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2025-12-21

第140回日本循環器学会近畿地方会より

😗 個人的に気になった報告
 
2-7 世界遺産姫路城天守閣で心肺停止になった身長190cm,体重100kgのドイツ人旅行者を後遺症なく救命し得た一例
  • 症例は68歳ドイツ人男性。姫路城天守閣登頂後に心肺停止となり,同伴者によりCPRが開始された。姫路城常駐看護師がAEDを携行して駆けつけ除細動2回で心拍再開。救急隊と他院ドクターカー医師が急峻で狭小な階段を駆け上がり,身長190cm,体重100kgの大柄な患者を迅速に搬出した。

5-18 繰り返す心室細動を伴った難治性冠攣縮発作に対して塩酸ファスジルが著効した1例
  • ニトログリセリン等の投与を行なったが,心室細動に対して頻回に除細動を要した。冠攣縮発作によるものと判断し塩酸ファスジルを投与したところ,ST上昇は改善を認め,心室細動も停止した。その後薬剤調整を行い,第10病日に塩酸ファスジルを終了したが,ST上昇および心室細動の再発なく経過した。※塩酸ファスジルの効能または効果:くも膜下出血術後の脳血管攣縮およびこれに伴う脳虚血症状の改善/#Rhoキナーゼ阻害薬冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)にも記載あり(P14) ➜ 難治性冠攣縮性狭心症患者の発作寛解のためのファスジル投与(クラス IIa)

6-33 診療報酬改定を契機に在宅強心薬療法を導入し得た重症心不全の1例
  • 令和6年診療報酬改定で「在宅強心薬持続投与管理料」が新設された。本制度を活用し在宅強心薬持続投与を導入した症例を報告する。【症例】60代男性。虚血性心疾患により心不全ステージⅣ,EF10〜15%,CRT-D植込み,MVR施行歴あり。カテコラミン依存状態で一年半の間に入院8回167日在院。【経過】入退院を繰り返す中で「自宅で過ごしたい」と希望し,ハートケアチームで検討し在宅DOB導入を決定。【結果】導入後6か月で再入院は1回18日のみ。

8-12 胸骨圧迫で Sapien3 Ultra Resilia が変形した一例
  • 第8病日にTAVIを施行して人工弁S3UR 23mmを留置した。帰室後long pauseを来したため胸骨圧迫を行い心拍再開を得たが,その後も洞不全症候群が遷延するため一時的ペースメーカを留置した。その際の透視で人工弁の変形が疑われた。CTで確認するとS3URが扁平な楕円に変形しており,血栓弁の合併や弁周囲組織の損傷はなかった。


😀 当院からの発表
  • 2-16 術前評価の冠動脈CTで稀な冠動脈起始異常を発見した1例(循環器内科 中野 佑哉ほか)
  • 4-5 β遮断薬を含む点眼薬で誘発された薬剤性3度房室ブロックの1例(循環器内科 吉富 新一ほか)
  • 5-17 難治性の冠攣縮に対してステロイド治療が有効であった急性下壁梗塞の1例(循環器内科 本田早潔子ほか)
  • 6-27 心不全症例の末梢温と予後との関係(循環器内科 川﨑達也ほか)

3編は発表前に英語論文化(2編は出版済,1編は投稿中) 👏

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-20

ビタミンP Vitamin P

  • ハンガリーの Benthsáth A らが提唱(Nature 1937;139:326-7)
  • 本体はフラボノイドでルチンやヘスペリジン,ケルセチンなど
  • 植物を構成する主要な化合物群で6000種以上が報告されている
  • 発見はレモンで透過性(Permeability)を抑制するためPと命名
  • 野菜果物の色と味に影響(柑橘類,赤ワイン,そば,玉ねぎ他)
  • 血管強化に加え血流改善や抗酸化,脂質改善、アレルギー抑制
  • ただし欠乏症がないため現在ではビタミンと考えられていない


💫 ビタミンに関連した過去の投稿 ➜ コチラ
(投稿者 川崎)

2025-12-19

知りませんでした…

  • 最近,身体所見に関する知られざる(少なくとも投稿者には)歴史を知ったので本ページでも共有します(Rev Port Cardiol (Engl Ed) 2020;39:233-6
  • バーロー症候群で有名なJohn Barlow先生ですが,真の貢献は僧帽弁逸脱での聴診(収縮後期雑音とクリック)の重要性を解明したことだそうです.
  • 心エコーがまだない時代に,病歴聴取と身体診察に費やす時間と忍耐力で際立ち,複数のベルと膜を備えた自身の聴診器を非常に誇りとしていました.

