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2026-07-30

今週の一枚 🎯

嘔気でERを受診した症例
(糖尿病と緑内障あり/頭痛や下痢なし)


(投稿者 川崎)

2026-07-17

日本内科学会 第252回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題12 失神精査で発作時心静止と診断した閉塞性肥大型心筋症の1例
  • 心疾患併存例の失神では心原性が疑われやすいが、てんかん発作に伴う発作時心静止(Ictal Asystole:IA)の可能性も念頭に置く必要がある。今回、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)を背景とする失神に対し、脳波検査でIAを同定し、ペースメーカー(PM)留置を回避できた1例を報告する。今回の精査中、モニター心電図で心静止が記録され循環器内科でPM留置が予定された。しかし、脳波検査で右側頭部に進展を伴う律動性徐波と一致して心静止を認め、IAと診断した。協議の結果、PM留置は中止とし抗発作薬(ASM)を開始し、以降発作はなく経過している。

演題114 電子処方箋導入に苦慮した診療所の1例
  • オンライン資格確認の準備段階で光回線を電話通信用とは別に引く必要性を後になり知らされ工期が延び開院は1ヶ月遅れた。業者が用意したオンライン資格確認用のパソコンには診療報酬振込額明細ダウンロードに必要なExcelが入っていなかった。クライアント証明書とHPKIセカンド電子証明書の違いも当初は理解できなかった。クライアント証明書はパスワードとともにベンダーに渡すように指示されたが受取対応を拒否され混乱した。厚労省マニュアルにあるICカードリーダー購入は電子処方箋導入には不要であった。概算費用は顔認証リーダー16万円、オンライン資格確認導入40万円、電子カルテへのオンライン資格確認連携20万円および電子処方箋導入30万円などを要した。電子処方箋導入は補助金を申請したが2回取消となり断念した。

演題115 長期経過の神経性やせ症患者の死後画像
  • 【症例】72歳、女性【主訴】意識障害【経過】やせ願望があった。意識障害で救急搬送されてきた際の身体計測でBMIは11であった。各種問診から神経性やせ症と診断された。低血糖や電解質異常、たこつぼ型心筋症などの対処を要した。各科の協力のもとrefeeding症候群を予防しながら経腸栄養を続けたが、第19病日に死亡された。死後CTを最終生存確認から約2時間後に行い、脳溝、大動脈、左心房、右心房、肝門脈、両腎に散在するガス像を認めた。本症例は著明な代謝性アルカローシスに対する代償性の高PaCO2血症をきたしており、死亡前の採血ではCO2分圧が100torr以上ありそれが循環停止により気化して広範なガス像を形成した原因の可能性もあると考えられた。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2026-03-06

Bayés Syndrome ベイズ症候群

  • 心房間ブロック(P波持続時間>120ms)を特徴とする一連の病態
  • 由来はスペインの循環器内科医 Bayes de Luna の1979年の報告(#)
  • 第1度〜第3度に分類され、心房性不整脈(特に心房細動)と関連
  • 原因は炎症性、心アミロイドーシス、リンパ腫、電解質異常など
  • 治療は抗線維化薬、抗不整脈薬、抗凝固薬,心房再同期療法など


- 動悸を訴えるBayés症候群の76歳女性 -
図1 . II、III、VF誘導でP±が出現し、持続時間が120ミリ秒を超える進行性心房間ブロックの典型的な例。P波が増幅されると、3誘導におけるP波の始まりと終わりがより鮮明に見える。

図2 .心房活性化の図。(A) 正常な状況、(B) 部分的心房間ブロック、(C) 高度心房間ブロック(本文参照)。VFのP波はVF誘導のP波を示し、FPのPループは前額面のPループを示す。



(投稿者 川崎)

2026-01-28

マグネシウムと意識障害

  • 先日,高マグネシウム血症で意識障害を生じた症例を経験しました(緩下剤の過剰摂取).その機序を脳神経内科の先生に教えてもらいました(┌○ ペコリ)
  • とても興味深かったので忘れないようにここに記載しておきます.なおマグネシウムは低値でも意識障害を生じるようです(日救急医会誌 1996;7:197-201)

