与して11例に血流の改善あり.心拍数(平均68 ➜ 95beats/min)と収縮期血圧(平均94 ➜ 140mmHg)は上昇するが重篤な副作用なし(BMC Cardiovasc Disord 2015;15:10

💣 頭の片隅に
  • ボスミン注1mg(アドレナリン1mg/1mL[0.1w/v%])を生食100mlに溶かして10mlシリンジでとるとエピネフリン100μgになる.5mlあたりからの投与が現実的か…
  • エピネフリンの効能又は効果は気管支喘息または百日咳気管支痙攣の緩解・各種疾患もしくは状態に伴う急性低血圧又はショック時の補助治療・心停止の補助治療で,投与方法は皮下注射又は筋肉内注射または希釈しゆっくりと静注(蘇生などの緊急時)

🉐 関連投稿(冠動脈インターベンションPCIのテクニック編)
(投稿者 川崎)

2021-06-25

Chilaiditi syndrome キライディディ症候群

  • 横隔膜と肝右葉前面の間に消化管(多くは結腸)が貫入した病態
  • ギリシャの放射線科医Demetrius Chilaiditiが1910年に報告(
  • 肝横隔膜間結腸嵌入症や結腸横隔膜症候群と呼ばれることもある
  • 多くの症例は無症状/稀に上腹部不快感や胸部不快感,悪心など
  • 通常は経過観察あるいは保存的治療で,腸閉塞時には外科的治療
  • 頻度は定期集団検診で 67,519人中2例(0.003%)〜0.015%程度



😊 名前がとても印象的な症候群です.僕の父親も検診で撮影した腹部X線でコレでしたが,20年後の今も元気にしています.


(投稿者 川崎)

2021-06-24

🎯 今週の一枚

肥満女性の右膝窩周辺(無症状)


(投稿者 川崎)

2021-06-23

方向交代性眼振 Direction-changing positional nystagmus

  • 方向交代性頭位眼振の定義 = 右下頭位と左下頭位で方向の逆転する眼振
  • 頭位右下で右向き眼振+頭位左下で左向き眼振 ➜ 方向交代性下向性眼振
  • 頭位右下で左向き眼振+頭位左下で右向き眼振 ➜ 方向交代性上向性眼振
  • 眼振は1Hz程度(1回/秒)であるが見た目で上向と下向の鑑別は難しい
  • 通常はFrenzel眼鏡あるいは赤外線CCDカメラを頭部に装着して評価する
  • 方向交代性眼振のみから病変の部位(末梢性 vs 中枢性)は鑑別できない
  • 以前から方向交代性眼振は中枢(特に小脳病変)に多いと考えられてきた
  • 現在では末梢性,特に良性発作性頭位めまい症が多いと考えられている
  • ただし注視性の方向交代性眼振の場合は中枢性めまいを疑う必要がある



💁 めまいに関する過去の投稿は コチラ(PC版なら右欄からも選択可能です)

(投稿者 川崎)

2021-06-22

😕 肺疾患?

動悸と息切れで受診した慢性左心不全症例(仰臥位で呼吸調整なし)





(投稿者 川崎)

2021-06-21

透析 vs ワルファリン

1.日本循環器学会らのガイドライン2020年改訂版 不整脈薬物治療
📗 維持透析導入後の場合(ページ52〜53)
  • 維持透析導入後の患者においても安易なワルファリン治療は行わないことが望ましい.透析患者にワルファリンを投与することは,出血を増やすのみならず,塞栓症をも増やす可能性が指摘されている.そのため,日本透析医学会では,維持透析導入後の患者に対するワルファリン投与を原則禁忌としている(ここでの引用はCirc J 2011;75:1539-47).本ガイドラインにおいても,維持透析導入後の患者に対するワルファリン投与は原則禁忌として扱う.ただし,心房細動アブレーション周術期にはワルファリンの使用は一般的であり,また機械弁症例や脳梗塞二次予防など,症例によってはワルファリンを使用せざるを得ない場合もある.かならずしも維持透析症例へのワルファリン投与を妨げるものではない.
📘 非弁膜症性心房細動の腎機能に応じた抗凝固療法(ページ53の表36)
  • ダビガトラン ➜ CCr<15なら禁忌,維持透析導入後は禁忌
  • リバーロキサバン ➜ CCr< 15なら禁忌,維持透析導入後は禁忌
  • アピキサバン ➜ CCr<15なら禁忌,維持透析導入後は禁忌
  • エドキサバン ➜ CCr<15なら禁忌,維持透析導入後は禁忌
  • ワルファリン ➜ CCr<15でも投与可能,維持透析導入後は原則禁忌