Professor John Barlow - The Legend

導入部のAI翻訳: ジョン・バーロウ教授は、バーロウ症候群として知られるようになった僧帽弁不全のメカニズムを発見したことで、心臓学の巨匠の一人としての地位を確立しました。心臓学界では、症候群、疾患、脱出症について大きな混乱があります。バーロウ教授は僧帽弁脱出症の特徴を明らかにした最初の一人ですが、彼の真の貢献は「収縮後期雑音と収縮中期後期クリック音の重要性」を解明したことです。彼はこれらの音が僧帽弁のメカニズムによるものとしました。それ以前は、これらの音は心膜癒着など心臓以外の原因によるものと考えられていました。この名で発表された論文は、当初は「原因が僧帽弁のメカニズムによると主張するのは極端すぎる」という理由で当時の主要な科学雑誌に拒否され、友人が編集していた Maryland State Medical Journal に 1963年2月にようやく掲載されました。その直後(1963年10月)にAmerican Heart Journalに「収縮期後期雑音の重要性」というタイトルで、7人の患者の聴診所見が記載された論文が発表されました。


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(投稿者 川崎)

2025-12-18

今週の一枚 🎯

動悸と息切れで来院した症例(座位)

😗 解説
  • 右頚部に隆起性の拍動あり(矢印)
  • 左側にも隆起性の拍動あり(矢頭)
  • 右側の隆起は左側より先行している
  • よく見ると右側拍動は隆起後に陥凹
  • 左側の拍動は隆起のみ(陥凹なし)
  • 心エコー図では重症の大動脈弁逆流
  • 最終診断はARによる非代償性心不全

💫 追加コメント
  • 右側隆起は前収縮期で用手的に容易に圧迫 ➜ 頚静脈の増高a波
  • 左側隆起は収縮期で用手的圧迫は困難 ➜ 頚動脈のコリガン脈
  • 注意深く診察すれば視診だけで両者の鑑別は可能と思われます
  • そしてこの組み合わせならARの非代償性心不全と診断できます

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-17

🚌 CTバス

  • 先日,CTバスなるものが存在することを知りました.なんとMRIバスもあり 😮 ➜ ココ
  • 気になるレンタル代は,例えばCT搭載車で2時間10万円+手続き5万円程だそうです(引用

  • 目的 更新時の代替機,CTのない医療機関,巡回型検診車
  • 状況 16列/32列搭載,車椅子・ストレッチャーにも対応
  • 本邦 日本の道路や駐車場事情に適合するコンパクトサイズ
  • 欧米 頭部に特化したMobile stroke unit(MSU)を運用中
  • 保険 病院据付と同性能で診療報酬請求も可(DICOM対応)


- CTバスの実例 -

- 頭部専用のCT装置 -

(投稿者 川崎)

2025-12-16

日本内科学会 第250回近畿地方会より

😀 個人的に気になった報告

演題68 腹筋の有痛性収縮にて発症したスティッフパーソン症候群の1例
  • 症例は50歳,男性.入院3か月前から腹筋が持続的に収縮するようになり, 緩徐に増悪し疼痛を伴うようになった.疼痛は臥位,特に前屈姿勢で軽度となるため,歩行困難となり入院となった.スティッフパーソン症候群(SPS)は自己免疫異常により中枢神経での抑制性神経伝達 (主に GABA) が低下しα運動ニューロンが抑制から解放されて症状を起こすと考えられている.異常な筋強直を呈する姿勢異常の鑑別疾患として本疾患を考慮する必要がある.

演題84 レフグレン症候群を契機に有症状化した潜在性甲状腺機能亢進症の1例
  • 症例は50代,女性.10日前から発熱と四肢の紅斑・関節痛を認め,精査加療目的に入院した.CTで両側肺門リンパ節腫脹(BHL)を認め,経気管支肺生検にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を確認し,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった.さらに両側下肢に結節性紅斑,関節痛,発熱を伴い,急性発症型であるレフグレン症候群(関節炎と結節性紅斑,両側肺門リンパ節腫脹を三主徴とする急性サルコイドーシスの一型)と診断した.サルコイドーシスと自己免疫性甲状腺疾患の合併は2%程度に報告されるが,橋本病が多く,バセドウ病は比較的稀である.

