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2025-05-31

SAMの機序:ベンチュリ効果とドラッグ力

  • 閉塞性肥大型心筋症では僧帽弁の収縮期前方運動(systolic anterior motion, SAM)のため流出路狭窄が生じます.その原因として,かってはベンチュリ効果(venturi effect:流体が狭い箇所を通過する際に流速が増加し,その結果圧力が低下する現象)が提唱されていました.
  • しかし詳細な時相解析では,SAMは左室流出路の速度が正常なタイミングで始まります(上図).つまりベンチュリ効果でSAMを説明することは少し困難です.近年では流れが押し出す力(drag forces:日本語では抗力?)がSAMの主要な流体力であることが示唆されます(下図).
ベンチュリ―

💁 閉塞性肥大型心筋症に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-30

頚部で動脈拍動と静脈拍動を同時に視認すれば…part 2

息切れで来院した症例(座位)

👼 解説
  • 頚部全体が周期的に隆起(動脈 or 静脈)
  • 下部~上部がほぼ同時の隆起で動脈の疑い
  • 吸気で外頚静脈の怒張(膨隆+拍動なし)
  • クスマウル徴候陽性→右房圧の上昇の疑い
  • 最終的に中等度のARを伴う心不全と診断

👳 独り言
  • 先日,頚部で収縮期に動脈拍動(隆起=コリガン脈)と静脈拍動(陥凹=右房圧の上昇)を同時に視認した高心拍出性の心不全例を経験(ココ
  • 本例は少し違うパターンの動脈拍動と静脈拍動が併存した高心拍出性の心不全です.この2例は一週間ほど間に連続して当科を紹介受診しました.
  • 臨床現場では不思議と「このように稀な症例が続くんだ~」と感じることがあります.しかし実は今まで気づいてなかっただけかもしれません...😅

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)

2025-05-29

今週の一枚 🎯

- 開心術後例の定期エコー -

😊 解説
  • 僧帽弁レベルの短軸層が描出されている
  • 拡張期に僧帽弁の中央が解放していない
  • 中央が離れず(矢印)∞ の形をしている
  • 本症例は僧帽弁へのアルフィエリ縫合

💁 追加コメント
  • Alfieri Stitch(アルフィエリ縫合)は僧帽弁逆流の前尖と後尖の中央付近を縫合する手術です.イタリアの心臓外科医 Alfieri が開発し,経皮的僧帽弁クリップ術 MitraClip® の元祖になります.
  • MitraClip®後の心エコー図に比べて,僧帽弁中央の異物が小さいことや,その背部に出現するアコースティックシャドウ(音響陰影)が少ないことで鑑別することが可能ではないかと思われます.

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(投稿者 川崎)

2025-05-28

MAMIS(マミス)

  • Medical Association Member Information Systemの略で,医師会の会員情報システム(日本医師会が構築し2024.10に公開)
  • 医師会への各種申請手続き(入会・異動・退会など)を複写式届出用紙からWEB化して、会員や事務局作業の負担を軽減
  • インターネット上の「MAMIS」専用ページにアクセスして初回の利用登録(つまりマイページを作成)後に利用が可能


👽 おまけ
  • マミスをミマスと聞き違えて土星を思い出した方もおられるのでは?木星の4大衛星(ガリレオ衛星:イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)に比べて低い知名度ですが,ミマスは土星の第1衛星です。
  • ギリシア神話の巨人族タイタンの一人ミマースにちなみ命名され、その直径は約400km(地球の約0.03倍/月の0.08倍の大きさ)。氷および少量の岩石だけで構成されると考えられているそうです。
  • 医師(医師免許取得者)は医師会に加入しなくても診療が可能ですが、弁護士は弁護士会への所属が必須です。強制加入組織には長短がありますが、このマミスは医師会が巨人化する一石になるかも…

💁 医師会に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-27

キャノンボール転移 Cannonball metastases

  • 両肺に境界明瞭で大きく丸い外観を呈した転移形態
  • 肺の豊富な血管床では腫瘍の塞栓が生じやすいため
  • 肺転移が著しく進行するとしばしば原発が診断困難
  • 診断時には病気は進行し治癒不能・予後不良が多い
  • 腎細胞癌はキャノンボール転移の最多の原因の一つ
  • 他は絨毛癌や黒色腫,精巣腫瘍,骨肉腫,甲状腺癌


- 急速に進行した縦隔絨毛癌(矢印)の18歳男性 -

🎾 おまけ
  • AIによるCannonballの概要 ➜「キャノンボール」にはいくつかの意味があり,具体的には,球形の砲弾・高速で威力のあるテニスのサーブ・特急列車・非公式の自動車レースなどを指します.また抱え型飛び込みや無駄な時間を使ったりする状況を表すスラングとしても使われます.
  • 個人的には『キャノンボール』(英題:The Cannonball run)という,市販車でどれだけ速くアメリカを横断できるかを競う非公認レースの映画を思い出します(1981年公開:公式トレーラー).なお当院で経験した症例の原発は,剖検で下肢の血管肉腫であることが判明しました.