👽 マグネシウム 
  • 生体内で4番目に多く存在する陽イオンで(他のイオンは下表),骨に70%弱存在して,細胞内には30%,血中にはわずかに0.2%
  • 血清4~6 mg/dL超で低血圧や嘔気,尿閉,イレウス他を生じ,進行なら骨格筋弛緩性麻痺,腱反射低下,徐脈,呼吸抑制,昏睡
  • 高濃度の細胞外Mgイオンは神経筋接合部のシナプス前からのアセチルコリン放出を抑制し,筋線維細胞膜の興奮性を低下させる
  • 興奮性神経伝達物質グルタミン酸の受容体であるNMDA受容体を阻害する作用があるため,高Mg血症では意識レベルが低下する


体内の3大イオン(Na/K/Ca)

💁 電解質に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2025-07-18

日本内科学会 第248回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題64 Gitelman症候群と診断した反復性低K血症と低Mg血症の1例
  • 本症はNa-Cl共輸送体(SLC12A3遺伝子)の変異に起因し、遠位尿細管でのNaおよびCl再吸収障害をきたす疾患である。類似疾患のBartter症候群との鑑別が必要であるが、本症は低Mg血症や低Ca尿症を伴うことが特徴である。軽度の脱水や胃腸症状を契機に重篤な電解質異常を反復するため、KおよびMg補充に加え、適切な水分電解質摂取を含む生活指導が重要である。

演題69 Pantoeaによるカテーテル関連血流感染の1例
  • カテ先培養と血液培養の結果でPantoea sp.が検出された。薬剤感受性結果から抗生剤をCTRXに変更し、その後症状の再燃なく、抗生剤を2週間投与したため退院となった。グラム陰性桿菌であるパンテアはカテーテル関連血流感染の原因菌として非常に珍しい。

演題102 ピサ症候群を呈した抗凝固療法中尾状核出血の1例
  • 右へ傾くピサ症候と左への体幹のねじれを呈し、右上肢固縮と姿勢時振戦、軽度の右下肢単麻痺も認めた。ピサ症候は立位や座位時に増強、仰向けになると正中に戻り、腰曲がりはなかった。頭部CTで左尾状核に直径1.5cmの血腫、左側脳室へ穿破を認め責任病巣と判断した。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-05-04

心不全:クロライド理論(chloride theory)

概要 医療法人慈恵会 西田病院におられる片岡 一先生が提唱された心不全増悪の病態理論
背景 塩化物(Cl)はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化に重要な電解質
動態 Clは尿細管で濾過されたNaを細胞外体腔に再吸収し動脈圧を維持する重要な電解質
分類 臨床的に安定した心不全から悪化までに血清Cl濃度が上昇する例と上昇しない例あり
意義 血清Cl濃度の上昇は血管内容量を維持あるいは増加させる働きで心不全の負担を増大
機序 血清Cl濃度の変化が血漿量やAAS,ADHシステム変化の主な決定要因(下図を参照)


- 心不全の悪化過程の流体力学を説明する塩化物理論 -

👉 心不全の増悪に関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下の欄から選択可能)

(投稿者 川崎)

2025-04-04

サブラッド® SUBLOOD®

👥 CEさんとの会話で...
  • サブラッドという言葉が何度も出てきました。ろ過型人工腎臓用補液のだと教えてもらいましたが、あまりなじみのない言葉だったので調べてみました。

サブラッド® SUBLOOD® (添付文書PDF)
  • 効能または効果 ➜ 透析型人工腎臓では治療の持続又は管理の困難な慢性腎不全例に対するろ過型又はろ過透析型人工腎臓使用時ならびに治療時間の短縮を目的とするろ過透析型人工腎臓使用時の補充液として用いる。
  • 種類 ➜ 1,010mL(737円)と2,020mL(942円)があり使用前に混合する(下図)。【B液(大室)】塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム水和物(CaCl2・2H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2・6H2O)、無水酢酸ナトリウム(CH3COONa)、ブドウ糖(C6H12O6) 【A液(小室)】塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
  • 用法及び用量 ➜ 通常、使用時A液及びB液を混和し、ろ過型又はろ過透析型人工腎臓使用時の体液量を保持する目的で点滴注入する。投与はろ過液量と体液量とのバランスを保つように十分注意して行う。 通常成人1分間当たり30〜80mLの投与速度で症状、血液生化学異常、電解質・酸塩基平衡異常、体液バランス異常等が是正されるまで行う。通常1回のろ過型人工腎臓治療では15〜20Lを4〜7時間で投与する。また、透析型人工腎臓と併用する場合には、5〜10Lを3〜5時間で投与する。なお、投与量は症状、血液生化学値、体液異常、年齢、体重などにより適宜増減する。