演題126 当院のランタン沈着症11例の検討
  • 炭酸ランタン(La)は透析患者の高リン血症に対する薬剤である.そのLaが消化管粘膜に沈着することで消化器症状を生じることや, プロトンポンプ阻害剤(PPI)を内服することでLaによるリンの吸着が低下することが近年注目されている.透析患者176 例のうち4年間で上部消化管内視鏡検査(EGD)を受けた134例を対象に,後方視的にランタン沈着症と考えられる白色微細顆粒状病変を認める患者において,EGD施行日までのLa総内服量とPPIの内服の有無について検討した.ランタン沈着症患者は11例で,発症までのLa総内服量の平均値は1952.8g(543.5-4021.5g)であった.

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2025-12-15

心音クイズ(Q13・Q14)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズのシーズン2 第二弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏 レイアウトも一新).今回は臨床現場でしばしばお目(耳?)にかかる2症例です.もっとも少しひねりを効かせた(聴かせた?)症例です 😉
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2026年2月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は初回のみ簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


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(投稿者 川崎)

2025-12-14

NEAE: Non-episodic angioedema with eosinophilia

  • 好酸球性血管浮腫(EAE)で再発せず自然寛解する一群
  • 邦名はEAE(反復性)に対し非反復性好酸球性血管浮腫
  • 東北大学の皮膚科医 Chikama らが1998年に提唱(
  • 本邦からの報告が多い(他は韓国や中国など東アジア)
  • ほとんどが女性で20-40代に多く夏季から秋季が90%
  • 症状は四肢浮腫や蕁麻疹(EAEに比して軽く顔面は稀)
  • 末梢血好酸球の著明上昇(血清IgMは正常~軽度上昇)
  • 病理は皮膚組織に好酸球の浸潤(皮膚以外の浸潤なし)
  • 原因は不明で予後は良好(ステロイド全身投与が奏功)
  • 約4~8週程度で自然軽快するため無治療で観察も可能


- NEAEの臨床像と病理組織像 -

(投稿者 川崎)

2025-12-13

海綿静脈洞血栓症 Cavernous Sinus Thrombosis (CST)

  • 概略 海綿静脈洞内血栓で神経症候を呈した病態
  • 機序 静脈洞の炎症波及による血栓形成でうっ滞
  • 原因 感染性と非感染性があり感染の波及が多い
  • 症状 患側の眼窩周囲浮腫,眼球突出,結膜浮腫
  • 神経 眼筋麻痺,顔面感覚障害(Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ)
  • 合併 髄膜炎,下垂体機能不全,内頸動脈血栓他
  • 治療 早期の抗菌薬と抗凝固療法+原疾患の治療
  • 予後 致死率は約30%で50%以上が後遺症を残す


齲歯で海綿静脈洞血栓症とLemierre症候群を合併した54歳女性

(投稿者 川崎)

2025-12-12

綿花様白斑 Cotton wool spots (CWS)

  • 糖尿病網膜症ステージのDavis分類は単純網膜症,増殖前網膜症,増殖網膜症
  • 増殖前網膜症の特徴的な眼底所見は軟性白斑(網膜神経節細胞の虚血性浮腫)
  • 軟性白斑は刷毛で掃いたような白斑(下図)であり綿花様白斑とも呼ばれる
  • 糖尿病以外でも高血圧や網膜静脈閉塞症,白血病,うっ血乳頭,SLEで出現
  • 境界が明瞭な白斑は硬性白斑と呼ばれ,網膜への蛋白質や脂質の沈着が原因
  • 硬性白斑は単純網膜症の所見であり軟性白斑綿花様白斑)よりも初期病変


- 両側の綿花様白斑を呈した巨細胞性動脈炎の81歳女性 -

(投稿者 川崎)

2025-12-11

今週の一枚 🎯

前日から嘔吐を繰り返す高齢者の腹部CT(単純)

😐 解説
  • 大動脈前後で十二指腸の径が大きく変化
  • 口側は拡張し水平脚以遠は虚脱している
  • 咽頭喉頭~食道~胃に占拠性病変はなし
  • 血管に挟まれた十二指腸水平脚(下図左)
  • 上腸管膜動脈(SMA)症候群と診断した
  • メトクロプラミドと補液などで症状改善
  • 通過性の良い食事を指導(半固形物など)
  • 本日は帰宅して後日,消化器内科を受診