👉 転移に関するの過去の投稿は コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-26

フィジカルクイズ(No. 5 & 6)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-05-25

オリゴジェニック遺伝 Oligogenic inheritance

📗 単一遺伝子遺伝
  • 一つの遺伝子の変異によって病気が発症する遺伝形式のこと
  • 例:嚢胞性線維症(CFTR変異)やハンチントン病(HTT変異)

📘 二遺伝子遺伝
  • 二つの異なる遺伝子が協力し一つの表現型を決定する遺伝形式
  • 単一の遺伝子変異では発症しない病気が二つの変異で発症する
  • 例:遺伝性難聴(GJB2とGJB6という二つの異なる遺伝子が関与)

📙 三遺伝子遺伝
  • 三つの異なる遺伝子が協力して一つの表現型を決定する遺伝形式
  • それぞれの遺伝子が独自の役割を持ち補完し合い最終的な表現型
  • 例:バルデ-ビードル症候群(BBS1、BBS2、BBS6が関与して発症)


📚 オリゴジェニック遺伝
  • 少数の遺伝子のレアバリアントの組み合わせによって発症する病態
  • 例:先天性心疾患(MYH7、MKL2、NKX2-5などの遺伝子が相互作用)

参考)ミネルバクリニック、ほか

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(投稿者 川崎)

2025-05-24

終末期予後予測:PaPスコア & PPI

PaPスコア(Palliative Prognosis Score:計算ページ
  • 月単位の中期的な生命予後を予測するためのスケール(客観性にやや欠ける)
  • イタリアの医師 Pirovano らが開発(J Pain Symptom Manage 1999;17:231-9
  • 臨床予後、活動・症状、白血球(多い=悪)、リンパ球(低%=悪)から算出
  • 判断の目安は9点以上を21日以下(週単位)、5.5点以下を30日以上(月単位)

PPI(Palliative Prognostic Index:計算ページ
  • 日本で開発された短期的な予後(週単位)を予測する指標で血液検査が不要
  • 聖隷ホスピスの Morita らによって報告(Support Care Cancer 1999;7:128-33
  • 経口摂取量(TPN=0点)、浮腫、安静時呼吸困難、せん妄の合計得点から算出
  • 6.5点以上なら21日以下(週単位)、3.5点以下なら42日以上(月単位)と判断

💁 緩和 に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右下から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-05-23

有害事象グレード

  • 2017年11月に米国のNational Cancer Institute(NCI)の Cancer Therapy Evaluation Program(CTEP)が公表した「Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v5.0」に準ずることが多い。
  • 本邦ではその日本語版である有害事象共通用語規準v5.0日本語訳JCOG版(略称はCTCAE v5.0 - JCOG)を使用(JCOGとは日本臨床腫瘍研究グループ Japan Clinical Oncology Groupの略)(PDF版はコチラ

  • Grade 1 ➜ 軽症; 症状がない, または軽度の症状がある; 臨床所見または検査所見のみ、または治療を要さない
  • Grade 2 ➜ 中等症; 最小限/局所的/非侵襲的治療を要する、または年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限*
  • Grade 3 ➜ 重症または医学的に重大であるが, ただちに生命を脅かすものではない; 入院または入院期間の延長 を要する; 身の回りの日常生活動作の制限**
  • Grade 4 ➜ 生命を脅かす; 緊急処置を要する
  • Grade 5 ➜ 有害事象による死亡

👾 注意点
  • Grade 説明文中のセミコロン(;)は「または」を意味する。
  • *身の回り以外の日常生活動作(instrumental ADL)とは、食事の準備、日用品や衣服の買い物、電話の使用、金銭の管理などをさす。
  • **身の回りの日常生活動作(self care ADL)とは、入浴、着衣・脱衣、食事の摂取、トイレの使用、薬の内服が可 能で、寝たきりではない状態をさす。