- 実際の使用方法 -

(投稿者 川崎)

2025-04-03

今週の一枚 🎯

数分間の意識消失を生じた超高齢者

😐 解説
  • 来院時の心電図は徐脈+心房細動+ST-T部分の変化
  • 意識清明で神経学的異常なく頭部CTも特記所見なし
  • 高Mg血症(16.3 mg/dl)が判明(基準値:1.8-2.4)
  • 他の電解質はPが軽度上昇(5.1 md/dl)以外は正常
  • 腎機能は軽度の低下(Cr 1.1 md/dl)で肝機能は正常
  • カルチコールの静脈内緩徐投与と緊急血液透析で対応
  • 最終的に高Mg血症+糞便イレウス+誤嚥性肺炎と診断
  • 意識障害の原因は過剰な緩下剤による高Mg血症の疑い

💁 高Mg血症と心電図
  • 軽度~中等度の高マグネシウム血症ではPR間隔やQT間隔の延長、QRS波の拡大
  • 高度では伝導障害から心停止(一部は顕著なST部分の上昇とT波の増加も観察)
  • その原因としてマグネシウムイオンによる Na+/K+-ATPase 活性の機能的阻害

💫 マグネシウムに関する過去の投稿 ➜ コチラ

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2024-07-09

主訴:行動変容?

前日から急に... 
  • 料理ができなくなった(お肉を粉々になるまで切り続ける) 
  • 自転車のカギが開けられない(30分以上同じ動作を繰返す) 
  • 温度管理に無頓着(夏で室内は暑いがフリースを着ている)

バイタルサイン:181/108mmHg,68bpm,酸素98%,36.8度,RR 22
頭痛や嘔気なし,後部硬直なし,言語・空間認知は正常,麻痺なし

考えられる診断は?


(投稿者 川崎)

2024-05-20

バーター症候群 Bartter syndrome

  • 概略 低K血症,代謝性アルカローシスなどを呈す先天性尿細管機能障害を伴う症候群
  • 名前 米国の内分泌医 Frederic Crosby Bartter らの初報(Am J Med 1962;33:811-28)
  • 機序 ヘンレ上行脚のNaCl輸送に携わる遺伝子の異常など(常染色体潜性[劣性]遺伝)
  • 鑑別 ギテルマン症候群(低マグネシウム血症と低カルシウム尿症を伴う:下表参照)
  • 頻度 Bartter症候群はおよそ1/100万(一方,Gitelman症候群の有病率は1/4万人程度)
  • 発症 新生児期に発症する重症型(新生児型)と乳幼児期に発見される軽症型(古典型)
  • 症状 電解質異常(脱力感や筋症状),多飲・多尿,末期腎不全,成長障害,難聴など
  • 治療 カリウム補正が大切(K補給 80~300mEq/日やスピロノラクトン 50~500mg/日)


Bartter 症候群(BS)/ Gitelman 症候群(GS)の分類と特徴

(投稿者 川崎)

2024-01-30

橋中心髄鞘崩壊症(Central pontine myelinolysis, CPM)

  • 概要 脳橋底部に生じる対称性かつ非炎症性の脱髄病変によって生じる一連の病態
  • 初報 米国の腦神経内科医 アダムスら(AMA Arch Neurol Psychiatry 1959;81:154-72)
  • 頻度 三次病院への神経科入院例の0.4%~0.56%,内科系病院への入院全体の0.06%
  • 症状 構音・嚥下障害,痙性四肢麻痺,痙攣,閉じ込め症候群,意識障害,死亡など
  • 併存 アルコール依存や肝移植後,集中治療室に入室する重篤な疾患,栄養失調など
  • 疫学 30〜50歳に多く男性優位(51.8%~77.0%),23%~48.2%が肝移植を受けている
  • 原因 低Na血症の急速な補正(ただし高Na、低K、低Pなど全ての電解質異常で発生)
  • 診断 脳MRIのT2強調・FLAIRで高信号,T1強調で低信号(拡散強調の診断能は不明)
  • 予防 緩徐なNa補正(例: Na<120 mmol/Lなら1時間で0.5未満,1日12未満の補正)
  • 治療 デキサメタゾンや血漿交換,免疫グロブリンが有効であったという報告がある
  • 予後 1980年代は死亡率90%~,現在は33%~50%と少し改善(24%~39%は完全回復) 