2.ワルファリンカリウム錠の医薬品情報2019年1月改訂 第20版
📙 禁忌項目に以下の記載(ただし透析という用語の記載はない)
  •  (3) 重篤な肝障害・腎障害のある患者[ビタミンK依存性凝固因子は肝臓で産生されるので、これが抑制され出血することがある。また、本剤の代謝・排泄の遅延で出血することがある。]

3.慢性腎臓病におけるワルファリンなどの使い方日内会誌 2018;107:856-64
📚 血液透析患者の心房細動合併例におけるワルファリン投与
  • まだ結論が出ていないが,ワルファリン投与により出血のリスクが上昇する一方で,脳梗塞の発症は抑えられない懸念あり(下表)
  • 透析例についてはアピキサバンのみFDAで承認されているが,AHA/ACC/HRSガイドライン(2018年時点)や欧州不整脈学会のガイドライン(2018年時点)では全てのDOACについて推奨していない.
(上記の文献3はChest 2016;149:951-9

😐 少し先ですが...
  • 現在,CHA2DS2-VAScスコア2点以上の心房細動を合併した血液透析患者を対象にしたビタミンK拮抗薬の効果を検討するオープンラベル多施設無作為化比較試験のAVKDIAL試験NCT02886962)が進行中.2017年7月に開始され2023年に試験終了の予定です.

(投稿者 川﨑)

2021-06-20

🌱 ケンシュウイの種 #4

※当院の初期研修医が経験した症例の振り返りです(隔週更新)


💁 過去のケンシュウイの種は コチラ(PC版なら右欄からも選択可能です)

(投稿者 当院初期研修医チーム)

2021-06-19

気胸治療中に胸腔チューブからエアリークが続くとき

  • 空気漏れが続く場合(例えば2週間)は感染リスクも増すため外科手術を考慮する
  • ただし一概にエアリークありとせず,下記の様な程度分類を用いた推移判定が重要
  • その他の手術適応は肺拡張なし・血胸(持続出血)・両側同時性気胸・再発例など

👿 エアリークの程度分類
  1. 空気漏れなし
  2. 咳や深呼吸時に出現
  3. 会話時に出現
  4. 呼気時にのみ出現
  5. 常に空気漏れあり

参考) 埼玉病院 呼吸器外科(😀 一読をお勧め)

 💉 臨床現場
  • 今回経験したエアリークはアスピレーションキットの損傷でした.このような現象はトロッカーでは生じにくいことを呼吸器内科の友達に教えてもらいました.

💁 気胸に関する過去の投稿 ➜ コチラ(上の検索窓からも調べられます)

(投稿者 川崎)

2021-06-18

mMRC

  • mMRCとはmodified British Medical Research Councilの略で息切れスケール
  • 諸外国で従来から用いられてきたMedical Research Council(MRC)の改良版
  • 我が国では長年にわたりHugh-Jones分類を使用してきたがこれは世界的には稀
  • MRCスケールは英国のFletcherの報告が元(Proc R Soc Med 1952;45:577-84
  • 現在ではMRCよりもmMRC のほうがより一般的に用いられている(違いは下表)


😵 MRCには少しややこしい問題があるようです ➜ ディープな解説

(投稿者 川崎)

2021-06-17

🎯 今週の一枚

心疾患でワルファリンを内服中の症例



(投稿者 川崎)

2021-06-16

ブルンストローム・ステージ Brunnstrom Approach

  • 片麻痺の回復過程を評価する方法で別名はブルンストローム・リカバリー・ステージ
  • スイス系アメリカ人の理学療法士である Signe Brunnström が1950-1970年にかけて開発
  • 回復程度に規則性があるという前提で,上肢・下肢・手指を下記の6ステージに分類

  1. (Flaccidity)➜ 弛緩性麻痺(随意的な筋収縮反応なし)
  2. (Synergies、Some spasticity)➜ 共同運動(筋緊張の出現)
  3. (Marked spasticity)➜ 痙性パターン(他部位の運動に伴い連動が出現)
  4. (Out of synergy、Less spasticity)➜ 分離運動(痙性パターンの抑制)
  5. (Selective control of movement)➜ 選択的運動(自由に動かせる状態)
  6. (Isolated /coordinatede movement)➜ 独立・協調運動(スムーズな動き)

👉 分かり易い図は コチラ
👷 脳梗塞に関する過去の投稿 コチラ

(投稿者 川崎)