💁 有害事象に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-22

今週の一枚(音) 🎯

倦怠感を自覚している症例

😎 解説
  • 第3肋間胸骨左縁(3L)でS2が明瞭に分裂している。健康な成人でもしばしば分裂するが(特に吸気時)、通常は前半(2A、大動脈弁成分)が後半(2P、肺動脈弁成分)よりも大きい。本例のように2Pが2Aよりも大きい場合、肺高血圧が示唆される。肺高血圧で2Pが亢進する機序は、収縮末期に肺動脈と右室間の圧較差が大きくなり肺動脈弁の閉鎖速度および閉鎖後の振動が増加するためと考えられている。本例では心尖部で大きなS3も認め、最終的に拡張型心筋症による左心不全と診断された。
😛 深堀
  • 2Pは高調成分が主体であるため、その聴取には特別な技術は要らない。エルプ領域(2L~3L)で聴診器の膜を用いて評価すればよい。しかし2Pが亢進していると判断するにはある程度の慣れが必要である(英語の疑問文のように上がり調子↗)。S3が鑑別に含まれるが、通常S3は心尖部に限局する低調音で聴診器の膜では聴取できない。また2PとS3は出現するタイミングも異なる(目安:2A-2P間隔は~70ms、2A-S3間隔は100~200ms)。2P亢進とS3が共存する本例で、その音感やタイミング、出現場所の違いを実感して欲しい。繰り返すが聴診のコツは耳で覚えること。お気に入りの曲のイントロと同じ😊

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(投稿者 川崎)

2025-05-21

当院採用の肺高血圧症治療薬

分類

商品名

一般名

効能効果

薬価

PAH

CTEPH

PGI2系薬

静注用フローラン0.5mg

エポプロステノール

11,865.0円/瓶

ベラプロストNa錠20μg

ベラプロスト

13.5円/錠

ケアロードLA錠60μg

ベラプロスト

109.3円/錠

ウプトラビ錠0.4mg

セレキシパグ

2,902.8円/錠

ET受容体拮抗薬

トラクリア錠62.5mg

ボセンタン

 

3,327.0円/錠

ヴォリブリス錠2.5mg

アンブリセンタン

 

3,401.8円/錠

オプスミット錠10mg

マシテンタン

 

13,334.9円/錠

PDE-5阻害薬

レバチオ錠20mg

シルデナフィル

 

742.2円/錠

アドシルカ錠20mg

タダラフィル

 

980.5円/錠

sGC刺激薬

アデムパス錠1.0mg

リオシグアト

1,371.7円/錠


(投稿者 小森)

2025-05-20

心不全のステージE(Stage E)

  • 心原性ショック分類に関するSCAI臨床専門家の合意声明で採用されている5分類の一つ(米国心臓病学会 ACC、米国心臓協会 AHA、集中治療医学会 SCCM、および胸部外科学会 STSによって承認)。
  • ステージAは心原性ショックの「リスクあり」、ステージBは「初期」ショック、ステージCは「古典的」心原性ショック、ステージDは「悪化中」、そしてステージEは「極限状態」である。
  • BとCの違いは低灌流の存在である。Dは選択された初期介入を行っても30分間で適切な灌流が回復していない。Eは極限状態にあり、非常に不安定で、多くの場合、心血管虚脱を伴う。

- 心原性ショック分類のピラミッド -

  • 上記の心原性ショックに限定した分類(ステージA~Eの5分類)とは異なり、心不全の長い軌跡を一連の病態として捉えた病期分類もあります。
  • こちらの分類(ステージA~D)の方が圧倒的に有名で、心不全の適切な治療介入やケア、早期発見の目的のために日常臨床で活用されています。

- 心不全のステージ分類 -

💁 心不全分類 に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-19

腹部大動脈瘤による重複脈(Dicrotic Pulse)

  • 定義 大動脈瘤に関連し,1心周期中に2つの異なる脈波が発生した状態(収縮期上昇+低い重複切痕+顕著な拡張期上昇)
  • 機序 正常大動脈と大動脈瘤のインピーダンスの急激な変化により、瘤の近位端と遠位端の両方で脈波の反射が発生する
  • 成分 心収縮によって生成される前方脈波および大動脈瘤から反射された後方脈波との相互作用による異常な動脈圧波形
  • 病態 重複脈(または重拍脈)を示す他の病態には重症の心不全や心タンポナーデ、循環血液量減少、敗血症などがある