👀 コメント
  • 本例は両肺上葉主体の気腫性変化と肺底部の蜂窩肺様変化(上図右)があり,気腫合併肺線維症(Combined pulmonary fibrosis and emphysema : CPFE)と考えられました.
  • SAM症候群は若年者(特に痩せた女性)に多いことが知られています.しかし本例の様にCOPDを伴う高齢者にも稀ではないことを,救急科の部長から教えてもらいました.
  • SMA症候群とCOPDの関連を詳細に検討した臨床研究は見つけられませんでしたが,COPDのるい痩(理由)を考慮すると不思議ではありません.本例でもBMIは16台でした.

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(投稿者 川崎)

2025-12-10

胃底腺ポリープ Fundic gland polyp (FGP)

  • 組織学的に胃底腺の過形成囊胞状拡張を特徴とする隆起性病変
  • H. pylori(ピロリ)感染がなくて萎縮のない胃底腺領域に発生
  • 中年女性に好発して癌の合併は極めて稀(ゼロではない:下図)
  • PPIの長期投与やピロリ除菌で新規発生や病変増大の報告が散見
  • 以前の考えでは家族性腺腫性ポリポーシスに合併(26~43%)
  • 近年では散在例も少なからずあり頻度は一般人口の1.8~5.9%


- ピロリ除菌後に増大した胃底腺ポリープに腺癌が発生した69歳女性 -

(投稿者 川崎)

2025-12-09

手術室:空気清浄度100?

  • 空気清浄度の基準として日常的にはNASAクラス基準が使用されてきた(例:手術室はクラス100)。これは米国連邦規格で、1立方フィートあたりの最大許容粒子数を示す(細菌の短径と同じ0.5μmが基準)。
  • この規格は工業領域での規格であり、人が出入りする手術室の清浄度を表現するには好ましいとはいえない。日本ではJIS B9920(クリーンルームの空気清浄度の評価方法)が1975年に制定され以後数度改訂。
  • 日本や米国ではいまだNASAクラス基準の呼称が一般的であるが、早急にISO表現に慣れていかなければならない。最近では空気清浄度はフィ ルタ濾過効率と換気条件により表現されることが一般的である(下表)



(投稿者 川崎)

2025-12-08

フィジカルクイズ(No. 33 & 34)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



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(投稿者 川崎)

2025-12-07

ヒスタミン食中毒 Histamine poisoning

  • 概略 高濃度のヒスタミンを含む食品を摂取することによって発症
  • 形態 アレルギー反応と異なり免疫グロブリンのIgE抗体を介さない
  • 症状 摂食30分程度で顔面~口~耳の紅潮,頭痛,じんま疹,発熱
  • 経過 6~10時間で回復(重症は稀で抗ヒスタミン剤で速やかに全治)
  • 産生 アミノ酸の一種ヒスチジンからヒスタミン産生菌により生成
  • 原因 赤身魚などを常温に放置するとヒスチジンが食品に蓄積される
  • 注意 ヒスタミンは一度生成されると加熱では壊れない(冷蔵保存)


- 魚種別ヒスチジン含有量 -

(投稿者 川崎)

2025-12-06

カプリーニスコア Caprini Score

  • 周術期に静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクを予想するスコア
  • 米の外科医 Caprini らが1991年に開発()➜ その後複数回改訂
  • 静脈鬱滞、内皮損傷、過凝固状態に関連する因子を定量化(下表)
  • 高リスク患者を早期に特定し抗凝固療法および機械的予防を考慮
  • 低リスク 0~1点:早期の歩行開始、薬物療法や機械的予防は不要
  • 中程度リスク 2 点:必要に応じて機械的予防または薬理学的予防
  • 高リスク 3〜4 点:入院中は薬物予防が推奨、必要なら機械的予防
  • 超高いリスク 5点以上:薬物と機械的予防の併用かつ退院後も延長
  • (ただし項目が多く本邦では広く使用されず検証も十分ではない)

参考)StatPearls [Internet],他


(投稿者 川崎)

2025-12-05

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


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(投稿者 川崎)

2025-12-04

今週の一枚 🎯

意識障害で搬入された症例


👺 解説
  • 少し荒めの呼吸が目立つ(腹式)
  • 呼気時に左季肋部に拍動(矢印)
  • 本例は甲状腺の腫大と雑音あり
  • 最終的な診断は甲状腺クリーゼ