2021-06-15

妊孕性

妊娠するために必要な能力のことで読み方は「にんようせい」

妊孕性を構成する主な要素
  • 女性 ➜ 子宮・卵巣・卵子・排卵
  • 男性 ➜ 精巣・精子・射精・勃起 


妊孕性は手術や抗がん剤,放射線治療などの“がん治療”によって障害される.よって様々な妊孕性温存療法が開発されている(詳細は日本癌治療学会がん診療ガイドラインの妊孕性温存へどうぞ)

😒 過去の漢字に関する投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川﨑)

2021-06-14

🔔 ベルは押してみようパート3

呼吸困難感を訴えて受診した症例

🐪 解説
  • 聴診器の膜部はしっかり押し当て使う ➜ 頻脈であるが過剰音なし
  • 聴診器のベルは軽く乗せる感じで使う ➜ 過剰音があるが時相不明
  • ベルを押し込むと膜部と同じく低音消失 ➜ 過剰音が消失し頻脈音
  • この過剰な心音は心尖部の低調音 ➜ ギャロップ(奔馬調)と判断
  • 最終的に拡張型心筋症による心不全の増悪(非代償)と診断した

🐫 復習
  • 本例のように頻脈があると過剰音のタイミングをⅡ音後(Ⅲ音:例 ベルは押してみよう)あるいはⅠ音前(Ⅳ音:例 ベルは押してみようパート2)などと判断することは難しい.しかしまさに馬が駆け抜けるような音であるギャロップは特徴的であるため時相分析は不要である.一言でギャロップといっても様々なパターンがあるので慣れておく必要あり(過去の投稿).とにかくベルで過剰心音を聴取し押込みで消失なら低調音でありⅢ音,Ⅳ音,ギャロップを考える.

🉐 聴診器のおさらい ➜ コチラ

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-06-13

🌱 ケンシュウイの種 #3

※当院の初期研修医が経験した症例の振り返りです(隔週更新)


💁 過去のケンシュウイの種は コチラ(PC版なら右欄からも選択可能です)

(投稿者 当院初期研修医チーム)

2021-06-12

ビッカースタッフ脳幹脳炎 BBE: Bickerstaff brainstem encephalitis

  • 観念 意識障害+外眼筋麻痺+運動失調を中核症状とする中枢神経疾患
  • 由来 英国の神経内科BickerstaffとCloakeの初報(Br Med J 1951;2:77-81
  • 類縁 中枢神経障害を伴うFisher症候群でGuillain-Barré症候群類縁疾患
  • 疫学 本邦では約100人/年で全年齢層(特に30代)に生じやや男性優位
  • 原因 先行感染を契機に誘導された自己免疫による機序が推測されている
  • 経過 症状は4週以内にピークとなり,通常はその後に徐々に回復に向かう
  • 検査 Fisher症候群と同様に血中IgG型GQ1b抗体が陽性+他疾患の除外要
  • 治療 免疫グロブリン大量静注や血液浄化,副腎皮質ホルモン+全身管理
  • 予後 約2割は経過中に人工呼吸管理/約1割は発症1年後で自力歩行不可


💁 神経内科に関連する投稿は コチラ(PC版なら右欄からも選択可能です)

(投稿者 川崎)

2021-06-11

縫合:バイトとピッチ

  • バイト(bite)➜ 創縁から針刺入部までの距離で下図の1.0 cm stitch lengthの半分
  • ピッチ(pitch)➜ 隣接する縫合と縫合の距離のことで下図で0.5 cm spacingになる
  • 切開線をまたぐ縫合ではバイトピッチの長さを同じ距離に保つことが理想である
  • 適切な針を選べば刺入する深さ(下図の0.5 cm depth)も自然と同じになってくる


🉐 関連投稿 
(投稿者 川崎)

2021-06-10

🎯 今週の一枚

心雑音を指摘された若者



(投稿者 川崎)

2021-06-09

モーリー・テスト Morley test

  • 胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome; TOS=胸郭出口付近で鎖骨や第一肋骨,前斜角筋などに腕神経叢と鎖骨下動脈,鎖骨下静脈が圧迫されて生じる病態)を診断する方法の一つ.
  • 鎖骨上窩の腕神経叢を指で圧迫して圧痛が生じれば陽性と判断.なお頚肋(頸肋,けいろく=第7頸椎の横突起の異常発育)は胸郭出口症候群の原因の一つである.
  • 名称の由来は(おそらく)イギリスの外科医 John Morley(Brachial plexus neuritis due to a normal first thoracic rib : its diagnosis and treatment by excision of rib. Clin J 1913;13:461-3).