- 腹部大動脈瘤の66歳男性の術前(左)と術後(右)-


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(投稿者 川崎)

2025-05-18

CYP2C19:シップツーシーナインティーン

  • 薬物相互作用には吸収や分布,代謝,排泄があるが,代謝が最も多く認められる
  • 特に主要な第Ⅰ相薬物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)の阻害と誘導が多い
  • CYPには約60種あり肝臓のCYP2C19はその一つ(下表:基質特異性を有す代表薬)

  • CYP2C19には遺伝子多型が存在し*2または*3の変異アレルでは野生型(*1/*1)と比較して酵素活性が低下
  • 変異アレルのヘテロ・ホモ・複合へテロ接合体ではCYP2C19活性が低下~欠損し薬剤の代謝速度が低下(下表)
  • 変異アレルはアジア人で多い(日本人を含むモンゴル系人種で13〜20%,コーカサス系人種で3〜4%:下表)

😒 とてもややこしい... 
  • 抗血小板作薬クロピドグレル(プラビックス)はプロドラッグでCYP2C19により代謝されて活性体になるため,遺伝子多型の活性欠損者では期待する抗血小板効果が得られない.一方,プロトンポンプ阻害剤はCYP2C19で代謝されるが,同時にCYP2C19を阻害する.よってクロピドグレルとオメプラゾールやランソプラゾールの併用は避けたい.また真菌薬ボリコナゾール(ブイフェンド)もCYP2C19の阻害作用を有しているため併用禁忌薬が少なくない(添付文書
  • 一方,リファンピシン(リファジン)やフェニトイン(アレビアチン),フェノバルビタール(フェノバール),ハーブの西洋オトギリソウ(セントジョーンズワート)はCYP2C19を誘導する.その結果,ワルファリン(ワーファリン),シクロスポリン(ネオーラル),ジアゼパム(セルシン),ニトラゼパム(サイレース),ジゴキシン(ジゴシン),メキシレチン(メキシチール),テオフィリン(テオドール)等多くの薬剤の代謝を亢進させるので注意が必要


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(投稿者 川崎)

2025-05-17

🏆 論文

  • 当院の初期研修医の江上先生が循環器内科で経験した症例報告が出版🎉
  • 主訴は安静時の胸部違和感で身体所見や心電図(),胸部X線は正常
  • 心エコーも正常 ➜ 運動負荷Tl心筋シンチとホルター心電図を予約した
  • 検査当日,負荷前の問診で「数日前から強い息切れがある」ことが判明
  • 心電図()ではST-T変化はないが,負荷は中止して循環器外来を受診
  • 頚静脈所見に異常はなかったが左胸部で呼吸音と音声振盪の減弱を確認
  • 画像で左側気胸 ➜ 心電図を見直すと気胸部位の誘導でR波減高(矢印)
  • 左側にトロッカーを挿入して気胸は改善 ➜ 直後の心電図も改善(
  • 退院後に行った冠動脈CTは正常,ホルターで発作性心房細動が判明した

🙈 本論文の考察より
  • 気胸による心電図異常所見の発生率は,自然気胸を呈した57人の青年のうち21%で,心エコー検査で異常所見を示した患者は4%のみであった.
  • 気胸は電気軸の変化やST部分の変化,T波の異常,不整脈などの心電図変化を引き起こすが,これらの変化は気胸の重症度や部位によって異なる.
  • 自然気胸連続40人の心電図解析では,左気胸ではV2からV6誘導のQRS振幅が有意に減少し,右気胸ではV5およびV6誘導のQRS振幅が増大した.

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(投稿者 川崎)

2025-05-16

🏆 論文

  • 当院初期研修医の角本先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 狭心症に対するPCIでステント留置40分後に前胸部の皮疹と咽頭部の違和感
  • 本例の様々なものに対するアレルギー歴を考慮し速やかにアドレナリン筋注
  • アレルギー症状は改善したがその約50分後に留置したステント内が血栓閉塞
  • バルーンの拡張を繰り返して最終的には改善(その後の経過でHITは否定的)
  • 銀アレルギーの既往が判明 ➜ ステント金属に対する3型Kounis症候群の疑い