💀 おまけ
  • 近年では橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis, CPM)に橋外髄鞘崩壊症(extrapontine myelinolysis, EPM)を加えて,浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome: ODS)と呼ばれることが多いようです.頻度はCPMが40%~56%,EPMが13%~35%,混合型が23%~31%です.橋外では小脳白質が33%~55%,大脳基底核(特に線条体)が34%,他に視床または海馬の髄鞘溶解として出現するようです.



- 橋外性および橋中心性浸透圧性脱髄症候群を呈した35歳男性 -

(投稿者 川崎)

2024-01-16

心不全とSGLT2阻害薬

  • (今更ですが)日本循環器学会・日本心不全学会の心不全治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationを転記しておきます(2023年6月16日) 
  • 概略:すべての心不全で積極的使用+腎機能や電解質,尿路・性器感染に注意+食事制限手術なら糖尿例で3日前~,非糖尿例で前日~中止(再開は食事の開始時)

📖 Recommendation(勧告)
  • 心血管疾患のハイリスク2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬は入院を要する心不全イベントの抑制が報告されており、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的にその使用を検討する。
  • 心不全患者において、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジンとエンパグリフロジン)は2型糖尿病の合併・非合併および左室駆出率にかかわらず、心不全イベントの抑制が報告されており、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的にその使用を検討する。
  • 心不全患者では利尿薬を使用する頻度が高く、SGLT2阻害薬の併用により過度の体液量減少をきたすリスクがあるため、腎機能や電解質等のモニタリングを適宜行い、必要に応じて利尿薬や降圧薬の用量を調節する。
  • 2型糖尿病を合併した SGLT2阻害薬を使用中の心不全患者が、食事摂取制限を伴う手術を受ける場合には、手術3日前から休薬し、術後は食事摂取が可能になってから再開する。一方、2型糖尿病を合併しない心不全患者では、術前の終日絶食日に SGLT2阻害薬を休薬し、術後は食事摂取が可能になってから再開する。なお、2型糖尿病の合併・非合併にかかわらず、SGLT2阻害薬を服用中の心不全患者が緊急手術を受ける場合には、同薬の休薬についてリスクとベネフィットを十分に勘案して現場での判断を許容する。いずれの場合においても、心不全患者において SGLT2阻害薬を休薬する場合には、休薬に伴う心不全増悪時も含め必要に応じて循環器専門医への紹介を考慮する。
  • SGLT2阻害薬は、2型糖尿病の合併の有無にかかわらず心不全患者においても尿路・性器感染症の発生・増悪が懸念されるため、リスクとベネフィットを十分に勘案して適応を検討し、投与後は注意を払う必要がある。
  • 心不全患者において SGLT2阻害薬を使用する場合、各薬剤の添付文書および本Recommendationを踏まえて適正に使用する。糖尿病や慢性腎臓病の併存する病態に応じて日本糖尿病学会および日本腎臓学会の SGLT2 阻害薬の適正使用に関するRecommendationも参考にする。

(投稿者 川崎)

2023-12-19

カクート CAKUT: congenital anomalies of the kidney and urinary tract

  • 概略 腎尿路の形態異常を先天的に有する症例群を包括(先天性腎尿路異常)
  • 形態 腎形成異常,尿路通過障害,膀胱尿管逆流,重複尿管など(下表参照)
  • 原因 遺伝子異常(染色体異常を含),エピジェネティクス異常,環境要因
  • 疫学 約500出生に1例(小児末期腎不全患者の原因疾患のうち39.8%で最多)
  • 合併 尿路感染症や遺尿・夜尿,進行時に高血圧,電解質異常,成長障害他
  • 治療 泌尿器科的外科介入,ACE阻害薬やARB投与,末期腎不全で透析・移植