胸郭出口症候群の検査法まとめ/TOSの診断をまとめた秀逸動画)

💁 整形外科に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄からも選択可)
(投稿者 川崎)

2021-06-08

RS3PE アールエススリーピーイー 症候群

  • 意味 Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edemaの頭文字
  • 概要 両手足の圧痕性浮腫が特徴的な特定の臨床所見を呈する突然発症の多関節炎
  • 初報 米国のリウマチ科医師 McCarty らによる10例報告(JAMA 1985;254:2763-7
  • 疫学 頻度は50歳以上の0.09%と比較的多く,男女比は1:1~2:1とやや男性が優位
  • 診断 確立した診断基準が存在しないため特徴的な身体所見と他疾患の除外による
  • 鑑別 高齢発症関節リウマチ(EORA)やリウマチ性多発筋痛症(PMR)他(下表)
  • 採血 リウマトイド因子を含む各種自己抗体は通常陰性(病名のSはseronegative)
  • 画像 骨X線で関節びらん等はないがGa造影MRIで強い造影有(関節エコーも有用)
  • 治療 低用量ステロイド(10-15mg/日)から開始/不十分ならメトトレキサート等
  • 予後 ステロイドへの反応は非常に良いが,ステロイドを離脱できない症例も存在
  • 合併 消化器系や前立腺などの癌や悪性リンパ腫の合併が少なくない(過去の投稿


日内会誌 2017;106:2131-5/表上の文献10はコチラ

(投稿者 川﨑)

2021-06-07

CDC&ECDC

 📀 CDC
  • もちろんCenters for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病管理予防センター)の略称で,感染症対策の総合研究所.1946年に創設され米国の健康と安全を主導する連邦機関であるが,実際は世界中の疾患に対応している.本部は米国ジョージア州アトランタにあり職員は7,000人で,国内外の支部にも8,500人を擁す(過去の投稿).

💿 ECDC
  • 予想通りヨーロッパ版のCDCで,正式名称はEuropean Centre for Disease Prevention and Control(欧州疾病予防管理センター).ヨーロッパの伝染病予防の強化を目的に2005年に設立された機関で,本部はスウェーデンにある.センターは約300人の職員を擁し、十年間の予算は総額5,000万ユーロが投じられる(引用).

(投稿者 川﨑)

2021-06-06

抗微生物薬など

抗微生物薬 (antimicrobial agents, antimicrobials)
  • 微生物(一般に細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に大別される)に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。ヒトで用いられる抗微生物薬は抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬を含む

抗菌薬 (antibacterial agents) 
  • 抗微生物薬の中で細菌に対して作用する薬剤の総称として用いられる。

抗生物質 (antibiotics)
  • 微生物、その他の生活細胞の機能阻止又は抑制する作用(抗菌作用と言われる)を持つ物質であり、厳密には微生物が産出する化学物質を指す。

抗生剤
  • 抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤を指す通称。


(投稿者 川崎)

2021-06-05

怠け者? Definitely No!

労働現場で「気合が足らん」と言われていた症例

👹 所見の解説
  • 舌圧子の上方移動が二段である ➜ 二峰性拍動(pulsus bisferiens/biphasic pulse)
  • 同所見は閉塞性肥大型心筋症(spike and dome型)または大動脈弁逆流(鋭い2峰)
  • 本例の二峰性拍動は後半が前半より小さいが後半のフレも鋭い(dome型ではない)
  • 心エコー図で大動脈弁輪拡張と高度大動脈弁逆流を認めた(大動脈弁は三尖あり)
  • 肥大型心筋症の二峰性拍動は通常,後半成分が鋭くならない(自験例1自験例2

👺 独り言
  • 本例は舌圧子を用いなくても頸動脈の鋭い拍動(コリガン脈)を認めることに注目(集中すれば二峰性も見えてくる).コリガン脈は座位の方がより明瞭に観察できることが多い(重力による虚脱増強のため:自験例).一方,肥大型心筋症であれば頸部の陽性波は通常,頸静脈のa波である(自験例).
  • 本例は労働現場ですぐに休みたがるため職場仲間から「気合が入っとらん!」と言われていたようである.一方,診察室に入って来られた瞬間にコリガン脈から診断したため患者さんと家族にとても驚かれた.「いままでいくつかの医療機関を受診したのに…」と聞いて逆にこっちが驚いた.