🙈 補足
  • Kounis症候群は,アレルギー反応に伴う急性冠動脈イベントを特徴とする稀な病態です.当初はヒスタミン誘発性冠動脈攣縮として報告されましたが,その後にプラーク破裂や血栓症を引き起こすことが分かりました.
  • コーニス症候群は現在では,プラークのびらんや破裂を伴わない冠攣縮タイプ(I型),プラークのびらんや破裂を伴う冠攣縮タイプ(II型),ステント血栓症を生じたタイプ(III型)の3つの型に分類されています.
  • 本例にはほこりや花粉,猫などさまざまなアレルギーがありましたが,金属アレルギーは共有されていませんでした.もっとも患者さん自身も我々の問診でようやく思い出した程度の軽いもの(銀アクセサリーで発赤)

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(投稿者 川崎)

2025-05-15

今週の一枚(音) 🎯

呼吸困難感を訴える症例(来院時と治療2週間後)

😎 解説
  • 聴診器のベルを用いて心尖部で聴取される独特の音感に注目して欲しい。これは馬が駆けるリズムに似ることからギャロップ(gallop)と呼ばれ、非代償性心不全を示唆する。特に左側臥位で聴こえやすいが、呼吸困難感が強い時に臥床の体位は難しい。荒い呼吸時や騒がしい救急現場での認識は必ずしも容易ではないが、重症心不全を強く示唆するためその臨床的意義は高い。なお治療2週間後にもギャロップは消失していない。
😛 深堀
  • ギャロップを構成する過剰心音にはS3とS4があり、各々S3ギャロップ(心室性奔馬調)やS4ギャロップ(心房性奔馬調)と呼ばれている。S3とS4が重なる重合奔馬調律やS3とS4を同時に認める四部調律という病態もある。本例は来院時は重合奔馬調律で,2週間後は四部調律と考えられた。心不全の治療に伴い心拍数が低下して,重合奔馬調律が四部調律に変化することは臨床現場でしばしば経験される。

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(投稿者 川崎)

2025-05-14

みずぼうそう(水疱瘡)と帯状ヘルペス

😀 復習
  • 水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)は初感染で水痘を発症する
  • 神経節に潜伏し免疫低下などで再活性化すると帯状疱疹(帯状疱疹の再発は<6%)

😗 英語
  • 水痘帯状疱疹ウイルス ➜ varicella-zoster virus(発音:べリチェラ...)
  • 水痘 ➜ chickenpox(発音
  • 帯状疱疹 ➜ shingles(発音)または herpes zoster(発音:ハーピーズ...)

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(投稿者 川崎)

2025-05-13

第11回日本心筋症研究会より

😀 個人的に気になった報告

SY4-3 肥大型心筋症のエレクトリカルストームに対する最終戦略:体外放射線治療
  • 単極カテーテルアブレーション(RFCA)後の再発性心室頻拍(VT)に対し、2015年に初めて心臓定位放射線治療(Cardiac-SBRT)の臨床報告が発表 され、新たな治療アプローチとして注目されている。2017~2024年の225人を対象としたレビューではSBRT後のVT再発が90%、ICDショックが91%減少した。一方で完全寛解はまれであり、6か月間の生存例のうちVT再発が30%認められた。有害事象は軽症なものが大多数を占めており、心機能低下例は報告されていない。

YIA-2 がん治療関連心機能障害(CTRCD)発症予測における新規心エコー指標 Myocardial Work Index(MWI)の意義
  • MWIは左室心筋仕事量を解析する新しい心エコー指標でCTRCDの発症予測の一助となる可能性がある。(追記:3つの心尖ビューにおける標準的な全体的縦方向歪みGLS分析+収縮期カフ血圧+大動脈弁および僧帽弁の開閉のタイミングからソフトウェアで計算)

P1-6 プレセニリン2欠損心筋細胞の超微形態学的解析
  • プレセニリン2(PS2)は、小胞体(ER)のミトコンドリア関連膜に存在する蛋白分解酵素の触媒蛋白である。PSEN2遺伝子変異は家族性アルツハイマー病の原因となるが拡張型心筋症の発症にも関与する。

P2-4 重症大動脈弁狭窄症を合併した閉塞性肥大型心筋症に対する治療戦略
  • 大動脈弁狭窄症と閉塞性肥大型心筋症は一定数で併発することが知られている。両疾患が合併した症例に対し大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)を施行した後に、左室流出路閉塞の増悪による収縮期僧帽弁前方運動から僧帽弁逆流が増悪し、血行動態が破綻する症例があり、"Suicide left ventricle”として知られている。