(投稿者 川崎)

2023-10-20

輸液製剤:晶質液 vs 膠質液

🍵 晶質液(crystalloid/しょうしつえき)
  • 一般的な電解質輸液やブドウ糖溶液(生理食塩水や乳酸加リンゲル液など)
  • 2/3以上が血管外に分布するため血管内容量・血圧の保持には膠質輸液を併用

🍹 膠質液(colloid/こうしつえき)
  • 膠質浸透圧を生み出す輸液製剤(アルブミン製剤やデキストラン製剤など)
  • 血管内容量を増加させたいとき(血管内を狙った輸液)に使用されている

- 同じ膠質液でも分子量によって血管内に留まる時間は異なる -

(投稿者 川崎)

2023-08-25

人工呼吸器からの離脱:SAT&SBT

自発覚醒トライアル(Spontaneous Awakening Trial: SAT)
  • 鎮静薬を中止または減量し、自発的に覚醒が得られるか評価する試験。観察時間は30分から4時間程度を目安とする。

➜ 開始基準 (以下の状態でないこと)
  1. 興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加している
  2. 筋弛緩薬を使用している
  3. 24時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
  4. 痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続投与中
  5. 頭蓋内圧の上昇
  6. 医師の判断

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 鎮静スケール(RASS):-1~0で口頭指示で開眼や動作が容易に可能である。
  2. 鎮静薬を中止して30分以上過ぎても、以下が生じない:興奮状態・持続的な不安状態・鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない・頻呼吸(呼吸数≧35 回/分 5 分間以上)・SpO2<90%が持続し対応が必要・新たな不整脈

自発呼吸トライアル(Spontaneous Breathing Trial :SBT)
  • 人工呼吸による補助がない状態に患者が耐えられるかどうか確認するための試験。人工呼吸器設定をCPAPまたは、Tピースに変更し、30 分から2時間観察する。

➜ 開始基準(原疾患の改善を認め、以下をすべてクリアした場合)
  1. FIO2≦0.5 かつ PEEP≦8cmH2O のもとで SpO2>90%
  2. 急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない・心拍数≦140 bpm・昇圧薬の使用について少量は容認(DOA ≦ 5μg/kg/min、DOB ≦ 5μg/kg/min、NAD ≦ 0.05μg/kg/min)
  3. 1回換気量>5ml/kg・分時換気量<15L/分・Rapid shallow breathing index(1分間の呼吸回数/1回換気量[L])<105回/min/L・呼吸性アシドーシスがない(pH>7.25)
  4. 呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
  5. 発熱がない・重篤な電解質異常を認めない・重篤な貧血を認めない・重篤な体液過剰を認めない

➜ 成功基準(以下をともにクリア)
  1. 呼吸数<30 回/分
  2. 開始前と比べて明らかな低下がない(たとえば SpO2≧94%、PaO2≧70mmHg)
  3. 心拍数<140bpm、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
  4. 過度の血圧上昇を認めない
  5. 以下の呼吸促迫の徴候を認めない(SBT前の状態と比較する):呼吸補助筋の過剰な使用がない・シーソー呼吸(奇異性呼吸)・冷汗・重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態


- 全体の流れ -

💁 人工呼吸に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-08-22

ワーラー変性 Wallerian degeneration

  • ワーラー変性とは神経損傷後に二次性に生じる軸索変性と脱髄現象
  • イギリスの神経生理学者 Augustus Volney Waller (1816-1870) に由来
  • 通常,中枢神経系では末梢神経に比してワーラー変性は緩徐に進行
  • 例:脳血管障害の発症1ヵ月以降にDWIやFLAIRで高信号出現(下図)
  • 推定機序は軸索細胞内の電解質濃度変化が変性の促進をきたすため


左大脳に多形膠芽腫を有する61歳女性のMRI T2-WI経過
A〜Dは術後0, 8, 16, 34ヵ月で同側間脳でワーラー変性が進行(矢印)

(投稿者 川崎)