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2021-06-04

心不全の増悪因子:FAILURE

  • Forgot medication:薬の服用忘れ
  • Arrhythmia/Anemia:不整脈や貧血
  • Infections/Ischemia/Infarction:感染,虚血,梗塞
  • Lifestyle:塩分過剰摂取やストレス
  • Upregulation of cardiac output:甲状腺疾患や妊娠
  • Rheumatic valve or other valvular diseases/Renal failure:弁疾患あるいは腎不全
  • Embolism:肺塞栓など

🚜 ガイドラインに記載されている心不全の増悪因子(82ページの表50)
  1. 急性冠症候群
  2. 頻脈性不整脈(心房細動,心房粗動,心室頻拍など)
  3. 徐脈性不整脈(完全房室ブロック,洞不全症候群など)
  4. 感染症(肺炎,感染症心内膜炎,敗血症など)
  5. アドヒアランス不良(塩分制限,水分制限,服薬遵守などがで きない)
  6. 急性肺血栓塞栓症
  7. 慢性閉塞性肺疾患の急性増悪
  8. 薬剤(NSAIDs,陰性変力作用のある薬剤,癌化学療法など)
  9. 過度のストレス
  10. 過労
  11. 血圧の過剰な上昇
  12. ホルモン,代謝異常(甲状腺機能亢進・低下,副腎機能低下, 周産期心筋症など)
  13. 機械的合併症(心破裂,急性僧帽弁閉鎖不全症,胸部外傷, 急性大動脈解離など)

🙆 循環器疾患の語呂合わせ(英語ですが…)➜ List of cardiology mnemonics

💁「語呂合わせ」に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2021-06-03

🎯 今週の一枚

腹部の違和感を訴える症例



(投稿者 酒井(健)/吉岡/川崎)

2021-06-02

🏃 先日のERで著効:看護師さんがやってくれました

👐 スクイージング(Squeezing)
  • 胸郭を使って、肺を絞るような動作からスクイージング。呼気時に両手で胸郭を圧迫し、肺に貯留した痰を中枢へ移動しやすくし、喀痰を補助する役割があるそうです。実際の動画が看護rooにありましたので貼っておきます↓


動画を見て分かる通り、理論的な医療行為というより経験的な手技だと思うので、
  • 呼吸にどれだけ同期させられるか
  • 適切な圧で行えるか
  • 圧を分散させず、狙った場所に力を加えられるか
が難しい(というより再現性が低い)と考えられます。

しかし、スクイージングが喀痰しやすさを促進するという文献は少ないながらにも存在したので、「痰のせいでサーチが低くてどうしようもない、、」といった患者さんに対して試してみるのは大いに有用ではないでしょうか。

(投稿者 土橋)

2021-06-01

心筋梗塞 vs 発熱

♡ 前PCI時代川崎医会誌 1993;19:1-11
  • 対象は心筋梗塞発症24時間以内にICUに入室した感染症合併のない49例で,39例(79.6%)に心筋梗塞発症4.3~51時間(平均23.4時間)の間に37℃以上の発熱あり.38例が2日以内に発熱し,そのピークは1例を除き心筋梗塞発症3日以内であった(範囲は37.0~38.4℃,平均37.2℃で1~2日間続き,平均発熱後3.8日間で解熱).ただし最高体温と最高CPK値に有意な相関なし(下図).


♤ PCI時代J Am Heart Assoc 2017;6:e005687
  • ST上昇型急性心筋梗塞に対して緊急インターベンションを受けた276例中45人が37.7度以上の発熱 (最高体温はインターベンション後4日以内).多変量解析では梗塞後の発熱は大きな心筋梗塞 (オッズ比3.48,95%信頼区間1.71–7.07,P<0.01) および小さい心筋サルベージ指数(オッズ比2.10,95%信頼区間1.01–4.08,P=0.03)と関連していた.ただし最高体温と心筋梗塞サイズや心筋サルベージ指数は有意に相関せず(下図).


機序
  • 壊死した心筋に対する好中球や単球,マクロファージなどの非特異的な反応から合成される各種サイトカイン(インターロイキン-1やインターロイキン-6,インターロイキン-8,腫瘍壊死因子-α,インターフェロン-γなど)の発熱作用によると考えられているようです.さらにこれらのサイトカインによって誘発されたプロスタグランジンE2などによる視床下部領域の体温調節中枢への作用もあるようです.


🉐 関連投稿(発熱と意外な循環器疾患)

(投稿者 川崎)