P3-7 解釈の誤りにより診断が遅れ治療機会を逸した女性心ファブリー病の一例
  • 心筋生検では核の腫大・不正化、空胞変性を高度に認め、電顕でzebra body を確認し Fabry 病を疑った。αガラクトシダーゼ活性は正常で、遺伝子解析(GLA エクソン・IVS4 含むイントロン)も異常なく、心 Fabry 病は否定的と判断。10年後に本人の了承を得てLyso-Gb3を測定したところ 13.9ng/mL(cut off<2)と高値で Fabry 病の可能性が極めて高いと判明した。

P4-3 ピロリン酸シンチ陽性ATTR心アミロイドーシス probable診断連続20症例の腹壁脂肪吸引生検アミロイド陽性率
  • 従来15%とされているよりもはるかに高い80%ものアミロイド陽性率を認めた(全てTTR免疫染色でも陽性)。


💁 参加記
  • 今回は山形県の天童市での開催でした(同研究会への参加は初めてです).空港から天童市へのアクセスが良くありませんでしたが(なんと公共交通機関なし),とても落ち着いたきれいな街でした.
  • (個人的に好きな)将棋の街で,至る所で将棋の駒のオブジェを目にしました.会場の天童ホテルの横に水車生そば(鳥中華の発祥の店)や広重美術館(東海道五十三次を展示中)もあり楽しめます.
  • 全体的に少しこじんまりした会でしたが,心筋症に特化しているだけあって,尖がった濃い演題が多かったように感じました.僕も「肥大型心筋症の身体所見:その頻度と臨床的意義」を発表しました.

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-05-12

フィジカルクイズ(No. 3 & 4)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)

2025-05-11

DOAC score

  • 心房細動(AF)患者の出血リスクを評価するための従来の臨床意思決定ツールは、ワルファリン治療を受けている患者向けに開発されたもの
  • DOACスコアは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を服用している心房細動患者の出血リスクを個別に推定するための開発された臨床リスクスコア
  • 年齢、CCr/eGFR、低体重、脳卒中/TIA/塞栓症の既往、糖尿病、高血圧、抗血小板薬やNSAIDsの使用、肝疾患、出血歴から判定(計算ページ
  • DOACスコアは、COMBINE-AF(25,586人)およびRAMQ(11,945人)を含む両検証コホートにおいて、HAS-BLEDスコアよりも高い予測性能を示した



💁 DOACに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-10

子宮頸がん検診へのHPV検査単独法

💫 概略
  • 市町村が実施する子宮頸がん検診については、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、20歳以上の女性を対象に2年に1回の細胞診を行うことを推奨してきた(下図参照)。
  • その指針を改正し、HPV検査単独法を追加(令和6年4月から適用)。HPV検査単独法(子宮頚部の細胞診)は、適切な受診勧奨等が行われなければ期待される効果が得られないことから、精度管理が重要である。

💫 受診者メリット
  • HPV検査陽性者のごく一部が数年後に子宮頸がんの有病者となり得るため、そのリスク保持者が追跡管理されることで子宮頸がんの早期発見・早期治療に繋がる。
  • 現行の細胞診の検診間隔は2年ごとであるが、HPV検査単独法では受診者の約8~9割が5年ごととなることから、全体として受診行動の負担軽減が期待できる。

💫 自治体メリット
  • がん検診の未受診理由で最も多いのは「受ける時間がないから28.9%」であり、受診行動の負担が軽減されることで、受診率向上への影響が期待できる。
  • 検診間隔が延長されることで、事務負担等が軽減される。


💁 ワクチンに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-09

心房性機能性僧帽弁逆流
AFMR: atrial functional mitral regurgitation:

定義(下記をすべて満たすMR)
  1. 左室の局所壁運動異常や全体の収縮能低下なし
  2. 心房拡大が明らか
  3. 弁尖や腱索に器質的異常が乏しい

概要
  • 心房細動例における中等症以上の心房性機能性MRの頻度は2.8~15%
  • 10年以上の長期持続性AF例では10年未満の例と比べてAFMRは高率
  • 中等症以上の心房性機能性MRとTRと合併例はイベント回避率が低い
  • 心不全入院したAF例では中等症以上のAFMRの合併は再入院に関連


(投稿者 川崎)