2023-05-08

低体温と不整脈

🐶 動物実験
  • 血液希釈されていない犬を20°Cまで急冷すると50%が心停止に至った
  • 26°Cに冷却した犬の心室筋ではVFやVTは冷却よりも再加温中に頻繁
  • 21°C猫で通常量強心剤(アドレナリン他)が心室性不整脈を全例誘発

👴 ヒトデータ
  • 深部体温が16.9°C~29°Cの偶発的低体温19例では7人がVF, 2人は心静止
  • 日本の60人の検討では深部体温>26°CでVF を発症した患者はいなかった
  • 低体温療法中に低カリウム血症+QTc間隔延長なら平均34.7°CでVTが発症


低体温時の一般的な電気生理学的所見
洞調律 房室伝導 心室脱分極 心室再分極 不整脈
軽度〜中等度
(>30度)
不変〜低下 不変〜低下 短縮〜不変〜延長 延長 心房細動,心室期外収縮,心室頻拍
高度
(<30度)
停止まで延長 延長〜停止 遅延〜不変 延長,消失 心房細動,心室細動,心静止

🍧 低体温に伴う様々な変化
  • 電解質 ➜ 寒冷利尿による喪失と細胞内移動により低下するため,低Ca血症,低K血症,低Mg血症,低P血症を認める.逆に復温期では高カリウム血症に注意
  • 凝固系 ➜ 35°C以下では血小板機能低下や血小板数の減少が認められる.33°C以下では凝固に関わる酵素活性の低下から出血傾向となる. 
  • 免疫系 ➜ 白血球の遊走能・貪食能および炎症性サイトカイン産生・反応の低下が生じる.また感染時に白血球数やCRPが必ずしも上昇しない
  • 耐糖能 ➜ 低体温ではインスリンの感受性が低下し,膵細胞からのインスリン分泌ならびに糖代謝も低下するため高血糖が助長される.

💁 低体温に関する過去の投稿 ➜ コチラ

(投稿者 川崎)

2023-04-28

電解質喪失症候群(Electrolyte Depletion syndrome, EDS)

  • 大腸絨毛腺腫による多量粘液分泌から電解質異常を生じた状態
  • 絨毛腺腫は絨毛構造を認める大腸腺腫でその頻度は1.3~5.6%
  • 初報はMcKittrick LSとWheelock FC(Springfield, 61-3: 1954)
  • 巨大化(4 cm〜)で粘液分泌が増加して電解質異常を生じる
  • 好発部位は直腸が78.4~83.8%と多く,S状結腸は5.6~16.2%
  • 平均年齢は70歳で病悩期間は平均3年,32例中23例は癌を合併


直腸絨毛腺腫による電解質喪失症候群(EDS)の1例
頻回下痢と食欲不振,電解質異常(Na 114.7 mEq/L,K 2.6 mEq/L,Cl 70.2 mEq/L)

(投稿者 川崎)

2023-03-16

🎯 今週の一枚

ふらつきで来院した高齢者



(投稿者 川崎)

2022-06-15

先日「ストーマがあるから腎臓が悪いんです」と患者さんに言われて…

  • 直腸がん手術では、縫合不全を予防するために、一時的ストーマを造設することがある。その際、回腸また横行結腸が選択されることが多い。回腸は手技が簡便であるが、腎機能低下やストーマ関連合併症をきたすリスクが高い。(日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌 2021;37:158)  
  • 回腸ストーマでは、High-output stoma (HOS) の発生が問題となる。排液が1500-2000mL/dayを超える場合、HOSとされることが多い。報告では、回腸ストーマ造設3週以内にHOSとなるのは16%、3週以降になるのは4%である。HOSの原因として3週以内では、敗血症や薬剤性が挙げられる。3週以降の原因として、短腸やイレウスなどが挙げられる。(Surg Today 2020;50:703-10) 
  • 人工肛門造設後1か月の腎機能は、造設時のものと比較して有意に低下していた。そして、人工肛門閉鎖後も腎機能は改善しない報告が散見される。小腸からの多量の排液や、大腸における水分の吸収不良による脱水が、腎機能低下に関連する。そのため、人工肛門造設時の水分や電解質の管理が腎機能低下を予防することにつながると考えられる。(Surg Today 2020;50:703-10) 

(投稿者 平野)