👽 コメント
  • 大動脈弁逆流症では左上腹部に拍動を認めることがあります(ゲルハルト徴候/Gerhardt sign).その機序は大脈に伴う脾臓の収縮期拍動です.同様に肝臓の拍動はローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼ばれています.
  • 本症例で認めた左季肋部の拍動は,甲状腺機能亢進症による大脈で生じたゲルハルト(様?)徴候でしょうか? 右季肋部の拍動は不明瞭ですが,触診では肝臓の拍動(ローゼンバッハ[様?]徴候)もあるような気がしました😉 

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(投稿者 川崎)

2025-12-03

バゼックス症候群 Bazex syndrome

  • 先日,治療目的で当院に転院してきた患者さんがBazex症候群を患っておられました.初めて耳にする病態だったので調べてみました.

💫 バゼックス症候群
  • 悪性腫瘍に伴い四肢末端などに角化性紅斑を呈するデルマドローム
  • (デルマドローム=他の臓器疾患の存在を示唆する皮疹や皮膚疾患)
  • 由来はフランスの皮膚科医 A Bazex(Br J Dermatol 1980;103:301-6
  • 鼻部・耳介・四肢末端部などから始まる乾癬様過角化性紅斑を呈す
  • 40歳以上の男性に多く,咽頭・喉頭・肺・食道・肺などの悪性腫瘍
  • 類似の病態はLeser-Trelat徴候や悪性黒色表皮腫,後天性魚鱗癬など
  • 機序は腫瘍関連物質へのアレルギー,交差反応,サイトカイン作用?
  • 皮疹の外用薬による治療は無効(悪性腫瘍の治療で皮疹は軽快する)


3月前から搔痒性皮疹が出現した77歳男性(その後に肺癌が判明)

(投稿者 川崎)

2025-12-02

ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応 Jarisch-Herxheimer reaction

  • 梅毒の治療開始後に生じる発熱や頭痛、皮疹など一連の反応
  • 投与数時間後に出現して24時間以内に収束することが多い
  • 他のスピロヘータ(レプトスピラ症やライム病など)でも有
  • 名前の由来は Jarisch (1850-1902)と Herxheimer (1861-1944)
  • 機序は病原菌が大量に死滅して細胞内部の毒素が血中に混入 
  • 出現頻度は23.7%でII期梅毒、非HIV感染、治療成功と関連


Jarisch-Herxheimer反応が診断の端緒となったWeil病の1例

👀 独り言
  • 左心室壁にある機械・化学受容体の刺激で徐脈や血圧低下を生じることがあります.ベツォルド・ヤーリッシュ反射(Bezold-Jarisch反射)とよばれ,運動を突然やめたときに生じる失神や急性下壁心筋梗塞時(下壁に同受容体が多い)の血圧低下や徐脈として観察されることがあります.
  • 「ともにJarischだな~」と思って調べてみると親子でした.Jarisch-Herxheimer反応を発見したのは父のアドルフ・ヤーリッシュ(1850-1902)でオーストリア=ハンガリーの皮膚科医です.一方,Bezold-Jarisch反射は息子のアドルフ・ジュニア(1891–1965)で薬理学者です(引用).

(投稿者 川崎)

2025-12-01

学習アプリの効果

  • 面白い論文が出版されたのPICO(ピコ)形式で共有します(Nurse Educ Pract 2025:89:104620

    1. P – 看護学生,モバイルアプリケーションを用いた心血管身体の学習効果
    2. I – ランダム化比較試験,42名をアプリ群、40名を対面指導群に割り当て
    3. C – 学生の学習効果,自己学習能力、知識、学習満足度を両群間で比較
    4. – アプリ群でスキルパフォーマンスは有意に向上した.他は有意差なし

😌 独り言
  • アプリが身体所見の学習に有用であることは言を俟ちません.いつでも・どこでも・だれもが利用できるからです.しかしその効果のエビデンスは意外にも少ないような気がします.
  • アプリやWEBコンテンツの開発者の一人としてはこのような論文をとても嬉しく思います.投稿者も様々なコンテンツを公開しているのでよろしければご覧ください(松下ハート塾

心臓Physical Examination広場とのマルチポストです 🎶

(投稿者 川崎)