2025-05-08

今週の一枚(音) 🎯

急に息切れを自覚するようになった症例

😎 解説
  • 拡張期雑音が急速に減弱して,Ⅰ音(S1)の手前で終了している点に注目.急性の大動脈弁逆流症では左室拡張期圧が急激に上昇するため,拡張期雑音が速やかに減弱して拡張早期~中期に終了する.
  • 一方,慢性の大動脈弁逆流症では,雑音が拡張末期(S1)まで持続する(自験例).本例は心エコー図で,右冠尖の逸脱(fenestration破綻の疑い)による急性の大動脈弁逆流(重症)と診断された.
😛 深堀
  • 慢性の大動脈弁逆流では高調成分が主体の穏やかな雑音であるが(自験例),本例のような急性の大動脈弁逆流では低調成分も加わるため荒々しい(harsh)音になることが少なくない.
  • 本例はエルプ領域(3L)で,雑音に埋没するⅡ音肺動脈成分の亢進が疑われた(下図).これは肺高血圧を反映していると思われる.こんなふうに細部にこだわった聴診は面白いと思う.

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(投稿者 川崎)

2025-05-07

DORV: Double Outlet Right Ventricle(両大血管右室起始症)

  • 先日,知人から「DORVの症例で…」と相談を受けました.DORVと聞いてすぐに病態が思い浮かばなかったので調べてみました.ちなみにDOLV(両大血管左室起始症)もありますが,さらに稀なようです

両大血管右室起始症DORV
  • 定義:大動脈と肺動脈の一方が完全に右心室起始+他方が50%以上が右心室起始+後方大血管の半月弁と房室弁の間に筋性組織(心室漏斗部鄒壁)が存在
  • 分類:大血管の位置関係により正常大血管型(後方の大動脈が心室中隔に騎乗するタイプ)と大血管転位型(後方の肺動脈が心室中隔に騎乗するタイプ)
  • 細分:心室中隔欠損孔の位置で4分類(下図):大動脈弁下型心室中隔欠損,肺動脈弁下型心室中隔欠損,両大血管型心室中隔欠損, 遠隔型心室中隔欠損
  • 疫学:先天性心疾患の約1%(出生約10,000人に1人)で特定遺伝子異常との関連は報告されていないが18トリソミー症例では出現頻度が比較的頻度が高い
  • 症状:右室流出路に狭窄がない場合は高肺血流による心不全症状が主体,右室流出路~肺動脈に狭窄を伴う場合はファロー四徴症に類似し多彩なチアノーゼ
  • 治療:解剖に応じ乳児期に心内修復術(心内導管で心室内血流転換術)や新生児期~乳児期前半のBTシャント手術,1歳前後の右室流出路拡大形成術など


- DORVのVSD(下図のd)による4分類 -

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(投稿者 川崎)

2025-05-06

PSC vs PBC

  • PSC(Primary Sclerosing Cholangitis/原発性硬化性胆管炎,旧:原発性胆汁性肝硬変)とPBC(Primary Biliary Cholangitis/原発性胆汁性胆管炎)はともに自己免疫性肝疾患で胆管に炎症や損傷が生じますが,それぞれ異なる胆管が影響を受ける点に差異があります.先日のカンファレンスで少し混乱が見られたため,PSC Partners Seeking a Cureを参考にして日本語にしてみました.

PSC 原発性硬化性胆管炎 PBC 原発性胆汁性胆管炎
病変部位
  • 肝臓の内外の胆管
  • 肝臓内の小さな胆管のみ
診断方法
  • 通常は胆管MRI(まれに肝生検やERCPが必要)
  • 次のうち2つ: ALP値上昇,疾患特異抗体 (AMA) 陽性,肝生検
胆管がんと大腸がん
  • リスク上昇
  • リスク不変
ウルソデオキシコール酸
  • 肝臓の血液検査値が改善例あり(病気の進行を遅らせるかは未証明)
  • よく反応例では予後も改善
炎症性腸疾患(IBD)
  • 約80%は併存(主に大腸炎)
  • 非常に稀(約1%)
初期症状
  • かゆみ,疲労感,腹痛,胆管炎の悪化
  • かゆみ,疲労感,目や口の乾燥,腹痛
疫学
  • 主に40歳前後で男性60%,女性40%
  • 75%は45歳以上で男性10%,女性90%
過度のアルコール摂取
  • 関連なし
  • 関連なし
喫煙
  • ほとんどの場合,非喫煙者
  • 喫煙歴と関連



(投稿者 川崎)

2025-05-05

アトピー性皮膚炎: TARCターク & EASIイーエーエスアイ

TARC: Thymus and Activation-Regulated Chemokine
  • アトピー性皮膚炎の重症度を反映する血液検査(皮膚の内部に潜む炎症の把握も可能)
  • TARCは白血球遊走を誘導するケモカインの一種でIgE産生や好酸球産生を活性化させる
  • 基準値(pg/mL):成人<450,小児は6~12ヵ月<1367,1~2歳<998,2歳~<743

EASI: Eczema Area and Severity Index
  • アトピー性皮膚炎の重症度判定スコア:0(無病)~72(最大病変)(計算ページ
  • 4部位(頭頸部・体幹・上肢・下肢)の重症度(紅斑・浮腫/丘疹・搔破痕・苔癬化)
  • 乾癬のスコアリングシステムの乾癬面積重症度指数(PASI)を1998年に改良(論文

💁 アトピーに関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-05-04

心不全:クロライド理論(chloride theory)

概要 医療法人慈恵会 西田病院におられる片岡 一先生が提唱された心不全増悪の病態理論
背景 塩化物(Cl)はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化に重要な電解質
動態 Clは尿細管で濾過されたNaを細胞外体腔に再吸収し動脈圧を維持する重要な電解質
分類 臨床的に安定した心不全から悪化までに血清Cl濃度が上昇する例と上昇しない例あり
意義 血清Cl濃度の上昇は血管内容量を維持あるいは増加させる働きで心不全の負担を増大
機序 血清Cl濃度の変化が血漿量やAAS,ADHシステム変化の主な決定要因(下図を参照)


- 心不全の悪化過程の流体力学を説明する塩化物理論 -

👉 心不全の増悪に関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下の欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-05-03

DOHaDドーハッド仮説

  • Developmental Origins of Health and Disease(健康と病気の発生起源説や胎児期起源仮説)
  • 胎児期や乳児期の環境が,将来の健康や病気のリスクに大きな影響を与えるという考え方
  • 英国のDJP Barkerらが疫学的調査を元に1980年代に提唱した(Lancet 1989;2(8663):577-80
  • 例えば妊娠中の母体の栄養状態が悪いと生まれた子供が将来,肥満や糖尿病になりやすい
  • 想定される機序は胎児期の環境がエピジェネティック変化を引き起こし将来の健康に影響
  • 具体的には子宮内環境によってDNAメチル化やヒストン修飾,非コードRNAが変化してくる

- 低出生体重児のリスク因子とDOHaD仮説のイメージ -

(投稿者 川崎)

2025-05-02

誤飲誤用:クエン酸と重曹

📞 先日,電話で
  • クエン酸30gを誤飲した症例の相談を受けました.ポットの洗浄液を誤って飲んでしまったようです.自覚症状なく,バイタルサインも安定していました.

クエン酸(citric acid)
  • かんきつ類や梅干などに含まれる成分であり毒性上ほとんど問題なし
  • 健康維持なら1日5~15g,洗浄では1Lあたり15gで沸騰後2時間放置
  • 無色無臭の酸性物質でレモンのような穏やかで爽快な酸味を有する

重曹(sodium bicarbonate)
  • 食品添加物としても許可されている成分で毒性上もほとんど問題なし
  • ふくらし粉やあく抜きなどに加えて洗浄(水1ℓ100gほど)にも有用
  • 弱アルカリ性で味は塩味に近く少ししょっぱくて苦みがあるのが特徴

🚨 おまけ
  • 誤飲時は吐かずにコップ1~2杯の水や牛乳
  • 眼に入った場合は流水で15分以上洗い流す
  • 処置後に様子がいつもと違う場合には受診

(投稿者 川崎)

2025-05-01

今週の一枚(音) 🎯

心雑音を指摘された症例

😎 解説
  • 拡張期すべてに持続する雑音(全拡張期雑音)を認める.本例のような雑音は灌水様あるいは 吹鳴すいめい性(blowing)などと表現され,高調成分が主体である(心音図).
  • 急性の大動脈弁逆流では左室拡張期圧が急激に増加するため、逆流音が拡張中期あたりで終了してしまうことが多い.よって本例は慢性の大動脈弁逆流であると判断できる.
😛 深堀
  • 本例ではⅠ音(S1)が分裂しているように聞こえる.その一部は高調成分が主体であるため(心音図),駆出音が疑われた.駆出音は半月弁の開放により生じると考えられ,日常臨床では大動脈二尖弁で有名である(本例は一尖弁).心エコー図を行う前の聴診でこのようなことを考えると,心エコー図の結果をみるのがもっと楽しくなるかも...

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

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(投稿者 川崎)